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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第219話「行列の茶番」

「人間化」

体から光が放たれた後、私はか弱そうな女の子の姿になった。服装はワンピースと

頭に大きなリボンがあるようだけれど、あれ前の時こんなリボンあったっけ。とい

うかいかにも作られたっぽいキャラクターなのは何故なんだろう。特に意味はない

のかもしれないけれど気になるな。

 こうして人間化したけれど、外壁の門近くに結構人が多くいたのを確認したので

これ以上近づいたらまずいことになると判断したから。般若レディの見た目として

の問題は、仮面だけだったらなんとかなったと思うけれど、装備面が色々と目立っ

てしまうんだよね。

 尻尾やら角やら羽やら、基本外したくはないものばかりだし、むしろ外すとペナ

ルティがあるので外したくない。人間化すると、それらの装備は綺麗さっぱり装備

から消えているけれど、元の姿に戻ると、装備も元に戻るので、単に見かけ上の問

題なだけなんだろうな。


「ここまで来たけれど、あの門の中に入るのに、お金が必要とか言われたらどうし

ようかなあ。」

それ以前に、人間じゃないのでここには入れないと言われたり、更に言えば、私や

サンショウの正体がばれて、突然襲われたりすることもあり得る。そうなった時は

もう街の中に入るのは諦めるしかなくなりそうだ。うう、そんなことになったら嫌

だなあ。


「お金ですか。確か薬草と交換すると言ってませんでした?」

「そうなんだけれど、その交換する前に既にお金が必要かもしれないんだよ。お金

じゃないとここは通さないと言われてしまったらもう、どうしようもない。」

そこまではないと思っているんだけどね。もしそういう通行料を毎回支払う必要が

出て来たら、お金がなければずっとこの外壁の周囲にいなきゃいけなくなるだろう

し。そうなったら、この外壁の周りに野宿するプレイヤーも増えそうだと思ったの

だけれど、そういうプレイヤーがいる気配は無かったので、多分入るのは無料なん

じゃないかなあ。あくまで多分。


「姉御。お金がなくて入れなかった場合はどうするんや?」

「どうもこうも、お金を手に入れる手段を聞くだけだよ。」

 城下町に入るためにお金が必要なら、その金を稼ぐなどの方法なんかを教えても

らわないといけない。。NPCがいるんだったら、NPCにどうしたらいいのかを聞くな

んてやり方もよさそうだな。

「そんなことよりも、あの行列を見てよ。すごい数の人だかりだよ。」

比較的門の近くに移動したから分かるようになったけれど、数多いな。すごい人ご

みだ。出来るなら近寄りたくないけれど、ここまで来たのだから並ばないとな。

「ああいう場所で話しかけられたら嫌だなあ。面倒くさそうだなあ。」

 この手のゲームでは、何かどうでもいいことを話してくる人がいたりする。今の

私の恰好が、多少見てくれがいいようなので、声をかけられたら嫌だなあと思って

しまう。見てくれだけで話しかけられるというのは正直腹が立つし。

「ワイはいつもの姉御の姿の方が好きやで。むしろあっちの方になれとるから、今

の姿が不気味に思えてまうで。」


 私もそう思うんだけれど、今はこれで行くしかない。というので突撃。ここから

先はむやみに私に声をかけないようにとだいこんには伝えておいた。

 サンショウはイケメンがローブをかぶっているだけに見えるので、別に色々話し

てもらっても構わないと言うと、だいこんが狡いとごねた。でもスルーした。


 こうして、私達はなんとなく流れで門の前に並ぶ行列に入り込んだ。当然の事だ

が、列は少しずつ前に進んでいく。もう少しで門の前だと思うと、少し緊張してき

た自分がいる。人間の街の中に入るのが目標だっただけに、それがようやく叶うこ

とに喜びも感じている。でもまだゴールじゃない。ゴールは、ここできっちりと錬

金術士の素材やら何やらを集めて真っ当な錬金術士になる事だし。


「ま…。ねこますサマ。何やら視線を感じるのですが。」

「気のせいだよ。」

ここから先、サンショウには私の事をちゃんとねこますと呼ばせることにした。た

まに自分でも自分の名前を忘れそうになるけれど、<アノニマスターオンライン>

での私の名前はねこますだ。ここらできっちり自覚しておかないとな。

「しかし、やはり何か見られているような。」

「うん。気のせいだから。」


 気のせいじゃないのは分かっている。サンショウがイケメンキャラだからだろう。

でもそういうキャラクターとか自分で作れたりするんじゃなかったのだろうか。私

は適当にこういう感じでってことで般若レディの姿になったけれど、ある程度自分

が願った姿通りに行くんじゃなかったのかな。

「ねこますサマも見られているような気がします。」

「・・・。」

これ以上話しかけないでくれ。仲良くしているだけで何か言われそうなのは私も分

かっているんだから。周りが何も聞いてこないのは、私が小声で喋っているのとず

っと黙っているからだろう。話しかけないでくださいという雰囲気を出している。

その雰囲気が緩んだり、空気を読まない奴がいたら、そこから一気に話しかけられ

てしまうかもしれない。そうならないためにも、会話を全然しないプレイヤーとい

うことにでもしておきたい。


「ヘイ! そこのカノジョ!」

そう思っていた私に対して、無謀にも声をかけてきた奴がいた。モヒカンにサング

ラス、アロハシャツに短パンのなんだか濃い男のプレイヤーだった。うう、なんか

色物っぽい気がするんだけれど、声かけてこないでくれ。なんだよヘイって。今時

そんな風に誘うなんて古いんじゃないのか。あっ、でも多分これ私じゃないよね。

絶対そうだよね。


「おいおい! 聞こえているんだろう? 君だよ君。初心者かい? だったら俺が

色々と教えてやるけれどどうする?」

こういういかにも社交性が高そうに見える奴ほど、実はそうでもなかったりする。

が、こいつの喋り方がわざとというか、何かベテランプレイヤーをイメージさせる

ところがあったので、そこが少し気になった。うーん。こういう奴を無視した後で

影響がでてくるのは嫌だしなあ。そうだ。


「私、友達と遊んでいるので、大丈夫です。」

というわけで、サンショウを軽く指さしておくことにした。これで友達と遊んでい

るんだから邪魔しないでさっさと帰ってくれということにできそうだ。まだ食い下

がるような展開にするつもりじゃないよね。まさかね。


「おーい。折角俺が誘っているんだからよ~。ちょっと遊んでいこうぜ。」

このご時世、まだこういう奴がいるのか! 私は驚いてしまった。いかにもちょっ

と悪ぶればかっこよくなれるということを信じていそうなタイプだ。こんなことを

言えるなんて、私にはできない! むしろ今、あまりにわざとらしい話の進め方だ

ったので、笑いを堪えている。くそう。そんなの狡いぞ。


「君! 止めないか!!」

後ろの方から叫び声が聞こえてきた。え、何が始まろうとしているんだ。これは、

ひょっとしてそういうコントというか、そういう演劇ってことなんだろうか?

「こちらの可愛いお嬢さんが困っているだろ。止めないか!」

うわぁ赤い髪をして白い鎧を纏っている騎士様だ。まじかっけぇ。なんか私を守

ろうとしてくれているみたいだけれど、本気でそう思っているなら問答無用でそ

いつをぶった切るのが正義じゃないのかな。あっ、私言いすぎたかな。


「なんだお前。俺はこの子に用があるんだよ。引っ込んでろよ。」

「嫌がっているじゃないか!」

 周囲のからどよめきの声が起こった。だめだ。これ、みんなも気づいていない

のかな。いや、私は気が付いているよ。だってさ、今やっているのってこれさ、

どう考えてもマッチポンプだよね。

 だ、だって、こんなタイミングよく現れるはずがないじゃん。いや、もしかし

たら本当にそういう展開なのかもしれないって思ったけれど、そんな口先だけで

やりとりしないで、さっさと戦いあって欲しい。それをしないってことは多分そ

ういうことなんだろうね。


「おいおい、俺とやろうってのかお前。」

「ああ、困っている人を助けるのが俺の役目だ。さぁ正々堂々かかってこい。」

 悪そうな奴に正々堂々も何もないと思うんだけれど、面白いからそのまま放置

しておこう。こんなのお笑いレベルだろ。大根役者というかなんというか、この

二人明らかに仲間か何かの関係だろうに。

 そして私はよしんばこれが本当に大真面目でやっていたことだったとしても、

全然なんとも思わない。いや私は何もしていないし、何の関わり合いも持ちたく

ないからそっとしておいて欲しいって思う。そこから話が膨らむ事は無い。


「フン。なかなかいい度胸しているじゃねえか。いいだろう。ここはお前に免じ

て引いてやる。が、次あった時は容赦しねえぜ。」

私なら次などない。今ここで斬るって言うね。みすみす逃すはずがないだろう。

あーあ。一瞬でもこのモヒカンプレイヤーがベテランのプレイヤーだとか思って

しまった私が馬鹿だったんだな。こういう格好している人って結構そういうのが

多かったんだけれど、これはないな。これすら更に演技していたなんていったら

面白かったんだけどなあ。


「そうか。ならば俺もこれ以上は追及しない。」

「待て。そこの二人。今からどちらかが倒れるまで戦え。」

…サンショウ、さん?

「あ? なんだお前。」

「む。君は彼女の仲間かい?」

「今、ここで決着をつけろ。ねこます様に余計な面倒事を押し付けてくれたのだ。

今ここで解決しろ。決着をつけねば、我が相手になってやる。」

うぉおおおおい!? そんなこと言わなくていいからサンショウ! やめてっ!

私のためにそこまで争わないで頼む! そして様とか言わないで! 周りが私を

さらにじろじろ見てくるからやめて!


「何言ってやがる。こっちはもう解決してんだよ。」

「そうだ。無益な戦いは好まない。」

あっ、こら。そんな火に油を注ぐような事を言うんじゃない。あぁっ。なんかサ

ンショウがキれてるっぽい。うわぁあ。


「南無阿弥陀仏!!!!」

や、ら、か、したぁぁああああ!? いつもよりもひときわ紫色に輝いた大きな球

体がこの二人に向かって飛んでいき、そして。衝突した。

「ぐえぇえええ!? なっ、なんだこれ!?」

「うううっ!? こ、これは一体!?」

オチまでしっかりつけやがってもう! なんなんだよお前らは! 私は平穏にこの

街の中に入りたかったのに、余計な事をしくさってさぁ。やめてくれ! 周りに迷

惑をかけるような遊びをするなよ! サンショウもやめてくれ。


「姉御。これもうアカンで。」

だいこんの声が聞こえてくるが、そんなのとっくに分かっている。でもどうしよう

もないじゃないか。うう。


「どうする? ちゃんと戦うのか? それともこのまま死ぬか?」

「なっ!? わか、分かった! だからやめろ!」

「そうだ、今すぐ戦う! だからやめたまえ!」

そう二人が言うと、サンショウは重力魔法を解除した。


「よし。では心置きなく死ぬまで決闘できるな。お互い覚悟して戦え。」

「ヒエッ。サンショウ。容赦なさすぎやで。どうやら逆鱗に触れたようやで。」

私が難癖付けられたことに怒ってくれるのは嬉しいがやりすぎだよ。絶対にこれ、

やりすぎだよ。この二人、どうなるんだろうなこれ…。

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