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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第180話「見えない道」

 周囲を見渡すと、樹海の一角が抉り取られている。まるで災害でも起きたかのよ

うなその光景に思わず身震いした。こんな尋常ではない威力を発揮するなんて想像

がつかなかった。もうこれが、最強のスキルと言っても過言ではないんじゃないだ

ろうか。

 では、このスキルに何かデメリットはあるのだろうか。一回使ったらもう二度と

使えなくなるのは当然として、何らかの代償を支払う必要があるのではないか。時

間凍結で丸一日動けなくなるくらいなのだから、そういうことがあっても不思議で

はないだろうし。

 

 しかし、今のところ何も起きない。これは、時間差で何かありそうだ。嫌だなあ

体に時限爆弾を抱え込むようなことがあるのは。何か問題が起こるならさっさと終

わらせたいんだけどなぁ。

 

「疲れた・・・。」

 ボス二匹と戦ったのだからこれはしょうがない。でも、ここで更に追加でもう一

匹なんて言われてもまだやれるだけの気力はある。というか今までプレイしてきた

ゲームでは、隠しボスみたいな奴だとか真の姿を現したりなんていうのが定番だっ

ただけに、そういうのを警戒する癖がついてしまっていた。


「で、ゾンビ恐竜は…?」

完全に消滅してしまったんだろうか。跡形も残らずに倒すというのはやりすぎでは

ないかと思うんだけれど、あの威力なら納得もできる。今アイテムが何も手に入ら

ないのは、隕石拳を使った結果なんだろうか。この程度がデメリットというのなら

破格の条件だとは思うんだけど、実際はどうなのか分からない。


メッセージ:ティラノのバッジを手に入れました。


 手に入らないんだろうななんて思っていたら手に入ってしまった。ということは

アイテムが手に入らないのがデメリットなんてことはないようだ。

 ここはもう考えるだけ無駄なので、ティラノのバッジをつけてみることにした。

つけるのはジャージのほうにだ。


メッセージ:ティラノのバッジを装備したことでスキル「恐竜力」を使えるように

なりました。


 力が上がりそうなスキルを習得したが、このスキルは大丈夫なんだろうか。隕石

拳みたいに、とんでもない威力をはっきりするとんでもないスキルだったりはしな

いよね。

 恐竜なんていうと見境なく暴れまわってそうだし、早めにどれだけのものなのか

動作検証をしたいところだ。今度は、名前負けしているというか、大したことのな

い結果に終わるかもしれないなあ。

 それにしても、全身、道具だらけになってきているな私も。あれやこれやと装備

しているせいで、奇抜な姿になっているけれど、これらがないと補正が全然なくな

るので弱いんだよなあ私。

 

 強くなってくると周囲からも変な目で見られるかもしれないんだけれど、そうい

えば、本当に誰も近づいてこないな。閉鎖空間みたいなところに誘い込まれてしま

ったいうのもあながち間違いじゃなさそうだな。


 そうだ。ブッチ達にメッセージを送っておこうかな。なんか強そうなボスを倒し

たと伝達しておけば、探しにきてくれるだろうし。

 早速連絡をするが、返事が来なかった。取り込み中ということはむこうも何かと

戦っているのだろうか。これは、むしろ私が救助しに行かなきゃいけないって事だ

と思ったけれど、どこにいるかも分からないので、そのあたり草の根分けててでも

探すしかないな。


 樹海というよりも荒野にでもなってしまったが、まだまだ樹海があるのは見える

ので一旦樹海内部へと戻ることに決めた。予想以上に時間がかかりそうだけれど、

だいこんなどの移動手段を持っていないので、徒歩でひたすら歩いていくしかない

というのが悲しい。

 ふと、映画でこういうシーンを見たことがあるなぁと思ったが、どうも私が歩い

てもかっこが付かない感じだなあ。


 こういう荒れ地を歩くと世紀末と言うか、なんだか世界が破滅した後なんかも思

えてならないなあ。隕石拳を沢山使ったらそれこそ本当世界崩壊ができそうだ。だ

けどそんなことにはならないだろうけど。

 そこまでゲーム世界の環境を変えてしまうようなプレイヤーの存在って言うのを

運営会社が許可しているとは思えないし。もしそこまでやるとしたら、バランス崩

壊なんてことになりかねない。


 しばらくぼーっとしながら歩いていく。綺麗さっぱりなくなっているのだから、

普段まとまっていない考えだとかくだらないことでも考えてみるか。


 まずは、草刈りを再開したい。割と真剣にそう思っている。日課となっているこ

とができないので、なんか物足りない気がしている。それが理由で一旦魔者の大陸

に戻りたいと思うんだけれど、先に人間の街を見つけてからと思うと、長すぎると

感じるようになってきた。


 今もこうして歩いているけれど、移動が辛い。辛すぎる。これはなんとかならな

いもんなんだろうか。だいこんがいないだけでこんなに面倒になるのはどうかして

いると思う。こういうリアリティが大事なのも分かるんだけれど、ここから、ねこ

ます草原まで戻ろうとしたらかなり時間を要するわけだし。

 

 これからは毎日我慢しなければいけないと思うと憂鬱でもある。ああ、これって

もしかして私は薬草中毒にでもなっているんだろうか。だけど、薬草が集まってく

ると、とても安心できるというのがあるので、どうも集めまくってしまう。いつも

のことながら、薬草が無くなってしまうと、その分を早く補填したくなってしまう

なあ。


 …いや待てよ。ねこます草原みたいに薬草の群生地ってないんだろうか。魔者の

大陸だけなんてそんな特別感がある気もしない。そうだよ。薬草なんてそこらで生

えていてもおかしくないじゃないか。こっちの大陸でもあるかもしれないし、そこ

で集めてもいいな。

 どのくらい採取できるのかが問題だけれど。効率が悪いのであれば、やっぱりい

つもの場所がいいなぁ。逆に効率良く取れる様な場所だったら、そっちの方を優先

してしまいそうな気もする。

 

 誰かが占拠していたら、なんて考えたが、そんなことになっていたら、戦いをふ

っかけるな私は。問答無用だ。プレイヤーが占拠していたとしたら、何が何でも手

に入れてやるだろう。

 

「このあたりの荒れ地が草原になって薬草がとれるようになったらいいのにな。」

思わず口ずさんでしまう。そんなことになったら鎌を持って走り回りそうだ。もう

ハイテンションになって叫んで刈りまくるだろうなあ。狂喜乱舞だよもう。ああ。

言ってるそばからもう、うずうずしてくる。


 そう、私は今、鎌を振り回しながら荒れ地を歩いている。昔のRPGなんかで、ド

ット絵のキャラクターが武器を振りかざしながら歩いているようなあんな感じだ。

 あれって、傍から見ると、異常者にしか見えないんだけどね。剣や槍や斧を振

り回しながら歩くとか、危ないし。並んで歩いたらなお危ない。


 そんなこんなツッコミを入れていたら、なんだか変な感覚に襲われた。窮屈な感

じというか、なんだろうこれ。前に進もうとしているのに、上手く進んでいないよ

うな、後ろに戻っているような。

 ああそうか、やっぱりか。これ多分元々いた場所から別な場所に移動しているよ

うな状態だ。予想通りというか、だからこそブッチ達にも連絡がとれないだけでな

く、そもそもここまで来てくれないということなんだろう。

 

 …とはいえここからどうやって脱出すればいいって言うんだ。こういう空間に閉

じ込められているとでもいえばいいんだろうが、じゃあ簡単に抜け出せるってわけ

でもないだろうし、ブッチ達が私を救出しに来るのを待てばいいんだろうか。

 

 囚われのお姫様役なんていうと変な感じだなあ。だけどこのまま待つというのが

性に合わない。今まで数々のゲームで脱獄してきた私だし、こんなところからもさ

っさと抜け出したい。

 歩いても歩いても、樹海が遠くなるような感じ。私のいる位置から見えているあ

の樹海、まるで蜃気楼のようだ。ってかこれって…。


「…これ、結局いつもの無限ループとあんまり変わんないじゃん!!!」


このワンパターン好きすぎだろう。なんでこんなにいつも同じようなことをさせる

んだ。レトロゲーは、同じステージをずーっとぐるぐるさせたりするのは分かるけ

れど、それのオマージュとでも言いたいのだろうか。 

 だけど、もうちょっと面白い変化をつけて欲しい。なんで毎回毎回こういう事の

繰り返しなんだ。いや、もしかすると私に運が無いだけかもしれないけれど、毎度

このパターンだといい加減やめてくれと思う。


 またいつものコマンドの動きでもしたら出口が開くとかじゃないよねえ? これ

でまたしても移動出来たりしたらちょっと私、怒ってしまうぞ。ああ、それで抜け

出せないのも腹が立ってくるけれど。


「えーっと、北北南南西東西東で鎌をふる、ふる・・・。」

 何も起きなかった。まあこれが正常なんだろうけれど、ん?なんだろう。これ、

あ! 今回違った! 分かった! 見えない空気の壁みたいなのがある。なので

これを触りながら前に進んで、いてっ。ぶつかった。うぐぐぐ。


これ、単純に透明な空気の壁のある迷路だ。うわぁまた面倒くさいことになってき

たけど、これ斬ったりできないのかな。うわ、何も切れない。燃やしたりも、でき

ない。な、なんだよこれ。


これはすごい時間かかりそうだよ。少しずつしか進めないし。く、くそーっ。これ

ならいつもの無限ループの方が楽だった気がする! ああっ。さっきあんなことを

言ってしまったばかりにこう言う事になってしまっているじゃないだろうか。こん

なのありえないっての。あぁもう。


やってやろうじゃないか。迷路ね迷路。ああ得意だよ。こういうのは大得意。時間

さえかければ誰にだってとけるものなんだ! このわけの分からない透明な迷路く

らいクリアしてやる!


まずはむしゃくしているから体当たりだ。うぐぐぐぐ。強引に突破してや。むぐぐ。

ぐはぁ。やっぱり駄目か。こういうのを無理矢理通るのが好きなんだけれど、それ

を許してはくれないらしい。悔しい。


あっ。待てよ。これって、空から道を探せばいいんじゃないかなぁ。私って頭いい

な。ひじきにお願いして探してもらうとするか。


「母上。空にも壁があるようです…。」

「…だよねぇ。」

うん。分かってたよ。


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