表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
177/473

第177話「コング対恐竜対私」

 怪獣映画でも鑑賞しているような気分になった。こんな真夜中なのに、二匹の巨

体は迫力満点だった。

 モリコングと恐竜が熾烈な縄張り争いをしているのを間近で見ているが、こいつ

らは本気で大きい。モリコングの体長が8メートルくらいだとして、恐竜が10メー

トルは余裕で越えていそうだ。

 

 恐竜の突進をモリコングが抑えつける。そしてそのまま腕で首を絞めつけるが、

恐竜はじたばたと暴れだし、脱出した。

 今度は、尻尾を鞭のように振り回す恐竜に対して、近くにある木を引っこ抜いて

投げつけるが、それは恐竜の尻尾に当たり、へし折れる。

 一瞬だけ怯んだ恐竜に対して追い打ちをかけようとするモリコング。しかし恐竜

はすぐに態勢を立て直して、噛みつく行動にでた。


だが、その行動が仇となったのか、モリコングが腰を落とし、恐竜の顎下から右腕

で強烈なアッパーカットをくらわす。


「ヴォオオオオオオ!」


 悲痛の叫びをあげる恐竜。強烈な痛みが響いているようだ。これはモリコングに

軍配が上がるのだろうかと思っていた矢先に、恐竜がしかけた。また突進かと思い

きや、途中でジャンプして、上からモリコングに伸しかかった。

 

「ウヴォオオオ!」


 今度は、モリコングが苦しい声を上げる。恐竜は、モリコングの剛腕に噛みつく。

ところがそれがモリコングの体に貫通したということはないようだ。耐久性がある

ということなんだろうか。それともモリコングがマッチョだからこそ、防がれてい

るのだろうか。


 そこからも一進一退の攻防が繰り広げられる。恐竜の鋭い爪で斬り裂かれるもの

多少血がでる擦り傷如きではまるで効果がなさそうなモリコング。一方、モリコン

グも、殴る、蹴るなどで恐竜を攻撃しているが、大してダメージが通ってない模様。


 どっちも決め手に欠けるな。このままだと同士討ちも狙いそうだ。これは願って

ももない幸運じゃないか。私が手を出すまでもなく、この二匹は同士討ちするかも

しれない。そしたら漁夫の利で私にアイテムが手に入ってきてもおかしくはない!


よーし!もっとだもっと争うんだ! なんてどっちも応援しているかのような態度

でいたのが、まずかったらしい。いつの間にか近づきすぎており、恐竜は私の方を

睨みつけた。

 うおぅ。でかくて怖い。今までプレイしていたゲームではこういうキャラクター

が強いキャラだったりするんどえ侮れない


「グゥルルルルルルッル」


 いや、こっち見るなよ恐竜。お前の相手はそこのモリコングだろう? なんで私

の方を見てくる。やめろ、私を見るんじゃない。などと言うのが理解されることは

ないようだ。

 

 恐竜は私に標的を変えたような気がした。モリコングには今日が無いようになっ

た。なんなんだその清々しいまでのゲームらしい展開は。私なんて無関係でたまた

ま来ただけなのに。


「そっち! そっち! そっちに行け!」

モリコングを指さすが何の興味もないようですぐにそっぽを向いた。こんな時には

ブッチに連絡でもするか。


「グアアアアアアアアアアア!」

 ひときわ大きい叫び声を私に向かって飛ばしてくる恐竜。恐ろしい威嚇というか

威圧というか、すごいとしか思えない。だから何で私を標的にするんだ。

 おいモリコング、今一瞬こっち見て笑ったように思ったがお前まさか。いや、お

前らまさか。


「ヴォオオオオオオオ!」

 こ、こいつら、分かったぞ!? 激しい戦闘をして決着がつかなくてむしゃくし

ゃしたもんだから、私をおもちゃにして遊ぼうとかそういう考えだ! 絶対にそう

だ。なんか雰囲気が変わったし! くっそ。こんなでかい奴らどう倒せって言うん

だー。


「もう駄目だおしまいだぁああああ!」

なんて嘘で表情で相手を油断させただけだ。おしまいではないんだなそれが。

「真空波。」

「グァァァアア!???」

私は鎌で真空波を放つ。あまりに無動作だったので、無警戒になった恐竜の手の爪

と足の爪に容易に当てることができた。この手の恐竜によくあるので知っている人

はみんな知っている戦法。神経が沢山あるところを狙えば大体とても痛いというこ

となのだが、恐竜にしてもそれは同じだったようだ。


激痛でのたうち回り始めた。おし、これでモリコングはどうするのかと様子見をし

てみたが、意外にも冷静で何もすることはなかった。が、そんな余裕が気に入らな

かったので、攻撃を仕掛ける。


「浮遊!」

「ヴォ!?」

一瞬体が浮きあがったため体勢を崩すことになる。それを無視して、先に転がって

いる恐竜の口の中に、火薬草を投げ込む。暴れまわってるので大変かもしれないと

思ったが意外とすんなりいった。

「ギャアアアアア!?」


爪の次は口の中だ。この中に火薬草でも入れられたらたまったもんじゃないだろう。

口の中で爆発が起きたようで、目玉がいきなり膨れ上がり、そのまま倒れ込んだ。

ぴくぴくと体を震わせている。ここで一気に攻め込みたいと思ったが、モリコング

が後ろからやってきたので、一旦距離をとることにした。


そして蜂蜜の瓶のふたを開けて、そのまま中身をモリコングの顔に投げつけるよう

な形になる。よく当てるなあ私。こうやって投げてばかりのせいかコントロールが

とてもいい気がする。


「ヴォオ!? ヴォウウウウ!」

顔にべたりと着くが、それをべろべろとなめ始めた。しかし。その中には実は別な

物も仕込んでいたのだった。そう、海底洞窟で手に入れたエイの毒針だ。それを舐

めてしまえば毒にもなるだろうと予測しているが、思いっきりなめている。


毒耐性が無ければ、毒になって苦しむことになるだろうが、ボスなんてそういう耐

性持ちが多いので効果には期待できそうにない。


「ヴぉ・・・!」

恐竜め、もう気が付いたか。慌てて恐竜の傍に行く。今度は鼻の中に火薬草をしき

詰めていく。くしゃみで飛ばされそうになる前に。少し離れる。

「狐火!」


引火させる。鼻の穴でも爆発が発生する。沢山いれたのでかなりの威力のはずだ。

「グヴォオオオオオオオオオ!?」


ふ。ふふふふふふ。これだよこれ。こういう戦いがしたかったんだ私は。卑怯とい

われそうな戦い方だがこれでいいんだよ。だって私にはこういう戦い方しかできな

いんだから。

 こんな巨大なモンスターの相手なんてまともに出来るわけないんだよ全く。


「ぐぐぐぐ。」

「お、毒が効いてきたか?」

そういう振りかもしれないので警戒はする。恐竜はほぼ無力化したので、残りはこ

の筋肉ムキムキの巨大なモリコングのみだ。こいつもなんとしても、転がせたいと

ころなのだが、上手くいくかどうかだ。


「甲殻化!」

一応攻撃されたら嫌なので先日習得したばかりのスキルを使っておく。これで防御

力がアップすると思われる。


「浮遊! 」

連続で使うのもなんだが、さっさと転んでもらいたいだけだ。そして取り出したの

はオークの槍だ。これも何本か持っているだけだったので、さっさと投げつけてし

まうことにした。狙い所はどこでもよかったので当たればいいだけだ。


「ググググググ! グアアアアア!」

あ、これはやばい。こいつキれだした。私にいいように翻弄されているのが気に入

らなかったんだな。これはまずいな。そろそろブッチ達が来てくれるころあいじゃ

ないのかと予想しているんだがどうもそうはいかないみたいだし。


一人で解決するしかないな。よし。私は、いつも通り切り札の準備にとりかかる。

錬金術士の杖を取り出し、そして


「久々だな。」

「大事な時に話しかけてくるな魔者。」

「つめてえなあオイ。」

いつも話しかけているのに無視してるからだろうと言いたい。心底言ってやりたい。


「お前の持っているこの錬金術士の杖だが。」

「ん?」

「一時的にスキルを調合なんてすることができるんだ。」

そういう便利な事は最初に言った時に言えってんだああああああああ。ええっと。


「真空波と狐火を調合すると?」

「真空狐火とかになるんじゃね?」


適当過ぎる! あーもう。そういう有益な情報をなんで前の時に教えてくれなかっ

たんだこいつめええ。

「まぁ今回も気まぐれって奴だ。あばよー。」


き、消えた。こいつ。肝心な時に。ああもうやけくそだ。これでもくらえ。

「真空狐火!」


メッセージ:スキルを調合しました。



 それは、一瞬の事だった。真空波に当たった者は、その体を切り刻まれる。そん

な効果がある。しかし、その後が違った。

モリコングの右膝に命中したその真空の刃が切り刻むと同時に、傷口を猛烈な勢い

で燃やし始めた。


「グアアアアアアアアア!?」

突如倒れ込んだモリコング。見ると皮膚えぐれているように見える。な、なんてい

う恐ろしい威力なんだ。怖いよ。っていうかこれが理由で教えてくれなかったとで

もいうのか。今更何でなのか分からないけど、これは怖い。


 覚醒なんて言葉がある。この言葉は急に強くなったりした人なんかに送られるん

だけれど、今の私がそういう感じだろうか。とはいえ、全く強くなった実感がない。

実は私は超強かったんだみたいにどうしても思えない。


ただ運よくスキルを手に入れて魔者になっただけという気持ちがある。運も実力の

うちなんて言われればそうなんだろうなあと思うけれど、少しきにくわない感じに

なってしまった。


魔者はひねくれているからこういうタイミングで言ってきたんだろうなあ。本当に

嫌な奴だなあ。こうして強くなれるのは良いんだけど、そういうのはもっと別な時

に教えてくれても良かったじゃないか。あーむかつくなア。


「道具に負けるなってことなのは分かっているんだよこっちだってさ。」

 思わず愚痴を言ってしまうが、利用できるものは何だって利用する。それが私の

戦い方だ。それで勝てばいいんだ。勝つことが大事なんだ。

 だってゲームで負けたら悔しいし。そんなのは嫌だ。だからどういうことになろ

うとそれを受け入れる。


「モリコングと、まだ生きてるのか分からないけど恐竜。そろそろ決着つけよう。」

大して戦ってもいないのにそろそろも何もないと思うんだけれど、もういいんだ。

私の戦闘方法なんて単純だし。


「グオオオオオオオオ!」

なんでそこでドラミングをする。あっドラミングって言うのは胸部をどんどん叩い

てってそんな解説をしたいんじゃない! 

 

「オーケー。それじゃあ覚悟しな。お前をぶっ潰してやるから。」

こうして私とモリコングの第二ラウンドだか第三ラウンドだかが始まるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ