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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
217/473

第217話「外に出た。」

「さぁさぁどうぞブッチ。ここまで頑張ったのはブッチだし、ここの扉はぜひとも

ブッチが開けてくれ!」

 というわけで、すっかり煙が消えた部屋にある、黒く大きな鉄扉の前に立つ私達

なのであった。

「…ねっこちゃん何か企んでない?」

「ない。」

「本当に? この扉開けたらなんかモンスターとか出そうだし、俺に任せておけば

いいやとか思ってたりしない?」

「しない。」

「怪しいなあ。じゃあねっこちゃん、ここはねっこちゃんに譲るよ。こういうのは

やっぱりリーダーであるねっこちゃんがやるべきだと思うんだよね。」


「開けていいならマジでやるけどいい!?」

「やっぱり俺が開けるわ! この反応は素だったか! くそっ! 騙された!」

 やれやれ、別に誰が扉を開けようが大して気にしていなかったんだけれど、こう

いうので譲ったりすることがなかったせいか、変な疑惑を与えてしまったようだ。

私としても一番乗りなんて言うのはやってみたいとは思ったが、ボスを倒したのは

ほぼブッチのおかげなんだし、ここは素直に譲りたかった。


「ではブッチさんお願いします!」

「よし、さっさと開けてしまおう。おっ開いた。よいしょっと。」

 あ、あっさり開けた。ここはもう少しため込んでもいいタイミングだと思ったん

だけれど、まぁいっか。

 ブッチは、開錠した扉をゆっくりと開けていく。鉄製だから重いんだろうな。ゆ

っくりと光が差し込んでくる。そ、外なのか、ここから出た後は、どこに出るんだ

ろうか。そんな期待に胸を寄せてしまう。ようやく、ようやくかもしれない。人間

たちのいる、街なんかが見えたりするんだろうか。


「え。お。おおお!?」

扉が開き、外に出る私達。辺りは草原が広がっているのだが、この場所は比較的高

い場所だったようだ。そう、ここから様々な物が見渡せたが、この扉から遥か遠く

に見えたものは、城とその城下町だった。いかにも西洋ファンタジー風味な感じに

見える。

「お、お、大当たりだあああああああああああああああああ!」

や、やった。<アノニマスターオンライン>をプレイして早4か月。ようやく、人

間達との関わり合いが始まっていくことになる。な、長かったなあ。どうしてこん

なに時間がかかってしまったのかは問題だけれど、ようやくこの時が訪れた。


「それで、こっちは一体どんな場所…え。」

黒い。真っ黒い。私達が出てきた場所の建物を見上げてみると、真っ黒だった。そ

うだ。真っ黒い城だった。いかにもモンスターがでてきそうなそんな場所だった。

これ、ひょっとするとここがモンスターの巣窟だったのだろうか。この城の城主に

は会えていないけれど、もしかしてモンスター系の奴がいたってことになるのかな。

「これ、城か? しろなのにここにあるのはくろだった、なんちゃって。」

「ブッチは華麗にスルーするとして、私はあの城下町の方に行ってみたい。」


「俺は、モンスター扱いされて行けないとかなりそうだけど、何か方法ないかな。」

身長2メートルを超えてるのと顔がサイコロなのがモンスター扱いされて城下町の中

に入れなくなる気がしている。あるいは、モンスターと判定されてしまったらあの

中はずっと入れないままになってしまうかもしれない。それは嫌だなあ。

「私の人間化のスキルがもっと上手く使えるようになれば、みんなにも使えるよう

になるかもしれないんだけれど。」

とはいえ、本当にそうなるのかは分からない。スキルを使う感覚から覚えていかな

いといけないのがこのゲームの辛い所で、威圧だって、まだ完全に操作ができるよ

うになっているわけじゃないし。


「マジか! ねっこちゃん死ぬ気で頑張れば何でもできる! ってどこかの会社の

社長が言ってたし絶対できるよ!」

「それは過労死を出したところの社長の世迷いごとですよね…。」

 エリーちゃんがツッコミをいれてくれた。まぁ死ぬ気とまでは言わないけれど、

みんなを連れて行きたいという気持ちは当然あるので、特訓してなんとかするつ

もりではある。


「私もやれる限りはやるけど、その前に私だけでもあの城下町に行ってみようと

思っているよ。錬金術の事を知りたいと思っているし。他にも魔者の事とか、も

うこのゲーム4か月やっているのに右も左も分からないことだらけだからね。」

 ゲーム外で、ゲームの情報検索はしたくないという主義のせいでこんな風にな

っているのだけれど、他のプレイヤーと交流が深めるというのであれば、そこか

ら情報収集が出来るようになる。と言っても、そのプレイヤー達が、どこかの情

報サイトから知っただけっていうことにもなりそうだけど。そこはまあいいや。


「大丈夫? いきなり肩ぶつかってきた相手がスリでお金を盗ま、れるようなお

金がなかったか。」

確かにお金がないので薬草とか火薬草を売ればお金になるかもしれないので、そ

れを資金源にするしかないな。

「スられたらスり返します、と言いたいところですけど、あたしもこの服以外を

手に入れればなんとか入れそうな気がします。」

「え、別にそれでもよくない?」

「流石に沢山の人目に付く場所ではちょっと…。」

まぁ胸元にハート形の穴が開いている服だからなあ。あとやっぱり翼が生えてい

るしで、色々難癖付けられそうな感じがするな。


「ええと、そうなると城下町に入れそうなのは、私とサンショウとだいこんかな。」

「エッ!? ねこますサマ。ワタシハダメナノデスカ!?」

「たけのこはちょっとサイズが大きくなってしまっているので、人間達が驚いて

何かしてくるかもしれないからね。そうならないためだよ。」

「やったやで!! ついにわんころを出し抜いてやったでえええ!」

「くっ。」

「だいこんは、私の首元あたりで隠れているようにね。」


だいこんは、小さくなれるので十分だろう。サンショウがイケメンなので声を沢山

かけられたりしないかだけが心配だ。いや、最近はこういうゲームでもいきなり声

がけしてくるとかはないだろう。みんな消極的になっていると思うし。


「ねっこちゃんが人間化したら、おっとお嬢ちゃん。俺たちと遊ばない!? みた

いな連中から声をかけられると思うから、くれぐれも相手をぶっ倒さないように相

手にお情けをかけて接してね。」

「あっ。ねこますさん、そういう煽りに対しては沸点引くそうなので、気を付けて

くださいね!」


「ねずおは来てもらおうかな。どうしようかなあ。」

「え!? 僕が行くチウ!? ちょっと怖いチウ。」

「せ、拙者はだめでござるか?」

あっ久々の語尾がござるだ。くろごまも連れていくことはできないなあ。残念。

「連れていけないのは、たけのこ、ブッチ、エリーちゃん、くろごま、イッピキメ、

ニヒキメだな。いやまぁ、いきなりあの城下町ぶっ潰そうぜ! みたいなノリで行

くならいいけど。」

「あの城下町の人間どもに恐怖を苦しみを与えてぶっ潰そうぜ!」

「はいはい。お土産は楽しみに待っててね。」

「おうよ!」


私も随分とブッチの取り扱いになれてきたものだ。あ、説明し忘れたけれど、ねず

おはマスコットキャラクター的な感じがあるので、一応連れて行きたいってだけな

んだけれど、それはそれで目立っちゃうかなあ。

「目立つと思いますよ。ねずみなのにぬいぐるみっぽいですし。」

そう言われるとちょっとなあ。うーん。しょうがない、ねずおも諦めるか。


「魔者様、人間達は狡猾ですからお気を付けください。」

「サンショウがいるなら大丈夫だって! 安心させてね!」

「はっ! お任せあれ!」

サンショウがやる気になっているようだ。あと何かやっておくべきこととかあるか

なあ。ああ、みんなをここで待機だけさせるのもなってことか。


「また別れ話をしなきゃいけないね、ねっこちゃん。」

「うん。ブッチ達はここで武者修行する? それなら私の薬草とか分けておくけど

どうする?」

「いや、もう前に結構貰っているから大丈夫だよ。」

「あたしも、数千個は薬草ありますし…。」

あれ、そんなに渡していたっけ。かなり持っていたんだなあ。


「この黒い城から、樹海まで転移できたってことは一体どんな謎があるんだろうね。」

見た感じからして、悪そうな奴の城って感じがするけれど、実際そうなのかは分から

ない。それに元々私達としては神殿なんて呼んでいたので、元々は良い人がいたとか

ありえそうだ。


「じゃあ俺らはしばらくこの城に篭るとするか。何かあったら教えて。」

「あ、このあたり周辺うろついててもいいよ?」

「マスター。極力しないようにしたほうがいいのですよ。我々がこの周辺区域の人間

たちに見つかったらそれこそ問題が多くなりそうですし。」


それもそうか、それじゃあ他にやっておきたいこととかはないかな。

「ねっこちゃんが、俺らの事を忘れてあの城下町で楽しみまくってしまわないかだけ

が不安だよ。単身赴任を見送るような気分だよ。」

 うわぁ、そういう生々しい表現はやめてくれよこいつ。私はそういうことないから

大丈夫だっての。新しく楽しい場ができたとしても、それまでの経緯とか色々あるん

だから、何でもかんでも新しいものは求めない。

「姉御は流されやすいから心配になるんやな!」

「そんなことはあるかもしれないが、こういう仲間内で不義理な事はしないのが私こ

と般若レディなんだからな!」


というかみんな私が色んな人と仲良くなれると思い込んでいるのがおかしい。私はゲ

ーム大好きな奴なので、話したら色々と引かれてしまうようなこともありそうだし、

仲良くなれそうな人もそう多くはないだろう。


「ねこますドノハ、シャコウテキダトオモウ。」

「ソウダナ。」

こちらをじっと見てくるリザードマン達。おいおい。

「まぁねっこちゃんは変わった人となら友達になれるだろうから、あの街で仲良くな

れた友達がいるなら俺たちとも仲良くなれるはずだから心配無用だな。ははは。」

 変わったプレイヤーなんているのかどうかは分からないけれど、色々教えてくれそ

うな情報屋的な人とは仲良くやっておきたいな。


「さて、と。それじゃあねっこちゃん。ここでぐだついてないでさっさと行くんだ。

そして情報収集をしまくってあの城下町を滅ぼそう!」

「ああ、滅ぼそう! なんていうわけないだろ! もうさっさと行ってくるよ!」

「お土産は忘れないでね。」

「分かった分かった。それじゃあみんな行ってくる!」


こうして私、だいこん、サンショウは城下町に潜入するのであった。

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