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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第182話「挫折はしない」

 ゲームでどうしようもならない時は詰んでいるなどと言うことがあるけれど、今

のこの状況はまだまだ詰んでいるとは言わない。

 だからこうして必死に道を探して頑張っている。だけど今の私みたいに迷ったり

 出られなくなるとゲームをリセットするという人がいる。


 最初からやり直したほうが早かったり、何らかの制限をつけてゲームをプレイし

て失敗したのでやり直すといった場合なんかがそうだろう。

 そのやり直しにも色々あって、リセットしてやり直すのか、それとも今のキャラ

をわざとやられるようにしてゲームオーバーしてから始めるのかといったところだ。


 私が今ここで自分自身を攻撃することで死亡判定になった場合、恐らくこの迷路

に入る前の状態に戻ると思われる。確かにそれは早いと思うが、そんなことはやり

たくない。

 オンラインゲームでキャラクターが死亡した場合、デスペナルティという罰を与

えられることが多い。現在持っている経験値が減る、所有しているお金やアイテム

が消滅するなどの問題だ。

 

 そう、ここで私が死んでしまったら、自害してしまったら、その稼いできた物が

なくなる恐れがあるのだ。それは絶対に納得がいかない。絶対に失いたくない。だ

からこそ、今この透明な迷路を攻略しないといけない。途中であきらめるというの

は許されない。


 要するに、死んでスタート地点に戻るのは手っ取り早いけれど、その反面失うも

のが多すぎるので自害するのは嫌だということだ。折角集めてきたものがなくなる

というのは絶対に許せない。なので、面倒くさくても時間がかかってもこうしてし

っかりと攻略を目指すのだった。


 私は、このような透明な迷路であっても感覚的に移動できそうな気がしてならな

かった。今はまだそれがなんなのか確信を持てないが、ここは進む事ができるとい

う予想があった。これは、今までのゲームプレイの経験則があってこそなのかもし

れない。

 

 大体こういう道があるとしたら、次はこっちに道があるだろうという感覚だ。も

しそこに道があったら面白くなさそうだなあなんて思っていると、やはりそこは壁

であり、移動ができないようになっているのであった。

 それが少しずつ、少しずつだが、こう動けばいいと自然と体を動かしていけるよ

うな気がしている。


「次は五歩くらい進むと壁かな。」

 歩幅を等間隔で歩くようにする。一歩がどの程度の距離なのかを理解しておくこ

とで、ここはこれだけ進んでも大丈夫というのが予想できる。ううん。なんだろう。

こういう予測ゲームみたいなのがあったなあ。

 地雷を探し当てるゲームでは、大体ここにはこれだけ地雷が埋まっていますよと

いうのが分かるので、そこから安全な位置を予想して地雷が無い所を探す。

 そのゲームと同じというわけでもないが、似たようなことをやっている気分だ。

 

 こうして何らかの規則や法則がないかを探るというのもゲームの楽しみの一つで

もある。当然そんなものがなければ完全な運で気合いで何度も繰り返すことで進む

ということもある。

 作業を無駄にしたくないからリセットしたり、事前に情報を調べてからゲームを

するプレイヤーも沢山いるが、それこそ人の自由だろう。

 が、私の場合は、そういうことに一度慣れてしまうと、諦め癖がついてしまいそ

うなので率先してやりたくはなかった。

 

 私だって失敗するのは嫌だけれど、必ず成功することしか行動したくないという

のはある意味で逃げだと思っているので、やれそうなことがある場合は、失敗する

かもしれないが、まずは成功目指して頑張ろうと言う気持ちが強い。

 

 次は、6歩移動後右に曲がって、よし、予想が合っている。こんな感じで試行錯

誤して成功するのは楽しい。次は、4歩歩いて、あ、ダメだったか。こういう失敗

と成功の繰り返しが私の経験になっていく。

 

 ゲームというのは他のゲームに対しても流用できる技術があったりするので、沢

山のゲームをプレイする人は、それだけ出来るようになることが増えることになる。

そう、今の私がこうして<アノニマスターオンライン>で色々と出来るのも、これ

までの経験のおかげ! すべてはゲームをプレイしてきたからこそできる事!


 何度もゲームオーバーを味わってきた苦い経験がここで生きていると思うと、そ

れが嬉しくなるなあ。無駄じゃなかったんだなあと。ふ、ふふふふ。前にプレイし

たゲームなんか、選択肢を一つ間違っただけで、それまで手に入れてきた全てのア

イテムが消滅するなんていうのがあったくらいだし、この程度はまだまだというレ

ベルだ。


 レトロゲームの中には、セーブデータが消える時、不気味な音楽が流れてくると

いうのもあったなあ。あぁ、あんなに一生懸命にやったのに消えるなんてと思った

なぁ。

 そんな思い出に浸りながらも私は確実に前に進んでいく。そして、徐々にだが、

樹海に近づいてきていた。流石に樹海まで行けばこんな状態も終わるだろう。そう

じゃなかったら嫌だなあ。


 それにしても、ブッチ達と連絡がとれないままというのがきついなあ。確かみん

な私の到着を待っていたはずなんだよね。それなのにいつまでも行けないでこんな

ところで道草食っているような状態になっているのが悔しい。

 なんで私ばかりがいつもみんなからはぐれてしまうんだ。私、リーダーなのに不

在ってなんなんだろうなあ。

 

 一人でいるのは気楽だとは思うけれど、いまだに右も左も分かっていないのがこ

のゲームなのでそのためにはみんなと協力してプレイヤーたちのいる場所に行きた

いと思っていたのに、長すぎる!


そう、そうだよ。なんかもう寄り道って感じなんだよねこれ! 私はこんなところ

で油を売ってる暇はないのにいいい。なんて愚痴をいってもしょうがないので、こ

こで少しでも早く進んでいくしかない。


「クゥエェェェェェェェェェェェェェェェ」

 空を見ると、大きな黒い鳥が鳴きながら羽ばたいていた。なんだろうあれ。まさ

か私が隕石拳を使ったせいで住処を失った鳥だったりしないよね。

 こっちに向かってくる様子はないけれど、なんだかこの辺り一帯をぐるぐる回り

ながら飛んでいるようなんだけれど、何をしているんだろう。

 

「クッ、クッ、クゥエエエエエエエェェェェェェ」

 何か悲しんでいるように聞こえるんだけど私のせいなのか? いたたまれない気

持ちになってくるけれど、私も生き残りたかったからしょうがない。でもこのあた

り一体吹き飛ばしてしまったわけだし、そうだとしたらこの黒い鳥も死んでいたん

はないだろうか。

 それにも関わらず生き残っていたというのはたまたま離れていただけというので

あれば運が良かったはずだ。

 …それとも考えたくはないけれど、ここのあの黒い鳥の仲間がいたとか、じゃあ

ないよね。


 もう吹っ飛ばしてしまったので開き直るくらいしかできないし、そもそもこんな

大自然の中なんて弱肉強食じゃないか。仕方ないって! 私が悪いわけじゃないん

だよ!


「クククク…クエエエエエエエエエエエエエエ!!!」

「まぶしっ!」


 頭上の黒い鳥は突然光り輝いた。が、一瞬でそれが終わった。何なんだ? 何を

したんだ一体? あまりに悲しくて発光したのか? ううん。よく分からないなあ。

私に攻撃を仕掛けてくる様子もないし。ただ悲しんでいるだけなのかな。


 一旦無視して進もうとすると。あ、あれ? もしかして。や、やっぱりそうだ。

透明な壁が、迷路が消えている!? これ、あの鳥が何かやったのか? それとも

あの黒い鳥がここを作り出していたのか!? わ、分かんないけど壁がなくなって

いるみたいだし、走ろう! このままあの樹海まで走ろう!


折角つかみ取ったチャンスなのだから、まずは走る。黒い鳥がなぜこんな場所を作

りだしていたのかは分からないけれど、もう一回あの透明な壁が作られたら困るの

で、さっさと逃げるに限る。


「クゥエエエエエエエ!」

ま、また鳴いている。けど今度は何も起きない。うわぁ鳴くのやめてくれ。せめて

私が移動し終わってからにしてくれ。何がなんだか分からないけれど、ここから去

ってくれ。


「ク!? クエッ! クエエエエエエエ!」

あ、なんか私を発見したっぽい。これは襲われるんだろうか? 何もしないみたい

だけれど、あの黒い鳥、こっちに向かってきている? いやでも無視! ちょっと

大きいし、もうボスを二匹も倒しているし戦いたくはない。こっちに来ないでくれ。

 そして気づく。あの黒い鳥、動くのおっそ!? 遅すぎる。 ずいぶんゆっくり

とこっちに移動してくる。なんだあののろのろした動きは。わざとやっているんじ

ゃないだろうか。


「これ、攻撃しちゃってもいいのかな。」

空に向かって真空波でも放てばすぐ撃墜できそうな気がしてきた。ううん。悩むな

あ。ここで手を出して怒り狂ってまた迷路作られるのも嫌だし、やっぱり走って逃

げるのが一番だよね。


もう迷わず全力疾走することに決めた。樹海にもう一回入ることになるけれど、そ

の後に今日のゲームプレイや辞めることにしよう。こんな色々な出来事があるのは

頭が混乱しそうになってくる。


黒い鳥が私の元に向かってきて何かをしようとしているのは分かるが、敵対行動の

可能性があるのなら、それにわざわざ対応する必要はない。万が一、空間を操るこ

とができるのがあの鳥だとしたら、戦うのも一筋縄ではいかないだろう。今日この

ばてているような状態じゃ、負けるかもしれない。だから戦わない。


何も考えず樹海まで一直線に走る。ってだめだ考えてしまう! こうやって必死に

走っている時こそ最後にどんでん返しが来たりそうで怖い” やった樹海に戻った

って思ったら別な場所に移動させられたら嫌だな。ああ、だめだ。こういうことを

考えているとかえってそういう展開になるんだった。

 

黒い鳥以外は何もいる様子はないし、樹海から何かでてくるような気配もない。こ

れならなんとかなりそうだ。樹海に近づいたと思ったらそこからモンスターが沢山

でてくるなんてことになったらすごい困るし。

 

もう樹海の目と鼻の先まで来ている。早い、早すぎるよ。あの透明な迷路がどれだ

け苦労させられたかというのがよく分かる。けど最後の方はだいぶ慣れていたのだ

からゴールさせてもらいたかったなという気持ちになった。

 

「クエエエエエエエエエエエ!」

なんか声が大きくなってきている気がする。嫌だ、私なんかに構わないで欲しい。

目をつけられたら大体嫌な事にしかならないのだから、どこかに行ってくれ。住処

を荒らしてしまったことに関しては謝るから許してくれ。でも言葉を理解するとか

だったら怖いので謝ったりはしない。だから逃げるしかない。


「クゥエエエエエエエエ!」

なんでそんなクエクエ鳴くの!? 私なんか絶対食べても美味しくないし! だか

らとっととどこかに行ってくれ。ってあれ!? なんか一気に距離詰めてきてない

か!? うわっ! このままだと追い付かれる! せ、せめてあの樹海にたどり着

くまでは、ま、待ってくれえええええええええええええ!


「クェエエエエエエエエエ!」

「うあああああああああああ!」


こうして、後ろから迫ってくる黒い鳥をよそに、私は、再度樹海に入り込むことに

成功したのだった。

セーブデータが消えた苦い思い出は何十回もありますよ…。

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