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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第186話「テントウムシ」

 私が黒アゲハというのをさらった事になっているらしい。身の覚えはなかったの

だけれど、それが黒い蛾であるひじきのことだと気が付いた。というか蛾にしか見

えなかったのでアゲハ蝶だったとは思えなかった。

 あれ、そういえば蝶と蛾の違いってなんだったっけと思ったが、明確な違いが分

からなかったのでまぁどっちでもいいということにした。あのとき私が蛾だと思っ

たから、ひじきは多分蛾なのだろう。


「くっ。貴様が黒アゲハ様をさらったことは分かっているのだぞ。」

「そうだ、黒アゲハ様の鱗粉が貴様から出ているのだからな!」

「うるさい。」

「うぉおっ・・・。」


 誤解というか一方通行で話を進めてくるというのが私は大嫌いだ。まず本当に私

がその黒アゲハをさらったのかどうか確認出来てから文句を言うのならいいが、全

然そんなことはなく、予測だけで話を進めてきている。つまりこれは、現段階で言

えばただの言いがかりだ。


「単刀直入に言うけど、その黒アゲハっていうのはもう私の召喚獣になっていて、

名前はひじきってつけている蛾のことだからね。」

「何!? 召喚獣だと!?」

「き、キサマァ! 黒アゲハ様は樹海の虫族の王女たるものだぞ! それをなんと

いうことをしてくれたのだ!」


 そんなに大事ならなんできちんと囲っておかなかったんだ。私が行ったときは護

衛も何もいなかったぞ。そういうのを職務怠慢というんじゃないのかこいつら。私

は何も悪くないどころか、たまたま遭遇して好かれただけなんだぞ。


「あー。そういうのいいから。それで黒アゲハ、えーっとひじきだけど、あんたら

に会いたくないらしいから、これで話が終わってくれると助かるんだけれど。」

「そんなわけ行くか! 我らは黒アゲハ様を連れ戻さねばならぬのだ!」

「そうだ。我らが王、ダイダロスビートル様の為にも!」


という事らしいんだけど、ひじきのお父さんとかじゃないの?

(違うと思います。父上は、どちらかというと先ほどのサイコロプス殿のような感

じだといいです。)

 サイコロプスって言う種族だとすぐ分かることに驚いたんだけど、その前になぜ

あいつが父上なんだ。いや明らかにおかしいだろう。そういう設定はちょっとどこ

かよそでやって欲しい。絶対にからかわれる話だから。


(母上と仲良さそうでしたし。)

 マブダチなだけだから、そういう関係じゃないです。それで、ダイダロスビート

ルとやらについては何も知らないってことでいいの?

(はい。)


「ダイダロスビートルって何なの? その黒アゲハの父親なの?」

「黒アゲハ様の婚約者だ!」

 なんて言ってるけど、ひじきってまだ生まれたばかりだよね? なんかその色々

知っていたり知らなかったり不思議な事があるんだけどなんで?

(それは…。)


 ふっ。察しの言い私は分かっているって。なんか転生とか、自分の体を別な肉体

に憑依させたとか、自我だけ写されたとかそういうパターンでしょ! それで過去

の記憶があるとか、うんうん、分かる分かる、それで一部は思い出せない設定にな

っていて、それで…。

(母上、輪廻転生とは違うのです。記憶の継承というものなのです。)


 ああ、そういう伝承系かぁ。うんうん。それも分かるね。で、仙台の黒アゲハか

何かそれまでの種族たちの記憶を多少引き継いで生まれるってことだね。

(そ、そうです。母上はよくご存じですね。)


 まぁそんなところだろうと思っていたので驚かない。とはいえ、そのダイダロス

ビートルの奴は、ひじきという存在に執着していることになるなあ。面倒くさいな。

さっさとぶっ潰すか。

(流石母上です! 私もその意見に賛成です!)


なんか乗せられている気がするけれど、まぁいいか。って今はそんな奴の相手じゃ

なくて、蟻の方が大事なので出来れば後回しにしたいなあ。なんとかならないもん

なのかな。


「貴様、黒アゲハ様を隠して、どうなっても知らんぞ。」

「そうだ、あのお方の逆鱗に触れればどうなることか。」

「もう触れていると思うし、私をぶっ倒そうとしてくるだろうからやりあうよ。あ

あ、君たちは生かして帰してやるつもりだけれど、どうする?」


悪役の如く睨みつける私であった。あ、これちょっと楽しくなってきたかも。こう

やってひじきをさらった悪い奴ってことにしたロールプレイングをするのはなかな

か新鮮でいいな。


「くっ。我らは命尽き果てるまで戦うのみ!」

「くっ。私は命尽き果てる馬鹿をあざ笑うのみ!」

「貴様! 我らを愚弄する気か!」

「貴様! 私を笑い死にさせる気か!」


 なんかこう兵士っぽいありきたりな台詞をはいてくるのでどうもからかいたくな

ってしまう。まぁ、こいつら程度だったら何とでもなりそうだし。それと思ってい

た事なんだけれど。


「狐火」

私は口から火を吐いた。


「うっ! うぉおおおっ!? こんなところで火を使うとは!? 貴様! 樹海が

どうなってもいいのか!?」

「全部燃やし尽くしてもいいと思っている。」

「こいつは、頭がおかしい。今ここでやらねば・・・!」

「ああもう、うるさい!」

いい加減こいつらがやかましくなってきた。私は蟻を探しているのであってこんな

ところで油を売っている場合じゃないんだ。あるいは道草を食っている場合でもな

い。なんでいちいち絡まれなきゃいけないんだ。


「樹海がどうなろうが私には知ったこっちゃないの! こっちは私の仲間を探して

歩いているだけなの! 邪魔しないで!」


というわけで、私はこいつらを睨みつけて更に威嚇する。


「ぐ、くっ。ん!? ん!? 貴様蜂女王様の羽を持っているだと?」

「あ、あの頭の触角は、マンティスパイダーの。こ、こいつは。」

何か急にがたがた震えだしたぞ。ってこの装備のことか。まぁ確かに虫系統の装備

だけれど、なんだ、そんなにこれが怖かったのか。

「まぁそういうことなので、力の差が分かったかな。私はこれでおさらばするけれ

ど、いちいち攻撃してこないでね。」


 そう言って私はテントウムシたちの元から去った。途中木の根っこに足を引っか

けて恥ずかしい感じになったけれど、まぁそれは置いておこう。

 

「それで、ひじきのせいで面倒なことになったんだけれどさ?」

(すみません。どうしても姿を見せたくありませんでした。)


 ああいう話を聞かないタイプだから分かるけど、私を巻き込んでもらいたくなか

ったなあ。とはいえ、まだ生まれたばかりということを意識するとそう責めるのも

いけないと思うんだけれど。


 私は、あいつらがこれからも邪魔してくるなら倒すよ? あいつら死ぬことにな

るけどそれでもいいんだね?

(はい。母上のやりたいようにやってください!)


 うぉおおい。それは私に全責任を押し付けるってことじゃないか。なんていう汚

さだ。流石蛾だな。いや蛾は関係ないか。

(あの、私は蝶なのですが。)

 細かいことはいいの! もう蛾だと断定してしまったし、今さら後ろに引くこと

なんてできないの! これはそう、不退転の決意で向かっている事だから、どんな

逆風が吹いてきても、ひじきは蛾なの!


 という感じで少し意地悪してみた。だってあんな奴らの相手を任せられたんだも

の。これくらいお仕置きは必要だ。

(うううう。)


いい薬になっただろう。よし、これで気を取り直して蟻を探すことができそうだ。

ってあれ。

「ブリザード!」

「狐火!」

 咄嗟にスキルを使って迎撃した。何かに襲われたのは分かる。じゃあなんだ。何

に襲われた。目の前にいる奴だ。ローブを羽織っているのに加えてフードも被って

いるので顔は確認できない。が、これは魔法使いか。うわいかにもな魔法使いだ。

あれってプレイヤーなのかな。おお。もしかしてこいつプレイヤーキラーかな。


「チッ。やっぱり樹海は好きじゃねえな。こんな不気味なモンスターがいるとか最

悪じゃねえか。おまけにこんなところで火を使うとか。やべえよ。」


あっ。違った。私をモンスター扱いか。こいつめ。いきなり魔法をぶっ放してくる

なんて許せない奴だな。よし、ぶっ倒そう。私は火薬草を取り出して、魔法使いに

ぶん投げた。


「なんだ、それは。ウインド!」

あ、しまった。風の防壁で火薬草は威力を殺されてしまいそのまま地面に落ちた。

そのため爆発は発生しなかった。くそう。なんてこれは囮だったのだ。私は一気に

距離を詰めて魔法使いの近くに迫った。


「ブリザード」

「浮遊!」

「ぬあっ!?」


おおっ。浮いた浮いた。簡単に浮いたぞ。これは楽しい。そしてやっぱり浮遊は強

いな。こうやって相手の調子を崩せる攻撃は強いんだな。よし、このまま一気に決

めるとするか。先に襲い掛かってきたのはそっちだからね。正当防衛だ。


「真空波!」

「ぐぁつ!? な。」

よっし! もろに当たった! 魔法使いタイプって体力が少ないから攻撃を何発か

当てられれば倒せるはずだ。よーし、このまま一気に決めるぞ。


「ブ、ブリザード!」

 そういえば私、氷耐性なんてあるんだけれど、どんなものなのか分からなかった

しここで一回くらい食らってみようかななんて思ってしまった。ああこれは失敗だ

ったかなぁと思ったんだけれど。何ともなかった。え、何これ。今更だけれどもし

かしてこれって完全に無効化するの? ってそんなわけはないよね。


「イマナニカシタカ?」

モンスター風味にカタコトで喋ってみることにした。くっくっく。びびれ。そして

跪くのだ。

「な、なんだこいつは。こんな奴がなんで。」

「オワリダ。」

私は魔法使いに至近距離で、狐火を浴びせた。その後はもうやりたい放題ぼこぼこ

にして、そして、魔法使いは、消えた。


メッセージ:プレイヤーを倒しました。5000Gを手に入れました。

お金だけか…。チッしけてんな。

(母上、悪役が板についてきていますね。)


 なんか悪役プレイにはまってきたかもしれない。この路線でいったほうが面白い

んじゃないだろうか。あ、でもこれだと魔者っぽいってなりそうだ。それはちょっ

と嫌だな。


 このゲームではプレイヤーに初めて手をかけたことになるけれど、今まで色んな

オンラインゲームをプレイしてきたので、こういうことには慣れていた。

 だから、なんかいつものことだなあと思ってついうっかり手を出してしまった。


(母上、悪評が広まったらどうするんですか?)

あ、それだとお店が利用できなくなるかもか。うう。これは反省しないとだな。

般若レディの風貌を想像してみると実はかなり異形な感じです。

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