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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
237/473

第237話「不在続き」

7/17(水)追記しました。

 翌日にログインすると、テボリハホテルの室内だった。そういえばここでログア

ウトしていたんだけれど、サンショウとだいこんが、ここでくつろいでいた。

「あぁーもう何もしたくないやで。もうここでずっとだらだらしててもええんやな

いかな。」

「そうですねぇ。ここは落ち着きますねえ。」

 なんでこんな堕落してしまっているんだ。そこまで魅力的な宿じゃないだろうに、

この二名をそこまでダメにする何かがあったというのか・

「えーっと、疲れてるの?」

「姉御! いつからそこに!? いや、つか、疲れてはないやで。だけどここでぐ

うたらしていると荒んだ気持ちが癒されるんやで。」

 だいこんが荒んでしまうような事って何かあったっけ。あぁ、最近乗り物として

全然役に立っていないからそういうところかな。


「サンショウは元々、ここが好きだったもんね。」

「ええ、この古めかしい場所は、素晴らしいです。」


 なんてやり取りをしていたけれど、今回はゆっくりしていられない。さっさと闇

の錬金術士ドーラの所に行かなくては、善は急げだ。前回のようにまた留守になっ

ていたらたまったもんじゃないし。

「あそこまで行くのに結構時間かかるんやなあ。あぁ、なんだか行きたくなくなっ

てきたで。」

 いちいち30分かけて行くのが面倒くさいのは良く分かると言いたいところだけれ

ど、だいこんは、私の肩に乗っていただけじゃないか。私やサンショウはずっと歩

き続けていたと言うのに。


「分かった分かった。じゃあこのままずっとここで寝泊まりするか。」

「え、あ? 姉御軽い冗談やで! ワイも行くから大丈夫やで!」

 全く、都合のいいことを。それはさておき、今日こそドーラに会わないといけな

い。このままの状態が続くようであれば、この街に長期滞在しなければいけなくな

るので個人的にそれは避けたいと思っている。

 今日もいない場合は、多分何度行こうがいないのではないかと予想している。つ

まりもう、強行突破というか、あの家の扉をこじ開けてでも中を探るなどしないと

いけなくなる。そこまでやるのもどうかと思ったけれど、むしろそこまでしないと

出てこない日陰者なのかもしれない。あんな森の中に住んでいるからなのか分から

ないけれど他人と接するのが苦手そうなイメージがあるなあ。


「ドーラという錬金術士は、どんな者なのかは分からないのですか?」

「そうなんだよねえ。女ってことが分かっているだけで容姿とかそういう情報につ

いてはガイドブックに掲載されていなかったからね。」

そういうのも気になるからさっさと会いたい。というわけで、テボリハホテルをす

ぐに出て、ドーラのアトリエを目指すことにした。


「あぁーまたこの道を30分も歩かないといけないのか。」

繰り返すのが面倒くさいけれど、今日は必ず会ってやるということで、そのまま森

の中を走りぬけた。昨日と変わったところは特になかったけれど、今日はまだプレ

イし始めたばかりなので、勢いに乗って突き進めそうな気分になった。


「ねこますサン。すごい元気ですね。」

「これは元気と言うよりも、そろそろ草刈りがしたいのに、できないので、カッと

なってやっているだけだよ多分。」

 自己分析をしてしまうが、その通りなのだからしょうがない。錬金術を今よりも

しっかり使えるようにはなりたいが、そのためにこの街にずっといたいかと言うと、

全くそうではない。

「切羽詰まっているような状態っていうか、このまま話が進まないと、何も情報を

得られなくなってさぁ、面白いことができないままになっちゃいそうなんだよ。」


ゲームで詰んでいる状態になるのが嫌だ。例えばブッチやエリーちゃんが、最初の

場所からずっと動けなかった状態もそうだ。できる事と言えばその周囲をうろつく

だけだが、ドーラに会いにここに来ても、会えないままだとそれと同じような事に

なってしまう。それだけは御免だ。

「いちいちドーラは今何をしているのか調べることになったら、また遠回りになっ

て目的からそれていく気がするんだよね。」


「姉御、だったらそれこそもうこんなところにいないで、帰るっていうのもええん

やないか?」

「それも考えている。今日いなかったらそれもありかなあと考えているんだけれど、

他にもどうしようか考えているので、最悪、この街から姿を消すしかないね。とい

っても、ハーツのリュックを受け取ってからだけどね。」


ハーツのリュックを作って貰えているからこそ、ここにいる理由がある。錬金術を

教えて貰えるかもしれないからこそ、ここに留まる必要性がある。といった感じで、

目的があるからナテハ王国内に残るだけだ。この王国自体には対して興味が無い。

王様が誰なのかとか、この国にはどんな歴史があるのだろうかというのも、多少は

知りたいと思うが、そこまで知りたいほど魅力的な国だとも思えないし。


「何度もこの暗い森を歩くというか散歩するというか、それをし続けなきゃいけな

いのは嫌だね。だいこんが今日言ってたみたいに、行きたくなくなってくるよ。何

しろ往復1時間もかけなきゃいけないわけだし。」

「散歩にしては長いですね。」

「1時間も移動していたら、一体いくつの薬草がとれると思っているのやら。」

「そっちかいっ! 姉御はやっぱり薬草が欲しいから面倒くさがってたんか?」

 そりゃそうに決まっている。何をするにしても草刈りをして薬草がどれだけとれ

るのかということが基準となっている。もしもこの時間、草刈りをしていたら薬草

がこれだけ集まっていたのにと考えると、時間を無駄にした気分になってくる。

 昨日と今日で、一体どれだけ集まっていたと思っているんだ。


(母上は、どこかで草刈りをしていたんですか?)

ああ、ひじきは詳しくは知らなかったよね。えーっと話せば長くなるんだけどって

ひじきには念じるだけで会話できるか、あれこれ話すと、そんな感じ!

(すみません。思ったことが何でも分かるわけではないので、ゆっくり念じるよう

な感じで説明していただけないでしょうか。)

そんな都合よくはいかなかったっか。えーっとまず私は魔者の大陸ってところの生

まれでね。そこでずっと薬草集めだけやっていたか弱い女だったんだよ。


「ね?二人とも。」

「はい? なんでしょう。」

「なんや?」

「私ってか弱いよね?」


敢えて聞いてみることにした。今まで戦闘面ではたまたま運が良かったから、劣勢

から優勢になることが多かったけれど、大体いつも苦戦してきているから、どう考

えても弱いと思っているだろう。


「ご冗談を。ねこますサンは、魔者なのですから、弱いなどという事はありません。」

「そうやで。姉御はよしんば魔者やなかったとしても強いやで。な? サンショウ。」

「はい。」

 というように、誤解されてしまうのも私は好きじゃない。これは、例えばいじられ

キャラとか言うのに認定されてしまい、本当はからかわれるのが嫌なのにいつの間に

かずっと、そういうキャラ扱いされて疲れてしまうと言うのがある。

 私は、そういうのが嫌いなので、なんとしても、違う事を教え込みたい。


「私はねぇ、そういう冗談が嫌いなんだよねえ。私はか弱いよねえ!?」

こういう時は多少強引に言っておかないと後で軌道修正が聞かなくなるんだ。誰がど

う言おうと、きちんと違うんだよということを叩きこんでおく。

「わ、分かったやで。姉御、分かったからそんな怒らないでくれやで。もうこんなこ

としとらんでさっさと錬金術士のところまで行こうやで。」


私にその手の冗談が通じないといか、私の本気が伝わってくれたようだ。よし、そう

いうわけで今回こそ、ドーラに会うぞ。必ず会う。ここでいなくても絶対に会う。ど

んな手段を使っても会うので。


「今回は強引に押し入ることにするよ。」

「ええんか姉御。そこまでやってええんか? もっと穏便に済ませようとかいう気持

ちはないんか? そこまでやるのはまずいんやないのか?」


「だってもう面倒くさいんだもん!!!」

 森の中で私の叫び声が響き渡った。いやまぁ、本当に面倒くさい事が嫌いだ。自分

の思い通りにいかないからと言って駄々をこねているような感じであるのは自覚して

いるんだけれど、仕事から帰ってきたり、休みの日に折角このゲームができるのが楽

しみだというのに、そのゲームを楽しめる時間が無駄に削られてしまうというのはや

はり私にとってみれば嫌な状況だった。


「…私も焦っているといえばそうなんだけどさあ、この詰まっている状態のままだと

どれだけ時間を無駄にするんだろうなあって思うんだよね。」

「姉御、ちょっとええか?」

「何?」

「草刈りの事考えるあまり、冷静さ失っとるで?」

「それは、分かっているって。」

「分かってないやで。この際やから言わせてもらうんやが、ちょっと焦りすぎや。さ

っさと錬金術士とやらに会わないといけないのは分かるんやが、そこまで必死になっ

たり焦ったりするならもう何もしないほうがええと思う。」


あー。何言われるか分かっているだけに流石に私も反省したくなってきた。自分勝手

なところを振りまいたからそうなんだけれど。

「無理や。ここに来て日が浅くて情報も少ないんやから、姉御がどう考えていても都

合のいいように動いてはくれん。せやから、本当に草刈りが我慢できなくなっている

ならもういっそ一回帰ったほうがええと思うやで。」


やっぱり、そういうことになるんだよなあ。もうなんか草刈りをしたいってことばか

りになってきている。草刈り中毒になっていたと言えばそうだと思うけれど、いつも

やっていたことが長期間出来ないってことがストレスになっているようだ。ああ、だ

いこんに指摘されなくても分かっていたけれど、やっぱり周りからしたらあまりいい

気分ではないか。はあ。


「分かった、ちょっと一回冷静になる。ここで座ろう。」

「ねこますサン?」

「姉御?」

森の中で、地べたにそのまま座る。ワンピースが汚れようが全く関係ない。

「…。えーとごめんなさい。私が悪かったです。」

「あ、いやワイはそこまでして欲しかったわけやないで。」

「そ、そこまでしていただかなくても!」


けじめというかなんというか、間違ったと思った時はちゃんと謝らないといけない。

何に間違ったかと言うと、明らかに私の態度で不快にしてしまったのだから、それを

仲間に対してやってしまったことは、良くない。だから謝る。反省する。

ここは、私もきっちりやっておかないといけないので、もう少し話し合っておくこと

に決めた。

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