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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第199話「般若レディは止まらない」

「ナンダテメエ!? ソノチカラハアアア!?」

「力士の真の力ってことだぁぁあ!」

 そこで熱血をしないで欲しいが、しょうがないか。狂戦士を使っている時は気分

が昂るだろうし、勢いに身を任せてもらったほうが私も楽しめそうな気がする。

 そうだよ、折角ゲームをプレイしているんだから、ここは楽しまなくちゃいけな

いところなんだよ。そして、本気出して遊ぶから楽しいんじゃないか。だからここ

まで頑張ったんだし、今も頑張ってるんだから絶対に蟻を倒したい。


 ブッチが蟻の攻撃を抑えているが、狂戦士化はそう長く続かないだろう。後は私

がやることをやるだけなんだ。というわけで取り出したのは、錬金術士の杖だ。


「何も起こらないか。まぁあいつも気まぐれだしなあ。」


 クロウニンである蟻を前にしているんだから、何か語りかけてくるんじゃないか

と期待したがそんなことはなかった。好き勝手な奴だなあと思うが何か事情がある

のかもしれないのでひとまず置いておく。

 やることは当然スキル調合。が、その前にやっておくことがある。


「恐竜力!」

どんなスキルなのか分からないので使わなかったが、多分恐竜並みの力が手に入る

か何かだろうと思っていたので、まずはこれを使ってみる。大方の予想通り、なん

だか全身がみなぎってきた感じがする。それじゃあ次だ。

「甲殻化!」

 念のために防御力も上げておく。これから使おうとするスキルで、もしかしたら

自分にダメージが返ってくるかもしれないからだ。なのであらかじめこのスキルを

使っておくことにした。 よし、後は特攻あるのみだ!

 

「張り手! 張り手! 張り手ええええええええ! オラオラオラ!」

「グアッ!? ゲッ!? ナッナンダコレハ!? イダスギルウ!」

あれだけの巨体なのにブッチの張り手でかなりのダメージを受けているようだ。人

間でも爪を潰されたりしたら激痛が走るけれど、それと似たようなものなのかもし

れないな。


「ブッチ! 後は私がやる! 一旦距離をとって!」

「おうよ! 後は任せたねっこちゃん! いっけええええ!」

「グガッ!? ハッ!? イマサラザコノマジャゴトキ! ドウッテコネエゾ!」


ならば見せてやろうじゃないか。この私の全力を、といってもスキル便りの戦いを

しているだけだけどな! さぁいくぞ蟻! これで終わらせてやる!


「スキル調合! 雷獣破と隕石拳で 雷獣隕石拳!」


 発動すれば多分以前使った時と同様に私の体が巨大な岩に引きずられて、かなり

長距離まで駆け抜けるであろうことを覚悟する。更にそこで雷獣破の衝撃も発生す

るであろうことも視野にいれておく。もしかしたらこのスキルを使ったらデメリッ

トで自分に大ダメージが入り、最悪死亡するかもしれないが、なりふり構ってはい

れなかった。

 やれることやる。私こと般若レディねこますは、やるときはやるんだ。

 

「え?」

「ア?」


…え? 何も起きない? 不発? 最悪のパターンじゃないのこれ。いやだなもう

こんなオチとか。あるかもしれないなあなんて思っていたけれど、ここまでかっこ

つけておいてこれとか、ちょっと、酷くない? あぁそうか。これ時間差で発生す

るスキルってことなんだよね? ね? 何も起こらないんだけど!? えええ!?

ちょっと待ってよおとっつあぁんじゃないけど、おかしいよねこれ。

 

 せめて片方のスキルは発動してくれるとかそういう期待はあったんだよ! でも

まさかここでそんなのならなくてもいいじゃんか! 酷い! あんまりだ!


「フザケルナヨマジャ。テメェヤッパリオレサマヲオチョクッテヤガッタノカ!」

「ね、ねっこちゃん。」

 顔面蒼白とでも言えばいいんだろうか。今の私はそんな表情をしているに違いな

い。ああもう、どうにでもなれってんだ。まぁ確かにさ、こんな高威力のスキル同

士が調合できるわけないって思うよ。それができないのが私のレベルが不足してい

たからなのかどうかは分からないけどさ、出来るって思うじゃんか! いやもう何

でここで不発なの!? だって普通に、ふつうに、ふっふっふつつうつつ!?


私の拳が光り輝く。そしてそこから大きな岩が生み出されていく! お、遅かった

じゃないかあああ! というか恥ずかしい真似をさせてくれてええええ! 魔者!

お前の仕業かコラアアアアア!?

「そだよん。じゃあ後は頑張ってね。」

一瞬、私の耳元で囁くような声が聞こえた。こいつ、やりやがった!


「くっくらええええええ!」

私は雄たけびを上げた。これで蟻にとどめをさせるのだから。もうどうにでもなれ

と思った。これで最後だよ最後! ッテアァアアアアアアア! 岩が、手がまたし

ても岩になって、うああああああああああ!?


「グエエエエエエエ!? コレハッ!? ナンダコレハアアアア!?」

巨大な蟻の全身を押し潰すかのように私の隕石拳はぶつかっていく。私の拳はとい

えば、その巨大な蟻以上のサイズになっているので、現実での蟻を潰す人間のよう

な感じになってしまっている。なんだこの勢いは。


「ひっひいいいいいいいいい!?」

私もまともでいられない。まるで絶叫マシンに乗ったかのような勢いがある。お腹

に不気味な浮遊感がある。無重力状態とでもいえばいいんだろうか。それが何度も

何度も襲い掛かってくるので、何とも言えない。っていうかこれ嫌だあああああ!

だ、誰か止めてよ! も、もういいってばああああ!?


「ゲアッ!? コッ、コノオレサマガ、コンナドコロデエエエエ!?」

「ざ、ざざざざ、ざまああみみみろろろろろろろおおおおお!?」


目の前は、もう自分の拳となった隕石しか見えないので、蟻の姿は見えないが、ど

んどん押し潰しているようだ。あ、でもやっぱり隕石拳だけが発動したってことな

のかな? って思ったけど違った! ちゃんと雷獣破と組み合わされている! な

んか電撃がほと走っているような感じ! 隕石がバチバチいいながら物凄い勢いで

ど、どんどん前に進みすぎいいいい! これいつ止まるんだよおおお!?


「フ、フザケルナ! コノクソマジャガアアアア!? カッテニウミダシテオイテ、

カッテニ、コ、コロスダトオオオ!? クソガクソガ!」

「だああかあああらあああ! 私はその魔者じゃあないんだよ! 別な魔者なんだ

よ! 分かれってのおおおお!?」

「ナニイイ!? ベツナマジャ!? オマエハアイツジャネエノカ!?」

「最初からそう言ってるんだよおおおお! でもここまで暴れたお前には私がとど

めをさしてやるから安心してあの世に行けえええええ!」

「グソォオオオ!? コンナマジャノニセモノナンガニイイイ!」


ジェット機にでも乗って飛んでいるような勢いがずっとずっと続いていく。一瞬、

横を見やるとどんどん樹海を突き進んでいることだけは分かった。こ、これって、

このままだと樹海全域を滅ぼしてしまいかねないんじゃないのかな。うわぁあこ

れ、どうしろってんだあああああ!?


「クソ…オレサマハココマデカ。」

「安心してあの世に行くと良いぞおおおお!」

「ニセモノノクセニ、クチノワルサハソックリジャネエカ…。」

「おい、最後まで悪役らしい台詞を吐け! なんで死ぬ時だけしんみりするんだ!

私はそういうのが嫌いなんだ! 散々悪そうな発言してきたくせに、今さらいい奴

ぶるんじゃない!」


 大体さぁああ!? なんかゲームの悪いキャラとか、死ぬときとか結構満足して

死んでいったりするんだよねええ!? そんなん納得できるか! 散々好き勝手世

界を荒らした責任をとってからくたばれと何度思ったか数知れないよおおおお! 

ああもう本当にこれ止まらないんだけどさああああ!?


雷獣隕石拳は、途轍もない威力を誇っているようだ。でもこれ終わった後にどうな

るのかということを今から考えてしまう。なんでこんなものすごい威力に…。あ、

あああああ!? 恐竜力かもしかして!? あれってもしかするとスキルの効力も

向上するとかそういうものだったんじゃないのか!? そう考えると辻褄があいう

ような気がしてきた! そ、そうかあああ恐竜力かあああ!? 強すぎる!


「ヘヘヘ。イツモマジャニイヤガラセサレテキタンダ。ニセモノデモイイカラ、イ

ヤガラセテヤルノハタノシイゼ。」


蟻は最後まで嫌な奴のようだ。


「その風前のとも、灯で威勢のいい奴だ! 最後まで苦しみもがいてからくたばる

がいい!」

なんとなく勢いが収まってきたような気がしたんだけれど、まだまだ飛ぶようだ。

なんなんだこれ。本当にゲームバランスとかどうなってるんだ。普通のゲームとは

全然違った面白さはあるけど、なんかその場の勢いが凄すぎるよ<アノニマスター

オンライン>ってさ!


「グハハハハ。ジャアナアバヨオオ!」

とても大きなものが弾けて潰れる様な音が聞こえた。蟻が潰れたのか。よし、これ

で戦いには勝ったああああ! ってあれ? これまだ止まらないんだけど。


「え? どうやって止まるのこれ。おい魔者!」

左手に持った錬金術士の杖に話しかけてみるが、声は聞こえない。またかこいつ!

ふざけるな! いい加減にしろ。これ止まらなかったらどうするんだ。この先にあ

るのって、あるのって、何があるんだ?


メッセージ:「クロウニン」の「グローリーアント」を倒しました。


それは分かってるって! 今知りたいのはこれがどこで止まるのってことなんだけ

れど、一体全体いつになったら止まるんだ!? あっそうか!? 私か!? 私が

威圧とかみたいに止まれ止まれって制御しないといけないのか!? うあああ止ま

れ! もういいんだよお! ああもう止まらないどうすんのこれ!? うぐぐぐ。


 ま、待って。もしかしてこれがいつまでも続いたら、色んな物を破壊しつくして

しまうってことなじゃないのかな。まずくないかこれ。私が災害を引き起こしたっ

てことにされるかもしれないじゃないか! うわあああどうしよう!? そ、そう

だ。人間の街とかそういうところにこのまま突撃したらまずい! う、うああ、止

まってってのおおお!


「止まれって言ってるん。だぁああああああああああああ!」

魔者の力がとてつもないものだったっていうのはよく分かったよ! きっとこのス

キル調合で強力なスキル同士を組み合わせてとんでもないことをやっていたってこ

都だったんだな。そりゃあ強いよ! だけど使い方を間違うとこんな風にスキルに

操られてしまうってことなんだな。ためになったんだから。止まれっての!


「そうだ、この状態で別なスキル使ったら解除されるんじゃ!? 真空波!」

 だけど特に何も変わらなかった。そして、為す術もなく、前に突き進む私だった。

右手が電撃を纏う巨大な岩となり突き進む生きる災害になってしまった。まさか

こんなことになるなんて思わなかった。


「ああっ。もう。止まれってんだよ!」


どうしようもないことに苛立ち、思いきり右腕を動かして、地面に叩きつけると。

止まった。そして次の瞬間。右手から岩が消え、私はその場で仰向けになって倒れ

たのだった。

発動したら後は勝手に動くスキルがここで止まったらいいのになんて思ったことが数知れません。

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