第233話「道具じゃなくて食料」
すみません。文章が短いため明日修正しますのでよろしくお願い致します。
今日はもう眠気で限界でした。7/13追記しました。
商業区内で、道具がたくさん売っているという店に入ったのだが、それは間違い
だった。ガイドブックでは、画像などはなかったが、珍しいものがたくさんあるな
んて書いてあったので来てみれば、野菜を売っているだけだった。
世にも珍しい橙色の植物なんて紹介されていたのだけれど、ただの人参だった。他
にもとても不思議な紫色の植物とやらが茄子だった。
人参に見えるからといって実は人参じゃないのかもしれないと思っていた矢先に
近くにいた老人たちが、ここの人参がすごく美味しいなんて言っていたので、やっ
ぱりただの野菜のようだ。あるいは美味しい野菜という道具なのかもしれないので
一応ある程度買うことにした。
料理することで、何か新しい物が作れるかもしれないし、こういうものだって、
いつか何かの役に立つかもしれない。
ゲーム内で食事を楽しむことができるというのもあるから、ここで食材を沢山買っ
ておくというのも悪くないだろうし。それに、ここでしか買えない食材だってある
かもしれない。どれがそうなのかはわからないけれど、こういう時はあらゆる物を
最低でも1個は買うという方針にしている。本当はぎりぎりまで買いたいのだけれど
数に限りがあるようなので買い占め厳禁だ。
「ねこますサン! なぜこんなに大量の人間たちが蠢いているのですか!?」
野菜を買い求めにきているのだろうが、確かにすごい数だ。バーゲンセールに集
まる主婦のような勢いだ。これは、プレイヤーだけじゃなく、NPCも沢山いるよう
だな。うう、こんなにいるところから一刻も早く出たいんだけれど他にも果物や魚
やら肉やらを買いたいので、それを手に入れてからにしたいなあ。
(母上、ここには何日も滞在するのでしょう? であれば、後でまた来てもいいの
ではないですか?)
あ、確かにそうだ。周りの勢いに押されて買わなければという心境になっていたよ
うだ。そもそも目的としては、錬金術用の道具だし、野菜に夢中になっている場合
じゃなかったな。よし、ここはさっさと出て、別なお店に行くとしよ、で、出られ
ない! なんだと思ったら殺気立った主婦のような人々が絶対に道を譲らないぞと
言わんばかりの動きを見せている。いやいや、私は戻りたいだけなんだと思ってい
ても、この勢いから逃れられそうにない。
「び、びくともしない。まるで岩のようだ。ってうわ。」
「ね、ねこますサン。」
後ろからの圧力で私は前にいるサンショウに密着してしまう。そしてそのままぐい
ぐと前に流されていく。
「大丈夫ですか?」
「全然ダメ。サンショウは?」
「なんとか。しかし骨が折れそうな気がします。」
そういえば本体は骨の姿をしているリッチだもんなあ。物理攻撃は苦手だったとい
うことなんだろうか。サンショウをここに連れてこないほうがよかったかな。
「チッ。何ラブコメしてんだよ。」
誰かの声が聞こえてきた。ああ、イケメンのサンショウにしがみついているよう
に見えたからなのか。でもこれがラブコメになんて全然見えないぞ。どう見てもた
だ押し潰されていそうな感じだし。
「チッ。」
他にも舌打ちしている奴がいるようだ。まどろっこしいなあ。腹が立つならさっさ
とかかってこいと思ってしまう私がいる。まったくもう、さっさとこの場所から出
たいのに!
「お? お嬢さん、山椒が欲しいのかい? こっちに売ってるよ!」
「え。あ。」
声の主のほうを振り向くと、山椒が売っていた。ああ、サンショウの元ネタじゃな
いか。へえせっかくだし買おうかなって、あ、黒胡麻とか筍とかも売っているじゃ
ないか、ももりーずVのメンバー勢ぞろいしそうだ。
「こっちのだいこんも安いよ!」
「姉御。今だいこんって聞こえたんやが。」
真っ白い大根が目の前に売っていた。が、そのまま流されていくせいで買えなかっ
た。っていうか立ち止まることさえできないとか買い物できないじゃないか! ど
うすればいいんだよこの状況!
「だいこん安いよ! だいこんはいらないかい!」
「姉御、もしかして、だいこんっていうのは、あれから名前をとったんか?」
「えーと。」
みんな食べ物から名前をとっていることに気が付いていなかったんだっけ。ここは
説明してしまったほうがいいんだろうか。いやもう敢えてそうじゃないかな的な勢
いに任せてしまってもいい気がする。
「ねこますサン。先ほどの山椒? というのも、もしや。」
「ご想像にお任せします!」
今更だけど食べ物からとったということになったら、何か言われそうな気がしてき
た。どうせこのゲーム内じゃないだろうという考えがあったのだけれど、まさかこ
こにきて野菜が沢山でてくるなんて思わなかった。そりゃあ現実を基にした野菜が
出てきたっておかしくはないんだろうけれど。
「とにかくっ。それを気にしているよりもここから抜け出すのが先! なのでサン
ショウ。私がこのまま後ろから押すからさっさと前に行って抜けだすよ!」
「ね、ねこますサン!? それはちょっと無理が、あぁあ骨がぁぁああ!!」
流れに身を任せるんじゃない、自らが流れを作るんだ。どうにもならないこの周り
の動きがあろうが、どうにかするしかない。こういう場所で、スキルとか使えるか
どうかもわからないし、使ったら何かペナルティがありかもしれないので、ひたす
ら根性でやっていくしかない。
「あ、あっちに行けば抜けられそうだ!」
「あああ、あああ、背骨があああ。」
サンショウ、見た目は若いイケメンなのに体は骨だし、年齢的にはおじいちゃんだ
から辛そうだな。でもここで頑張らないとこの流れから抜け出せないんだ。たかが
買物するだけでこんな戦いになるとは思わなかったけれど、やっていくしかない。
「何イケメンにしがみついてんのこの女。」
「こんなところで、わざわざいちゃつきやがって。」
「うざい、買物するのに邪魔。消えてほしい。」
な、なんだこいつら。すごいむかついてきた。こっちは真面目にやっているってい
うのにそれはないだろう。お前ら、私はここから出たいだけなんだぞ。それをよっ
てたかって、ボロクソに言いやがって。許せん。
「姉御、落ち着くんやで。ここでキれたらあかんやで。」
(母上、ここで暴れたら、まずいことになると思いますよ。)
「ねこますサン。やはり愚民どもには目にものみせてやるべきでは?」
「・・・アホー。煽るんやないやで」
いやぁもう、そうだよそうだよ。般若レディをなめるなといいたい。なんで私こん
なところで燻らなきゃいけないんだ。いや、他のプレイヤーとか巻き込んだらちょ
っと悪いかなあとか思うところはある。が、我慢の限界だ。人間たちの都合など、
知ったことかああああ!
「うるさいなあ! そんなに文句あるならさっさとかかってこい三下ぁ!」
私は大声で怒鳴りつけた。その瞬間に、周囲の者たち全員の動きが止まり、そして
震え始めた。あれ、これってもしかするともしかして。
「な、何今の!?」
「こ、怖い。何なの!?」
あぁ、威圧が発動したのか。これは、やってしまった感があるけれど、しょうがな
いな。我慢の限界だったし、自然に発動しただけだし。怒りに身を任せてしまった
し無関係の人を巻き込んだけれど、反省していない!! だって私そもそも、良い
奴じゃないしね!
「よし! このままおさらばだ! ずらかるぞっ!」
「はいっ!」
一度行ってみたかった言葉、ずらかるぞを使えて大満足だった。もしかすると、こ
こが出入り禁止みたいになってしまうかもしれないけれど、その時はその時だと自
分に言い聞かせた。よし、ずらかるぞ!