第227話「商業区で物を売りたい」
またしてもすみません…。頑張って追記します…。
7/7追記
「やっとこれたよ。念願の商業区。」
やっと買い物ができる。そうだ買い物だよ。私だって女なのだから、買い物が好
きなんだ。そ、それにそうだよ。いつも般若レディの状態でジャージを着ていたし、
ジャージ以外も期待し買う! あのジャージもお気に入りだけれど、大分長い事着
ているからそろそろ別なものが欲しいし。
そもそもずっと同じ服とか、アニメキャラじゃないんだから嫌だよ。まるで洗っ
ていないんじゃないかってイメージが付くし。私としては、やっぱりもうちょっと
服のバリエーションが欲しい。ああでも、調合用のアイテムも欲しくなってくるな
あ。ああ、買い物だ、初めての買い物だよ。たかがそれだけの事なのに、このゲー
ムを始めてからここに来るまで大分長い事かかったので、それだけで感動だ。
「お店は調べていたんか?」
「うん。ハーツっていうお店に革製品のリュックがあるんだぁ。えへへ。」
「うぉっ。姉御マジで嬉しそうやな。」
そう、私は嬉しいんだ。なぜかって? そのハーツというお店は、現実でもある
からだ。値段が少し張るのだが、一つ一つが完全な手作りなのだ。そしてとても丈
夫で長持ちするので、私のお気に入りのブランドだ。
それが、この<アノニマスターオンライン>の中でも作られているというのを受
付のガイドブックを見て歓喜した。まさかここで同じものが見られると思わなかっ
たし。だからこそ、リュックに対するとてつもなく強い欲望が生まれてしまった。
「姉御がそこまで欲しかったっていうのはよほどすごいリュックなんやな。」
「ねこますサンがそこまでして欲しがるもの。興味があります。」
もう本当に最高のリュックだからなあ。きっとゲーム内でも最高のはずだ。現に
あのガイドブックにもとても素晴らしい物だと書いてあったし。
このゲームには、他にも私の知っている色んなブランドがあるかもしれない。そ
ういう所と提携してゲームを売りにしているというのもあるようだし、そういうの
があると、やっぱり嬉しくなってくる。
「母上。そまずはそこから行くのですね。」
「うん!」
商業区内にあまり大きくはないが店舗がある。その店舗内でも手作りをしている
というのが驚きだ。VRとはいえ、そういうものまで現実と同じように出来るなんて
すごいとしか言いようがない。
「あぁ。でもどうしよう。今持っているお金で足りるかな。先に薬草を売れるよう
な場所にいったほうがいいかな。」
ガイドブックには商品の紹介だけで、金額が掲載されていなかった。今の所持金は
9550スター。これ結構なお金だと思うけれど、これで買えなかったらとても悲しい
ことになってしまう。それは勘弁願いたいので、やっぱり先に物が売れるところに
行こうかな。
「心配なら先に売りに行った方がええんやないか? お店は逃げたりしないやろ?」
お店は逃げないけれど欲しい商品が誰かに買われてしまうかもしれない。とは言え
現実では注文してから手作りするというお店のはずなのと、VRならもう少し違うん
じゃないかと思ったので、先に売りにいけるお店の方に行くとするか。
「…薬草があぶく銭にしかならないかもしれないんだけどね。」
「な、なんやと!? あれだけ集めた薬草やで!?」
「簡単に集まるから売却しても安いかもしれないし、後は…。」
需要と供給か。薬草ってどのくらい需要があるのかも分かっていないし。という
か回復魔法が使えるのであれば、薬草なんてそう多くはいらないだろう。
だけど、私は別なメリットを見出している。そうだ、薬草は今のところアイテム
インベントリ内であればいくらでも持てるという事だ。これについては他のプレイ
ヤー達だって当然知っているはずだ。回復魔法を温存しておきたいというのがある
のならば、どこに行くのにも大量持ち込みしているプレイヤーも多いのではないだ
ろうか。
それならば、薬草はどこもかしこも売れまくっている可能性がある! と言うの
が結論だ。でもそう上手くいくとは思えない。それだけ売れているのなら逆に値段が
高騰し過ぎて買えなくなっているとか、あるいは草原のように大量に薬草が入手でき
る場所が珍しくもなんともなければ、誰も薬草なんて求めないだろう。
「あぁー。もうこのどっちにどう転ぶか分からない状態が緊張する。」
「大体悪い方に転ぶのが常やないか?」
「だよねー。はぁ。」
私の性格上、都合の悪いことを想定してしまう。かなり真剣になって集めた薬草が全
く売れずに他の火薬草とかも合わせて二束三文にしかならなかったら、そりゃあもう
大いに落ち込む。
「で、あっという間についてしまったと。」
頭上を見上げると、とても大きな倉庫のようなお店がそこにあった。ここが一番有名
な買い取り専門店ソレヲウレヤだ。ストレートな名前過ぎて、吹き出しそうになった
が、買い取り査定はきっちりしてくれるらしい。
とても広い入口というか現実にある買い取りのお店と同じような規模の大きさだ。一
体どれだけのものが売られているのだろうか。気になるなってきたが、それよりも私
の持ち物がどれだけ売れるのかが問題だ。よし、お店の中に入るぞ。
「いらっしゃいませー。」
またあからさまなタイプの人が出迎えてくれた。といっても他の客も沢山いるようだ。
私なんか売却初心者だし、なめられまいと思ったんだけれど、目の前のこの男性店員。
髪型がオールバックでツリ目、そしてスーツでいかにもな人物だった。嫌だなあ。な
んか裏がありそうというかやりてっぽいし、冷静沈着で、感情を露にせずに、人を人
とも思わずに、なんかそういう感じしかない。
「こ、こんにちは。売りたいものがあってきたんですけど。」
「ほう。それはそれは。」
やめろ! 眼鏡の花宛ての部分でくいっとあげるようなわざとらしい真似をやめろ!
現実でそんなことをされたことはただの一度もないぞ! やめないか!
「高く買い取って貰いたいと思ってな。それはもう高くな。」
だからといって睨むなサンショウ! そういう喧嘩を吹っ掛けに来たわけじゃないの
で本当にやめて欲しい。あぁ何顔を斜めに傾けて思いっきり睨んでいるんだこいつ!
「ふふっ。どうやら面白い物をお持ちのようですねえ。ではこちらへどうぞ。」
「あ、はい。」
どうしようか。実は大量に持っているのは薬草何ですよーなんて言ったら、無言の圧
力とか、いきなりため息をつかれて、冷やかしは困るんですよねえとか、そんな事を
言われるんじゃないだろうか。あるいは、ここから生かして帰すとでもみたいな展開
が待っているんじゃないのか。
「姉御。落ち着くやで。」
ボソボソとだいこんが耳元で囁いた。そうだ、そうだね。まずああいうのは見た目で
入っているだけかもしれないし。実は大して怖くはないのかも。
「では、こちらへどうぞ。」
大きく真っ黒いテーブルに案内された。向かいにはオールバックの店員がソファに腰
をかけた。そして私とサンショウもそれに合わせてソファに腰を掛けた。
「何を売っていただけるのでしょうか?」
カタギの顔じゃないこれは、何人かやっている。ああなんでこんな店員になったんだ
よ。ついてないなあもう。
「や、やく」
「ヤク・・・?」
違う、ああ言い淀んでしまったせいで別な物だと思われそうだ。なんか滅茶苦茶睨み
を聞かせてきている。違うんだ、違うんです。信じてくれ。
「や、薬草を売りに来たんです!」
い、言えた。さ、さぁどんな反応が来るというんだ!?