第148話「ブッチとリッチ」
私達は、ただ茫然と見ているしかできなかった。ブッチが徹底的にリッチを痛め
つける姿を。うーむ、それにしてもブッチだリッチだって言ってるとなんかそうい
うお笑いコンビもありなんじゃないだろうかなんて考えてしまったので口にだして
みた。
「ブッチリッチってお笑いコンビっぽいよねあれ。」
「ぷっ。ねこますさん。そんなこと言ったらだめですよ。」
なんて言いつつも笑いを堪えるのに必死なエリーちゃんだった。
ブッチは、プロレスの技っぽいのを使っている気がしたのだが、いいのかお前力士
じゃなかったのかと言いたくなった。力士から転向した人はいたと思うけど、いま
だに廻しはつけているのにそれはないだろうと思った。
「よーし。このくらいで勘弁して野郎。」
「ウゴゴゴ。クッ。バカメ! シネイ!」
「何て言うわけがないだろうアホウが!」
「アガガガ。ダマシタナアア!」
「うるせーー。潰れろ!」
ブッチが攻撃を終えると、リッチは反撃に出るのだが、それを見越しているブッチ
はたやすく攻撃をかわして、更に攻撃を加えていく。絶対コントだろこれ。それに
してもリッチとやらは本当にタフだな。ブッチは、かなり攻撃をしているのに、ま
まだまだ元気に見える。本当に不死の設定何だろうか。
私が狐火で燃やせば簡単に燃え尽きてではないかと思っているが、現状ブッチが
リッチをボコボコにして遊んでいるのでなんだか邪魔するのが悪い気がしている。
とはいえそろそろ良いのではないかと思っているのだが、私も草刈りで夢中になっ
てしまっている時があるのであまり大きな声で言えないというわけだ。
「楽しそうだなあブッチ。」
「そうやな。あんなに生き生きしているブッチニキ久々に見るで。」
「タタカイガスキナノダナ。」
「ヤハリセンジンノチガナガレテイルノデハ。」
戦の神と書いての戦神ってことなのか知らないが、ただのサイコロプスだぞ多分。
「なかなかタフだなーお前。そろそろ本気で倒そうかと思い始めてきたよ!」
「キサマゴトキガワレヲタオセルハズナカロウ!」
「おおーいいねいいね。そういうこと言われるとすげえやりがいがある! それじ
ゃそろそろ頭蓋骨砕き、いってみようかな?」
「ナニ?」
面白そうな事やろうとしているなあ。私も今まで気になっていたんだよね。骸骨
系のモンスターって頭蓋骨を壊したらどうなるのかなって。骨の体自体に魔力が備
わっているとかだったらそもそも頭が必要というわけでもないんだから、頭蓋骨が
なくても動けるし、魔法も使えるんだろうから困らないと思うんだ。だったら、骨
の体の一部分が欠けていたほうが好都合なんじゃないのかなんて思うし。
「今、割れるわけないって思ったな。」
「グ!?」
「分かるんだよ。何を考えているのかってなんとなく。表情なんてほとんど出ない
ような人を相手にしているとさあ。まぁ安心してくれよ。俺は割れるまで続けるか
ら。」
ブッチって戦いになると傲慢不遜になるというかやたら自信があるんだよなあ。
プロゲーマーだったりするんじゃないかと思うような動きをしたりするし、よく分
からない奴だなって思う。
割れない頭蓋骨を割れるまで攻撃を加えると言うが、このゲームでダメージとい
うのがどんな風になっているのかが分からないから、どれだけ時間がかかるのかも
分からないな。敵が強いと攻撃してもダメージが0になるゲームもあるから、これ
だとどれだけ攻撃しても意味がないことになる。だけど、1だけでもダメージが入る
というのであれば話は変わってくる。長時間かかっても必ず敵を葬り去るというこ
とができてしまう。
とはいえ、わざわざそこまで時間をかけるプレイヤーは少ない。それにそれしか
ダメージを与えられないという事は、プレイヤー側が弱いことが多いので、そんな
ことを繰り返してやるという事が無いのが実情だ。
それが、例えばアクションゲームなんかだとやってしまう人がいる。挑戦という
名目で、不可能を可能にするという理由でやろうとする人がいる。敵は様々な動き
で攻撃してくるため、それらをあらゆる手段で回避し、その上でちまちまと削って
いくという戦いだ。ゲーム内の敵は疲れるということはないが、プレイヤーは人間
であるため、長時間のゲームプレイをすれば疲労していく。攻撃を一発でも食らえ
ば、即死ということも多いが、それら全てを何時間でも回避し続けて倒してしまう。
だがそれには恐るべき集中力が必要になる。
敵はたった1回でも攻撃が当たれば勝利なのに対して、プレイヤー側は何万、何十
万もの攻撃を当て続けると言う気が遠くなるような戦いを強いられるというわけだ。
そしてそれをやるには敵の攻撃パターンを知らなければ出来るものではない。それ
を始めてみる敵でやってみようとするなんてプレイヤーは、早々いるもんじゃない
だろう。
ブッチは、自分にはそれができると思い込んでいる、気がしている。
「グッ。アッ。グォオ。」
「その魔法は無駄だって。んでもってそれさ。」
魔法を放とうとするリッチの手をつかみ取り、魔法を放つ寸でのところで、無理矢
理動かして、リッチ自身に魔法が当たるようにするブッチだった。黒い球が頭蓋骨
の上部にあたり、その部分が闇に飲みこまれて消えていった。
あれは、闇魔法とかいう奴なのかなあ。闇って重力とはまた違うのか、そもそも
闇ってなんなのか分からないから気になるなあ。どういう仕組みなんだろうあれ。
「という感じだから。もうお前はおしまいだぁ!!」
「ヌヌヌウウ!?」
リッチが本当にギャグをやっているようにしか見えない。お前実はブッチのコント
に付き合っているだけじゃないのかと言いたい、本当に言いたくなる。絶対これは
悪ふざけのノリだろ。もういい加減にしろと。
「コウサンスル。」
「俺に嘘は通用しないんだなあこれが。お前まだ余力隠しているだろ? 変身能力
持っているんだろ? ここには様子見って感じで来た奴だっていうのが分かるぞ。」
どうだろうな。ブッチが心折れるくらいまでしこたま叩きつけていたって言うの
が理由じゃないのかって思うんだけど。
「私もブッチさんの言う通りだと思いますね。あんな強そうな奴が簡単に降参なん
てありえないと思いますし、どうせまた不意打ち狙いです。」
簡単にってわけでもない気がするんだけど、というかもういいじゃないか。こん
なんの相手をしていても先に進めないし、私はさっさと先に行きたいよ。
「ワレハココデホンキヲダスワケニハイカンノダ。」
「ナンデダヨ。やべうつった。じゃなく何でだよ?」
「ワレガココデホンキヲダセバ、ドロヌマオロチガフッカツスル。」
おっと、話が進んだ。こいつが本気を出すとっていう理由が分からないが、それ
なら今ここで戦うべきではないかな。なんてな。それがハッタリの可能性もあるん
だからこっちは警戒しているっつーの。
「ドロヌマオロチって何?」
「コノバショソノモノダ。コノシッチスベテガドロヌマオロチダ。」
や、や、やっとドンピシャな当たりきたああああああああああ! ここ最近私の
予想が外れまくっていたからもう推理辞めようかとも思っていたけれどこれだよこ
れえ! こういう予想が合っていた時のすっきりした感じ、最高だ! 予想外の事
が起こるのも楽しいけどさ、考えた答えが合っていた時の感動はもう良すぎる!
「マスター。どうしたんですか?」
「いや、なんかちょっと嬉しくて。」
鳥肌が立つというか身震いしてしまった。はぁなんかとてもすっきりした。当然こ
れについてもあのリッチが嘘八百ってこともありえるからね。
「で、何で俺らに襲い掛かってきた?」
「ドロヌマオロチヲフッカツサセヨウトシテイルトオモッタカラダ。」
わざわざ復活させたいかと言うとそこまでじゃないんだけど、戦ってみたいとかこ
の先のイベントの進行が必要なら戦わないとなあって思っているだけなんだけど。
ブッチは戦いたそうだな。
「復活つーか戦ってみたいだけなんだが。」
「ヤツノ、オソロシサヲ、シランカラ、ソノヨウナコトガイエルノダ!」
「まぁそうなんだろうけどね。で、気になっているんだけどレッドドラゴンって知
っている?」
「シッテイルニキマッテイル。ドロヌマオロチヲフウインシタソンザイダ。」
うっはー。リッチってば博識。こりゃこいつ生かしておかなきゃだめだな。ここで
味方につけておくのがいいか。なってくれるかどうかも分からないけどって今はブ
ッチが頑張って交渉というか話し合いしているから見守るとするか。
「もう一回聞くぞ。お前が本気になったらドロヌマオロチは復活するんだな?」
「ソウダ。」
「じゃあこれはどうだ? そこのリザードマン二匹が死んだらレッドドラゴンが復
活するらしいがそれはどうだ?」
「ナン。ダト?」
それは知らなかったらしい。それにしても、レッドドラゴンドロヌマオロチなん
てまだ名前だけしか出てきていないせいかどんなものか気になってくるなあ。一体
この魔者の大陸でどんなことをしていたっていうんだ。
「そしてそこの般若レディのねっこちゃんは、魔者だ!」
「ナニ!? マジャサマダト!?」
おい、ブッチ、急に首をぐるっと曲げてこっちを見るんじゃあない。って違う、こ
いつはリッチだよ。思わず突っ込んでしまった。
「タ、タシカニ、マジャサマノチカラヲカンジル。オオ。マジャサマ!」
「え、いやいきなりひれ伏されても。ああでも私達いきなり攻撃されたしこんくらい
されてもいいのか。」
「こっちから打って出ようってなったのはねっこちゃんの勢いがあったからだけどね。」
あ、こいつばらしやがったな。
「マジャサマニハタイヘンシツレイヲ。」
「いや、私は魔者になってまだ日が浅い魔者だから。まぁとりあえず。ちょっとそこ
らで話すとしようよ。」
積もる話がありそうなのでここらで一旦戦いを終わったことにしておきたい。流石に
ここからリッチがケケケ騙されてやんの~とか言ってきたりはないと思う。思いたい
だけだけど。というか私が先に攻撃を仕掛けていなければ最初から話し合いで済んで
いたかもしれなかったのかな。
なんて考えたけど後の祭りだしもういいかと考えるのをやめた。
作者の私は、ドラ○エⅢのカン○タが謝ってきてもいいえにするタイプです。