表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
209/473

第209話「ブッチが暴れている」

 ブッチが楽しそうに暴れている。多分、前回蟻を倒したのが私だったので、鬱憤

が溜まっていたんだと思われる。これはもう、次に強敵が出て来たら完全にブッチ

へ一任してあげたほうがいいな。そうしよう。

 それにしても、プレイヤーってみんな同じような装備ばかりだな。プレイヤーだ

と断定できているのは、反応がそれっぽいからっていうのがあるけれど、こういう

場所には多分NPCがいたりはしないだろうなという勝手な想像だ。


 私が前にプレイしていたオンラインゲームでも、大体みんな似たり寄ったりな装

備だったのだけれど、それが手に入りやすくかつ、そこそこ性能のいいものだと、

やはりみんながみんなその装備だけするようになっていく。こういう部分がオンラ

インゲームをプレイしていてあまり好きになれなかったところなんだけれど、<ア

ノニマスターオンライン>でもそれは同じだったのかな。

 私としては色んなプレイヤーが色んな装備をしたり色んな戦い方ができるような

のがいいと思うんだけれど、そうもいかないもんなんだろうね。

 

 ブッチと比較すると、やはり特徴がないというプレイヤーに見えてしまうな。む

しろあのサイコロプスとかいうのが特殊という扱いになるのかな。まあそれを言っ

たら私の般若レディって言うのも似たり寄ったりな気がするけれど。

 うーん。今更だけれどああいう感じのプレイヤー達とは仲良くなれそうにない。

単純に私とは合わないと言うのがなんとなくで分かってしまう。


「ブッチー! 一人でいいー!?」

「一人でいい! ここは俺に任せて先に行くんだ!」

「ブッチさん! それ言っちゃダメな言葉シリーズですよ!」

「大丈夫。お、俺この戦いが終わったら真面目に…。」

「分かった分かった! じゃあみんな後はブッチに任せていこう!」

「えっ!? そんな! 分かったよもう! ここにいる連中をけちょんけちょんに

してやるぜ!」


 なんか一人でノリになっているみたいだし、ここは好き勝手にやらせておくこと

にした。手助けは不要そうだし、むしろ手を出したら不機嫌になりそうなので、こ

こは素直にお任せしよう。…なんて上手くはいかないだろうな。この先も多分、別

なプレイヤー達が待ち構えているに決まっている。


「なめるなよ! モンスターの癖に!」

「なめるなよ! モンスターの癖に!」


 言い返したのはブッチだ。ああ、このうざい感じプレイヤーもイライラしている

のがよく分かる。よし、ここは無視して先に進んでしまおう。


「みんな、ここはブッチに任せてさっさと進むよ!」

「ブッチ殿なら、絶対に負けませんから安心ですな。」

 サンショウが不気味に笑っている。プレイヤー達に同情するかのように笑ってい

る。なんか清々しいほど笑っているけれど、自分が苦しめられた時の事でも思い返

しているのかもしれないな。


 私達が来たところの反対側に出入り口があったので、そこから突き進むことにし

た。あともう二か所あるけれど、それはこの道が行き止まりだった時に考えること

に決める。とりあえず、メンバー分け的なことをしておくとするか。エリーちゃん

とサンショウとねずおと…ああ、ねずお、最近出番がほとんどないせいか、ちょっ

としょんぼりしているな。


「ねずお、生きてるかー!!」

「い、生きてるチウ! 最近みんなばっかり活躍してボクの影が薄いチウ!」

「そこのリザードマン二匹もそろそろ、濃いキャラクターにならないと、いずれは

消えゆく運命だからな!」

「ムグッ。」

「イヤ、ワレワレハソモソモメダッテナイノデ。」


 ももりーずVは、出来るだけメンバー全員を活躍させる方向で行きたいんだけれど、

自分の存在はなくてもいいんじゃないのかなんて思わせてしまっている気がしたの

で、声掛けをしてみた。

 思い返せば、私もかつては沢山のゲームフレンドがいたんだけれど、徐々に疎遠

になっていった人とは、最終的に話しづらくなってしまい、居心地の悪さを感じた

ものだ。なので、その時のようにならないように、極力メンバー全員に声掛けと活

躍させるとするか。


「メンバー分け! 私とイッピキメとニヒキメとねずお! エリーちゃんと、たけ

のこと、くろごまと、サンショウ!」

「姉御。ワイが抜けてるんやが」

「ツッコミ待ちだったんだよ。エリーちゃんの方ね。」

「絶対嘘やで!」

というわけでこんな感じで分けることにした。いつも一緒にいるメンバーじゃない

というのがいい感じだ。


「だ、第一ご主人。ありがとうチウ!」

「あ、私第一だったんだっけ。もうすっかり記憶が飛んでいたよ。」

「ねこますドノ。コレヲキニワレワレモダイカツヤクシマスゾ。」

「オウ! オレタチノチカラヲミセツテヤル!」

「そうだなみんな! 人間を見かけたら息の根を止めるんだ! 連中は狡猾で卑怯

なことがお得意だ! かくいう私も人間には散々辛酸を舐めさせられ続けた! よ

って、人間がいたら即攻撃!」

 ここは、多分戦場なので、誰だろうと情け容赦なく攻撃しないといけないな。油

断したら命取りなので、生易しいことは言っていられない。

 

「ひとまずこれでメンバー分けしたけれど、別にすぐ離れたりするってわけじゃな

いから安心して。」

 これからはメンバーを入れ替えたりして戦うなんかもよくあると思うので、そう

いうときのために連携を強化したいと言うのもある。全員が全員の戦い方を理解し

ていれば、かなり良い感じに戦えるようになると思うし。

 

「おっ!? おいおい。面白そうなモンスターがいるじゃねえか。」

声が聞こえてきた瞬間にサンショウは重力魔法を放っていた。が、これはあっさり

と声の主がかわした模様。かなり素早いな。

「ヌアアアアアアア!」

「ウオオオオ!」

イッピキメとニヒキメが曲刀で声の主に襲い掛かったが、これもあっさりと回避さ

れた様子だ。こいつ、格闘家か何かか。すごい反応速度だな。これは惜しい。そん

な直接攻撃が得意ならブッチがいたら良かったのにな。つくづくこういう時には縁

がないブッチだなあ。


「はああっ!」

 格闘家の男だな。こいつが何か放ってきた。こ、これは俗に気とか波動なんて言

われている攻撃じゃないか。というかなんで私に向かって放ってきているんだこの

やろー。間一髪で青白い光を放つ球体をかわしたけれど、危なかった。

「だいこん私の肩!」

「わかったやで!」


「お前がリーダーだな?」

「お前がリーダーだな?」


ブッチの物真似をしてみたが、格闘家の男はにやりと笑い、私に拳を放ってきた。

やっぱりこいつ戦闘狂というかブッチタイプじゃないか。うう。こんな奴相手にな

んかしたくないっての。さっさと消えてくれ!


「精神拳!」

さっきやってきた気を放つ遠距離攻撃だ! 精神拳とか何が精神なのかよく分から

なかったけれど、ならばこっちがやることは

「真空波!」

 鎌を思いっきり振り上げ、真空波を発生させ、精神拳とやらにぶつける。すると

ぶつかり合った結果、両方のエネルギーは消滅した。当然それで決着はつかないの

で、格闘家の男は、私に向かってくる。直接戦闘を狙っているようだ。


「伸びろ! 黒如意棒!」

「ハアッ!」


くろごまとニヒキメが男の左右から迎撃する。が、そのどちらの攻撃も回避してさ

らに向かってくる。


「ウォーターアックス!」

「ジュウアツ!」

「あっぶね! なかなか面白いことやってくれるな!」


こいつ、みんなの攻撃をかわしつつ、私を狙ってきている。違うな。正確には何故

か私だけを狙ってきているな。なぜ私なのかがというかリーダーだというのがばれ

たのかは分からないけれど、いちいちそんなのに狙いを定めないで欲しいな。まあ

私狙いって事だったら防御に徹するっていうのもいいかもしれないなあ。


「威圧!」

「!!! ふぅう。なかなかいい気合いだな。なら、お返しだ!」


突然私の体に寒気のような物がほとばしった。これは、あいつも威圧を使ってきた

ってことか。自分の身に降りかかって初めてどんなもんなのかが分かったけれど、

案外耐えられるものだね。


「狐火!」

「おおおっと。大道芸もやるのか。やっぱり面白い奴だなお前。名前はなんていう

んだ?」

「ヤッパリオモシロイヤツダナ。」

「いやそういうジョークはいらねえって!」

男が今度は思いっきり蹴りを放ってきた。よし、ここだ。


「火遁!」

私の肩にはたけのこが乗りかかっていたので、私を中心として、火の柱が現れた。

これなら格闘家の男も一瞬だけ後ろに引くだろうな。回避されることは間違いなか

ったので、むしろこれが狙いだった。

というかこいつどうするよ。私より絶対に強いのに戦わなければいけなくなるとか

運が悪すぎる。

「ガブ。」

「ん。あ!?」


ねずおが、密かに格闘家の男に近づいていたねずおが男の右の脛に齧りついた。な

なんということだ。全然攻撃が当たらないというのが特徴のような感じなのに、ね

ずおには簡単にかまれてしまったぞ!?


「こ、こいつ気配も殺気もなしだったぞ!? くそ離せ!」

「チウウウウ!」

「オオオオオオオイ!? そんな噛むなああああああ!」」


ごつい格闘家の男が、鼠に噛まれて叫ぶ姿が、どこか滑稽に見えて、面白かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ