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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第4章「人間の大陸」
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第165話「新たな大陸?」

 門を開いたその先は、洞穴だった。そう、少し歩けば外に出られるようだが、二

度と戻れないとなるのも嫌だったので、誰かに門を抑えててもらわないとだめかと

思ったその時だ。


メッセージ:海底洞窟門の鍵を手に入れました。


 なぜ今更手に入ったのかは不明だが、ひとまずこれで、行き来はできるようだ。

これは私だけが手に入れたのかどうか聞いてみると、ブッチとエリーちゃんも手に

入れたようだ。良かった、魔者限定というか私だけだったら面倒なことになったし。


「ねっこちゃん。もういい? 俺、わくわくしてて、早く行きたいんだけど。」

「あたしもです。すぐ近くが出口なんですし、鍵も手に入れたことですし、早く外

に出たいです。」


 あれだけ戦った後だと言うのに、このはしゃぎようはすごいな。だが気持ちは分

かる。私だって、今動けたら一番乗りとか言い出して走り出しているだろう。

 それでは、待たせるのもなんなので先に進んでもらうようブッチにお願いする。


「よっしゃあ! 俺一番乗り!」

「あっ! ずるいですよ!」


 ブッチ、お前もか。洞穴の出入り口はすぐ近くだ。ブッチに担がれてというより、

今はおんぶしてもらっている状態なので前は見える。光輝く先には、何があるとい

うのか。少しずつ見えて、そして。


 海岸に出た。とても綺麗な海岸だ。それを眩しく照らす太陽。海底洞窟の先と言

えば確かに妥当な場所だ。いや、それにしても綺麗だ。この素晴らしい光景を見ら

れたことに感謝したくなる。


「き、綺麗です。すごいです。これがVRなんて信じられないくらいです!」

「うおおおおおおおお! なんか感動した!」


 なんだか青春しているって感じがする。この砂浜で追いかけっこでもしたらより

一層、青春しているって気がする。だ、け、ど。みんな気がついていないな。私達

の服装、この場所だと、どう考えても場違いだよ!

 まぁ私のジャージなんかは、どっちかっていうと夕日が落ちる頃にランニングで

もしているのが似合ってそうだけどさ。


「ここが、人間の大陸ですか。」

「そ、そうですよ! 人間が、人間がいるんですよ!」

 この辺りにいるのかどうかは分からないけれど、いたら感動物だな。とはいえ、

私の見立てだと他のプレイヤーには警戒しなきゃいけないので、ブッチにメッセー

ジを送る。


「ねっこちゃん。ちなみになんだけどメッセージって複数人に送れるからね。」

 それは知らなかった。次からはエリーちゃんにも送ることにしよう。それで、私

達って一応人外ってことになるから、いきなり襲い掛かられる可能性があるんだよ

ね。だからそれを隠す方法を探さないといけないんだけど。まぁエリーちゃんは大

丈夫か。背中の翼はアクセサリーとでも言い張れば違和感はない。ブッチは、だめ

だな。顔がサイコロで、身長が2メートル以上ある巨体だし、モンスターと誤解さ

れてもおかしくない。

 

 私は、どうだろう。こういうお面をかぶっているんですとか言えば大丈夫なんじ

ゃないだろうか。なんて思ったけど無理だ。改めて私の装備を確認してみると、角

だの尻尾だの羽だのが生えているというか装備しているから、どう考えても怪しい。

 これじゃあたとえこの仮面を外したとしても、意味がないだろうなあ。


「ねっこちゃん! 俺みたいな種族が沢山いるかもしれないよ!」

いるんだろうか。いたら面白いかもしれないけど、明らかにレアモンスターみたい

に見えるんだけど。サイコロプスがそこら中にごろごろいたら、なんてことを想像

してみるが、ちょっとうざい感じがしてきた。


「あたしは大丈夫だと思います。でも気になる事が。街とかにモンスター除けの結

界が張ってあるなんて設定のゲームがあるので、それがあると私達なんかは入れな

いんじゃないかと思います。」


 そうだったら悲しい。いや、いっそ結界なんて壊してしまえばいいんじゃないの

か。結界が決壊しましたーなんて。うわ、私もブッチに毒されてしまっている。


「いざとなったら、壊せばいいんだよ! 結界が決壊しましたーって。」

「・・・。」

「ふっ。海風が気持ちいいな。」

 

 こんな暖かそうなところで寒い事を言うブッチは置いといて、ここから先どうし

たもんかな。海岸沿いをだらだら歩くって言うのもなんだしなあ。


「ねっこちゃん。海岸に見惚れて気が付かなかったけど、森もあるよ。」

ブッチが体を動かして森を見せてくれる。本当だ。この森の中に何があるのかは分

からないけれど、一度入ってみないといけないだろうなあ。


「森は後回しにしましょうよ! ずっと森を歩いてきたんですから。」

真っ当な意見だ。森なんていつもうろちょろしているし、今さら同じような所に行

くのは面白みがない。先に海岸のあたりに何かないか探索してみるべきだな。


「ブッチ殿。ここで人間と遭遇したらどうしますか?」

「攻撃されたり、命に危険があったら即反撃していいよ。」

 防御に徹するなんてことは言わないのがブッチらしい。私も同じような事を言う

つもりだったが、それには理由がある。攻撃してくる奴なんて、モンスターだし問

答無用で攻撃してもいいという考えだと推測している。

 

 そもそも、人間もモンスターもお互い見かけたら攻撃するか逃げるかのどちらか

の行動をとるのが普通で、話し合いなんてことになるのは滅多にない。大体、種族

が違えば対立しあっているわけなのでこれはしょうがない。


「ねこますサマモ、ソウイッテマスカ?」

「あ、ちょっと待ってね。うん。それでいいって。」

「反撃するからには、命の保証もできませんがそれでもいいですか?」

「うん。それもいいってねっこちゃんが言ってる。」


 攻撃すると言うのは命のやり取りをするということだからそれはしょうがない。

まあそんな事考えているプレイヤーがどれだけいるのかって話にもなるけれど。厄

介なのは、嘘をつくプレイヤーだなあ。自分から攻撃を仕掛けておいて、反撃され

たら、いきなり襲われたとか言い出す奴が絶対にいるだろうからなあ。

 

 そういうプレイヤーがいることを想定して動かないといけないな。濡れ衣を着せ

られて悪人扱いされるのは別にいいんだけれど、そのせいでやりたいことが自由に

できなくなるのは嫌だし。

 ああーこういうことを話しておきたいんだけどなあ。早く話せるようになりたい

な。それか今日はもうこのままログアウトしてしまうのがいいかな。

 

「ひとまずこのあたりぶらぶらしようか。」


 なんてブッチが提案してきたのでみんなで海岸をぶらぶらすることにした。それ

が終わったら私はログアウトしよう。こんな何もできない状態でいたって面白さが

伝わってこないし。

 かといって、折角ここまできたのに一人だけ何も見ないまま終わるのは嫌だ。


「ブッチドノ。コノバショデノ、モクテキヲオシエテクダサイマセンカ?」

ニヒキメが、ブッチに問う。そういえば私達が何をしたいと思っているのか明確に

説明はしていなかったような気がする。


「冒険だよ。冒険! ねっこちゃんも俺らも冒険者って奴に憧れているんだ。それ

は浪漫だよ。」

「冒険者、というのは人間達の職業ですな?」

「いや、人間限定じゃないよ! 色んな所を冒険して強そうな奴と沢山戦って最強

になるのが俺の夢なので今はその最中だ!」


 さすがブッチ。<アノニマスターオンライン>で最強を目指すのか。何百万人も

のプレイヤーがいるこのゲームの頂点なんてかなり厳しいんだろうが、それを目標

にするのはブッチらしいなあ。


「ワイは、ブッチニキならやれると思うで。というかもう最強やと思ってるで。」

「まだまだだよ。最強だったら、あの蜘蛛とか睨みつけただけで倒せるはず。」


 なんだその子供みたいな話は。いや最強ならそれくらいやってしまうのかもしれ

ないが、ちょっとそれはないだろう。


「ブッチさんって、たまに子供みたいなこと言い出しますよね。」

「夢を忘れないってことなのさ。」


またかっこつけてる。まぁ憧れというのは分からないでもないなあ。私も、このゲ

ームである意味で有名なプレイヤーになれたらいいなあなんて思ったりはするし。

ものすごく有名ってわけじゃなく、地味なプレイヤーとして有名になるのがいい。

あまり派手な活動をしているとそれだけ目をつけられそうだし。


「みんなどうするんや? ワイに乗るってことでえんか?」

「結構広いしそうするか。」


 全員が巨大化しただいこんに乗り込む。私は動けない状態で落ちると困るので、

ブッチに背負われたままの姿勢だ。


「よーし。じゃあ出発やでー。」

 だいこんが、海岸を駆け抜ける。なんだかドライブしに来ているような感じだ。

地平線の先まで広がる海。何かが足りない気がするなと思ったけれど、鳥かな。こ

ういう海沿いにはなんとなくカモメだとかが飛んでいる気がするけれど、そうでも

ないのかな。そもそも現実でもあんまり海に行ったことないんだけどね。


「なんだかエンディングって感じがしますね。」

「いい最終回だった。」


 いや、まだ何も始まってないっての。ここからようやく他のプレイヤーを交えた

戦争だとか醜い争いだとかが始まるんだ。だからこそ今のうちにこの景色を目に焼

き付けておかないといけないんだ。

 こうしてみんなでたどり着い場所だけれど、これから先はこれまでと変わって色

んな情報が得られるかもしれないし。今まで何もかもが分からない状態だったし、

それがどんどん分かるようになるのが楽しみだ。


 私達がいた魔者の大陸ではない場所。ここで何が待ち受けているのか。それは何

にも分からないけれど、だからこそ、期待している。

 

 飽きることなくゲームがプレイできることを。困難な事が沢山あっても、それが

楽しめるくらいゲームに没頭できることを。


「こういうところに地雷とか埋まっているんじゃないかってねっこちゃんが夢を壊

すことを言い出すんだよねー。」


 おい、今いい感じで終わろうとしていたところにそれはないだろうブッチ! い

や待て地雷か。ありそうだな。こんな綺麗なところなんて誰もが足を踏み入れたく

なるに決まっているし。そこに罠をしかける悪質な奴がいてもおかしくはない。

確かにブッチの言う通りだ。

 ええい、私もまたしても油断してしまっていたぞ。きっとあの森からいきなり攻

撃をしかけられたりするかもしれないじゃないか。いやまて、実はここにいるのも

幻覚を見せられているんじゃないだろうか。それからえーっと。


「あ、ねっこちゃん多分いつもの始まってるな。」

「ですね・・・。」


きっと、あれがあってこれがあって、くそう。抜かりが無いようにしないとな!

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