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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第248話「釜で調合」

 どんぐり虫人間を倒したその晩、先生の家に泊ることになったのだが、こうなる

といつ、ログアウトすればいいってことになるんだろうと考え込んだのと、ホテル

の宿泊費を格安とはいえ支払っていたのでちょっと無駄になってしまったことが悔

しくなってしまった。

 一応、先生の家にはベッドが2つあったので、私と先生が一人ずつベッドに。だ

いこんとサンショウは床で寝ることになった。いや、私はログアウトするから、い

っそサンショウに寝て欲しかったんだけれど、それは先生が許さなかった。ああ、

なんかこういう時ゲームってことを伝えられないのが困るなあ。そういえば、ここ

でゲームプレイをしているとか話したらどうなるのだろうか。今まで一度も言った

ことがなかったのと、言うと気まずくなると思っていたのだけれど、言わなかった

事がいけないなんてなるのかな。


「…だいこん。ちょっと。」

「ん? 姉御なんや? 寂しくて眠れないんか?」

そんなわけないだろうと言いたくなったが、ベッドに入ったら即寝てしまった先生

と、床で寝ているサンショウに悪いと思ったので大きな声でのつっこみはやめた。

「私さぁ実は「異境人」なのよ。」

え? なんだ今の。異境人だって? つまりゲームをやっているとか、ゲームプレ

イしているとか、そういう言葉が自動で置き換えられてしまうってことなのか。

「ファ? 異境人やて?」

この説明で、みんな理解してくれるようになるってことなんだろうか。

「そうそう。なので突然消えたりすることもあるのでよろしくね。」

「あぁ、それはみんな知っとるから大丈夫やで。ワイらも突然消えたりすることが

あるんやけど、そういうもんやし。」


え。だいこん達も突然消えるってどういうことなんだ。意味が分からないぞ。

「ワイも上手く説明できんけど、そういう風になっとるらしいで。」

はぁ、つまりゲームだからってことか。でも今のを聞く限り、ひょっとすると、私

がログアウトしている時とかに突然消えたりしているような気がしたんだけれど、

ってそれはないか。ブッチ達と一緒にいたりする時があったし。となるといつ…。

ああ、メンテナンスの時とかかな。<アノニマスターオンライン>もメンテナンス

されたり、アップデートされたりするみたいだし。その時は突然消えるっていう表

現になるのだろう。ただの予想だけど。


「うん。じゃあこれからもそういう突然消えた李なんてことがあったりするかもし

れないけれど、心配しないでね。」

「分かったやで。」

「それじゃ。今も消えるから。」

「唐突やな。ほな。」

と言うわけでログアウトした。


「んっ。んっ。あーーー。」

 体全体を伸ばす。いやぁ、なんかこう今日も満足するくらいゲームプレイできた

なあという気分だ。それにしても、ゲームの中で寝るなんてことをしなきゃいけな

くなると結構大変だな。現実に寝るのならまだしも、遊んでいるのにそこで寝るなん

てちょっとおかしな感じがするし。

「ふぅ。それにしても…。」

 ねこますって名前が随分板についてきたというか。そんな気がしている。現実だ

と増田さんとか愛莉さんとか言われるだけなんだけれど、ねこますさんって言われ

るのがなんだか自分の本当の名前って感じがする時があるなあ。


「ねこますさんって現実で言われても反応しちゃいそうだなあ。」

 とはいえ、現実で<アノニマスターオンライン>をやっていますという事は、誰

にも伝えていない。友達がプレイしているとか聞いたことがあるけれど、残念なが

ら私は、それを伝えていない。現実の友達とこの手のゲームをやってしまうと、完

全にプライベートな感じでプレイすることができなくなってしまうからだ。たけど

当然というかみんな私がゲーム好きってことを知っているから、プレイしていない

というのはきっと嘘だとか思っている事だろう。なので、誰かを家に呼ぶときなん

かは、このヘッドギアを隠さないといけない。家の中を探られても絶対にばれない

ように物置の奥の方に、取り出すのに、とても苦労するような場所に置かないとい

けない。

 漫画でよくあるシチュエーションというか正体がばれるみたいなことを絶対に防

止するために、並々ならぬ努力をする必要がある。というかああいうのが怠けすぎ

なんだ。そう簡単にばれるような真似をする奴がいるかと。私は絶対に、何がどう

あろうとばれないようにするぞ。


「…そういえば、誰かの家に泊って寝るみたいなことあんまりしたことないなあ。

そういう意味じゃ、先生のところでそのまま寝るみたいな感じでも良かった気がし

てきたな。」

一回くらいは経験してみようか。ゲーム内で寝るとどんな風になるのかよく分かっ

てないし。やってみるのもいいな。


「よっし、それじゃあ寝るか。」

色々と思う所はあるのだが、今日のゲームプレイは十分満足したので、さっさと寝

るに限る。そんでもって、明日になればゲーム内でも多分朝になっていると思うの

でそこからまた錬金術士としての一歩を踏み出すんだ。と言うわけでこの日はあっ

さりと眠ってしまった。



 翌日、<アノニマスターオンライン>をプレイしようとする前に、ハーツのサイ

トを見ておくことにした。あぁーやっぱり革製品はいいなぁとか、同じように、<

アノニマスターオンライン>で出店しているブランドなんかがないかをチェックし

てみようと思ったが、急遽取りやめることにした。

 なぜなら、私が知らない国とかで出店していた場合、ゲームをプレイしていない

のにその情報を掴んだことになってしまうから。これはよろしくない。ゲーム外で

の情報取得は必要最低限にしたいというのが私の考えだ。というわけで、少し残念

な気持ちになりながらも今日もログインをする。


「うーん。っと。」

「ねこます。あなた寝坊よ寝坊。まぁ昨日頑張ったからしょうがないんだろうけど。」

ベッドから目を覚ましたような姿勢になると、目の前に、先生がいた。真っ黒な服装

をしている。やはり闇の錬金術士だ。

「私も、先生と同じような服が欲しいです。どこで買いました?」

「ふふっ。錬金術をやっていれば、嫌でもこういう服になるわよ。どこでも好きな服

を買ってきなさい。」

 錬金術に失敗すると、そういう黒ずんだ服になるということなんだろうか。となる

と先生の服は、錬金術を研鑽してきた証拠ということになるじゃないか。うわぁ正に

自分だけの服って感じがいいなぁ。一点ものじゃないか。羨ましい。私もハーツのリ

ュックが手に入ればそんな風になっていくんだろうけれど、早く欲しいなあ。


「はいー。では先生、今日はこれから何をするのでしょう?」

「釜で調合よ。」

「えっ!? そんな。いきなり二日目からですか!?」

「当然でしょ? 何でそんなに驚いているのかしら?」


下っ端は何日も素材集めだというか下働きみたいな感じになるのかと思ったら、そん

な事は無かったようだ。これは運が良かった気がする。いきなり釜で調合させてもら

えるなんて。


「いきなり調合をさせてもらえるなんて思わなかったので! それで何を作るのでし

ょうか!?」

「回復薬よ。あなたが持っている薬草とあとは私が持っているこの蒸留水と、魔法の

実を調合するの。」

「本格的だぁああああああ!」

「ちょ。何よもう! そんなに騒がなくてもいいでしょ?」


だ、だってだって、ついに調合だよ! 私が錬金術士で始めたこのゲームで、まとも

な調合をついに経験できるんだよ!? これが喜ばすにいられるかっての! 私もよ

うやくまともな錬金術士を名乗れそうだ。これはテンションが上がってしまう!

それに、先生だって自分の調合で忙しいだろうに、わざわざ私に時間を割いて教えて

くれることに感動している。現実でのお仕事なんか、教えてもらうとかいうのがあん

まりにもなかっただけに、こういうのに憧れていたんだよ私は!


「ありがとうございます! 私、闇の錬金術士の弟子に恥じぬように誠心誠意やって

いきますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!!! しゃああ!」

「あ、姉御、なんか凄い勢いやな。そこまで盛り上がっているのは珍しいな。」

「そうですね。ねこますサンがそこまで浮かれているとは。」

「そんなに調合がしたかったのね。はぁ。それじゃ準備するからこっちに来て頂戴。」


そして先生に地下に案内された。ああ、そういえば先生はそもそも地下で調合してい

たんだっけ。私も今後はここを使わせてもらうことになるのかな。


「私が調合していない時は自由に釜を使っていいからね。それと、生体調合について

も別にやるな、なんて言わないから、ガンガンやってみなさい。失敗を恐れずに調合

することこそが、上達する近道よ。」

「はいっ! 分かりました!」


ここで先生からいくつか説明を受けた。地下室は薄暗いが、光に当たると品質が変わ

るものなどがあるからこのようにしているらしい。闇の錬金術を扱うということはど

うやら光は極力避けねばならないようだ。うんうん。そういうのいいね!


「それじゃあ、ここに、薬草と蒸留水と魔法の実があるから、順番に釜に入れていき

なさい。」

「はい!」


あまり大きくない釜の中に、まずは薬草を入れた。次に蒸留水を入れようとすると。

「一気にいれないでゆっくり、少しずつよ。」

「は、はい。」

先生から注意される。ゆっくりか、一気に入れてはいけない理由は後で聞くとしよう。

「それをその棒でかき混ぜて、ゆっくりね。」

これもゆっくりか。よし、よし。こんなものかな。うわー緊張してきた。家庭科の実

習とか苦手だった私がこんなこと上手くいくのか?


「はい、そこで魔法の実を入れる!」

「はい!!」

そして魔法の実を入れ、さらに釜の中をゆっくりと、棒でかき混ぜていく。はぁ、こ

これは思ったよりも大変かもしれない! でもやりがいがある! ゆっくりぐるぐる。

ぐるぐる。ぐるぐる。うう、これでちゃんとできるかな! ええい上手く言って欲しい!


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