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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第172話「樹海の出会い」

 現実では、広大な樹海に一人で入るというのは愚か極まりない行為だが、これは

ゲームなのが気が楽な所だ。

 水に食料にだけじゃなく、疲労だって重なっていくだろう。しかし、そのような

設定は、ゲーム内のキャラクターのみに限定されている。だから私が、ここでどれ

だけ迷おうが、ひたすら歩き続ければいいだけというのは気が楽だった。


 そういえば、マップの一か所一か所を調べた時のことを思い出すなあ。全マップ

に隠しアイテムが無いかを探し続けた記憶がある。それだけじゃない、脱出ゲーム

などでもあらゆるところを徹底的に探し回った。

 心情的にはそれをやっていた時とあまり変わっていない。根掘り葉掘りとことん

歩いていくだけだ。


「モンスターがどう出てくるかが問題だなあ。」

 樹海には多種多様な生物がいるだろうから、モンスターだっているはずだ。さっ

き戦ったモリコング以外でも、鳥や熊、狼などがいてもおかしくはないだろう。あ

まり出会いたくないのは、食虫植物だとか虫系だな。

 蜂は、散々戦ったので慣れてきているけれど、そんなのではなく蠅とかがわいて

きたらと考えると悪寒が走る。


 不気味な模様の花が咲いている。それが風に揺られては花粉のような物を飛ばし

てこないとは限らないので、なるべく近づかないようにする。

 空を見上げると、背の高い木々に、果実が実っているように見える。なんだか刺

々しい形をしているので、あれを落とされたら嫌だなあと思う。

 

「回収はしたいけど、リスクが付きまとうのが面倒だなあ。」

 今は、ブッチ達の元へ向かうのが優先事項だが、その後この辺りにもう一回来れ

るかと言われたら自信がない。だから、興味のある果実だの茸を採集できないまま

になるというのがすごく残念に感じる。


 死んだらお話にならないしなあ。そういう意味だと単純に襲い掛かってくるだけ

のモンスターって案外楽な相手なのではないかと感じる。

 やはり、何が起こるのか分からない、正体不明の何かの存在こそが、最も危険な

ものなんじゃないのかな。知らないところから一方的に攻撃されるとかあるけれど

何がどうなっているのか分からないままやられたのはトラウマだなあ。


 そうだ。この樹海でもどこから襲われるかわかったもんじゃないだろうしな。地

面から急に出てくる敵とか、木から飛び降りてきたり、背後からいきなり攻撃をし

かけられたりなんてありそうだ。

 

 待てよ。そういう面倒な事がある場所だっていうのに、ブッチが私を必要とする

なんておかしくないか。ここを歩くだけで結構疲れるのに、それを私一人で行くな

んて、ああ、素直にブッチに迎えに来てもらえばよかった。


 迷いやすいからか。だからブッチは迎えに行こうかなんて最初に言ってたのか。

軽い気持ちで断ったのがあだとなってしまったなあ。がっくりだ。

 落ち込んでばかりもいられないなあ。なんかさっきから何かに見られているよう

な感じもするし、ここは威圧でも一回放っておくか。


「威圧!」


 私が威圧を放った瞬間、木々や草花がなびく。そして小鳥が羽ばたいた。ううん。

どうやらこの樹海自体から敵意のような物を向けられているんじゃないだろうか。

この樹海にいる精霊とかそういう存在が設定されていて、この樹海を荒らさないで

的な展開かもしれないな。

 ってそうか! それを考えるとさっき狐火とか散々使ってしまったから、恨まれ

ているかもしれないってことか! この樹海に住むよく分からない存在から、出て

いけみたいに思われても仕方がないな。


 でも、そんなことされても私、知らないし! 正々堂々と抗議しに来いってんだ。

ああ、ざわざわしているのが抗議ってことか。うーん、鈍感ですみませんねとしか

思わないな。


 なんか腹が立ってきたな。折角海底洞窟を抜けて人間達にでも会いに行こうとし

ているのに、なんでこんな人里離れたような場所を歩かなきゃいけないのか。それ

とも、ここを突き進めば人間達に会えるのか。

 ここが辺境の地で、まだまだ遠くに行かないと私の望みが叶わないというのであ

れば、こんなところ無視してさっさと先に進みたいんだけどなあ。


 そ、そうだよ。一応私はももりーずVのリーダーなんだし、ここはみんなに任せ

て私一人先に街とかそういうところ探しに偵察に行くみたいなのでもいいかもしれ

ない。と、思ったところでそれだとたけのこ達も置いていってしまうのと、流石に

酷いかもしれないと思った。


 あぁ…。モリコングと戦うメリットが見いだせない。倒すと何かいいことがある

んだっけ? いやないよね今のところ。そうだ、モリコングと戦うと何か貰えるの

かとかメッセージしておこうかな。一応今向かっていることも添えて。


マブダチからのメッセージ:倒したら満足感がある!

エリーからのメッセージ:強そうなので倒したら楽しいかな、って。


喧嘩を吹っ掛けにいきたいだけか! いやいや。でも先に攻撃されたりしたから反

撃に出ることにしたのかもしれないし。そういうことにしておこうかな。


「おい。」

面倒くさいなぁ、誰だよこんな私に声をかけてくるのは。え? 声? 幻聴か?


「おい。お前だよ。」

あっ、これもっと面倒くさいことになる展開だ。私の目の前からは聞こえてこない

し、多分後ろから声をかけられているんだな。声は、察するに男か。


「聞こえないのか。返事をしろ。」

死んでいる振りでもしてみるか。立っているから無理だな。それかこのまましばら

くただの銅像みたいなフリに徹するか。それかいきなり走り出して逃げるか。


「おい、無視してんじゃねえぞ。」

声が近くなってくる。言葉遣いの悪い奴だなあ。これプレイヤーなのかな。プレイ

ヤーだったら、問答無用で戦おうかな。


「何の用?」

振り返らず、聞き返す。


「聞こえてんじゃねえか。おい、お前、プレイヤーか?」

そう聞こえた瞬間、私は、

「これ、プレゼント!」

「ん? おっ!?」


 火薬草を20個ほど投げつけて、走り出した。いやだってあれはない。失礼すぎる。

いきなりお前呼ばわりはない。問答無用で攻撃をする。それが私だ。ああいう輩と

関わり合いになると、ろくなことがない。

 

 私は、あの手の奴が嫌いだ。大体子供が偉そうなことを言ってるだけなのだが、

すごく面倒くさいことにしかならないからだ。

 ネットで調べた情報を鵜呑みにして、自分の足で確かめたわけでもないのに、そ

れを自分が手に入れたかのように話し出す。

 情報収集が大事とか言うが、それも全て他人が調査した結果を取っているだけと

いう始末。あの口調で話しかけてくる奴は大体そうに決まっている。


 だから私は攻撃をして逃げ出した。むかついたし。

「お前ええええええ! なめんじゃねええ!」


おお、無事だったのか。もっと投げつけておけばよかったなあ。次はなんだろう、

俺に手を出したことを後悔させてやるぜとか言うんだろうか。


「お前! 俺に手を出したことを後悔させてやるぜ!」

「ブッ。ブハハハハハ!」

「ンダコラアアアア!」


いや、笑うわそんなん。やめてくれ、その口撃は私の笑いのツボに聞く。う、だめ

だ。わざとやっているんじゃないのかこいつ。それともそういうロールプレイング

でもやっているってことなんだろうか。


「俺から逃げられるわけないだろ! ダッシュ!」

あ、なんかスキルを使ったらしい。ならこっちも

「狐火!」

口から火を吐くが、目をつぶっておく。敵の姿を見たくない。こっちの顔も見せた

くはないが、手で隠しておいた。よし、これならいい感じだ。


「なっ!? お前、さっきの爆発もそうだが、こんなところで火を使うな!」

そんなことは知らん。ゴミは燃やすだけだ。よし、これで逃げ切れそうだ。全く、

私なんかを追いかけてくるなっての。そしてまたお前って言ったな。


なんなんだこいつ。偉そうだなあ。こんな偉そうな奴に絡まれるなんて災難だよも

う。さっさと消えてくれ。


「なんで逃げるんだ!」

 追いかけてくるからだし。あと態度が悪いと気づけ。気づかないならそれっきり

だ。そして私は、叫び声を無視して、走り続けた。

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