表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
153/473

第153話「猪の解体」

 私達が最初の5匹の猪をようやく解体し終わった頃、ブッチ達がこちらに戻って

きた。持ってきた猪は5匹だった。ちょうど終わったときにまた持ってくるとは思

わなかったが、急いで解体に取り掛かることにした。

 ちょっと休憩しようかとも思ったが、ブッチ達はまたすぐに狩りに行ってしま

ったことから、急いでやらないと溜まる一方だと思ったので頑張ることにした。


「やっと終わったと思ったら次の5匹ですか。こんなに必要でしょうか。」

「海底洞窟ってどれだけの時間で抜けられるか分からないし、抜けた先も常に食

料の問題は付きまとうからね。沢山集めておかないといけないんだよ。」

「うう、でもこれは結構大変です。」

 だけどこれをやらないと後で困ることになるんだ。事前準備を怠った結果どう

なるのかというと、アイテム不足で全滅したり、仲間がやられてしまってりなん

てことをこれまでで何度も経験してきた。きちんと準備しておけば簡単に進める

のに、それを無理した結果、余計に時間がかかってしまったのだった。

 

「面倒くさいことでも後で必要になるって分かったら真面目にやらなきゃいけな

いんだよねえ。」

「でもねこますさん、これまで何度もあったってことは、学習していないってこ

となのでは?」

「そうそう、段々面倒くさくなってねえ。でも、私は最近そういうことにならな

いように我慢してるよ!」


 面倒くさくなったら作業の辞め時だ。嫌な事をずっと続けるのは無理があるの

で時間をおいて、気が付いたときにでもやれればいいなと思っている。今やって

いるこの解体作業については、将来の不安を取り払うために一生懸命やらないと

いけないと思っているだけだ。

「ねこますさんは、夢中になると疲れが消えるみたいな感じですよね。」

「ここが頑張り所なだけだって~。海底洞窟の先を見るためにはなんとしても食

料を集めまくるのだ。おいしょおいしょっと。」


 徹底的に集めまくっておくことが重要だし。とはいえ薬草を集めるみたいに気

軽にはいかないのでどうしても数が絞られてしまうなあ。

 こうして何度も解体することで解体スキルが習得できるんじゃないかと期待を

しているけれどそんなことが起きそうにない。


「解体作業を経験することで命の尊さを学ぶことが出来た気がしました。終わり。」

「子供が書きそうな感想文のノリだねえ。けど命の尊さとか全くと言っていいほ

ど実感がないなあ。VRだけど、ゲームって考えるとねえ。」

「こうして内臓とかあれやこれやをじっくり見てると段々ただの作業でしかない

って認識になりそうですが。」

 最初のうちはグロテスクな感じがしたのに、慣れてしまったなあ。それもこれ

も何度も生肉を食べたりしたからだろうな。動物のようにぐっちゃぐっちゃとた

けのこと一緒に食べたもんだ。


「これをあと何十匹もやり続けることになるから、そのうち無意識で解体ができ

るようになるよ。」

「え。」

「難しいアクションゲームとかシューティングゲームをノーミスでクリアするよ

りかは絶対に簡単だからね。」

「ううっ。それを言われるとなんだか楽な気がしてくるから怖いです。」

 難易度の高いゲームでは敵の攻撃が苛烈なんだけれど、それを一発も食らわず

にクリアできるようになるのには相当な時間と集中力が必要だ。たった一回のミ

スも許されないことをやるよりかは、ただ延々と解体をするだけだったら、なぜ

か後者の方が簡単に思えてきてしまう。

 

「何度も何度もうんざりするくらいまで繰り返してようやくノーミスで達成した

時は感動しましたね。だけどその後二度とやるかなんて思う事も・・・。」

「そうだね、だけど時間を置くと突然またやりたくなるからゲームってすごいな

って思うよ。」

 あんなに苦労したんだからもういいやって思うのに、今度はもっと上手くでき

るんじゃないかなって思ってやったら、思った以上にできなくなって、くやしく

なってまた夢中になるとか罠にはまっている感が半端ないね。


「あぁこうして会話している間も、結構解体ができてきています。こうやって体

に覚えさせていけばいいんですよね。」

「そうだよ。内臓を取り出す感覚とか、皮を剥ぐ感覚とかとにかくこうすればい

いって覚えればね。」


 だけどこれ、本当にゲームをやっているんだろうかって気分になるな。現実で、

解体の体験みたいなことをやりにいっているんじゃと思えてくるね。実際に現実

での猪の解体なんて見たことないけれど、実際のところどうなのか興味がわいて

きたなあ。


「・・・。これってゲームって言うよりお仕事って感じしませんか?」

「あっ。言ってはならないことを! これはお仕事ってレベルじゃないよ! こ

んな気楽にやれるのはゲームだからだよ!」

「そうでしょうか。なんだか解体を生業としているような錯覚を覚えます。」


よくある症状だ。経営ゲームなんかをやっていると、自分は実際に経営が出来る

んじゃないかと思い込んだりするようなものだ。こうやって解体作業をやること

で、これは仕事と同じようなものじゃないかと誤解してしまうのだ。


「現実で仕事。ゲームでも仕事なんて考えるだけで億劫になるね。」

「そんなものだと思いますけどね。大体ゲームってこういうことしてくださいっ

てお題があるじゃないですか。それが仕事だったりしますし。」

「お、何だい? 仕事の話をしているのかい? 追加の猪持ってきたよ。10匹ほ

ど。」


話に混じってきたのはブッチだった。帰ってくるのが早い。これはもうだめだ。

限界だ。よし、そこのリザードマン達こっちへこい。


「その曲刀で解体を手伝うんだ。イッピキメとニヒキメはこれから私達の手伝

いだ。こっちは人手不足だからいいよね?」

「俺はいいよ。んじゃ二匹とも、頼んだよ。」

「カシコマッタ。」

「ワカリマシタ。」


私が鎌で解体できるんだから、こいつらの曲刀でも出来て当然だろう。まさかそれ

で解体するよう頼むことになるとは思わなかったけれど、最初の5匹分もまだほと

んど終わってないのに追加10匹が来ると思わなかった。やっぱりサンショウの魔

法が極力なんだろうなあ。


「でもそんなに猪いるの?」

「結構いるよ。時間が経てばまた出てくるみたいだし、なかなか楽しいよ。」

「あれ、ブッチの出番もあるの?」

「うん。サンショウに負けるのが嫌だから、俺も同じくらいの速度で倒せるよう

に頑張っている所だよ。」


ブッチがまたパワーアップしていくのか。それはいいことだ。海底洞窟ではまた

しても強そうなボスがいるだろうから、それはまたブッチにお任せしたい。

「それじゃあそろそろ行くよ。次はもっととってくるかもしれないから解体頑張

ってね!」

「ああ待って。えーっと狐火!」


猪の肉を軽く狐火で焼いてみることにした。そんでもって、一応全員で味見して

みることに。サンショウとたけのこが今この場にいなかったので、その分はブッ

チに持って言って貰うことにした。


「う、美味い! ただ焼いただけの肉なのに美味い!!」

というのがブッチの感想だった。その後私も食べてみたが本当に美味しかった。

ただ焼いただけなのにね。猪の肉にはまってしまいそうだ。これはどんどん解体

して、沢山保存しておかないといけないなという気持ちになった。たけのこなん

か、ものすごいがっついて食べきってしまった。


「後は集め終わってから食べるから待っててね。というわけで、私達は全力で解

体しよう!」


猪の解体作業を再開していく。あぁ、ここで少し苦労するだけであの美味い肉が

食べられるのか。最高だな。これはやりがいがあるな。あの肉を食べるために解

体すればいいだけって楽だなって考えてしまった。うう、どうかしているな。結

構大変なのにね。


「ねこますさん。涎がでてますよ。」

「おっと、また食べられるかと思ったらついね。」

「イノシシノニク。オイシカッタデス。」

尻尾を振ってこっちをじっと見ないでくれたけのこ。解体しないでただ食べるっ

てことも出来るけれど、それだと保存食としての分が溜まらないんだ。先にただ

食べるだけって言うのも良かったかもしれないけれど、それもそれで効率が悪い

ので、先に集め終わってからにしたい。


「ムムゥ。コレハナカナカムズカシイ。」

「ケッコウシンケイツカウナ。」


だよね。解体って言葉だけ聞くとなんだか簡単に出来そうな気がするけれど、細

かい作業があるので、そう楽に終わらせてはくれないんだよね。それでもこれを

終わらせないと、またブッチが大量に持ってきてしまうので必死になって作業を

続けていく。


 そして、黙々と作業し続け、ようやく15匹の解体を終了させた。ああ長かった。

「おー。終わっているじゃん、丁度良かった。」


何故このタイミングで戻ってくるんだ。こっちはやっとこさ終わったんだぞ。な

んだ、今度は何匹だと言うんだ。また15匹か。この野郎いい加減にしろ。こっち

は全員が疲れてきているんだぞ。私は思わず、ブッチを睨みつけてしまった。


「いやー勢いあまって50匹も狩ってきちゃったよ。ハハ。」

「やろう。ぶっころしてやる。」

「物騒な事を言わないでくれよ。あはは。」


お前、ちょっと50匹とかなんでそんな量になっているんだよ。ありえないだろ。

というかなんでサンショウは戻ってこないんだ。あいつ結構ノリノリで猪狩りを

しているんじゃないだろうな。私達の仲間になって、童心に帰りました的な感じ

でちょっと勢いあまっているんじゃないのか。


「サンショウが、こんな新鮮な気持ちになったのは久々です。楽しくて仕方があ

りませんとか、興奮した感じで猪狩りをしまくっちゃってさ。つい止められなく

なってさ。」

「止めておけよおお。50匹とか多すぎだろおお。ペースを考えろペースを!」


ああもういい加減にしてくれ。こっちはみんなぐったりしているんだぞ。特に私

とエリーちゃんが。くそう。まさかこんなに持ってくるとは思わなかった。


「とにかく一回サンショウを止めて戻ってきて。」

「あー。うん分かった。まぁ俺も確かに多いとは思ったからね。あははは。」


分かってたなら止めてくれよ全く。やれやれ。それじゃあこの50匹分の解体、さ

くっと終わらせないとな。はぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ