第218話「どの門にしようか」
帰宅が遅くなり書く時間が確保できなかったので短いです。
高い外壁に囲まれている巨大な城下町。中心から少しずれた位置に城が見える。
近辺は、森林と草原、そして大きな川が流れており、立地条件としてはかなりよさ
そうだ。東の離れた位置に農場のようなものが見えるが、そこで作物を育てている
のか。いかにも作られた感ある場所って気がするけれど、そこはあまりつっこまな
いようにしよう。今、私たちは丘の上にいる。ここも、なんだかそれらしい場所で、
ところどころに木々や草が生い茂っている。北の方には大きな山があるが、何かが
いることは間違いないな。…ありきたりなRPGの世界観だ。そんな場所に般若レデ
ィの私ねこますと、白蛇のだいこん、リッチのサンショウが立っていた。
「あの場所に人間が大量にいるのですね。」
「そうだね。かなりの数の人間がいるから、面白いことがあると思うんだけれど、
その反対に腹が立つこともあるんだろうね。」
今までオンラインゲームをプレイしてきた経験ってだけなんだけどね。変なプレ
イヤーに絡まれたりすることもあったので、人口密度が高い場所は特に注意しない
といけない。
後、意外と過疎地なんかが落ち着いた大人のプレイヤーがいたりするので、そう
いう場所を見つけられたらいいなあ。いつも大人数でいると疲れるだろうし。
「姉御、ワイははぐれないようにしっかり掴まっておくで。もしはぐれたら最悪ワ
イ巨大化して姉御の助けを呼ぶで。」
「あっ! 仲間とはぐれてしまうイベントは定番だから良く起きるな。これはもう
絶対だいこんとはぐれてしまうってことだね。」
「そんなん嫌やで! はぐれたら人間どもに酷い目に遭わされるやで!」
「見世物小屋に売られて一生働かされるだいこんになってしまうかも。」
「最悪過ぎるやで。そうならんためにも姉御にしっかりつかまっておくで!」
首周りのあたりに隠れているから大丈夫だと思うんだけれど、そうであっても誰
かから狙われていたら、どうしようもないからなあ。白蛇が珍しいのかどうかなん
ていうのは分からないけれど、だいこんの姿を誰かに見せてしまったら、その瞬間
からずっと付け狙われてしまうかもしれないので注意しないと。
「やはり人間というのはろくでもないのではないですか?」
「まぁね。ろくでなしが9割、いい奴が1割ってところかじゃないかな。」
厳しめの評価にはしておく。確かエリーちゃんが<アノニマスターオンライン>の
お金が現実で使えるようになるなんて言ってたし、そういうのを狙ってプレイヤー
がいるのなら、何か悪事に身を染めていてもおかしくはない。お金が絡んでくると
人は欲望に取りつかれてしまうものだし。私にしたって、ちょっと目が眩んでしま
いそうになる。
「で、姉御は人間に変身しなくてええんか?」
「どのタイミングでしようかなあって、悩んでいる。」
もう少し近づいてからと思っているけれど、それだと誰かに見られてしまうかもし
れないし、かといって、最初から変身していくと、かよわい人間の女一人とイケメ
ンの男の組み合わせなので色々面倒な事が起こりそうだし。嫌な予感ばかりしてし
まう。
「ここでなってもええやん。」
「かよわい女になったら、何かあった時叩き潰せないから嫌なんだよね。」
今悩んでいるのは、そういう事が起きないように、どういうルートからあの城下町
に入るのがいいのかなってところだった。この丘から見るに、どの方角からでも入
れるみたいなので、面倒な事がなさそうな方角から入っていきたい。大体よくいる
のが、やたら偉そうに話しかけてくる自称凄腕の剣士みたいなプレイヤーだ。そん
な奴とは、関わり合いを持たないようにしたいので目立たないよういかないとな。
「あともうちょっとだけ近づいてくみるか。城壁周辺を歩いて、どんな場所なのか
掴むのもよさそうだし。
人間化していても、いきなり見破られたりされるころはありそうだ。そこでモン
スターがなんでこの街に! みたいなノリが始まったりは、しないか。
「門の前で往来している人が多いなあ。」
「去る者は追わず来る者は拒まずといったものなんでしょう。」
やっぱりここって、このゲームの中心となる国かどこかってことになるのか。結構
重要な舞台になる国だったら緊張するな。果たしてここは、首都みたいなものなの
か、それとも田舎みたいなものになるのか。こればっかりはもう中に入ってみない
ことには分からないままだろうな。
「あの木のあたりまで歩こうか。あのあたりからなら。門番とかの様子もそれとな
く見えそうだし。何かまずそうだったら、他の方角からの侵入を試してみればいい
し。」
東西南北に1つずつ合計4つの門があるのが見えたが、方角ごとの特徴があるかも
しれないし。入った先がいきなり柄の悪そうな奴らの多い場所だったりしたら、た
まったもんじゃないしね。
「よし、それじゃああそこまでレッツゴー!」
丘を下っていき、少し大きな木の前まで行くのであった。