第149話「リッチと雑談」
すみませんが一旦投稿します。後で加筆修正いたしますのでどうぞよろしくお願いいたします。
→4/20(土)訂正しました。
リッチと私達ももりーずVは、適当に岩や切り株に座って談話することになった。
さっきまで争い合っていたとは思えない和やかなムードな気がしたが、リッチはブ
ッチの視線に気が付くと時折びくついているような感じだ。これは仕方がないな。
あれだけぼこぼこにしていたんだし。
とはいえそれを引きずるのもなんなので、最初にお互い握手させておいた。数秒
前の敵は今の友みたいになれるかもしれないし。
そんなわけで、 全員の名前紹介を終わらせた後、さっきの話の続きをすること
になった。私は、魔者についての話を聞きたくてたまらなかった。
「マジャサマハ、コノタイリクヲヘイテイサレタノダ。」
平定か。私は魔者の能力である時間凍結が使えるがこれがもし簡単に何度でも使え
た上で他のスキルも沢山あったら、それこそ平定なんて簡単に出来てしまう事じゃ
ないのだろうか。魔者の奴、どれだけ強かったんだろうか。
「平定したってさ、何か倒したりしたの?」
「レッドドラゴン、ドロヌマオロチ、ゴーストロガノフ、タイショウイカ、ジャガー
コート、エレファントボス、グローリーアント、ネガティブータ、マオウペンギン、
ツウショウ「クロウニン」ドモヲフウジヘイテイシタノダ。」
クロウニンって苦労人のことか。なんだその名前は。強そうな名前なんだからもっと
良い名前を考えつかんかいとツッコミが入れたくてたまらなくなってくる。
「クロウニンって苦労人のことやないんかい! ってついうっかり突っ込んでしもう
たやで! こんなクソつまらんことに! でも突っ込まずにいられるわけがないやん
け!」
いいぞだいこん。思いの丈言ってやれ。安直なネーミングなんて許されるわけがな
いんだということを言ってやるんだ! 徹底的に! どこにでもありそうな名前つけ
たら特別感がなくなってしまうじゃないか。全くもう。
リッチは、だいこんの勢いに押されたのか呆気に取られているようだった。骸骨だ
から表情が読み取れるわけじゃないんだけど、ブッチのサイコロ顔でもなんとなく読
み取れるようになったので多分そんな感じだと予想しただけなんだけど。
「で、話を戻すけど、モンスターたちはどのくらい強かったんだ?」
どうせみんなボス当然の強さがあったってオチなんだろ。中には直接手を下さずに間
接的に人類を滅ぼそうとする過激派もいた、なんてことが起こりうるかもしれないじ
ゃないか。あ、分かったぞ、これと同じような事が昔にあったんだな。だから色々な
ことを秘匿しているというわけか。
「セカイヲ、ホロボセルチカラヲモッテイタノデス。」
世界を滅ぼ・・え。うわーよくある設定だなあ。伝説の苦労人は世界を滅ぼす力を持
っていたとか、いやクロウニンか。苦労しているな。
「いやー苦労してるってことだねー、クロウニンだけに。」
「・・・。」
私はツッコミを入れなかった。誰も何も言わなかった。よし、これでいい。たまには
白けさせていることに気が付かせないとだめだな。
「世界を滅ぼす力を持つクロウニンかぁ。俺そいつらに挑んでみたいしねっこちゃ
ん。そいつらの封印全部解いてくれ。俺はそこから本気を出したい。」
「何言ってんの。そう簡単に封印なんて解けるわけないでしょ。むしろ解くと何か
まずいこと起きるってことだからこちらのリッチが警告しているってことじゃん?」
戦ってみたいっていうのは分かるけど、戦うためにはこの魔者の大陸が無くなる
なんてことになったらどうする。ねこます草原が無くなって、薬草集めが二度とで
きなくなるなんてことになったら私はどうすればいいと言うんだ。だから封印を解
くと何が起きるのかってことが判明しないと迂闊に手を出せない。
「リッチさん・・・が本気を出すとドロヌマオロチが復活するって言うのはどうい
うことなんですか?」
「ワタシガ、ドロヌマオロチノ、マリョクヲフウジコメテイル「カギ」ダカラダ。
ワタシガホンキニナッテシマエバ、カギトシテノキノウガタモテズ、フウインハ、
トケテシマウ。」
ということは、イッピキメとニヒキメも同じような感じで、こいつらが死ぬとレッ
ドドラゴンの封印が解けるってことか。怖いなー。こんな感じのがあと7体分いると
して、いずれはどれかと戦うことになるってことなのかな。
「マスターは、魔者であるのならば、そのクロウニン全てを倒すことができるという
ことになるのですかな?」
「サヨウ。コノオカタハソレダケノチカラガアルノダ。」
ない。そんなものはない。本当にないから。勝手に魔者にされただけだから。こ
れはイベント進行的な感じになっているだけだから、みんな私に期待の目を向ける
のをやめてくれないか。私は、ただの般若レディなんだぞ。肩書だけ魔者にされた
だけでそんなすごい力があるわけない。
「あの、私にはそんな力全然ないんだけど。」
「フム、デハマダ、カクセイシテイナイトイウコトデスナ。」
覚醒とかさぁ、そういう中学生とかが好きそうな言葉使うのやめてくれないか。
ああもうブッチがキラキラした笑顔でこちらを見てくる。何に目覚めろって言うん
だよ。それとそんな覚醒したくらいでホイホイ強くなれるようなら誰も苦労しない
でしょう。覚醒するとどれだけ強くなれるって言うんだ。
「魔者が覚醒したらそんなに強くなれるの?」
「ナレマス。」
「そんな断言しなくても。でも、この湿地帯全部消滅させるとかできないでしょ?」
「タヤスイコトデショウ。」
「ねっこちゃんやべー。ちょうやべー。魔者やべええ。」
何それ。つまりこの魔者って称号。実はかなり恐ろしいものだったんじゃないの
か。今更ながら壮大さに押し潰されそうだ。なんでそんな偉い称号を私なんかに与
えられてしまったんだ。おかしいだろ。
どうせ他の人もこの称号とれるようになるだろうななんてことを思っていたんだ
けど唯一無二のものなのかもしれないと考えると、やはり腰が引ける。だって、そ
ういうのってゲームに人生を賭けているというか、そういうプレイヤーが手に入れ
るものだとばかり思っていたから、そんな称号を私が持つなんてありえないでしょ
う。
「どうすれば姉御は覚醒するんやで?」
「タタカイヲ、カサネテイクウチニ、ツヨクナルハズダ。ソシテアルトキ、ソノチ
カラガ、カクセイスルヨウダ。」
「そのあたりは、なんか普通だね。」
戦いまくって強くなると、ある時覚醒するって定番というか何というか。今度はあ
まりに普通過ぎてがっくりとくるな。
「はぁ。なんだか面倒くさそうな事になってきた気がするなあ。ねえみんな?」
「何を言うんだよねっこちゃん。<アノニマスターオンライン>で覇権をとれるだ
けの力を手に入れられるかもしれないんだよ! もっと喜ばないと!」
「そ、そうですよ!この世界中で大人気の<アノニマスターオンライン>で誰もが
憧れるスターになれるかもしれないんですよ! もっと喜ばないと!」
ブッチとエリーちゃんはなんでそんな宣伝文句みたいなことを言っているんだ。と
いうか分かってないのか君たちは。
「有名人になったら知らない人からいきなり声をかけられて、金くれやとか言われ
るようになったり、いきなりぶつかられて、調子に乗ってんじゃないぞとか睨みつ
けられたりするようになるじゃん。毎日毎日騒がれて草刈りができなくなる日々を
送ることになったらどうするんだ。」
毎日ストーカーされたりするようになるんだ絶対。怪しい連中が沢山やってくるよ
うになり、私の精神はすり減っていくに違いない。
「ねっこちゃん。そんなことにはならないと思うよ。ちゃんとそういうのは運営が
なんとかしてくれるだろうし。」
「そうですよ。それよりも世界的に有名になれるかもしれないんですよ。」
<アノニマスターオンライン>は人気だが、日々その人気が更に高まっている。至
るところで宣伝されているし、話題に尽きないゲームになっている。私はそれらの
情報を出来るだけ得ないようしているけれど、それでも聞こえてくるものがある。
有名なプレイヤーの話だ。
とてもすごいゲームプレイをした者には実際に賞金があるなんて話もあるし、新
しいマップが公開されたなんてことで特集になったりしている。自分もそんな風に
なりたいって思う人はいるんだろうが、そんなのは極一部のプレイヤーだけが出来
ているだけに過ぎない。
まぁ、稀に一般プレイヤーがとんでもないお宝を発見したっていうのがあったり
するので一概には言えないけど。
「うーん。私としては、草刈りの邪魔さえされなけれいいんだけだし。」
「ブッチニキ。何を言っとるのか分からんけど、姉御は草刈り以外は何も考えてな
いと思うんやで。あと草刈りができなくなったらきっとやばいであれ。」
「むしろ草刈りが出来なくなったら覚醒して世界を滅ぼしそうだよねあれ。」
「ねこますさんはもう草刈りだけしていればいいのではと思い始めてきました。」
ん? なんかみんなコソコソ喋っているな。私は魔者として何かしたいとはは思っ
ていないので、面倒そうな事は見送りたいだけなんだけどなあ。
「トコロデ、マジャサマハ、ナゼコチラニイラシタノデスカ?」
「たけのこ森林、あー、森を抜けたらここに出てね。この大陸について知らないこ
とばかりなのと出る方法を探している。」
「マジャノタイリクカラデルホウホウ。ワタシ、シッテイマスゾ。」
「な、なんだってえええええ!?」
おいおいリッチさん。それを先に言ってくれよ。ついに、私達はこの魔者の大陸
から出られるかもしれないってことか。胸が熱くなってきたぞ。やっと、やっとこ
さ他のプレイヤーに出会えるかもしれないんじゃないか!
いや待てよ、期待し過ぎてもだめか。また別な大陸でしたなんてオチになるかも
しれないんだから。ここは最後まで話を聞いてから喜ばないといけないな。