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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
231/473

第231話「お店の中で」

 お店の奥の方には、作業場のようなところが見える。工房とお店が一体化してい

るような形だ。本当にこれだと現実と全然変わらない。実際にある店舗についても

同じ形態をとっているはずなので、やはりここが現実と錯覚してしまいそうになる。

 そういえば、エリーちゃんが、ゲーム内でのお金も現実のお金に換金することが

できるみたいな話をしていたっけ。それだと、ここで商品を売った場合もお店の利

益になるってことなんだろうか。いや、そうなると労働ということに見なされると

思うのだが、そのあたりどうなっているんだろうか。


 ゲーム内で仕事をすれば現実でもお金を稼いだことになるというのはすごい事だ

と思うけれど、ずっと仕事をし続けるようなものになってしまわないだろうか。

 ってあれ、そういえば、ゲーム内での仕事についてがニュースで話題になってい

た気がする。あまり気に留めていなかったけれど、これがそうだったのか。ゲーム

でも仕事をしている事はいいのかみたいな話だったけれど、今のところ強制労働さ

せられてはいないって判定だった気がするな。実態は違うのかもしれないけれど。


…。待てよ。私は、私で薬草を売ってお金を手にしたわけだけれど、もしかして、

このお金を現実のお金に換金したら、結構いい感じのお金になるということになる

んじゃないのか?  今は約55万スターあるけれど、これがもしも十分の一でお金

に換金できたとしたら、五万円…? まさかここまでにはならないと思うけれど、

換金レートがもっと高かったら凄いことになりそうだ。正にゲーム内で働いている

といっても過言ではないだろう。

 

じゃ、じゃあ薬草を大量に仕入れてそれを売りまくり、そしてそれを繰り返してい

けば…。お、大金持ちってことになるのか!? うわぁあ、なんだか怖くなってき

たな。これ実は恐ろしいことにならないか? VRが現実に干渉しているのならば、

ここで大量に稼いでしまえば、お金持ちとして狙われてしまうんじゃないだろうか。

…あり得る! 絶対にそれはあり得るよ!

 オンラインゲームでは、プレイヤーキラーって言って、プレイヤーを狙うプレイ

ヤーがいるけれど、そいつらが襲い掛かってきてやられたらお金が奪われてしまう

かもしれないとかあったら、どこかで付け狙われたりしそうだ。


ま、まずい。非常にまずい。ソレヲウレヤで薬草を一杯売ったことが周囲にばれた

りしたら、襲われかねない。あの副店長のウレヤとか言う人が、もしも周りに私が

お金を持っているなんて言いふらしたりしたら、私、狙われてしまうじゃないか。

うわぁ、なんてこった、想定外だった! 


「ねこますサン。どうしました? 先ほどから様子がおかしいように見えますが。」

「いやぁちょっと驚きの事実に気が付いてしまってね。」

実は既に命を狙われていますなんて言わないよね。あぁもう不安になってきた。あ

あでもまだそこまで目立ってはいないんじゃないかな。世界中のプレイヤーがいる

わけだし、初心者がたまたま、お金を手にしていたってだけに思われていそうだし。

悪い方向に考えすぎだったかもしれない。もう既に脳内では、悪そうな奴に、囲ま

れて、金を出しな! とか脅されているところを想像していたけれど、そこまで酷

いなら、もっと話題になっていそうだし。


 だけど、これからは魔者の大陸にいた時のようにいかないように認識しないとい

けないな 以前のように他のプレイヤーと全く関わらないなんてことはなくなるだ

ろうし。あまり有名にならずに、無名のプレイヤーとして活動できれば、そこまで

問題は起こらないと思うんだけれど、魔者の称号があるのと、やっぱり誰も、魔者

の大陸に行ってなさそうなので、何かのきっかけで、私の正体がばれてしまう恐れ

がある。

 そうなったら平穏なゲームプレイができなくなるはずなので、埋もれていくよう

にしていきたいな。ここまでがただの思い上がりや自意識過剰だったら良いんだけ

れど大体嫌な予感って当たるからなあ。


「ねこますサン、他に買うものは無いんですか?」

「ん? うーん。そうだねえ。とりあえずリュックが欲しかっただけだし、これで

ってあ。」


 お店の棚に、1個のショルダーバッグがあった。色が少し焦げ茶色っぽくなってお

り使い込んだのが分かる一品だ。これ、いいなあ。少し欲しくなってきた。だけど、

これを買うくらいなら新しい物を買って自分で使い込むほうがいいかな。革製品は

使い込めば自分専用の特色が出てくるし。でも、このゲーム内で使い込むのって、

どうすればいいのかは分からないな。それはまあ、リュックを受け取った時でいい

かな。

 

ああそうだ。後はエリーちゃんやブッチに何か欲しい物が無いか聞いておかないと

いけなかったなあ。ハーツのことを知っているかどうか分からないけれど。


マブダチからのメッセージ:でかいリュックいいね。俺も欲しい。けど、まだそこ

まで欲しいってわけじゃないから買わなくていいよ。ああ、出来れば、全身を隠せ

そうなコートが欲しい。俺もいつか街には入りたいし!


エリーからのメッセージ:私は赤系の小さいショルダーバッグが欲しいです。あっ

でもそれよりも欲しい物があります! Tシャツとサロペットです。今の恰好だと

どうしても目立ってしまうので。

 要は二人とも街の中に入りたいってことか。今の二人は露出狂のような感じに

なってしまうだろうし、入りにくいのは分かる。というか多分、門の前で、追い返

されてしまいそうだ。


私としても、やっぱり二人にも街の中に入って貰いたいと思っているので、服につ

いては別なお店で買わないといけないな。よし、じゃあハーツからは出て、次の場

所までいくとしよう。


「すみません。私達はこれで失礼します。どうもでしたー。」

「はいー! あ、これから制作に取り掛かりますが、こちらをお受け取り下さい。」

紙に鐘のマークが入った手紙を受け取った。

「それをアイテムインベントリに入れておくと、完成後にメッセージが届きますの

で、引き取りに来てください。」

「あ、分かりました! ありがとうございます!」

こんな便利な物があるのか、これはいいなあ。どこかで買えるのかな。

「これってどこかで買えるんですか?」

「ええ、色んな道具屋さんで、結構どこでも売ってますよ。」

メッセージで連絡できるから不要かなあと思ったけれど、何かに使えそうな気がす

るので見かけたら買っておこうかな。


「ありがとうございます。本当に初心者なのであまり詳しくなくて。」

「商品を買ってくださって感謝していますしこれくらい当然ですよ!」

あぁ、いい店員さんだな。これからもここで買い物したくなる。


「それでは、完成した時には、全速力で来たいと思いますのでよろしくお願いしま

す!」

「はい。楽しみに待っててください。」


というやり取りを終えて、お店から出た。現実と何一つ変わらないやり取りのせい

で、なんだかこれからカフェに行ったりしそうなノリになってしまいそうだ。今の

私は、休日を過ごしているかのような気分になっている。


「姉御、すごい楽しそうやな。そんなに嬉しかったんか?」

「かなり嬉しいよ! 欲しい物が買えたんだから! まだ手に入ったないけれど、

完成するまで待つのも楽しいからね。」

「我も、人間どもが罠にいつかかるかと楽しみに待っていたことがありますが、

その気持ちわかります。」


いや、それはその、ちょっと違うんじゃないかな。ま、まぁサンショウも水を差し

たかったわけじゃないから別にいいんだけどね。待つ楽しみがあるっていうのは分

かっているみたいだし。


「それじゃあ次は道具屋か、結構時間かかるなあ、その次にようやく錬金術士の所

を周るだけなのに。」

「魔者の試練を乗り越えてまだこれだけ動いているのですから、すごい事です。」

あ、そうだ、それだ。忘れていた。

「一応、これから魔者って言葉を極力使わないようにして欲しい。魔者の事が周囲

に知られると色々まずいから。」

「かしこまりました。」


 私が魔者というよりも、魔者について何か知っているということでも詮索されて

しまいかねないので、みんなに言っておかないといけなかった。魔者の存在自体が、

まだまだ知られていない情報だと思うので、それがゲーム内で話題になったとすれ

ば、色んなプレイヤーが情報を求めるのに必死になるだろう。

 些細な事でも何か知っていることがあれば、延々と質問攻めにされることを考慮

しておくと黙っておくのがいい。余計な事は言わない。


「では、今後は女帝様などと呼べばいいでしょうか?」

「ブッ。それはやめて。」

「ええやないか女帝様! 凄く強そうやで!」

嫌だ、そんな呼ばれ方をしたくない。何が女帝だ。そんな偉い立場じゃない。それ

にそんな言い方されていたら、周りから白い目で見られてしまうじゃないか。女帝

とか呼ばせてるとか、勘弁して欲しい。サンショウがイケメンなのに、そんな奴か

ら女帝様なんて呼ばせてるなんて、噂になるかもしれないじゃないか。魔者とはま

た違った意味で有名になりそうなので絶対に嫌だ。


「ねこますって呼んでくれればいいから。そういえばだいこんからは呼ばれたこと

が無かったかなあ。ねこますって。」

「姉御は姉御やで。」

「ねこますって呼んでみて。」

「ね、ね、ね、姉御。」

「なんで呼べないの!?」


ここは無理矢理にでも呼ばせないとだめだな。こういう風にきちんと名前が呼べな

いことが災いして、お互い知っている人物のはずなのに気づかず、すれ違いになって

しまうみたいな話を知っているし。姉御と呼ぶのは私といる時だけにしてもらうか。


「さぁ、ねこますと言ってみるんだ。」

「うう。なんか恥ずかしいから嫌やで。」

「駄目。私はこういうとき絶対に呼ばせる。」

「ぐぅ!? なんか威圧されておらんのに威圧感が。うう、ねこます…の姉御。」

「まぁ…許そう。」

名前を呼ぶと言うのは大事な事でもあるので、きっちり呼ばせるようにしたい。


「くろごまやねずおにも呼ばせないとなあ。」

「そうやな! ワイだけこんな辱めを受けるなんて悔しいしさせるべきやで。」

なんだ。辱めってと思ったけど無視することにした。


「よし、それじゃあ次の店に行くとしよう。」

こうして、道具屋で錬金術の材料になりそうなものを見に行くのだった。

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