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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
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第152話「猪の肉ゲット」

メッセージ:猪の肉を手に入れました。


 鎌で猪を解体していると、そんなメッセージが表示された。よし、アイテムイン

ベントリにしまっておけるなら、食糧問題は解決だな。だけど、これを作るまでに

結構時間がかかる。解体作業を短縮できるスキルなんてものがあればいいのになあ

と思ったが残念ながらそんなものはない。

 エリーちゃんの方も無事に入手することができたようなので、後は根気さえあれ

ばどんどん集まるといった寸法だ。

 猪は、サンショウが言うにはこのあたりでどんどん出てくることだ。それでもっ

て、サンショウの魔法を使えばあっさり倒せるので、倒したらひたすら解決を頑張

るといったものなのだが、内臓だのなんだのを毎回見なきゃいけないのも億劫とい

うか、そこまで慣れていないので何度もやっていると気が滅入ってきそうだ。


 慣れた人だときっと機械みたいに皮を剥いだり、骨をとったりってことができる

ようになるんだろうなあ。すごいよなあ。魚の三枚おろしだってあまり得意じゃな

い私だし、このゲーム内で何度もやっていけばいつの間にか料理が上手くなるなん

てことにはならなそうだな。そもそも私はエリーちゃんと違って、鎌を使っている

わけで、現実に戻ったら包丁になるのだからどうにもならないだろう。

 待てよ、それか現実でも鎌を買って料理をする、いや止めておこう。絶対に不気

味な感じになるし、そんなことのために鎌を買って使うのは嫌だ。今ここで使って

いるのも、それ以外持ち合わせている刃物が無いからっていうのがあるからだし。


「なんか鎌で解体するのも段々慣れてきた気がするよ。」

「ねこますさんすごいですよね。そんな道具で出来るなんて。」

「ねこますサマハ、ズットカマヲツカッテキマシタ。ダカラキヨウナノデス。」

 そうだね。たけのこと初めてあった時からというかこのゲームを始めた時からず

っと持っている愛用の鎌だからね。草刈りもこれでずっとやってきているわけだし

この鎌は本当に手に馴染んでいる。

 最初のうちは、使い慣れなくて変な感じがしたけれど、今はこれじゃないとしっ

くりこない。今までプレイしてきたゲームでも鎌は滅多に使ったことが無かった。

そもそも鎌と言えば死神が持っていそうな大きな鎌が武器というのゲームでは定番

だけれど、私が持っているのは片手で簡単に持てるサイズだし。

 

 こんな小さい鎌で戦うなんてやっぱりないよなあ。般若レディの初期武器が鎌だ

ったっていうのもなんでだと今でも思うし。こんなものを持って百姓一揆でもしか

けろなんて言われたら、絶対に失敗するなと思う。これを振り回しても、強そうな

武士は刀とか持っているんだろうし、投げつけるくらいでしか勝ち目がない気がす

る。けど、今の私なら、投げつけないで斬りつけにいくくらいはするけどね。


「ねっこちゃん。なんか名前とかつけてやらないの?」

「え。鎌に名前を? というかそんな漫画みたいなことしないよ。」

刀に名前をつけるというのは聞くけれど、そんな名刀でもあるまいし、名前をつけ

るのは恥ずかしいなあ。

「じゃあブッチさんは、モーニングスターに名前つけているんですか?」

「おうよ! 激烈ぶんぶん丸って名前だよ!」

「あ、ハイ。」


 なんだそのネーミングセンスは。なぜそんな名前にしたんだ。いやでもモーニン

グスターって感じはするからいいのか。なんかこうぶんぶん振り回しているって感

じは強く伝わってくるし。一周回るとちょっといいんじゃないかと思えてしまうな。

「くろごまの武器なんかはもうそのまんま黒如意棒だし、それにまた名前つけたり

したら変になるだろうなあ。」

「えー。それはそれで名前つけてもいいと思うよ。ねっこちゃんの鎌だって、ジェ

ノサイドカッターみたいな名前とか、くろごまの黒如意棒はダークデストロイヤー

とかよさそうだと思う。」

「中学生がつけそうな名前にするな。」


もう名前の事はいい。解体がまだまだあるんだから、ちゃっちゃとやらないとすぐ

に今日が終わってしまうし。日数をかけてじっくりゲームプレイするのもいいけれ

ど、この調子だと、ほぼ毎日食料集めをしまくらないといけなくなる。だから効率

よくガンガン狩って、解体するのがいい。


「よし、私達がここで解体しまくるから、ブッチとリッチと何人か連れて猪狩りに

行ってきてよ。」

「えっ!? ブッチ殿と、ですか。」

「おいおい! 俺にぼこられたからって苦手意識を持っちゃだめだよ! 仲間にな

ったからには親切丁寧にするから安心してくれよ! いやマジで! 敵には情け容

赦なくボコボコにしろってねっこちゃんから言われてるからやっただけでさ。」

「私はそんなこと言ってないぞ!」

「え、仲良くまとめてあの世に送ってやるなんて言ってたんでしょ?」

誰からそれを聞いた。というかブッチの前でもどこかで言った事あったか。ってそ

れ関係ないじゃないか。ボコボコにしろなんて言ってない。


「えー。じゃあねっこちゃんは、レアアイテムを手に入れるためにモンスターをぼ

こぼこにするのを諦めるんだ?」

「そんなわけない! レアアイテムを持っている奴がいたら、徹底的にボコボコに

して絶対にアイテムを奪ってやらぁ!」

あ、しまった。ブッチに上手い事乗せられてしまった。くやしい。ゲームの話をさ

れてたらうっかり反応してしまうじゃないか全く。あ、なんかサンショウの奴もど

こか落ち着いている感じだ。くそっ。はめられた。


「こんなわけでね。ねっこちゃんの命令は絶対だったからあそこまでやったんだ。

これからも仲良くしようよサンショっち。」

「さ、サンショっちとは?」

「あだなだよ。仲良くなった証に。そうそう、みんな俺の本当の名前マブダチって

言うのによんでくれなくてむしろ愛称になってしまったブッチって呼ぶからそっち

で呼んでくれ。」

「分かりました。ブッチ殿。」

「おーけーおーけー。」


 なんでそんな簡単に打ち解け合うような感じなんだ。あそこまでぼこぼこにされ

たからにはもっと恐怖心とか残っていていいだろう。それとも何か、情け容赦のな

いのは私だってことがもう記憶に刻み込まれてしまったというのか。サンショウが

私のことを誤解してしまっているんじゃないのか。

 

「それじゃあ二人とも、そんなに仲良くなったんだからさっさと猪狩りに行ってく

るんだよ! こっちは解体を必死こいてやるからそっちも必死こいて猪を狩りまく

ってね。 海底洞窟の食糧問題は君たちにかかっているんだから頑張ってね!!」


「おし、じゃあ行ってくる。」

こうしてブッチ達は猪狩りへと向かうのであった。この場に残ったのは、私とエリ

ーちゃんと、たけのことねずおだ。ここで襲われたりしたら困るので、守ってもら

うために残ってもらった。


「ねこますさんってやっぱりすごいですよね。」

解体をしようとするとエリーちゃんから告げられる。何か凄いことをやっただろう

か。それとも解体をミスしていたとかそういうことなんだろうか。

「何かすごい失敗をしたのかな私?」

「え? ああそういうことではなく、なんかリーダーっぽさというか仕切っている

のに全然嫌な感じがしないというか。」

 それは、どうなんだろうか。むしろ私はリーダーらしくないせいで、戦いに関し

ても作戦を立てるにしてもミスばっかりで嫌がられてるんじゃないかって思ってい

たんだが。


「おいしょおいしょっと。んーとね。エリーちゃん誤解しているよ。」

猪を解体しながら会話を続けることにした。ただ突っ立ったまま会話しているだけ

だと時間が勿体ないし。

「私がしょぼいからみんなしょうがないなあって思っているだけなんだよ!」

絶対そうに決まっている。私がもっとしっかりしていたら、ブッチとかもっと真剣

になって、誠心誠意尽くしますとか言ってくれるかもしれないし。


「ねこますさんって自己評価低過ぎじゃないですか? もっと自信たっぷりになっ

てもいいと思います! だって強いですし!」

「ソウデス。ねこますサマハ、チョウツヨイデス!」

「やめてくれ。恥ずかしい! 褒めないでくれ! 照れる!」


だってそんな、他人から褒められるなんて滅多にないし。社会人になってからも何

をするにしても出来て当たり前ってのが要求されるし。ああ、それを考えると、私

って褒められ慣れていないのかもしれないな。こうやって、ちょっとしたことで褒

められるとすごい恥ずかしくなるくらいだし。


「人に誇れる立派なものが全然ないからねえ。」

「ゲームに詳しいじゃないですか!」

「上には上がいるからねえ。ってエリーちゃん手を動かしながらよろしくね。」

「あ、はーい。上がいるっていってもそれでもすごいと思いますよ。」

 世の中にはゲーム好きなんて人がごまんといる。だから私がゲーム好きといった

所で大きな特徴があるとは言い難い。私は、私だけが出来る特別な何かがあったら

いいのになあと思ったことは沢山あったけれど、そんなことはなかったしなあ。あ、

でも今この<アノニマスターオンライン>をやっている時は、般若レディって私だ

けっぽいから特別って感じがして嬉しいな。


「この般若レディが私の取り柄みたいなもんなのかなあ。」

「おっ。なんかいいこと言いますね! さすがねこますさん。私もこのサキュバス

が取り柄みたいな感じです。」

「スタイル良くてモテモテだよねサキュバスって! そういうのを狙ってちやほや

されたかったんでしょう!?」

「ちちち、違いますよ! そんなことありませんって!」

「あっ。今狼狽えた! やっぱりなんかそういう姫みたいになって男たちを下僕に

しようとか思っていたんだ!」

「そこまで思ってないですけどちやほやは少しくらいされると思ったら洞窟の中が

スタートで精神がおかしくなりました。エリーです。」


 急に落ち込まないでくれ。まぁ確かにちょっと可愛い感じのキャラを作って楽し

い未来が待っていると思ったらそれだもんなあ。気落ちしてもしょうがないか。

 私は草原スタートだったから、動き回れてよかったのは今でも思うな。

「そういえばエリーちゃんは、海底洞窟を抜けたらみんなに会えるんじゃない?」

「実はもうあまり会いたくないって感じですよ。今更顔を見せるのもなって。」


友達と全く会えないまま過ごしちゃったわけだし、今さら感はあるだろうなあ。そ

れもこれもこんな魔者の大陸なんかがスタート地点になってしまったからだけど。

本当にこの大陸レア過ぎるだろう。世界中のプレイヤーがいるのにここには全然い

ないとか、なんて場所だよ。


「じゃあ新しい出会いに期待だね! 男を誑かしたりするプレイだね!」

「そういうことは流石にしませんよ! 悪目立ちしますし!」

「まあ、モンスター扱いもされそうだし、ね。私なんかもっと。」

「う、そうですね。」


人間達が多いという事は何か批判されたりありそうだよなあ。まぁ世界中のプレイ

ヤーがいるのであれば、ちょっと目立つくらいで終わりそうな気もするけど。


「海底洞窟さえ抜ければ色々楽しいことがあるかもしれないし、まずはここで解体

頑張ろうか。」

「そうですね。一心不乱に頑張りますよ。」

「あはは。真面目にやらないとだね。」


こうして私達は一生懸命解体作業に勤しむのであった。

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