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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第169話「般若レディの素顔」

 一向にメッセージの返事は来ない。海岸を歩いてから結構経過しているんだが、

どうしてしまったというのだろうか。まさか実は、みんなしてどこかに連れ去られ

てしまったなんてことはないのだろうか。


 なんて最初は少しだけ思いふけってみたが、多分みんな一緒だろうと楽観的に考

えることにした。確かに少しは心配しているが、何がどうなっているのかは頭の中

で考えるだけじゃ解決はしないので、最悪の状況だけ想定しておくだけだ。

 もし何かあったら、こうしようああしようみたいな考えはまとまっている。だか

ら後はそうならないよう祈るだけだ。


「真っ白な砂浜と、青い海、綺麗だなあ。」

 もう何度そう思ったのか数知れない。どこかのプライベートビーチとでも言わん

ばかりの場所だし。実際そうだったとするといきなり高額請求がきたりするんじゃ

ないかと勘繰ってしまう。

 

 そういえばNPC、つまりプレイヤーじゃないゲームの世界のキャラクターとして

も人間が存在しているはずなので、NPCが管理している場所っていうのも考えられ

そうだ。


 NPCが私を見たらどんな反応をするのかなあ。って、あ。そうだ。今って私一人

なんだよな。ここなら、仮面って外してみてもいいんだろうか。いや、だけど自分

でも見るのが恥ずかしいんだよな。どうしてか。素顔がどうなっているのかってな

んだかこう、気にはなっているんだけど、すごく恥ずかしい。

 

 外してみるか? いやって何やってるんだ私。鏡も何も持ってないし、自分の顔

を映せるものなんて、海面?でもそんな詳細には見えないしなあ。ああ、ログイン

するとき自分の見た目が確認できるはずなので、仮面を外してそこで見てみればい

いんだろうか。


…よし、やってみるか。ちゃんと確認できる機会なんてそうそうないだろうし。み

んなと合流してしまったら、それこそいつ自分の顔を見られるか分からない。


 そして、ついに私は、自分の仮面を外した。う、うううう。緊張する。この仮面

ってもう私のアイデンティティというかそういうのだし、これを外したら般若レデ

ィじゃなくなるとかあるのかな?えっと。ああまてまて、ステータスは見たくない。

それで、この仮面はアイテムインベントリにしまえるな。アイテム名は般若の仮面

か。そのまんまだな。よし、じゃあちょっとログアウトするか。


私は一旦<アノニマスターオンライン>からログアウトした。ふぅ。緊張するな。

般若レディの素顔を見れる日がくるなんて思わなかったけれど、なんだかこう自分

のキャラなのに、見るだけですごい緊張する。恥ずかしすぎる。なんでなんだろう

なあ。


迷っていても仕方がないし、よし、ログインをするぞ。私は決めた。自分の顔をじ

っくりと見てやるんだ。意を決してログインをする。



私は、目をつぶっている。私はまだ自分のキャラを確認していない。よ、よし。目

を開けるぞ! えいっ!


そこには、黒い長髪でジャージを着た女がいた。そしてこの顔は。

「え・・・嘘でしょ。こ、これは・・・。」


 信じられない物を見てしまった気がする。まさかそんなことになるとは思わなか

ったという感じだ。いや、これはとてもじゃないが人様に顔をお見せすることなん

てできない。絶対に嫌だ。絶対に見せてはいけない。私は金輪際仮面は外さない事

を誓った。そうと決まればログインしてすぐに仮面をつけねば。


恥ずかしい。すごく恥ずかしい。早くつけたい。早く。この顔を誰にも見せたくは

ない。素顔がすごく恥ずかしいんだ。ログインしたら誰かいるとかやめてくれよ。

そんな不幸が起こらないで欲しい。こう思うと起こったりするって分かっているん

だけれど、頼むぞ。


そして私は、ログインする。先ほどの海岸だ。すると。


目の前に鎧を纏った一人の青年が立っていた。


「!?」

「え・・・あ・・・。」

う、う、うわああああああああああ!? す、素顔を見られた!? 向こうはすご

く驚いた顔をしている。私は思わず振り返りすぐに仮面をつけて、そして、そのま

ま、ログアウトした。


またしても現実に戻ってくる。あ、あれ何? なんなのあの鎧の人!? もしかし

てプレイヤーだった? それともNPC? うわあ、どっちにしても私の素顔を見ら

れてしまった。恥ずかしい! うわあああああああ、すっごい嫌だ。最悪だ。なん

てタイミングだよ。うああああああああああああああああああ。


 私はごろごろと転がった。だって、そんな今までずっと仮面をつけていたのに、

いきなり知らない人に自分の素顔を見られるなんて、くっそおお。不覚だ。私の顔

を見た人記憶消してくれないかなあ。ああもう。なんてことだ。なんてことだああ。


だって、あの顔を見られるとか。うう、ついてなさすぎだよ。どうしてこんなこと

になってしまった。もう今日はログインする気になれないぞ。折角海岸を散歩して

いたっていうのに。なんて厄日なんだ。


「私、これからずっと般若の仮面外さない。何がどうあろうと外さない。」

 現実に戻ってまでつい愚痴をこぼしてしまう。そのくらいショックだった。とい

か素顔に対してショックだったところに、それを見られてしまったのでダブルショ

ックを受けてしまったというわけだ。

 

 私が迂闊としか言いようがないんだけどね。もっと慎重になって、鏡を手に入れ

た時でも良かったのになあと後悔ばかりだ。だけど、もうどうしようもない。


「あ!? 時間凍結でもしてあいつを倒せばよかったか!?」

でもそれは、NPCだった場合だ。いやプレイヤーとも変わらないのだろうか。一回

倒せば復活しなくなるみたいなことだったら消せばよかったなんて物騒な事まで

考えついてしまうくらいには混乱している。


「記憶を抹消させる方法とかあれば。あっでも、そうだ、そうだよ。私の素顔のこ

となんてもう忘れているに決まっているか。そうだよね。自意識過剰じゃないか。

私ってばもう本当にドジだなあ。」


そうだよ、あんな一瞬だったんだ。一瞬見つめ合って・・・。くぅうう。思い出す

とやっぱり恥ずかしいなあ。あー、このことは早く忘れてしまいたいな。


ただし、すぐログインしてしまったらまたあの騎士の青年に遭遇してしまいそうな

ので、しばらくログインを控えようかとも思っている。


 それにしても・・・あのゲームで人間に初めてあったんだよな。初めて会ったっ

て言うのにこんなことになるのか。うーんある意味運がいいんだろうけど、私とし

てはやっぱり運が悪かったとしか思えない。


 だけど、あんなところで何していたんだろうか。まさか、あそこがあの騎士のプ

ライベートビーチなんてことはないだろうし。人間があんなところにどんな用事が

あったというんだろうか。

 まさか人間以外なんてことがあるんだろうか。でも一瞬見ただけで、これは人間

以外の何物でもないと思えたしなあ。


「モンスターが化けていただけだったら、清々しくぶっ倒すんだけどなあ。」


 それだったら一番いい。それだったら情け容赦なく、問答無用で倒す。そんな都

合のいいことになったら嬉しい。

 

 お忍びでああいう場所に来ていただけで、たまたま私と出会ってしまったとかが

妥当な線かな。もしかしたらあそこにいた理由が、何かとんでもないお宝が隠され

ているとかだったりするかもしれないけど。

 でもそれだと厄介だな。向こうも向こうで顔を見られたという事で、私を探しだ

し、亡き者にしようとしているかもしれない。それを考えると、私は指名手配でも

されているような気分になってくるな。


「何かあったらブッチ達に頼んでみるしかないか。」

今回はなんでいなかったんだろうか。私みたいに人間と出会って面白くなって私の

事を忘れていたなんてことだったらどうしようか。だけど、もしそうだったとして

も別に怒ったりはしないけれど。


「ふぅ。これから面白くなるって時に出鼻をくじかれた気分だ。」

結局、今後はどんな形であれ、他のプレイヤーが関わってくるという事は確信した

し、これまでのように閉鎖的な場所ではないってことを理解した。それも痛いほど

痛感した。


 だから、どこにいても他人がいると思うくらいじゃないと、こちらの会話やら何

やらを盗み見られてしまうなんてことも起こりうるかもしれない。

 いつもどこかで見張られていると思うくらい、警戒しないとだな。なんだかもう

現実世界で何かやるのと同じくらいになってくるんだろうな。


「悪目立ちしないようにはしないとだな。般若レディなんてレアな種族っぽいし、

魔者なんてそうだしで、寝首を掻かれるかもしれない。」


そんなことにならないように、ゲーム内で私はもっと上を目指さないといけなくな

るんだろうか。そればかりは嫌だなあ。長時間プレイが当たり前になって言って、

どんどん依存気味になってしまいそうだし。


そう考えると、そういうことに対する気づきが得られてよかったなあと思う。


「私にも、もうちょっとブッチみたいな勢いがあればいんだけど。」

そんなものはないので、地道にやっていくしかない。レベルがとか効率がとか、色

々な意見があるけれどね。


「エリーちゃんがあそこにいたら良かったのなあ。いつも露出が激しい服を着てい

るんだから、そういうキャラクターには好かれそうだし。」

サキュバスだし、そういう誘惑で相手を虜にしてしまえばいいんだもんな。


それにしても、これからどうするかなあ。しばらくログインしませんとかブッチに

伝えるにはメッセージしかないけど、そのメッセージを送ろうとするだけで、何か

嫌なことに発展してしまう気がする。、


「ブッチはトラブルメーカーであってもおかしくないな。私もそれなりにそういう

のがありそうだけれど、ブッチこそがトラブルメーカーだな。


・・・よし決めた。一週間くらい<アノニマスターオンライン>はプレイしないで

おこう。自分が日頃どれだけ依存しきっているのかが分かるだろうし。これは我な

がら名案だと思った。


「何か特にやりたいことがあるわけじゃないけれど、ここ最近はずっとゲームばか

りで、私生活が疎かになっている気がするし、ちょうどいい機会だなあ。」


VRヘッドギアを買う前、<アノニマスターオンライン>をずっと遊びたいと思って

いたが、無理はしないようにと心に固く誓っていた。


よし、それじゃあ、無理せずしばらくお休みとするか。その後またログインだな。

あの騎士の青年と遭遇しなきゃいいなあ。

果たして般若レディの素顔とかはどんなものだったのか?

ご想像にお任せいたします。

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