表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
174/473

第174話「黒蛾」

 繭と言えば虫だろうか。まいったな、私は虫が得意ではない。この光自体は綺麗

に見えるが、虫が生まれてくるならさっさと退散したほうがいいだろう。

 あれ、ひょっとして、これは誘い込まれた? こういう綺麗な光に誘われてうっ

かり近づくようになっていて、あ、蜘蛛の巣とかそれに近い物なんじゃないかこれ。


 嫌な予感がしてきた。さっさと離れよう。私が近づいてから、なんだか光が輝い

たり、暗くなったりを繰り返し始めたし、すごく怪しい。これは絶対に何か誕生す

る。騒動に巻き込まれる前に、逃げてしまおう。


 すぐに撤収しようとする。その瞬間、軋むような音が聞こえる。何かが弾ける音

も聞こえる。これはまずい。


「狐火!」


 何が生まれるか分からないうちに攻撃を仕掛けるのもどうかと思ったが、リスク

を避ける方が重要だ。実は綺麗な蝶が誕生するとかいう設定があったとしても、何

が起こるか分からない状況だったら、なりふり構っていられない。

 さっさと燃やすに限る。というかこれ、絶対虫って確信がある。こんな巨大な繭

だし蛾とか生まれてくるに違いが無い。

 そんでもって状態異常でも引き起こす鱗粉をばらまいたりしそうだ。


 うん。大丈夫だ。私は正常だ。ただちょっと巨大な蛾が襲い掛かってきたら心底

嫌だなあと思っただけだ。

 海底洞窟で蜘蛛と戦ったばかりなんだから、しばらく虫系の相手はしたくないと

思っていたのにこんなことになるのか。嫌だなあ虫。


「・・・。燃えてない。」

 狐火を繭に放ったのに、全く燃えていない。火耐性持ちだったか。それとも繭で

あるときはダメージが通らない仕組みなのか。むぅ、あの繭欲しくなってきたぞ。

絹みたいになんだか高価なアイテムだったりするんじゃないのか。

 なんて言ってる場合じゃない! なんか出てきそうだ。

 

「グゥウウイイイイイイン」


 なんだか、甲高い音が聞こえる。うう、なんか嫌な音が。繭がひび割れているよ

うだ。これはもう駄目だ。逃げる。

 後ろを振り向かずに私は逃げ出した。何が迫ってくるか分からないまま逃げるの

は好きじゃないんだけれどやむを得ない。


 木々が倒れるような音がする、何かが向かってくるような音がする。振り向いた

らやばい気がする。うわぁ焦る。なんか操作性の悪いホラーゲームでもやっている

ような気分になってきた。


 あれ? なんだ。気配感知で4匹、5匹、6匹。6匹もいるのか。あれだけ大きな繭

だったから数がいてもおかしくはないと思うけれど、1匹じゃなかったのか。

 そして結局私を追いかけてきているわけか。なんか樹海に入ってから追いかけっ

こばっかりだなあ。


 本当に私ってば、モテモテだな! …嫌だよ! なんでそんな襲い掛かられなき

ゃいけないの!? 最初はモリコング、次にプレイヤー? そして今回がまだどん

な奴なのは見てないけど多分虫! 不運続きな気がしてきた。


 とはいえ自分から首を突っ込んでいるというのも確かなので、責任は私にもある

だろう。正直、最初にブッチ達の所に戻っていればと思ったけれど、後悔するだけ

なのでやめておく。

 

 なんだか最終的にはこの樹海で指名手配されているかのように襲撃されるように

なってしまうんじゃないだろうか。短時間でこんな目に遭うなんてそうそうないと

思うし。

 走る。駆ける。木の根に引っかかりそうになったり、狭い道で体をぶつけたりし

ながら進んでいくが、6匹の虫をまくことができない。なんで私の居場所が分かる

んだってくらい正確に向かってきている気がするけれど、どうせスキルなんだろう

なあ。


 こっちの位置がばれるって本当に嫌だなあ。それといつまでも追いかけてくると

か。どうしてこう執念深く追いかけようとしてくるんだ。全くもう。私の事なんか

放っておいてくれっての!


「走ってばっかりとか!」

VRなので走って疲労するというのはないんだけれど、逃げても逃げても追いつかれ

るので、心が落ち着かない。というか本当に正確に私を狙ってくるなあこいつら。

どこまで来るつもりなんだ。


なんでこんなに必死なんだ。そんなに繭を攻撃されたのが許せなかったのか。いや

ううん。ん? もしかして、逆探知か? 今更だけど私は気配感知を使っているけ

れど逆にその気配感知を使って探っている相手を発見するようなスキルとかあるん

じゃないだろうか。


そ、そうだよ、ありえるじゃないか。こっちが相手を探そうとしたらそれが目印に

なってしまうって。もしかしてこれ、気配感知を解除したら襲われなくなるんじゃ

ないだろうか。


「気配感知おーふ!」

…。上手く切れない! やったね! よくないっつーの! 一人でツッコミを

入れてしまった。まぁいいや。なんとなく襲われる理由が分かったんだから。それ

と今後の課題は気配感知のオフだな。


 本当にそれが原因なのかは不明だけれど、有名な言葉がある。深淵を覗くなんと

かかんとかって言うのだ。ああ、有名なはずなのにうろ覚えだな私。

 考える余裕が出来てきた気がするんだけれど、そろそろ正体でも見てみるか。頼

むからグロテスクな奴じゃありませんように!


一瞬後ろを振り返る。全長30cmくらいの真っ黒い蛾だった。あぁ、なんだ。案外怖

くないなって思ったけど、6匹もいると思うと少しびびった。意外とサイズ大きい

し、執拗に追いかけてくるし。なんなんだこいつらぁ。消え去ってくれ。

威圧でもしてみるか。


「威圧!」

私は後ろを振り向き、威圧を全開にして放つ。これで怯むか逃げてくれたりはしな

いだろうか。お。なんか動きが鈍くなった。これで大丈夫・・・。じゃない。こっ

ちに向かってきた。じゃあ今度は照眼だーーー!

「照眼!」

放った瞬間に気づいた。こういう虫ってよく電灯とか照明に群がったりしているし

光なんて大して意味がないんじゃないだろうかと。


「グゥイイイイン!」

またしてもあの甲高い音がしてくる。さっきよりも高い。なんだか元気をだしたか

のように見える。はっ! そうか、繭も発行していたし光が好物ってことなんじゃ

ないのか。わわわ。不覚と言うか、ドジすぎるだろ私!


「狐火!」

 もう戦おう。段々面倒くさくなってきたし。こいつらなんか攻撃してきたという

のもないし。

 繭の時は火を防がれたけれど、今度は効くような気がしたんだけど…。うわぁ、

全然効果がないようだ。虫なのに火に耐性があるとかすごいな。こいつら、ボス級

の強さでもあるのだろうか。


「ふぅ。よし。いいだろうお前ら。久々の泥試合に付き合ってもらうとするか。」

鎌を取り出す。今回は、これと電撃の鞭でひたすら攻撃していこうと思う。口の中

に薬草を含んでおけばなんとかなると思うし。

 危険なのは、鱗粉をばらまかれる事か。気が付かないうちに眠り攻撃を受けてい

たってことにならないようにしないと。毒と麻痺にはならないので、眠りだけ注意

しないといけないな。

 

「おりゃああああ!」

「グゥウウイイイイイイン!」


私が鎌を振り上げた、黒い蛾に当たった瞬間。


メッセージ:黒蛾を召喚獣として取り込みました。


え? なんだって? 黒蛾? そのまますぎるけど、召喚獣? なんでまたそんな

のが召喚獣になる? 理解が追い付かない。


「母上、私達の母上。」

 頭の中に声が響いてくる。いや母上って。そんな刷り込みみたいな。そうか刷り

込みというわけか。初めて見たのが私の姿だったからそれが刷り込まれてしまった

というわけなのか。


「母ってわけではないんだけれど。」

 でもそういうことにされてしまっているようだし。複雑な心境だ。向こうにして

みればその通りなんだろうけれど、私はただ単に近づいてしまっただけだし。あれ、

じゃあこの黒蛾の本当の親って言うのもどこかにいるんじゃないだろうか。

 

 大丈夫なのかこれ。いきなり本物の母を名乗る存在が襲い掛かってきたりしない

か。


「母上。母上。」

うおおおおおお。母とかない。私はお前たちの母じゃないんだよぉお。くそうこれ

はとんだアクシデントだよ。みんなと再会した時にまた色々言われる。というかな

んでまた仲間みたいなのが増えるんだ。いい加減にしてくれ。


「あぁもう。じゃあそういうことにしておこう。」

もうどうにでもなれってんだー。


「しょうがない。それじゃあ名前でもつけるとするか。」

といってもくろごまが黒で名前をとっているし、黒系で名前ってつけにくいなあ。

あっ。あれがあったぞ!


「ねぇ。黒蛾。ひじきって名前はどう?」

「母上! 私嬉しい!」

喜んでもらえたようだ。また仲間が増えてしまったが、今回は召喚獣として取り込

んだというのが分からない。どこにいても呼び出せるようになるとかなのかな。

「母上。一緒。」

黒蛾たちは私に接触してくる。うっ。ちょっとこれは不気味だ。ってあれ消えた?


(母上、私達いつでも呼び出せる。私達、偵察とか、色々出来ます。でも母上の魔

力などを使います。)

そういうことか。むぅ。使い所が難しい気がするなあ。けど、これで少しは戦いの

幅が広がったってことになるし、良かったのかな。


 ひとまずはこれでひと段落したけれど、まさか母親認定されてしまうとは思わな

かったなあ。しかも蛾の母。…。うわあああああああ。これ絶対ブッチにからかわ

れるじゃないか。よし! そういうワンパターンなことをされたら私は情け容赦な

く、ブッチに攻撃しよう。雷獣破を使ってもいい。

 いつものようにくだらないジョークを言わせて溜まるか。


(母上。どうしました?)

いや、なんでもないよ。ううん。頭の中に語り掛けられるって変な感じだな。まる

で幻聴でも聞こえてくるような。


「そういえばこれで呼び出せるのかな? ひじき召喚。」


お。目の前に出てきた。

「こうすれば私達、出ることできます。私達、母上の意志で消えたりできます。」


便利だな。でもこうして話しているのをまるで道具みたいに扱うのはちょっと気が

引けてくる。そこは少し気にかかるなあ。


「よーし。戻ってひじき。」

その場で消える黒蛾ひじき。ところで、ひじきってオスなんだろうかメスなんだろ

うか。


(女です。)


そうなんだ…。

こうして私の想定外の娘ができてしまったのであった。

また新しい仲間が増えました。

暇な方がおりましたら、評価、ブックマーク等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ