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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
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第163話「邪魔者」

 逃げて戻ってを繰り返すゲームはあるけれど、実際にそんなことをしている自分

が滑稽だなあと思い始めてきた。でもこれが結構有効な戦法だったりするので侮れ

ない。アクションゲームなんかは、弱点をつかないとダメージをほとんど与えられ

ず時間がかかるものがある。しかし、逆に言えば時間さえかければ、着実に倒せる

戦法だ。


「よし、回復したしこれで行けるな。これでブッチ達がもう倒していましたとか言

うオチだったら楽でいいんだけど。」

 

 そういうことにはなりませんよっていうのが嫌な所だ。どうせまた追い詰められ

た赤蜘蛛が思わぬ攻撃をしかけてくるに決まっている。そうだ、これはもう決定事

項なんだ。いつもいつもそんなオチで気に入らない。なんで弱ってくると強化され

るんだよ。最初からその全力を使えと。命の危機に瀕してから、真の力を発揮する

とかやめてくれ。


 一瞬、すぐ行かなくてもいいんじゃないかと思ったが、流石にそれは腰抜け過ぎ

るし、ここまでやったんだからという思いがあったので辞めることにした。だけど

ブッチ達の所に行く前に、エリーちゃんにメッセージを送っておく。こっちはもう

すぐ蜘蛛を倒せるので、もしかしたらそちらに影響がでるかもということだ。

 何も起こらなければいいが、イベントをクリアした後は特定の場所で変化が発生

することが多いので、警戒しておくべきだ。よし、メッセージは送ったことだし、

戻るとするか。


「ちょっと出遅れ感があるから逃げたと思われそうだしな。」

誰に言うわけでもないが、ぼそりと独り言だ。ここは颯爽と現れて、ヒーロー気取

りしてみてもいいかもしれない。いや、それいいな。だって私の雷獣破で削って追

い詰めたわけだし。うん。そうしよう。たまには大きな態度をとっていいと思う。

リーダーらしさを見せつけよう。


 そんなに遠いわけでもないが、それなりに急いで向かうと、なんか、やばそうな

雰囲気だ。赤蜘蛛がブッチに対して超高速で攻撃している。火を吐き、水を吐き、

雷を吐き、なんだありゃあ、滅茶苦茶だ。そしてもっと滅茶苦茶なのはそれを全部

かわしきってひたすら張り手を食らわせるブッチだ。

 あ、これ邪魔しちゃいけないんじゃないかな。


「とどめは俺がさすからねっこちゃんは黙ってみてて欲しいな!」


 私が来たことにも気づくし、視野が広すぎるだろ。いくらサイコロの目が全方位

にあるからって。あれやっぱりずるいって。何なのあれ。死角ってあるのあれ?

ああ、地面かな、地面からの攻撃とか、いや直感で避けそうだよね。

 

「あれ、みんなへばってるね。大丈夫。これでも食べて。」

みんなに薬草を配るが、リッチであるサンショウは多分効かないというかもしかし

たらダメージを受けるかもしれないのでやめておいた。そもそもサンショウ、ダメ

ージはまるで受けてないみたいだし。すごいなあ。けどそのサンショウをボコボコ

にしたのがあそこで戦っているブッチ、なんだよなあ。


「それでみんな、ブッチに任せることにしたの?」

「ハイ、アノ、コウゲキヲカワセルノハ、ブッチドノダケデス・・・。」

「あのような苛烈な攻撃を一発も当たることなく全部かわすとは尋常ではありませ

ん。ブッチどのは強すぎます。」

「・・・・・・。」

あっ、サンショウが震えている。自分がやられた時のことを思い出したか、ってあ。

突然骸骨の姿に戻った。緊張しているのか。大丈夫か?


「サンショウ、大丈夫?」

「コウゲキガ、アタラナイ、コウゲキガ、カワサレル、コウゲキガ、アテラレル。」

 どうやらトラウマが蘇ってきたようだ。ここは放置するしかないか。そして私も

ここで見学しているだけって言うのもなんなので、一応、錬金術士の杖を取り出し

ておく。


 不測の事態に備えて、いつでも時間凍結ができるようにしておく。それで、今回

は魔者が語り掛けてきたりは、しないか。余計な事を言われないのはいいけれど、

何も無いっていうのも面白みがないな。時間凍結についても詳しく聞きたいって言

うのに。1秒使うだけで、丸一日動けなくなるのをなんとかしたいので、その対処方

法を知りたい。話が聞けるかと思って取り出したこともあったが、何も言ってこな

いので、結局分からずじまいだ。


「ねっこちゃーん!? 手出し無用だからね~!?」

「分かってるっての! こっちに何かあった時の為だから!」


 私は、何もするつもりはない。一対一で燃えている男の勝負とでも言おう戦いに

手を出すのは無粋だ。これでブッチが負けたら手を出すけれど、そんなことにはな

っていないので私は何もしない。あと、赤蜘蛛は別にそういうルールの元に戦って

いるわけじゃなそうなので、こちらに攻撃されて被害を出さないように、という考

えだ。

 

 邪魔をするつもりはないが、こういう状況で第三者がやってくることも考えてい

る。ゲームじゃよくあるんだよなあ。なんか急に現れて、こちらが苦戦していた敵

をぱぱっと倒していく奴。そんでもって、この程度の敵に苦戦しているとはみたい

な事をほざいて、というか煽って去っていくんだよね。そんな奴が出て来たら絶対

に足止めしてやると思っている。

 今のところ気配感知には、引っかからない。いつものことだけれど。もし、第三

者がここで、赤蜘蛛を倒したら私は絶対に許さないけどね。ブッチも許さないだろ

うけれど、ここまで追い詰めて倒して行ったら絶対に許さん。地の果てまで追いか

けてでも絶対に倒す。

 

 そんな奴が出てくるのはないと思っているが、なんかでてくる予感もしている。

ブッチがあと少しでとどめをさしそうだと思うんだけれど、それを狙っているんじ

ゃないか勘繰っている。まぁ牽制にもならないけど言っておくか。


「この勝負に茶々入れようとしている奴がいたら私が許さないからな!」

「ほう? どう許さないと言うんだ?」

「土遁!」


 声が聞こえた時にはもう使っていた。なんだ、何が出てきた。意味が分からない

けれどやっぱり何かいたのか。何者だよ。でもなんかさっきからあった違和感の正

体が分かってすっきりした。一瞬見えた姿は、黒い騎士のような姿をしていたけれ

ど、その正体は不明だな。ここでブッチの邪魔をしにいったとは思えな。


「ぐっ!?」

「ほーぅ。よくかわしたな。」


なんだそれぇ!? 危ない。危なすぎる。やべえよこいつ。土の壁ごと大剣で私を

ぶった切ろうとするとは、やっぱり視界が狭まるのは要注意ってことか。かろうじ

て後ろに下がって攻撃をかわしたけれど、早すぎるっての!


「はっ! 遅い遅い!」

 こいつ、プレイヤーなのかが分からないけれど、滅茶苦茶強い。くそう。ブッチ

に相手してもらいたいくらいだけれど、向こうで忙しそうだしそんな余裕ないよね

って。


「うひぃ!?」

「ほう? ほれ、これはどうだ? ん?」

大剣を軽々と振り回してくる。こいつ、完全に私を遊んでいる。だが、こんな奴に

やられてやるほど私は甘くないぞこん畜生。強いじゃないか。


「真空波!」

「むっ!」

気合いで吹き飛ばすなっての、こいつ。強敵なのは分かるけれど、力の差がありす

ぎないかこれ。どうしろってのマジで。これ、所謂負けイベントって奴か? くっ

そ。そんなのありかって感じだ。


「マスター!?」

「駄目! これはこいつと私の一対一の決闘! だからね!」

「安心しろ。すぐに決着はつく。」


うるさい黙れ。私はお前みたいな偉そうな奴が嫌いなんだよ。絶対にぶっ倒す!

「ねっこちゃん代わろうか!?」

「いい! 私がこいつをやる! 絶対に!」

私も頭に血が上っているが、それよりこいつをぶちのめしてやらないと気が済まな

い。負けイベントは絶対に覆す。何がどうあろうと、そんなものを受け入れるつも

りはない。これはもう本気だ本気。般若レディの本気を見せてやる。


「終わりだ。」

黒騎士が大剣を構える。何か剣技を見せてくれるってのか? いい加減にしろって

の。私はブッチじゃないし、そんなのかわせると思っているのか。


「ずあっ!」

速すぎるっ!? 反応しきれ、いやしきれ私! こいつの動きは見えているじゃな

いか。これは避けられる。滅茶苦茶早いけど、どんな攻撃なのかは分かっている。

こんなの見えれば絶対にかわせる。んぎぎ。これは連続剣技だな。一撃、かわす。

二撃、三撃、危ないがかろうじてかわしてえ、次の攻撃は、上段と、更に次は中段

で、その次が、蹴りを放ってくるからそれを後方にジャンプしてかわしてえええ、

更に、突きがくるので回転してかわす! っしゃああ、横斬りが終わったら最後に

ジャンプ斬りだな、うるせえよける! そして私はカウンターの雷獣破だ!


「雷獣破!」

「ぬうん!」

まだ、まだ攻撃か、どれだけの連撃だこいつ、そんなの常人の私に向けて使う技じ

ゃないだろふざけるな。

「これもかわすか! 面白い!」

面白くないっつーの! ここでお前をあの世に送ってやる。まだまだ余裕があると

思っているんじゃないぞ、こちとらあの赤蜘蛛を瀕死に追い込んだ雷獣破だ。お前

もこれを食らえば、ただじゃすまないだろ。ただですんだら、お前その時はその時

だ。


「はっ!」

また早くなった? くっそお。腹をちょっと斬られた。これ痺れたりしないよね?

毒だったら無効化できるけど、痺れだったら無理だ。どうか状態異常系の効果があ

りませんように。


「これでもくらえ!」

「遅いな。」

うるさい。想定済みだ。ここで時間凍結発動だ。小声でな。そして。世界が暗黒に

染まり、凍り付く世界。その間も私は動き、黒騎士に近づき、腹に思いっきり手を

当て、雷獣破をぶつける。たった1秒だ。1秒だが、これで終わりだ! これで終わ

りじゃなかったとしても、私はやったるぞ。何がどうあろうと、体が動けなくなろ

うと動いてやる!


そして、凍結は、解除される。


「死ねクソ野郎!」

「!? ぐおおおおおおお!?」

それはふりか!? ふりなのか? この程度の攻撃で勝った気になるなどみたいな

こと言い出すのか? 正体不明の癖に! それはまずいけど、それならそれでまだ

戦うぞ私は!


「グァァァァァア!?」

効果ありだ。多分ありだ。もろに入ったぞ。よしよし、私よくやった。時間凍結に

頼った攻撃だったけれど、これはいいぞ。一矢報いるとかじゃない。ちゃんと追い

詰めている感がある。こいつ、ここから本気を出すと言い出すか、それとも、ここ

は一旦引くと言い出すのかが分からないけれど。


「く、ふふふふふふふ。面白い奴だな貴様。」

「そうか、最後までやるか。それとも逃げるか?」

「そうだな、ここは引こう。」

「逃がすと思うか、この野郎。いきなり攻撃しかけてくれやがって。さてはお前が

ここの門番か。」

「正しくは、ここの門番もしているだな。その実力なら通してやってもいいか。」


どこか他の門番と兼務しているのかこいつ。それにしても強すぎだろ。いやそんな

ことはどうでもいい。私はこいつを倒さないと気が済まない。

「上から目線が気に入らないな。逃げるならなんかよこせよ。」

「ではこれでもくれてやろう。」


何かを投げ渡された。なんだこれ。

メッセージ:黒い籠手を手に入れました。


「なんだよこれ。」

「麻痺耐性がつく籠手だ。ではな。面白き鬼よ。」

「はぁ? 私は般若レディだ! 覚えとけ!」


消えた。突然現れて、突然消えて意味深な事言い残していきやがって。腹立つ奴だ

ったな。そしてマジで強かった。危なかった。あーもう辛い、しんどかった。なん

であんなのの相手をしなきゃいけなかったんだよまった・・・く。あれ。


あ、やっぱり動けなくなるのか・・・。あーあ。

負けイベントに勝つのが好きです。

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