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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第208話「神殿の戦い」

「姉御、なんかこのあたりから狭くなってるので行けないやで。」

だいこんの言う通り、そこらに折れた柱だの、瓦礫が散乱している。更にとても狭

いことに加えて薄暗い。さっきまでは壁にランプのような物があったからいいが、

この辺りは、そういったものがなく、ぼやけたようにしか見えない。それでも見え

るのは、やはりゲーム的な事情という奴なのかもしれない。

「照眼!」

 私は、目から照明を出すスキルで周囲を照らした。こういう場所にレアアイテム

なんかがあるかもしれないと思ったが、ざっくりと見た限りだと、なさそうだ。こ

こで全員だいこんから降りて、探索しつつ、追っ手が来ないかを警戒する。


「こういう神殿に危険なモンスターがいたりするんだよね。」

「それが俺らの事って誤解が広がりそうだなあ。嬉しいなあ。」

「悪名が広がっていって、ねこますさんが超有名プレイヤーになりそうですね。」

 それは嫌だ。非常に困る。大体、私だって好きで暴れているわけじゃないし。何

もしていないのに攻撃されるような感じだし、難癖つけられて迷惑している。世間

じゃモンスターっぽいと思ったら即攻撃が定番になっているからしょうがないけど。


「もう他のプレイヤーが探索しきった後なのかな。」

「いや、分からないよ。自然発生するアイテムとかあるかもしれないし。こういう

探索し尽くされたところこそ血眼になって何百回も探せば新しい発見があるかもし

れないしね。」

 確かにそういうこともあるだろうと思うんだけれど、残念なことに、今はそこま

で探索に気を使っている余裕はない。軽く見て回って何もないようであればこのま

ま突き進むだけだ。


「うぅ。もっとじっくり探したくなってきます。なんかこう、物凄くうずうずして

くるんですが、追っ手が来るかもしれないと思うと、気が散ってしまいます。」

あるある。RPGなんかでアイテムを探している時に敵と遭遇して戦闘が始まり、やっ

と倒したと思ったらまた遭遇なんてことになると、物凄い気が散ってしまう。あれ

どこまで探したっけ? なんてことにもなるので大変だ。


「それにしても、狭いなあここ。」

 壊れた柱やら瓦礫やらが散乱しているので、動くのが一苦労だ。躓きそうになる

綺麗に掃除したくなってくるなあ。この柱の残骸なんか邪魔でしょうがないし。あ

れ。この残骸とか、実はいい感じの素材で作られているとかないのかな? 結構硬

い感じがするし、錬金術の材料にもなりそうな気がする。


「…拾ってみたけど、何にも手に入らないか。それじゃあ特に必要ないし、このま

ま頑張って進むだけ進もうか。」

「邪魔な柱は吹っ飛ばしてもいい? そのままだと狭くて通れないし。」

「あー。暴れるような感じ話でね。ここにいるってことが気づかれそうだし。ひと

まずこのままじっくりと前に。」

「お! 本当にモンスター達がいやがる!」

「こんなところまで入り込んでくるんだな。よしやってやろうぜ。」


げ、部屋の奥の方からプレイヤーが二人ほど現れたようだ。隠れていたようだが、

突然姿を現してきたってことなのかな。いつも通り私の気配感知に引っかからなか

ったし。でもおかしいな。だったら最後まで潜伏しておいて、奇襲をしかければ良

かったんじゃ。もしかしてこの状況。

「もう逃げられないぞ。」


 この部屋の別な場所からも声が聞こえてくる。うわ、これ囲まれてしまっている

な。もしかしなくても、ここまで誘い込まれてしまったようだ。何もいないと思っ

ていたのになあ。やっぱり気配感知は常時集中して使っておかないとダメなんだと

いうことを実感した。

 さぁて、こっからどうするかな。迂闊に飛び込んだら、罠にでも引っかかりそう

だし、かといってこのまま待っていたんじゃ一斉攻撃されそうだ。


「これでお前らもおしまいだ!」

 なんか威勢のいい声が聞こえてくるんだけれど、そう簡単に終わりにはならない。

まだこちらからは何も仕掛けていないし、囲まれていたとしてもまだやりようはあ

る。そう思った瞬間だった。自分たちの身動きが取れなくなっていることに気が付

いた。な、なんだ? 金縛りにあったかのように動けない。

 地面に縛り付けられているようなこの感覚は、やっぱり何かの罠にかかってしま

ったということなんだろうか。くっそ、まったく動けない。みんなはどうだろうと

思って顔を向けてみるが、やはり動けないらしい。


「ブッチも駄目!?」

「無理だね。全力で動こうとしているのに一切動かねえ。何かの罠だろうけれど、

それが何なのかもよく分からないね。」

 う、これはもしかしてピンチといった奴なんじゃないだろうか。身動きが一切で

きないなんて、かなりまずい状況だ。

 周囲からぞろぞろと近づいてくるような足音が聞こえてくる。こいつらは普通に

動けるのか? それは何でだ? というか私達は全員動けないってことなんだとし

たら、人間には通用しないってことなんじゃないのか。モンスター限定ってことに

なるとしたら、やっぱり私達ってそういう扱いってことなのかな。封印魔法みたい

なもので、動けなくなってしまうのかもしれない。


「じゃあ試すことは決まっているな。人間化!」

これで動けるようになるのか試してみる。あ、動ける。これなら大丈夫とか抜け道

もあるってことか。よし、それじゃあこの姿のまま、火薬草をばらまきまくるぞ!

「火薬草!」


周囲に火薬草を投げつけまくって、爆発を発生させる。周りのプレイヤー達の誰か

がこの状態を発生させているのかもしれないが、それが誰かは分からないので、た

だひたすらにそいつに当たってくれることを祈っての攻撃だ。まぁそういう奴って

大体後方に控えている奴だろうから、そう簡単には当たらないとは思うけれど。


「何っ!? おいおい! これで動けるとかマジかよ!」

「そんな毎回都合よく足止めできるわけねえってことか。だけど動けそうなのは一

匹だけみたいだし、このまま数で押せば勝てるな!」


数で押せば勝てる? それは本気で言ってるのか? 樹海で火薬草が沢山なくなった

とはいえ、まだまだ使えるだけの余裕はあるんだぞ? 数で押す、か。だったら私達

が一生懸命集めまくった火薬草を味わうがいい!


「火薬草! 火薬草! 火薬草! 火薬草! 火薬草! 火薬草!」

ひたすらぶん投げていく。いやいや、舐めてもらっちゃ困るよ。私みたいにこういう

状況を想定して地道にひたすら集めまくっている奴だっているんだよ。そう、私は、

こういう滅多にない展開でも切り抜けられるように徹底的に集めていたんだ。この状

況は、私がやっていたことがいかに大事な事なのかが再確認できる最高の状況だ!


「おっ、おいおい。これじゃ近寄れねえよ!」

「なんなんだ? 暗くてよく見えねえが、あれは女か?」

普通の人間の女になり切っている般若レディことねこますだよ。それで、みんなはま

だ動けないのかな?

「ねっこちゃん。火薬草を俺の足元に投げつけてみて。」

「オーケイ。」

いちいちいいの? なんて聞かずに放り投げる。大体こういう時に頼りになるブッチ

が言ってることだし、火薬草の爆発した反動で動けるようになるなんて予想している

のかもしれないのでやるだけやってみる。


「! っとおおお。結構きた感じだけれど、動ける! っしゃああああ! オラァ!」

「げっ!? なんでこいつ動けるんだよ!」

「解除された!? なんでだ!?」

はい、これで解除条件が分かった。動けなくなる罠は、恐らくその位置が決まっている。

そんでもって、そこから強制的に動かしてしまえば効力は失う! あと私みたいに人間

に擬態できるような感じなのだと効果が無い! タネが分かってしまえばあとはこっち

のもんだ。よーし、さっさと始末してやろうじゃないか。


「ま、まずいぞ。このままだと。」

「いや、一度全員を強制的に止めればなんとかなる!」

何か不穏な事を言ってきてるプレイヤー達。というか顔とかが良く見えないのでどんな

奴なのかもよく分からないなあ。人間状態のせいっていうのもあるだろうけれど、この

ままだと何もできないので自分に軽く攻撃して、般若レディの姿に戻った。


「も、もうやるしかない! 全体粘着化!」

男のプレイヤーの叫び声が聞こえたと同時に、またしても私は動けなくなった。が、な

なんだかさっき動けなかった時と比べて、更に動きにくくなったような気がする。まさ

かこれ、その場にいる全員を対象にしたスキルって事かな。うわ、本当にそれっぽい。

つまり、ここでみんな動けなくしておいて、別な部隊を呼んで、そいつらに戦わせよう

って魂胆か! くそっ。してやられた。

「よしっ! 足止めは成功した! 後はみんなが来るのを待つだけだ!」

「へへっ。お前らはもうおしまいだぞ! この後は一方的に攻撃されるんだからな!」


く、く、くっそぅ。なんて言うと思ったか。このスキルの効果は、発動後に地面から離

れてしまえばいいってことなんだろう? だとすれば、それならば、あるじゃないか。

私にはそれを無効化してしまえるとってきおきが!


「飛行! ブッチ! これでもう食らう事は無い! 浮遊! というわけでみんな突撃

だああああ! 目にもの見せてやれ!」

私だけ動けないっていうのもなんだけれど、私以外が動けるなら問題はない。それにし

てもこの動けなくなるスキル。その場から動けなくなるだけで普通にスキルが使えてし

まうんだから、実際そんなに強いわけじゃなかったね。まぁ本当に何もできなくするス

キルがあるのかもしれないけれど、それは強すぎるだろうし。


「蜘蛛の糸!」

ブッチが叫ぶと、プレイヤー達の体を蜘蛛の糸が巻き付いていく。あ、あったよ。ほぼ

無力化しそうな攻撃。蜘蛛の糸ってかなり強靭なんだよね。そんなのが巻き付いていた

ら動けなくなる。ブッチもやられたらやり返す派なので使ったんだろうね。

「ジュウアツ!」

たけのこが、プレイヤー達に重圧をかけると、そのまま倒れて地面にひれ伏した。


「な、んだよこいつらぁ。つええじゃねえか。なんなんだよマジで。」

「俺らに手を出したのが運の尽きだったな。では早速くたばれ!」

空を飛ぶ一匹のサイコロプスが、蜘蛛の糸でがんじがらめにしたプレイヤーを他のプレ

イヤーに投げつけたり、張り手を食らわせたり、好き放題やりだした。ああ、やっぱり

動けなくなったことは苛ついていたんだな。もうブッチ一人で大暴れだよ。


「こ、こいつやべえよ!? なんなんだよこのサイコロ!?」

「こんなやべえモンスター見たことねえって!? ってかもしかしてこいつプレイヤー

なのか!? いや、でもこんな動きできるはずが・・・!」


私もそこは疑問に思っているんだけれど、紛れもなくブッチはプレイヤーなんだよね。

なんか人間離れしているような気がするから、たまに怖いなあって思うけど。はぁこれ

がマブダチで良かったよ。

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