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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第171話「モリコング」

 手っ取り早くこの樹海を燃やしてしまおうかという考えがあった。そんなことを

思ったきっかけは、もう少し自由にゲームプレイをしてみようかなと思ったところ

にある。

 一週間ログインしなかった間に、自分のゲームプレイスタイルが、良い人向けに

寄り過ぎていた気がしたからだ。私としては、善人として活動したい気持ちは実の

ところほとんどない。まず自分が楽しめればいいと言うのがある。

 

 何者にも縛られずにゲームをしたい気持ち、というものなんだろうか。自分が思

うがままにやりたいようにやるのが大事だと思っている。最初に始めたころから、

私にも仲間が増えたり、出来ることが増えてしまった結果、頭の中が凝り固まって

きた気がする。

 だからなんだか平凡な形に収まってしまっているような気がしていた。だからこ

そ、もはやそんなものを取っ払って行動に出ようと思った。


「狐火!」


私は後ろから追いかけてきているであろう敵に向かって火を吐く。これで樹木に火

がつこうが、知ったことではないという思いだった。それに、前回たけのこ森林で

狐火を使って燃やした時はすぐに復活したことだし、大丈夫だろうという実感があ

ってやった。


ここにブッチ達がいたとしても、多分逃げ切れるだろう。正しくは逃げ切れないわ

けがないと判断しているが。私がいるということは、私なら何かやらかすという事

がみんな頭の中に入っていると思う。だからこそ、私はやる。


「ヴォオオオ!」

後方に向かってしっかりと狐火を撃ったはずなのだが、それが打ち消されたか何か

したのだろうか。ものともしないような雄叫びが、樹海に響き渡る。火に耐性があ

るモンスターってことなんだろうか。だけど。


 今度は、後ろに火薬草を投げつけながら走る。火薬草は大量にあるので、私はさ

ながら爆弾魔みたいなものだろうか。

 敵の姿が見えているわけではないので、単純に後ろに投げつけるだけだ。一応、

爆発音が聞こえたりはするのだけれど、命中しているかどうかは分からない。だけ

ど、気配感知では、敵の動きが鈍っているのが確認できているため、足止めには成

功しているようだ。


「あぁーなんだか楽しいな!」

 やりたいようにやるって楽しいもんだなあとつくづく思う。この樹海がどうなろ

うが、私には知ったことではない。私の邪魔をする奴がいるなら環境破壊も辞さな

いのだ。

 

「キサマカァ! ココデアバレテイルノハァ!!」

目の前に、緑色をした巨大なゴリラが現れた。こいつがモリコングだな。間違いな

い。いやそのボスみたいな感じかもしれないけれどそれもどうでもいい。さっさと

火薬草を投げつける。


 ここは戦場だ。問答無用で攻撃を仕掛けても悪いなんて事は無い。戦場に甘えな

んて許されないのだ。

 どうせこの程度の攻撃は効いていないという判断のもと、動き出す。


「ソノテイドノコウゲキ!」

「何発耐えられるかな?」

 思わず、笑ってしまった。火薬草をどれだけ使えば倒せるのかを検証するのにい

い機会だと思った。これまで私は、今後の事を考えて火薬草を貯めてきたが、この

ような敵相手にほとんど役に立たなくなっているのであれば、必要性は薄くなる。

 ただし、この攻撃を何千発も食らわせれば倒せるとかいうのであれば、私はいく

らでも集める気だ。


「ググ。」

 モリコングは爆発の衝撃を完全に軽減できているというわけではないと思う。恐

らく私が投げつけた瞬間に自分の体を硬化させるなりなんなりして耐えているのだ

と推測される。

 それがどれだけ長続きできるのかを私は観測する。うん。なんだか初心者に戻っ

たかのような気分だ。


「コノ!」

「ほいほいほいっと。」


更に後ろに向かって投げておく。そろそろ囲まれるであろうことを予想していたの

で前方のこいつだけに構っている暇はない。そして、更に狐火も撃っておく。よし

あとは前の奴が私に攻撃を仕掛けてくるはずだ。


「ヌアアアアアア!」

「狐火!」

 振り下ろされる剛腕を回避し、狐火をその腕に当てる。危ないなあ。今の一撃を

食らってたらまずかったかもしれないが、ここは油断していない。なんだかいつも

よりも冷静に戦えている気がする。なんでだろうか。


「ウットオシイヤツメ。」

「それが取り柄だからね。」

狐火をもろにくらっているはずなのに、大して燃えていない。体を硬質化させると

耐性がつくのは間違いなしなのと、普段の状態でもあまり燃えないってことだろう

な。なら次だ。


「ギィ!」

「!?」

危なかった。目の前にいたモリコングより一回り小さいサイズのモリコングだ。う

うん。こいつらはリトルコングとでも呼んでおこうか。こいつらは動きがモリコン

グよりも機敏な気がするな。そして4匹か。


「照眼! そしてぇ! けむり草!」

「グッ!」

 ようやく密林で採取したけむり草の出番がきたので使ってみる。これで一旦視界

を遮ることができたが。意外と効果のあるもんだな。そんでもって、ここで一度逃

げることにした。

 

 私は、こいつらと戦う必要が無い。それにこんな何匹も襲い掛かってきたら私の

方が負けるのは明らかだ。戦力差がある以上、むやみに戦いたくはない。こんなと

ころで時間凍結も使いたくないし。

 


「ニガサンゾオオ!」

「浮遊!」


一瞬浮かす。それだけで体制を崩すモリコングと、そしてリトルコング。複数に使

えるのもこのスキルのいいところだなあ。追加で。


「真空波!」

これを私は、2回撃った。モリコングの近くにいたリトルコング相手に、だ。さて

視界が悪いなかモリコングはどうでるのかと思ったが。

「ヌオオオオ!」


 モリコングは、リトルコング達に覆いかぶさるようにして、庇った。血飛沫が背

中から出た。これで答えは出た。このモリコングとやら、仲間思いってことだ。あ

るいはこいつの子供みたいなものなのかもしれないが。

 

 なら、徹底的にこのリトルコングを攻撃し続ければいいんだな。敵の弱点を知る

ことが出来てよかった。それじゃあこのまま逃げるとするかな。


「グ・・・マテ!」

そんなことを言われても待つ気はさらさらない。というかこいつらどうせ私の位置

を探るスキルとか持っているんだろうし、後で追いかけて来ればいいだろうと。

 私は、無視して逃げ出す。モリコングもリトルコングも追いかけてくることはし

なかった。

 

 手負いの状態というか、リトルコングという足枷をしているのだから、どうした

って全力は出せなくなる。それに気づいてはっとする。私もそういう状態になって

いたんだなってことだ。

 最近は、あまり気にしないようにしていたが、心の奥深くでは、たけのこ達が死

ぬことを意識しているようで、冷静になれていなかったかのようだ。


 それを、一週間休んだことがいい影響になったのかな。それとも、まさかだと思

うけれど、般若の仮面を一回外したから、いやそれはないか。ゲームのアイテムが

そういう部分に干渉してくるなんてことはないだろうし。

 

なんだか重荷から解き放たれたような気分だ。今なら色んな奴に勝てる様な気がし

てきたと言いたいところだけど、だめだな。やっぱりアイテムが欲しい。沢山色ん

なアイテムを集めていかないと力不足になる。


「火薬草がなぁ。」

火薬草より威力が高いものが欲しい。多分これを原料にしてより強い爆発物でも作

れると思う。そのために必要なものを探して行かないといけないな。


そして私は、樹海を歩くことを再開する。今の私は毒耐性と麻痺耐性があるから、

そのあたりの木々に触れても平気だけれど、眠り耐性がないので、安易に触れない。

眠り耐性も欲しいところだ。

 

 薬草を食べる。これでさっき失った体力を回復だ。ここからどうしようかを考え

る。ただ単に、適当に走ってきてしまったので、どこから来たのかも分からなくな

ってしまっている。ひたすら思うがままに歩いているが、奥地に強いモンスターが

いたらまずい。


 そういえばRPGの設定なんかでは、洞窟の出入り口の近くにいるモンスターは割

と弱かったりするのを覚えている。あれってそれでいいのかなって思うことが多々

あったなあ。侵入者を消耗させるという意味ではいいのかもしれないけれど、余り

に弱いなら、それ無駄な犠牲じゃないのかなんて思うし。


「でも最初から強い奴がいたらいたで、全力で挑むだけだもんなあ。」


 私の予想だとモリコングより大物がいる。あいつは精々中ボスくらいだ。あいつ

より強いとなるとブッチでも苦戦すると言うのがよく分かるけれど、つまり、ここ

でそいつと遭遇してしまった場合、私は生き残れるのかということが問題だ。


 どんどん奥地に進んでいるから、下手すれば今すぐにでも遭遇するだろう。あと

もしかしたら、巨大ではなくサイズは小さいかもしれないなあ。例えばくろごまく

らいの大きさ。

 敵が変身してどんどん大きくなると思ったら、最終形態は小さくなるなんてのも

よくあることだし。


 どこかにそういうのが潜んでいないか探ってみるが、気配感知には引っかからな

い。このまま警戒しながら歩くしかないんだなあ。これはいつもの事か。

 あたりを見回す。狐火を放ったので火事ににでもなっていないかと思ったが、煙

が上がっているようなことはなかった。


 地形に影響しないというのであれば、今後はどんどん使って生きたいところ何だ

けれど全く燃えないってわけでもないだろうから。これからも調査しないといけな

いなあ。

 

 それにしても、ここは本当にどこなんだろう。完全に迷ってしまっている。ブッ

チに連絡をいれたくもないなあ。向こうからは来ているかなあ。


マブダチからのメッセージ:ねっこちゃん。迷ったでしょ?


 黙らんか。ああもうメッセージに対してツッコミを入れてしまった。嫌だな。返

事をしたくないな。よし、ここはそっちに向かっているとだけ言っておこう。これ

でオーケイだ。私は迷ってなどいない!

 ただ、ちょっとエキサイトしてこのあたりをうろうろしたくなっただけなんだ。


「これはもう、本当に何か収穫を見つけない事にはブッチ達と会いたくないな。」


絶対に迷っていたと言ってくるに違いない。嫌だ、それはなんか嫌だ。応援にかけ

つけてきたのにここで迷っているなんて認めたくはない。


 なので、私は場合によってはここの大ボスを一人でも倒そうと思うのだった。

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