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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第179話「恐竜との再戦」

 ブッチ達がやってこないことに対して違和感があるが、私一人だけがボスのいる

空間に紛れ込んでしまったのではないかと推定する。あるいは、別な何かと戦って

いてこれないのではないかと思われる。

 どちらにせよ、来てくれるかどうかも分からないので、恐竜は、私とひじきで倒

すしかないだろう。


 あの時、もう倒したというのは絶対にない。倒していたらそれこそキングモリコ

ングを倒した時のように何かがあっていいはずだし。それが無かったという事は生

き残っているということだ。

 

 ここで放置する事も考えたが、それはよくない。折角、追い詰めたというのもあ

るが手負いの奴があとで強くなって復讐しにくるというのが気に入らない。ここで

禍根を残したらいけない。

 私がプレイしてきたあるアクションゲームでは、毎回最後のボスが同じ奴だった

のだが、そいつを確実に仕留めてないからこそ、そんな事を繰り返すことになって

しまったのだった。

 

 またお前か、と言いたくなるようなうんざりするような展開だったが、それはそ

れで受け入れられたゲームではあるのだが、こうしてVRでプレイするゲームだと毎

回顔を合わせるなんて考えたらうんざりしてくる。

 

 だからこそ、確実に息の根を止めなければいけないと決意したのだった。そして

私は今、回復を済ませてから、恐竜がいたところに戻ろうと走っているんだけれど

おかしなことに気が付いた。

 

 樹海の木々が不気味に変化している。腐っているとでも言えばいいのだろうか。

なんだかおどろおどろしい雰囲気に変わっている。恐竜が何かしかけてこようとし

ているのだろうか。

 

 こういう場所に変化がある演出はよくある事だと思うが、現在はこんな事をされ

ても嫌な予感しかない。大体こういうタイミングで奇襲されるというのが定番だか

らだ。

 気配感知を使うが、特に何もじゃない、大きな何かがこっちに向かってきている。

これは、恐竜か。恐竜しかいないが、何だ、どうなっているんだ?


 そこへ足音が聞こえる。地面が揺れるような感覚。いや実際に揺れているのか。

私の位置を把握しているのか? くそっ。厄介だな。

 絶対にキれている状態だ。キングモリコングよりも大きな巨体だ。あんなものの

攻撃は一度当たっただけでお陀仏かもしれないので、甲殻化を使っておくとする。


「グヴォオオオオオオオオオオン!」

 私の前に再度姿を現した恐竜。皮膚が、いや全身が腐ったかのような姿をしてい

た。なんだこれ、ゾンビとでも言わんばかりだ。まさか私があそこで追い詰めた結

果、こんな風になったんだろうか。いや、それとも別な原因なのか?


「ミヅゲダアアアア!」

み、喋ったのかこいつ。何があったって言うんだよ。そういう演技なのか? それ

とも、元人間だったNPCか何かなのか? ええい、気にしている余裕なんか全くない

ぞ。


「照眼!」

「グアッ!?」


 よし、効いたか。一旦足止めした後に、考える。んん。こ、この恐竜でかくなっ

てないか!? ゾンビ化して巨大化した!? 多分全長20メートルは超えている。

げげえって感じだよ! なんでこんな事になっているんだよ! あの後何があった

のっていうんだ。

 

 悪の魔法使いみたいな奴がでてきて、こんな姿に変えてしまったとかいうオチじ

ゃないだろうな。こんなのをか弱い私の相手にさせるんじゃないっての!


「スキル調合! 真空狐火!」

鎌を思いっきり振り上げる。腐った部分があるならこれで燃やせばいいという単純

な考えだ。こういうゾンビ系は火に弱いのが定番! だったらこれで!


「ヴォアアア?」

え? 私は目を疑った。ゾンビ恐竜の皮膚に当たった瞬間に、真空狐火は一瞬で消

滅してしまった。あの皮膚。そういう効果があるってことか? おいおい、これは

たまったもんじゃないよ。爛れている体があんな耐性持つとかふざけてるのか。こ

う言う時は定番を裏切らなくていいんだよ!


「グラオエッ!」

「うわぁ!?」

ゾンビ恐竜はヘドロのような物を吐き出してきた。それを回避するが、ヘドロに当

たった木々や草が、腐れ落ちていくようだった。うわぁ、これがあのおどろおどろ

しくなった樹海の正体か。こいつがまき散らしていたってことか。うわぁ最悪だ。


「これならどうなんだ? 火薬草!」

これも火だし、効果は無いと思ったが試さずにはいられなかった。うん。効いてい

る様子はないな。爆発だからダメージになると思ったのに爆発が発生した瞬間に消

滅するとかこれはない。


「ゾレダケカァ?」

首をかしげるゾンビ恐竜。こいつ、意思があるだけに腹が立つな。くそう。


「オマエヲクッテヤルウウ。」

突進してくる。が、結構遅い。まぁゾンビだけに色々不健康になっているのだろう。

なんて思ったいたら甘かった。巨体だから、歩幅広いしすぐ追い付かれそうだ。


「ニゲロニゲロオヴォヴォヴォ」

ヘドロをばらまきながら迫ってくるゾンビ恐竜。うわぁなんなんだこいつぅ。そし

てなんで私がこんな奴の相手をしなきゃいけないんだ。なんだかもう嫌になってき

た。


「イカシテカエサンゾオオ」

「いつも私が言ってる台詞をぱくるなあああ!」

思わずツッコミを入れてしまったが、とても嫌な状況だ。巨大な相手を私一人で立

ち向かっているとかさ、考えたらすごいよ! 私すごい! こんなのから逃げ回っ

ているだけでもすごい!


「電撃の鞭!」

隙を見て、一回攻撃をしかけてみる。電撃の鞭で体を叩きつけてみる。ついでに、

爪も攻撃してみるが。


「ゲヒゲヒ。」

 まるで効果が無い。ど、どうしろと。こんなのどうしろと。これじゃあ雷獣破

が効くかどうかも怪しいし、時間凍結を使ったとしても有効打がない。あれか。

新しく覚えた隕石拳でも使って言うのか。


 だけど、この状況でまだ使ったこともないスキルを使うのはリスクが大きい。

それなら、ひじきにまた火遁を…。火は駄目か。なら他のはどうだろうって、ど

れも有効な気がしない。


 でも、何が効くのかは試していくしかない。火と雷は攻撃を試したことだし、

やるなら水だ。そうなると水遁か。あと土遁も試せそうだけれど、あれは防御

系特化って感じだし。


「ひじき。一匹だけで、出てきて。」

「ハイ!」

物は試しなので、一回だけ撃ってみることにする。


「グァア!? ナンダァ?」

「水遁!」


 ひじきの周囲に水の柱が舞い上がり、それがゾンビ恐竜に命中した。その結果

は。うわぁ何ともなってない。なんの意味もない。痛がっていたり苦しんでいる

様子まるでなし。実は効いているのにやせ我慢しているだけじゃないかと思って

もう一発やってみたけれど、効果が全然ない!


「ヴァカメェエ!」

恐竜が一回転する、そこで、尻尾がこちらに向かって飛んでくる。これは、やっ

ばい。

「浮遊!」


一瞬ぐらつくゾンビ恐竜だったが、尻尾は私の前方まで迫ってきている。鎌で、

いや、どうにもならない。これはもうどうしようもない。当たるしかない。こ

れは回避ができない。そして私がとった行動は。


「隕石拳!!!!!」


使ったことのないスキルを使う事だった。さっき覚えたばかりのものでどうなる

というわけでもないのだが、こういう時はやれることをやるだけだった。


「んげっ!?」

私の腕が徐々に隕石の塊のように大きくなっていく。な、なんだこれは!? 

隕石拳ってそういう物理的な意味での隕石!? うわぁなんだこれ、勝手に大きく

なって、地面にもめり込んでいくぅうう!? あ、ありえないでしょこれ!?

うわわわっ!? なんか、勝手に前に突き進むうううう!?


「ナ、ナンダゴレヴァ!?」

「私もききたいっつーのおおおおおおお!?」


隕石となった私の拳。そしてそれはそのまま前へと進む。いや推進していく。ど

んどん速くなる。う、うああああああああああ!


「グ、グアアアアアアアアア!?」

「ウッハアアアアアアアア!?」


隕石拳は、巨大なゾンビ恐竜を押し潰しながら前に突き進んでいく。こ、これは強

い! 強いけど地形を無視しているし、とんでもない環境破壊の荒業だ! という

かこれ、と、止まらないんだけどおおおおおおおおお!?


「グ、グワアアアア!?」

「ひ、ひいいいいいい!?」

絶叫マシンにでも乗ったのかってくらいの感覚が私を襲ってくる。おなかが浮いて

いるようなあの独特の感じもある。正に絶叫マシンそのものじゃないかこれ! う

うわぁああああああ、体が勝手に動いて。と、止めて! 誰か止めて!?

もう何百メートルか突き進んでいるよ! あたり一帯をぶっ飛ばしながら突き進ん

でいる。


「と、止めてえええええええええ!?」

一難去ってまた一難。どうすればいいんだよこれ。まだ止まらない。というかなん

かゾンビ恐竜をぺ、ぺしゃんこに押しつぶしちゃってるよこれ? な、なにこれ、

なんでこんな強すぎるスキルが。これが終わったあと、どんなリスクがあるんだ?


時間凍結みたいにリスクがあるはずだああああああって。まだ止まらない!?

う、と、止まれ、止まれ! 私のスキルなら止まれえええええええええ!

隕石拳を終わらあせようと必死で足掻いてみる。もういいだろという想いを込めて

必死になって止める。そして


突然、手は元に戻り隕石が消え、そのまま地面に投げ出される私だった。

「ぐっ。ぐぐぐぐぐぐぐぐぅうう!?」

慣性が働いているので、私はそのままどんどん転がっていく。ううううう。絶叫マ

シンから放り出される気分を味わうことになるなんて、あんまりだよもう!


 だけど、これであのゾンビ恐竜を倒したはずだ。なんかぶちっって潰れたような

感じがしたし。なんか釈然としない勝ち方だけど、終わりよければすべてよしだ。


「ふ、ふぅ。あ、あぁぁぁぁぁ薬草ぅううう。」

そりゃもう、回復が優先だったので、むしゃむしゃと薬草を食べる私だった。ああ

もうこれ心臓に悪すぎ。隕石拳は強いけど、これは安易に使えないな。切り札が増

えたのはいいことだけれど、これは辛過ぎる。


「あ、あれ、あれ朝日・・・? ふ。ふ。なんだこの出来過ぎだ光景は。」

地平線の向こうから日が昇ろうとしていた。私は隕石拳を撃った拳を掲げて叫んだ。

「ゾンビ恐竜に勝ったぞおおおおおおお!」

強いけれど癖のあるスキルって好きなので、今回の話を作ってみました。



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