表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
232/473

第232話「お店の仕組み」

 ハーツでの買い物を終え、私たちは坂道を下っていく。他のプレイヤーもに出く

わすかもしれないと、少し警戒していたが、誰かが来るような気配は一切感じられ

なかった。

 現実で有名なお店だし、製品に多少値が張ろうが、沢山の人が来ていると思って

いたのだが、お金持ちと誤解されて狙われたくないプレイヤーが多いのか、それと

も単にゲーム内では不人気なのだろうか。

 誰一人来ないことに違和感を覚えたが、それ以上に私たちは無防備にここまで来

てしまったのではないかということに不安を覚えた。


「誰も来ない、なんてあり得るのかな。」

独り言として呟いてしまう。ここは誰でも来ることができる場所なのだから、商品

を見に来るくらいあってもいいはずだ。誰ともすれ違わないというのは、ひょっと

して、そういう仕組みがあるのではないか?


つまり、私たちがここにいる間は、他のプレイヤーは、ハーツには入ることができ

なくなり、私たちがいなくなった後で、お店に来訪できるようになるといった、何

かがあるのではないか、ということだ。


 ハーツに来訪した客がプレイヤーから狙われる可能性が高くなるなんて噂がたっ

てしまえば、それこそ近寄りがたくなってしまうだろう。そういう事にならないよ

うに、店舗を作る際に、特定のプレイヤーと鉢合わせしないよう設定ができるよう

になっている、と考えるのが妥当じゃないのだろうか。

 お客さんが限られてくるなら、それもありだな。悪評が立たなくてよくなるし、

本当に欲しいと思う人だけが来るのなら、何も問題はないだろうし。だけど、ハー

ツの製品を持っているということは、買ったってことになるし、お金持ちだってこ

とがばれてしまうと思うんだけどな。


 そうなってくると、そんな設定何も意味を成さないことになると思うのだが、製

品を買った人に少しでも問題が起こりにくいようにするための配慮ってことになる

のかな。


「やっぱり誰も来ないようやで、不思議やなあ。」

 襲われることなく安全に買い物ができる仕組みがなかったら、そこら中で金持ち

ばかり狙われることになってしまっていたんだろうな。もし、本当にそういう仕組

みがあるのだとしたら、なるほど、面白いなあ。

 あっ、でも今回の逆もあり得るか。誰でも何人でも店舗内に入れる場合は、高い

製品を自分が購入したというアピールすることができるし、そういうのが好きな人

だと、ハーツのようなお店には来ないってことになるのかな。


ずっと店舗に居座って他のプレイヤーが入れないようにする、っていうのもあるだ

ろうけれど、そういうことをさせないように時間制限とか入店拒否する仕組みも当

然あるんだろうなあ。こういう事ができるようになっているのだとすれば、<アノ

ニマスターオンライン>の店舗システムはよく仕上がっているなあと感心してしま

う。


「あ。」

気が付くと、坂道をあっという間に下りており、振り返ると上り坂が見えた。やっ

ぱりこれは、そういうことだったんだろうな。だけど、ここが入り口ということが

ばれているのなら、周りに誰かいてもよさそうなものなんだけれど、この位置もそ

ういう事ができないようになっているのかな。


「これはもう気にしてもしょうがないし、道具屋に急ぐとしようか。」


 錬金術士の所に行く前に道具を買いに行く理由としては、何も知らないのに、い

きなり弟子にしてくれとか、あるいは教えてくれなんてお願いをするつもりがない

からだ。

 いきなり何も知らない人が、教えてくれなんて尋ねてきても、本気でやる気がな

ければ、教えるだけ時間の無駄だと考える人だっているだろう。だからこそ、私と

しては、どんな道具があるのかなんてことを調べておきたいというのがある。


「やはり拷問用の道具などをお求めなのですか?」

「なんでそんなものを求めていると思っているのかが謎だよサンショウ!」

誰にどんな目的でそんな道具を使うっていうんだ。そんなものは私に必要になるこ

とはないだろう。

「姉御は生かさず殺さず的なノリだからやないか?」

「あー。」

 確かにぎりぎりまで追いつめておいて、無抵抗状態というか無力化したいと思う

事はあるかもしれない。というのも、敵が知りたい情報を持っていても、暴力に訴

えないといけないことが多いからだ。ゲームでよくあるのが、知りたければ自分を

倒せなんていう場面だ。これが本当に多い。

 

 だけど、本当に倒してしまえば、何も情報をしゃべらずに死なれてしまうし、逆

に一定以上のダメージを与えると逃げてしまう場合もある。この場合はやはり生か

さず殺さずといった状態が望ましいといえる。

 相手を無力化した上で、情報を要求し、そしてそれを渡さない場合は、その状態

を長時間維持、継続することでどんどん追いつめていく。

「あぁー、さっさと情報をくれない系の敵は確かにイライラしてくるし、そういう

の相手なら拷問っていうのもありそうだなあ。」


 到底考えもしなかったが、とっとと情報を出せと思っている私としては、拷問の

道具もありと考え、ってなんでだ!!!

「面倒くさいし、そういう敵がいたらさっさと倒すよ! 逆らうものには、徹底し

て攻撃したほうがいいし。」


こんな雑談をしながら道具屋までとぼとぼと歩いているのだけれど、他のプレイヤ

ーと思わしき人々とすれ違うことが多くなってきたので、この話はやめることにし

た。そもそも物騒だし。


(母上はよく周囲を警戒していますが、そんなに狙われるようなことをしたのです

か?)


していない。するつもりもない。だけど、魔者という称号がそれを許さない。この

面倒な称号がなければ、こういう事を考えずにだらだらとやっていたかもしれない

んだけれど、この称号があるから、問題に出くわす。


ただ、この称号のせいでこのゲームを辞めたいという考えもなく、得てしまったか

らには、そういうものだと割り切ろうと思っただけだ。<オンラインゲーム>で私

一人だけが何かの不満を持っているわけでもないし。


(なるほど、母上は何も悪いことをしていないのに、欲望まみれの人間たちが、母

上を亡き者にしようと企んでいるということですね。)

 そうそう、そうなんだよ。私は平和に過ごしたいだけなのに、クロウニンとか、

それだけじゃない人とかに狙われやすい運命なんだよ。ってああそうだそうだ。



結局私って、このゲームでの周囲の認識としては、というか一般的なプレイヤー

側からみれば悪ってことなんだな。勇者と魔王の物語なんてよくあるものだった

けれど、私の立ち位置は魔王側ってことになるな。魔王じゃなくて魔者ってとこ

ろがおかしい気がするけれど。


「そうか、人間たちは私の敵ってことなのか。」

あ、思わず口に出てしまったけれど、結論はそういうことだよね。だって、今こ

こにいる私は人間化しているだけであって、本当は般若レディだし。この般若レデ

ィもきっとモンスター的な扱いが基本だろうし。


「では、この国を滅ぼすということですね。」

「そうやな。」

(そうですね。)

「そういうボケはいいから!」


まぁサンショウの考えのほうがらしいってことになるんだろうけれど、現実では私

も人間なんだし、いちいち敵対していてもそれはそれで面倒くさすぎるので、でき

れば直接戦闘するということはしたくない。

むしろすごい強いプレイヤーたちと敵対してしまって、気が休まることがなくなっ

てしまいそうだし。


「前々から思っていたんやが、姉御は人間に甘いんやないか? 連中は狡猾やし、

最悪な事をしでかす気しなかないんやが。」

「だいこん殿の言う通りです。醜い争いを繰り広げることについては、どんな種族

よりも突出しています。」


ずばり、その人間が私だからなあ。とはいえ、気持ちがわからないというわけでも

ない。人間といえば問答無用でモンスターに襲い掛かっていくのがゲームにおける

定番なのだから。争いなんかしないっていうゲームは少ないし、モンスター視点で

みれば、悪いことをしているのは、人間だからなあ。


「無益な殺生を控えたいんだよ。いちいち戦っていたら、うんざりするでしょ。毎

日毎日、戦い続けるなんて嫌だ。」

「あ、姉御、毎日草刈りしていたのは、ど、どうなんや?」

「あれは戦いじゃなくて、のんびりとできる趣味だから全然違うよ。」

「な、なんやて。」

何か驚いたような声をあげるだいこんだった。が、そろそろ人目につきそうなので

ここらでこの会話はやめることにした。


というか拷問の道具の話でこんな話に流れていくとは。やれやれ。

「錬金術士として役に立ちそうな道具が欲しいんだよ。」

「やはり武器になるものがあれば安心ですね。この国を。」

「そういう話はもういいんだって。」

なぜそう物騒な話にもっていきたがるんだ。私は薬草の効果をもっと良くしたり、

道具自体がどんなものがあるのかまるっきり知らない素人なので見て回りたいって

だけなんだよ。やれやれ、もうみんなにはこのあたり口を酸っぱくして言い聞かせ

ないとだめだなあ。


「姉御は平和主義といっても、戦いが多いからそうなるんやで。」

戦わないと生き残れない世界で生きてきたのが間違いだったんだよね。魔者の大陸

にいたから、こんな風になってしまったんだ。ああそうか、私は荒んでしまったと

いうことなんだなあ。


「これからは慈愛に溢れるように努力するよ。」

「おお、ではその慈愛の力で、まずは人間を根絶やしに。」

だめだ。サンショウってリッチというかおじいちゃん的な感じで頭が固い。これに

言い聞かせるのは至難だし。もう基本無視することにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ