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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第166話「猿蟹合戦?」

 海岸へたどり着いた日から、3日ほどログインすることが出来なかった。仕事で

残業があるとやはり平日にゲームをプレイするという意欲がなくなるなあ。みんな

には、行きたいところがあったら先に進んでいていいよとは言ったんだけれど、ど

うしているだろうか。


 今日は、やっと定時に帰ることができたので、私は早速<アノニマスターオンラ

イン>にログインする。


「え?」

 ログインした直後、私の目の前で、大きな蟹と黒猿であるくろごまが対峙してい

た。蟹は3メートルくらいの大きさだ。

 これはまずいと一旦距離を取る。くろごまは、蟹の鋏に向かって黒如意棒を当て

ていくが、あまり効果が無いように見える。


「威圧!」

一瞬でも気が引ければいいと思い、巨大蟹に向かって威圧を発した。予想通り、私

の方を見た。そして、くろごまも私に気が付く。戦闘に集中していて気が付かなか

ったようだな。

「マスター! 今ここには拙者とマスターしかいません!」


 みんな何しているのかと思ったが、それは後で聞くしかない。それよりまずこの

状況を打開しないといけないな。私とくろごまで戦うとして、さてどうする。蟹っ

て硬そうなイメージがあるし、鎌で斬りかかるより、電撃の鞭でびしばし叩いたほ

うがいいかな。


「ジュジュジュジュジュ。」

巨大蟹が震えている。何か仕掛けてくるだろうと警戒を強める。なんだ。何をしよ

うってんだ。一旦距離を取るか。と、後ろに下がったその時。蟹歩きで私に向かっ

て突進してきた。


「っぶな!」

 間一髪でかわしたと思ったら、鋏を振り上げてきた。これはまずいと咄嗟に転が

ってかわす。だけどその後も地面に突っ伏す私に何度も鋏を叩きつけてくる。この

ままじゃ起き上がれないと思っていたところで、くろごまが助け舟を出してくれた。


「伸びろ黒如意棒!!」

 イエロードローンで空を飛び、攻撃を仕掛けるくろごま。あれ本当に羨ましい。

私も空を飛べたらいいのに無理だからな。そんな事を考えながらも起き上がり、巨

大蟹と距離を取る。

 それにしても、砂浜のせいかすごく動きにくいな。バランスが悪くなると言うか

慣れていないせいか、思った以上に自分の位置取りが上手く行ってない気がする。

 

 今後は、もっと地形に慣れていかないと、一瞬の隙を突かれてあの世行きなんて

ことになりかねない。これを機に、どんな場所でも戦えるように練習しないといけ

ないな。

 だが今はそんなことよりも目先の敵、巨大蟹だ。さっきは、こいつの突進速度に

上手く対応できなかったけれど、次はうまく避けられる気がする。そんなにすぐ砂

浜になれるなんてことはないと思うが、攻撃のタイミングはなんとなく分かった気

がするからだ。


「それは、そうと、これでもくらえ!」

 電撃の鞭で蟹の鋏を叩きつける。するとガクガクと痙攣したような反応を見せる。

水系の敵だけに電気が弱点だと思ったが予想が当たったようだ。これならもしかし

て楽に倒せるんじゃないだろうか。


「ジュジュジュジュウウ!」

 蟹が鋏から30cmくらいの泡をいくつも放ってきた。あれ、蟹って口から泡を吐く

んじゃなかったっけ。それを鋏からなんて。ひとまずこの泡は当たると危険そうな

気がしたので、回避につとめた。

 しばらくして泡がはじけ飛ぶ。その飛沫が砂浜に落ちたが、砂が溶けているよう

に見えた。これは、強力な酸ってことか。当たれば結構なダメージになりそうだ。

ここはいつも通り薬草を口に含んでおくか。


「マスター! その泡の中には爆発するものもあります! 気を付けてください!」


 なんだと。それはまずいな。って泡なのに爆発するのか。すごく嫌な攻撃だな。

酸の場合もあれば、爆発することもあるって。これは、それ以外の効果がある場合

も考慮しないといけないな。

 吐き出すときに複数の種類があるのか、それとも一回一種類しか吐き出さないの

かも確認したいところだが、そんな余裕があるのかといったところか。


「ジュジュジュジュ!」

今度は無動作で突進をしかけてくるとか勘弁してくれ。だけど予備動作があった時

よりは遅いので回避ができた。これは、動きさえ見切れば戦いやすくなるな。こう

いうのはブッチが得意だというのに、今はいないし、やってやるしかない。


「ジュジュジュユウウ!」

「狐火!」


泡に狐火を使えば打ち消しできるんじゃないかと思ったので撃ってみたんだけれど

これが、まずかった。突然大爆発を引き起こし、その影響で私と、少し遠くにいた

くろごまもその巻き添えを食らってしまった。くそう、いい案だと思ったのに。


「ぐぐぐぐ。薬草を食べてっと。くろごまもこれ食べて!」

 薬草をくろごまに投げて渡す。結構食らってしまった感じか。爆発する泡と言え

ど、まさか狐火で誘爆されてしまうとは思わなかった。泡自体がそういう引火しや

すい物質になっているということか。これは失態だ。


 爆発の衝撃で私達は少し遠くに飛ばされたが、これだと巨大蟹にも影響がでてい

るはずだ。いや、それとも自分で爆発する攻撃を使えるくらいだから耐性を持って

いると考えてもいんだろうか。


「なかなか手強いなあ。」

 楽に倒せそうだと思っちゃいけないってことだな。これは悪い癖になってきてい

るな。ここはさっさと雷獣破で決着をつけてしまったほうがいい気がする。短期決

戦で終わる気がするし。

 

「仕留めきれない時が嫌なんだよね。」

 毎回そんな感じなので考えていることがある。それはボスは一撃で倒せないよう

になっているのではないのかということだ。一度の攻撃では、ボスの体力は一定量

までしか減らないという仕組みだ。

 すぐにボスを倒せないようにする演出として設定されている場合があるので、こ

れがあると、いくら大ダメージを与えても倒しきれないことがある。


 また、別なパターンがある。それがある程度敵の体力を削れば、一撃で倒せる場

合があるというものだ。つまり、残り体力が一定量を下回っていれば、そこからな

ら倒せる状態になるというものだ。

 これならいいと思うが、これまた問題がある。その一定量を下回ると、ボスが急

に強くなるといった状態だ。

 そう、これまで何度も辛酸を舐めさせられたあの状態だ。結局そこまで追い込ま

なきゃいけないならちまちま戦った後にとどめとして雷獣破を使ったほうがいいん

じゃないのかと考えてしまう。


 最初から雷獣破を撃って一定量まで削り、必死になって戦うか、普通に攻撃して

最後にとどめとして雷獣破を使ってあっさり終わらせるかといった判断が必要だ。

 私は、ブッチみたいに強くないので、敵が猛攻撃してくるようになったら、かな

りの苦戦を強いられるだろう。

 

「砂浜から少し離れよう!」

「はい!」


 逃げるというわけではないのだが、砂場から一旦離れたら巨大蟹はどうするのか

が気になっている。蟹って確か陸には長時間いられなかったようなって蟹の生態な

んて知らないっての。

 このゲーム、動物とかの生態に詳しい奴がかなり有利なんじゃないのか。普通に

生きてきて、そんな生態について詳しくなる機会はなかったというのに、今後の事

を考えると知識を身につけなきゃいけないんじゃないかと毎度の事のように思う。

 とはいえ、そんなことを調べている時間があったらゲームをしていたほうが楽し

いので調べることはほとんどないが。


 砂浜から真っ直ぐ行くと森があるのでそこまで行こうとする。よし、あともう少

しというところで、地面が揺れる。


「な、何?」

巨大蟹が地震でも起こしているのか、それとも地面から現れようとしているのか。

ただ分かっているのは、これは明らかに巨大蟹の仕業だということだ。周囲を見て

も他のモンスターがいる様子はない。


「ジュアアアアアア!」


 空から巨大蟹が降ってきた。跳躍したのか。あの位置からか。くそっ。ここで周

りこまれてしまうとは思わなかった。そうか、逃げようとするとこういう動きをす

るようになっているのか。

 いいじゃないか。じゃあここで正々堂々と決着をつけさせてもらう。


「くろごま! 援護お願い!」

「はい! 伸びろ! 黒如意棒!」


「ジュブブブブブ」

「浮遊!」

「!?」


 突進しようとするが一瞬浮く蟹。この状態で電撃の鞭を何度も叩きつける。よし

効いているな。また動こうとするが、再度浮遊を使い、足止めする。電撃の鞭でど

んどんこいつの体力を削っていく。

 更に、くろごまが足を攻撃するので、上手く動くことができなくなっている。よ

し、良い感じのコンビネーションだ。このまま一気に倒したい。


「ジュブブブブブブ!」

「真空波!」


 泡に対して今度は真空波で打ち消しを狙う。そして、またしても爆発が起きるが、

さっきとは威力が違う。やはり狐火を使ったのが悪かったようだ。真空波ならこい

つの泡の誘爆だけで済むようだ。


「これを食らえ!」

くろごまに空中から火薬草を投げてもらう作戦だった。先日の蜘蛛との戦いの時も

やってもらったが、これはもう爆撃機だな。空中から投げつけるだけというのは単

純だが、有効だ。


「ジュブブブッブ。」

ここだ。

「雷獣破!」

私は既に鎌も鞭もしまっていた。そして私の右手が光りだす。このまま体当たりす

るしかない。


「ジュブウウウウウウ!」

鋏で私を叩き潰そうとしてくる。これはなんとかかわす。そして確信した。こいつ

の動きが早くなっていることを。多分、一定量の体力が削られているはずだ。あと

はもうこれさえ当てれば倒せるはず!


「ジュ」

「させん!」

泡を出そうとしてきたが、それをくろごまが妨害する。危なかった。だけどこれで

準備は整った。


「くらえええええええええええええええ!」

右手が輝きを増していく。これで終わりだ。雷獣破で決める!


「ジュウウウウウウウウ!?」

「いぎっ!?」


 最後の抵抗として鋏でどつかれる。くそう。雷獣破は発動がゆっくりなのが弱点

なんだよなああ。でもこれを当て続ければ倒せるはずなんだ!


「負けてたまるか!」

私は口の中に含んでいた薬草を飲み込む。これなら多分耐えきれるはずだ。という

かこんな大きな鋏だし一発食らったらやばいと思ったけど意外と耐えるんだな。


「くたばれえええええええええ!」

凄まじい轟音が唸った。最大威力を当てることに成功したようだ。よし、これで終

わり・・・。


「マスター危ない!」


蟹の鋏が私に襲い掛かってきた。まずいよけきれないと思ったが、くろごまが咄嗟

に黒如意棒で防いでくれた。更に、何度も攻撃を加え、巨大蟹はその場で陥落する

ことになった。


「猿蟹合戦・・・か。猿が勝つ方だけど・・・。」

「はい?」


今回も危なかったけれど勝ててよかったあ。

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