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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第183話「九官鳥、空間鳥?」

 再び樹海に入ることができて良かったんだけれど問題が一つできてしまった。

「クェェエー。」

 黒い鳥が私にすり寄ってくる。この鳥、私の体よりも大きいので、ぐいぐい押さ

れてしまう。なんなんだ一体。なんでそんなに馴れ馴れしいんだ。

「ん? あれこの鳥って。」

 どこかで見たことがあると思ったら、九官鳥か。でもこんなに大きな九官鳥なん

てみたことが無いな。ゲームだから巨大化させて登場させたって事かな。

 確か九官鳥って喋るんだったかな。


「こんにちは。」

「コンニチワー! コンニチワー!」

 返事早っ!? 普通の九官鳥とは一味違うって事なんだろうか。うーん。こうし

て近くでみると結構可愛い感じはするけれど、まぁそれだけって感じか。たけのこ

のようなもふもふとはまた違ったもふもふがあるけれど。まぁ羽毛だしそんなもん

か。


「で、喋れるの?」

「デ、シャベレルノ!」

 ああ、これ駄目だ。絶対に意思の疎通が出来ない系だ。ただ私の言葉をオウム返

しをしているだけのようだし。これではなんで私に懐いてきているのか分からない。

うーん。帰ってくれないかな。私は今からブッチ達を探しに行きたいので、この鳥

の面倒を見る気はなかった。


「私、ちょっと忙しいからこれでお別れね! じゃあね!」

黒い鳥にそう告げて、私は全速力で走り出した。今回ばかりはもういいんだ。また

仲間が増えてしまうわけにはいかない。というか毎回一人になると必ず新しい仲間

が出来てしまうのが気に入らない。ここでこの鳥が仲間になるのもある意味不吉だ

し。


そうだよ。忘れていたけれど十二支。このまま仲間になってしまうとまた増えてし

まう。こうなってくると、この樹海で馬とか、例えばケンタウロスのような奴が仲

間になってしまうんじゃないだろうか。そんなありきたりな展開は断じて許せない。

だからこそあの黒い鳥を仲間にするわけにはいかないんだ。


「デ!シャベレルノ!デ!シャベレルノオオオオオオ!」

「はっ!? はひぃいいいいいい!?」

気が付くと真後ろに黒い鳥がいた。な、なんだこいつ。いつの間に私の真後ろに来

たっていうんだ。おかしいだろ。おかしすぎるだろ。ふざけるな。あまりに唐突過

ぎて心臓止まるかと思った。くそ、まさか追い付かれるなんて。今度こそ、近づけ

ない距離まで逃げるぞ。


「だああああっしゅ!」

 またしても私は走り出した。今度こそ追い付けないようにけむり草を使って煙幕

をはっておく。これでそう簡単には私の事を見つけることができなくなるだろう。

よし、これで完璧だ。


 だけど、さっきは簡単に追いつかれてしまったので、そこから更に全力疾走する。

絶対に追い付けないようにするための対策だ。獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす

みたいなノリだよ。よーし。これでなんとかな。

「デ!シャベレルノ!」

「は? はえええええええええ!?」


こ、こ、こいつそうだ。そうだよ。空間を、そうだ。こいつが空間を操っていたん

じゃないか。だからその、空間を飛び越えてきたってことか! そういうことだよ

ね! これ心臓に悪すぎる。いきなり目の前にいるんだもの。あんなに全力で逃げ

たっていうのに。でもなんで私のいるところまでピンポイントで移動できるんだ。


「ばいばい! 私についてこなくていいからね!」

もう一回だけ試しに移動してみることにした。もしかしたら空間移動とやらは回数

制限があるかもしれないし。3度目の正直という事でやってみる。しかし…。


「バイバイ! バイバイ!」

そうだねバイバイだね。じゃなくてぇ! バイバイするならどこか行ってくれても

いいじゃないか。なんでよりによって私のところにくるんだ。このあたりに他のプ

レイヤーがいたと思うからそっちに行って欲しい。


「あのねえ。私は仲間にするつもりがないから、よそへいってね。」

「アノネー! アノネー!」

うわぁぁあ。すごい面倒くさい。なんなんだこの鳥は。なんでこんなテンション高

いんだ。それならここのどこかにいるブッチの所に行ってくれればいいのに。私は

もう間に合っているんだよ!


 少しじっとしてみる。逆に何もしなければ飽きて遠くに行ってくれるタイプなの

かもしれない。そうだ、何も話しかけれなければいいんだ。大体こういう奴は無視

するのが一番なんだ。

 そして私はそのまま木に寄りかかりぼけーっとすることにした。これで飽きてく

れることを願う。だけど、一向に遠くに行かない。


「バイバイ! バイバイ!」

そんな楽しそうに言うけど、どこかに行きそうな感じしないなあ。なんなんだこの

鳥め。なんでバイバイって言ってるのに私の近くになぜ作るんだ。


「なんでそんな空間移動が得意なんだ? んん!?」

 九官鳥、きゅうかんちょうじゃなくて、これをくうって読んでみると、くうかん

ちょう。空間鳥、え!? 何その名付けは? 九官鳥って大して強くなさそうなの

に空間を操る能力を持っているなら違ってくるな。


「空間鳥、九官鳥、ああもう、安直過ぎだっての!」

 つまり、この九官鳥は空間を簡単に移動できており、私の姿が見えなくなればそ

の時点でさっさと空間を飛び越えてくると言うわけだな。何か目印になっているも

のは、特にない! 


「クーカンチョー! クーカンチョー!」

分かったもういい。鳴かないでくれ。泣きたいのは私の方だ。こんな逃げ場のない

状態にまで追い込まれるとは思いもよらなかった。もういい加減私の邪魔をせずに

どこかに行くように伝えても、追いかけてくる。


「いい? 私と一緒にいるんじゃなくて、親鳥とかそういうのがいるでしょう?

なので、ここからは自力で頑張って!」

 なんて力説してみるものの所詮は、鳥だった。ただ首をかしげたのは可愛いと

思った。ただそれだけだ。なんでこの黒い鳥はそこまで私に必死なんだ。私は

何をしたっているんだよぉ。


「ジリキデガンバル!!!!」

「頑張ってないよね!?」


 私が歩きだしても勝手についてくる。この鳥はなんで私に執着しているんだ。

実は私に恨みを持っていて、陰で着々と私を亡き者にしようとしていることに

なるんじゃないだろうか。

 

「ここからは一人で頑張れる?」

「ココカラハ、ヒトリデ、ガンバレル?」


頑張りたいよ。だから、ここでお別れしようと言ってるのに、だけどこの鳥が

いつまでもくっついてくる。もういい加減にしてくれと。そんなわけで鳥に対

して私から説教を始めてやったのだけれど、全然何にも覚えようとしていない。

 難しい言葉はよく分からないからなのか、大体首をかしげます。この鳥に乗

って色んな場所に行けるんだったら、費用対効果もよ良さそうな気がする。


「仲間にはしたくないんだよなあ。」

言葉の通りだった。どれだけ懐かれていようが、私は、自分の目的に全く関係

のない者が仲間になってしまうのは嫌だなあと思った。

 黒い九官鳥、いや黒い空間鳥。だけどこんなすごい能力があるんだったら少

し羨ましい。


「いい 私を追って来たらだめだからね。」

「オッテキタラ、ダメダカラネ!」

「だからそれは君の事ですよっと! 分かった!」

「ワカッタ!?」

分かってないよ! なぜ意思の疎通ができないんだ。所詮鳥だと分かっている

のに都合のいい所だけで取り繕うとするのが駄目なんだよ。この鳥とは仲良く

できそうもないな。よし、解散!


「これからは一羽で頑張って生き抜くんだよ!」

「イキヌクンダヨ!」


 あまりにしつこいのでもう声掛けしないことにした。だからもう無視だ無視。

私についてきたとしても、意味がないってことを教えてやるのだ。樹海の厳し

さって奴を教え込んでやるのだ!

 それから、空間鳥を無視して歩きだした。メッセージが届いていないかを確

認したが、何の連絡もなかった。

 むしろブッチ達がどこか別な場所で何をしているのかが気になるなあ。私は

とても元気だけれど、みんなの様子が分からないので、何とかしたいところだ。


「イキヌクンダヨ!」

分かってますって言ってるじゃないか。というより私に近づかないで欲しい。

空間鳥に好かれるような何かをしたわけじゃないので、何か一緒にいるのも

気が引けた。


「はぁ。無視して、みんなを探すとするか。」

なんて思ったけれど、今日はログアウトすることにした。どっと疲れた。

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