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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
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第159話「きりがない」

 無限湧き。それは敵をいくら倒そうとも無尽蔵に湧いてくることを言う。今、正

にその無限湧きが発生している。この無限湧き、昔のゲームではいい面も持ってい

た。それは、経験値やアイテムが沢山手に入るという事だった。しかし、それがゲ

ームバランスを崩してしまうということで、時代の流れと共に、経験値が低く抑え

られるか、あるいは完全になくなるということになってしまった。


 恐らく、私達が今相手にしているこのタイヤサハギンも雀の涙に等しい経験値程

度しか手に入っていないと思われる。なので、こいつらは極力無視したほうがいい

というのがあるが、ここは一本道なので、そうもいかず強制的に戦闘をしなければ

いけない状態になってしまっている。


「だんだん面倒くさくなってきた!」

 思わず本音を言う。割と戦いにくい相手だけに、面倒くさいと感じてしまう。タ

イヤ状態で突進してくるのでたまに攻撃を食らう時もあるのでこれがまた厄介だ。

 だが、こちらには薬草がある。大量の薬草があるので、死ななければどうとでも

なるのだ。だから、途中からスキルは節約して直接攻撃だけにした。だけどこれは

これで倒すのに時間がかかってしまうので、うんざりしてきてしまう。


「うう。あたし直接戦闘苦手なんですけど~。」

「とか言いながら包丁でざくざくやってるじゃん!」

「こんなの振り回しているのが自分でも怖いですよ!」

 包丁なんて現実でも料理で使うような道具を振り回したらそう思うよね。だけど

あの包丁切れ味がいいのか、タイヤサハギンを容易く沈めてしまうからすごい。こ

いつらって三枚おろしにして食べられたりするのかな、なんて突然思ってしまった

が、ちょっと怖く感じたので想像するのをやめた。


「ああもう! 私が特攻するからみんなは後に続いて!」

「ワカリマシタ!」

薬草を食べながらひたすら前に出て、鎌や電撃の鞭で攻撃していく。倒してもきり

がないにしろ倒さなきゃ前に進めないなら突き進むだけだ。それに、無限湧きとい

うのは、一定の場所だけで発生するというのが定番だ。ある程度先に進めば出なく

なるだろうという予想があるので、ひたすら進む事にした。


「ギネーッ!」

 このギネーッっていうのは多分死ねーって叫んでいるんだよね気っと。明確な殺

意を持って攻撃を仕掛けてくるんだから、私が返り討ちにしても何の問題もないは

ずなんだよね。なんだか喋れそうなモンスターだから倒すのに戸惑いそうになった

けれど私は逆らう者には容赦しないので徹底的に抗戦する。

 それに、こんなタイヤで突撃してきたり三又の槍を持って襲い掛かってくる奴が

いたら怖いし倒さなきゃ夜も眠れないので、ひたすら攻撃する。


「おいしょ! そっちもおいしょっと!」

動きに慣れた。こいつら動きが単調なので読みやすい。ある程度近くに来るとタイ

ヤ形態からサハギン形態になって槍を投げつけてこようとするので、そのタイミン

グで攻撃をすると簡単に倒せる。たまにそうじゃない奴もいるけれど、概ねそんな

奴らばかりなので戦いやすい。


そうじゃない奴は、タイヤのまま突撃してきて、その攻撃を回避した後に変身する

タイプだ。そして、武器を構えたままこちらを見て、こちらが近づくと槍を投げて

きて、遠ざかるとまたタイヤになるタイプだ。これも動きはもう分かっているので

倒しやすいが、別なタイプと組み合わされると、面倒くさいというのがある。


「それと、数が増えてきているのがうっとおしいな。」

一度に出てくる数が、3体くらいだったのが4体になった。さらに進むと増えるのか

もしれないな。今のところは簡単に相手にできているけれど、攻撃のパターンが変

わってくると苦戦しそうだ。


「私が取りこぼした分はそっちで処理してねー。」

「はいー!」

「カリコマリマシタ!」

 いくら何でも私が毎回湧いてくる奴らを一匹も見逃さず倒すのは無理がある。な

ので残った分は後ろに控えているみんなで対処してもらう。


「うわっ。これは・・・。」

敵を処理している時にが気が付いたが、ここから先は坂道だ。敵が上から襲い掛か

ってくるとかこちらが不利な状況じゃないか。地の利を活かした特殊な攻撃も追加

されるかもしれないな。ここから先は無限湧きはしなくなる、なんてことはなかっ

た。やはりどんどん湧いてくる。むかつくなあ。」


「ギネーッ!」

「うるせー! お前らがギネーッ!」

「ブルゼイ! オムエガギネーッ!」


こ、こいつ。言い返してきやがった。お前らが先に襲い掛かってきたくせに何がう

るせえだよ。このサハギンどもが。私に逆らうとどうなるか思い知らせてやろうじ

ゃないか。


「ここから本気出す。」

「姉御、何をするんやで。」

「火薬草を使いまくる。腹が立った。」

「なんやて。それはもったい。」

「私だってやるときはやるの!」


 火薬草を投げれば邪魔な奴は吹っ飛ばせる。そして私は突き進んでいける。タイ

ヤが迫ってきたら、投げつければいいだけだ。簡単だ。

 ここから先の上り坂で飛びかかってこられたらかわすのは困難だから、そこへ火

薬草を投げつけたほうが効率がいい。幸いこちらには大量の火薬草があるから、簡

単に行く。

 当然、勿体ないという気持ちがあるので、無限湧きが終わり、ここにいるボスと

戦うことになったときは、徹底的に八つ当たりしてやると決めた。


「姉御、なんだか怖い顔しとるで。やっぱり勿体なかったんやないか。」

「折角集めたものなのに無くなるとね。私にこれだけ沢山火薬草を使わせたからに

は、絶対に許さないよ。」

 私は、決意した。こんな面倒くさい攻撃を仕掛けてきた敵のボスは徹底的に痛め

つけてやろうと。エイについても、面倒くさいことをしてきたので、それについて

も腹が立ったので、絶対にじわじわ苦しめながら倒そうと決意した。


「ヨグモ、ヨグモオオオ!」

「はいはい!」

火薬草を投げつけて爆発させるだけの簡単な作業と化した。一応数枚連続で投げつ

けて威力を上げているが消費量が多いなあ。これはまた帰ったら集めないとな。


「なんたることや。火薬草がみるみるうちになくっていくやんけ。」

「しょうがないって。こいつら結構タフだし。」

「くっ。このサハギン野郎め。ワイが強かったらこいつらぼこりたかったで。」

だいこんがすごい悔しそうな顔をしている。だいこんだって戦闘訓練したら結構い

い感じになると思うんだけどなあ。本人は、自分は大して強くないって思っている

みたいだけれど、耐久力はあるし、乗り物以外としてもやれることは多いんじゃな

いのかなあ。


「で、後ろは大丈夫ー!?」

「大丈夫じゃないです! 後ろからボスがやってきたようで、ブッチさんたちが戦

っていますー!」


エリーちゃんの叫び声が聞こえてきたが、後ろからボスだと。十分あり得ることだ

ったけれど、このタイミングでか。どんな奴なのかはまだ分かっていないが、今の

状況を整理すると、だ。


 私が進路を確保しなきゃいけないってことじゃないかこれ! 多分後方からどん

どん迫ってきているんだな。そんでこの細い道全部を覆うくらいの大きさで退路が

塞がれてしまっていると考えたらいいか。

 だとすると、前に進めなくなった時点でこちらはゲームオーバーってことになる

んじゃないのか。うわ、これ責任重大じゃないか。進路に出てくる敵は、こちらを

追い詰めるためにどんどん必死になって襲い掛かってくるだろうし、後ろのボスは、

道を塞いで逃げられなくしたうえでこちらを倒そうとしてきている。


「ってこの状況、無限湧きに加えて、道も無限ループしている!?」

 同じような道の繰り返しな気がするし、後方のボスを倒すまでずっと突き進まな

いといけないってことかもしれない。うう、ボスとどんな風に戦っているのか状況

が見えないだけに息苦しさを感じるな。

 だってこれ、耐久戦ってことだし。私が敵を処理しきれなくなった時点で、前に

進めなくなって足止めされて、ボスに追い付かれてやられてしまうだろうし。

 

「後ろからはどんなボスがきてるってえええええ!」

大声で叫んで、連絡してもらうことにする。

「蜘蛛です! 巨大な蜘蛛です!」

 エリーちゃんの返事が返ってくる。巨大な蜘蛛とかまた定番なボスって感じがす

るな。糸を吐いてきたりするんだろうか。そうなると身動きがとれなくなったらお

しまいってことじゃないか。これまたなんて厄介な奴をここで出してくるんだ。


「まぁブッチなら攻撃を全部かわせるだろうからなんとかするんだろうけれど、こ

んな時にリーダーの私はこんな雑魚処理でいいのか。」

「姉御やからいけるんやないんか。」

「そうかもしれないけどさああ、ああもう後ろが滅茶苦茶気になる!」

「ギネエエエエエ!」

「グルジメエエエエ!」

「うるさい! だまれ! どけろ!」

火薬草を投げつけるだけなんだけれど、敵の数がまた増えて気がする。これ、蜘蛛

を倒すまでずっと続くんじゃないか。うわぁ面倒くさすぎるなあ。


「けど今の私の役割はこれだからしょうがない! みんなああああああ! 私が進

路を作るから気合い入れてボスを倒してね!!!!」

「おっけえええええええええ! 俺らで必ずこのデカ蜘蛛を倒すからあああああ!

ねっこちゃん頼むよおおお!」


 おお、ブッチの叫び声で返事がきた。私は自分の務めを果たさないといけないな。

こういうゲームではそれぞれが自分の役割を理解して動かないと、ボスを倒せない

なんて仕組みになっているだろうし。それに毎回私がボスと戦うというわけにもい

かないんだから、こうやって任せるのも大事だ。みんなが考えて動く。それが私達

ももりーずVの戦い方、ということにしておくか。


「姉御、地味な役回りで結構喜んでるんやないか?」

「こういう誰もがやりたがらないけれど、誰かがやらなきゃいけないことが重要な

んだよ。私は、ももりーずVのみんなはそういうのを評価してくれると思っている

からね。やることはやるっていう楽しさがあるんだよ。」

「そうなんか。流石姉御やで。」


 ボスと直接戦うというのも重要な事だと思うが、それに対して補助したり、道具

を用意したり、戦いの最中に臨機応変に動いたり必要な事なんて沢山ある。それが

どれか一つでも欠けていたら、倒せなくなってしまう。

 昔プレイしていたゲームなんかでそういう苦い経験を味わってきた。だからこそ

チームプレイというのがどれだけ重要になってくるのか痛いほど理解している。


「ここからが踏ん張りどころだよ。そんでもって、いざって時は私も戦闘に参加す

るからなんとでもなるよ!」

「姉御、今なんか輝いているように見えるで。」

「うん、最高に楽しんでいるよ!」


仲間の為に道を作り出す。こんなのかっこいいじゃないか。私はこういうことがし

たくて<アノニマスターオンライン>を始めたわけだし、今、すごい爽快感があっ

て楽しい! よーし気合い入れてどんどん倒していくぞー!

無限湧きって大変です。でもちまちま倒して行かないと囲まれたりしますし

厄介だなって思うことが多いです。だけどそれをなんとかするのがチームプレイ

なんですよねー。あぁ、私も久々にオンラインゲームがやりたくなってきました。

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