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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第222話「我慢比べ」

 ジョーさんから渡された一冊の本を、熟読する。様々な店が乗っている。これは

錬金術用の店というかこの国にある店を片っ端から記録した本のようだ。つまりこ

の中にある無数の店を自分で探せということだ。国全体を探すよりずっと楽だろう

けれど、こんな街の入り口にずっといるというのも良くない気がする。

 だけどそこは私。契約書とかは利用規約から何から何までじっくりしっかりと、

騙されていないかどうかを確認する。

 <アノニマスターオンライン>の利用規約についても、ぱぱっと見たけれど、実

は内容をしっかりと読んでおかしなところがあったら、プレイは辞めるつもりだっ

た。そういうところはきっちりしておかないと後で痛い目に遭うのが分かっている

し。

 

 さて、いつまでここに残っているんだというような感じで周りも私の事を見てき

ているのがよく分かる。少し見ればいいだろうという考えなのだろう。だけどそん

なことは関係ない。邪魔になろうが何しようが、こちらはお金を支払っているのだ。

わざわざここにもう一回来て読み直したらお金がかかるのなら、今、徹底的に読ん

でしまったほうがいい。どのみちこの場所に留まるなんてことがそうないんだし。

無駄は省く。


「姉御、周りがなんかじっと見てきているやで。ええんか?」

「いいの。そういうやらせだから。」

 というのが私の予想。100スターを支払ってもらった後は、ここにいても邪魔に

なるだけの存在なんだから、早く消えて欲しいと思うのが当然だ。だからそれっぽ

い人が近くにいて、こちらを眺めて圧力をかけるなんてやり方をしているんだろう。

それでとっとと出て行けば、簡単に儲かるんだからそれくらいやるだろうね。

 

 だけど私には関係ない。何分まで読めるなんてことは言われていないし、この場

にいる限りずっと読み続けられるならずっと読み続ける。たとえガタイのいい男が、

こちらを睨んだり、舌打ちしても、それでも辞めない。咳き込んだり、わざとらし

く指を鳴らしたりされても絶対に辞めない。

 結構時間が経ってきて、武器みたいなものをどかどか置いたりすることを繰り返

しするようになっても私は辞めない。

 

「サンショウも黙っててね。」

「はい。かしこまりました。」

 サンショウが手を出したら困るのでそこは厳しく言っておく。これであとはこの

お店の事が分かる本を手中して読めるな。いやぁ気分がいいなあ。必死になって音

をたてて威嚇してきている奴らが段々イライラし始めてくるのは気分がいい。私は

こういうところでは何がどうあろうと譲るつもりはないのだ。


「いやー。こういうところにずっといると周りの邪魔になるよな!」

「そうだな!やっぱり、周りの迷惑ってものを考えるよな!」

 なんてやり取りもしているようだが、まるっきり私には無意味だ。言いたいこと

があるならはっきり言う。受付のジョーさんなんかニコニコと笑顔のままだし、別

に何も問題がないというのが分かるし。


「姉御のメンタルやばすぎやで。」

「普通だよ。」

 いきなり攻撃を仕掛けてくるモンスターと違って、そういうことがない人間とい

うのが安心できてしまう。いきなり攻撃されるかもしれないというのは注意してい

るし、そこはサンショウもいるのでなんとかなるだろう。

 

 読書に励む私だが、内容について気になっていることが多い。その中でも、この

国の広さが私達が丘の上から確認した時より遥かに広いように感じるという事だ。

お店の数など、かなり多いし、私が確認した広さ程度じゃ、絶対に収まりきらない

ことになる。そこが不思議だ。

 まるで昔のRPGのように、フィールドマップ上では小さいサイズの街だけれど、

中に入ると広い街になるかのような感じだ。というかそんな感じになっているのか

もしれないな。


 という事はだ。私が思っているよりもこのナテハ王国は大きな国だったという事

になるな。更に、今後遠くから物を見た時は実際に見えているものとは違いがでる

かもしれないってことだ。この王国とは逆で、実際には小さく見える国もありそう

だ。目に見えるものが全てじゃないというのは面白い試みではあると思うが、小さ

いと思った洞窟があっても、中は恐ろしく広いなんて事もありえるのだろうから、

始めていくところは本当に慎重にならないといけないな。


「姉御、結構人数が増えとるで。」

 そんなものは関係ない。ここに何人いようが、筋肉質の奴らからどれだけ囲まれ

ても、こんな面白い本をそうやすやすと手放してたまるか。これだけ有益な情報が

あるんだし、沢山見ていかないと勿体ない。

 最悪、今回限りでの閲覧なんて事にもなり得る。もしかしたら、さっさとここか

ら去ればいつでも本を読ませてもらえるなんてイベントなどがあったのかもしれな

いが、そんなことは知らないし。

 

 あるいはこの街に初めて来たときだけ読めるなんてサービスの可能性すらある。

ゲームではそういう条件がよく出現してくるというのがあるので、ここで本を読

まなければいけないと思っている。

 最初だけというか1回だけしか出来ないイベントというのがある。これが実に厄

介で何がどうあろうと、もう二度と出来なくなってしまうので、慎重にやらないと

勿体ないことになってしまう。


「まだまだ終わりそうにないなあ。」

 なんて私の発言を聞いて、筋肉質の男たち数名は、私の周囲に立ち、大きな声

で喋り始めた。ああそういう展開なのか。なんだか嫌がらせするにしても、もう

少しやり方があるのではないかと思ってしまった。

「まだまだ、ですか?」

「うん。全部の情報を頭の中にいれるような勢いじゃないとね。」

なんて全部は私の頭の中には入れられない。ある程度ページをめくって言って、

そこから良さそうなものだけを選別していく。このお店とこのお店に行こうとか

そういうことを決める。


 誰かの弟子になるかもしれないというのも気がかりだった。、この国に5人いる

錬金術士のどの順番で尋ねるのがいいのか、と。錬金術にどういう系等があるのか

よく分からないけれど、自分に合ったものを学習したいなあ。


「よし!」

本を閉じて立ち上がった瞬間に、男たちが嬉しそうな笑いをしたので、そのまま即

座に座って、もう一回本を読む。すると男たちが今にも暴力を振るってきそうな顔

つきになった。こいつら、こういうひっかけに弱いんだなあ。もういっそ暴力でか

かってくるしかないんじゃないのかな。とはいえ、私も極力暴力は避けたいところ

だ。


「なあおい。分かっているんだろ?」

多分私に話しかけてきたのは、スキンヘッドに迷彩柄の服装をした男だった。こん

な奴からおいなんて言われても振り向く気はない。そんな偉そうに声をかけられて

も誰が振り向くものか。

「おい、お前だよお前。そろそろいいだろ?」

 私にはねこますという名前があるので、お前と言われても返事はしない。いや、

友達とかになら別にいいけど、こいつらは残念ながら友達でも何でもない。なんか

よくわからない屈強な男たちだ。


「なあ、何無視してんだ? コラ。分かってんのか?」

 分かってる分かってる。寂しがり屋の屈強な男なんだろう。私には全てお見通し

だ。暇を持て余しているせいで、誰にでも声をかけてしまうようになってしまった、

屈強な男という事なんだろう。

「おい。いい加減にしろよ、てめえ。ここでどんだけ読書していやがるんだよ。お

前ふざけんじゃねっぞ。邪魔なんだよ。消えろよ。」


 更に無視を決め込む。ここまでやっているのは、強制退去のイベントが発生する

のかといったところだ。同じことを繰り返していると、それを延々とさせないよう

にする仕組みがある。それが時間制限だったり、強敵だったり、こういう風に移動

しないと怒鳴りつけてくる輩というわけだ。

「おい、ふざけんな、今すぐここから出ていきやがれ。」


 私は、こいつらが暴力を振るってくるまで待機するつもりだ。それを境界線にし

ている。そこまでやられたとなると、問題になるからだ。こういうただの脅し程度

を繰り返すだけならどうとでもやってもらっていい。

 もしかしたら、街から出た後なら攻撃されるのかもしれないけれど、それもそれ

で一向に構わない。いやあ本当こういうの楽しいなあ。我慢比べでもやっているか

のようだ。昔もこういうことをオンラインゲームでやったなあと懐かしむ。


「おい、どうなってもいいっていうのか? あ? コラ。 どうする?」

「てめぇ。分かってんのか? 迷惑ばかりかけやがって。」

 こいつらも多分そういうので雇われているのかもしれない。高圧的な態度で、会

社を辞めさせようとするような感じだろう。でも、ここで反応してはいけない。反

応したら、自分たちは何もしていないなんて言い訳をするに決まっている

 

「威勢だけいい馬鹿やないんかこいつら?」

ぼそぼそと喋るだいこん。その通りだと思う。さっさとかかってくればいいのにな

あ。こっちは正当防衛ってことが成立するから、みんなが見ている前でそういう行

動を起こしてもらいたい。

 そういえば人間状態でスキルって使えないと思ったけれど、実際どうなのかここ

で試してみてもいいのかなあ。ちゃんと試してみなかったけれど、素材としてはね

こますを使っているし、できてもおかしくないと思う。というわけで、そこの屈強

な男に浮遊でも使ってみるかな。って思ったけれど、ここでスキルを使ったらバれ

てしまうかもしれないな。


 スキルの検知器みたいなものがあるかもしれないし、それに引っかかったら罰を

与えられるなんてありそうなのでこれまたスキルを使うのも辞めることにした。私

が知らないだけで、色んなアイテムがあるのかもしれないのだから、そういう物に

対しては警戒を強めないといけない。

 

「お前、ふざけんじゃねえぞ。無視ばかりしやがって。」

「そうだ、お前もお前だ。こいつにしっかり常識を教えてやれ。」

サンショウには、私がお前なんて言われることはないので、無視するようにと伝え

たので、反撃する事は無いだろう。が、どこか苛ついた表情をしているようにも見

える。怒りが爆発してこいつら全員をぶっ倒すなんて事にはならないで欲しい。


「ああもう焦れってえな! いいだろ?」

「そうだ。こんなんもう営業妨害みてえなもんだろ?」

 ジョーさんの方を見る屈強な男二人だったが、ジョーさんはニコニコしているだ

けだった。あ、あれは違うな、余計な事言うなって顔でしかもこっちに向かって言

うなってことだな。ジョーさんも商売人だからこういうことをやるんだろうな。で

も私はそんな商売人の気持ちなんて一切気にしていない。

 

 私は、自分がやりたいようにゲームプレイをするだけだ。こんなところで少し出

会っただけの受付のジョーさんの事なんて正直どうでもいいし。目的は錬金術を学

習することだしね。

 

「ふざけんじゃねー! もう我慢できねえ! いい加減無視すんじゃねえ!」

痺れを切らした。屈強そうな男が、私に向かって拳を振り上げた。サンショウには

私を庇うなと言っておいたので、ここは庇わなかった。私は、屈強な男が振り上げ

た拳を肩にもろにくらい、この受付のカウンターのあたりまで吹っ飛んだ。


よし!計画通りだ!

風来のシ○ンなんかで風が吹くとかそういうループ防止がありますね。

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