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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
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第145話「ゲームとの距離感」

 再度ログインする前の準備は済ませた。後はVRマシンをセットして、ログインす

るだけなのだが、その前に、決めておくことができた。少しゲームに距離を置くと

いうことだ。このままどっぷりはまっていくと、大事な事を忘れてしまうので、そ

うならないように無理のないゲームプレイをするように心がけようと決意する。

 オンラインゲームでは、自分以外のプレイヤーがいると、ゲームをしなきゃだめ

だという雰囲気が発生する。この雰囲気に飲まれてしまい、気が付くと長時間のゲ

ームプレイをしてしまうことがある。こうならないようにプレイ前に戒めておく。


 ゲームプレイ中も、一定の距離を保つように冷静になる。近頃はそういうことも

忘れてしまいがちだったが、さっき疲れてログアウトして気が付いた。熱中し過ぎ

て適切な距離感を忘れているなあと。段々頭の中がゲーム中心の考えになっていく

ので、それは問題だ。ゲームプレイしている時も、そうじゃない時もそんな風にな

っていくのはどう考えても過剰だ。そうならないためにも、いったん引く。私は、

そんな風に決意して、<アノニマスターオンライン>にログインした。


「やあやあ。ただいまー・・・って。」

ログインすると、ブッチもエリーちゃんもいなかった。私が一番早く戻ってきたよ

うだ。というか今、ログインすると、真っ暗だった。夜になっていたようだ。そし

て。


「ねこますサマ。オカエリナサイ。」

「マスター。おかえりなさいませ。」

「姉御姉御! 空がすごいやで!」


 なんて言ってるがもう知っている。空を見上げると、満天の星だ。VRだっていう

のに現実と変わらない、もしかしたらそれ以上かもしれないなあ。すごい綺麗だ。

こういう時にぼけてきそうなブッチがいないというのがなんだか面白いな。

 ただ眺めているだけのにすごく落ち着いた気分になれるな。星空が見えるなんて

場所は現実じゃ限定されているし、こういうのが自然と見られるのはすごくいい。

わざわざ丘の上だとかに夜に移動して寒い中じっと見つめるのとは違って自宅内で

見られるのだからすごい。

 

 あれ、でもあの星空だけれど移動することって出来るんだろうか。ゲームの世界

のことなんだし頑張れば宇宙にも行けるという事なんだろうか。そういえばそうだ。

今私達がいるこの惑星がどういう所なのかは分かってないけれど、別な惑星にも行

けるゲームでしたなんてことになったらすごいな。一生遊んでも終わらないってこ

とになるじゃないか。

 そんな巨大なゲームになっていたらすごいだろうなあ。夢が広がるな。


「みんな、モンスターが出たりはしなかった?」

「何もでてこないチウ。」

「カワッタコトモナカッタ。」

となると、この湿地帯では戦いよりも探索が主体になりそうだな。出てこないのは

私の威圧が関係しそうだったけれどそうじゃないことが判明しているし。むしろ、

この地面。ドロヌマオロチが放っているなんらかのエネルギーが他のモンスターを

遠ざけているなんて事がありそうだな。

「ここから更に西に進んで何かないか見てみようと思っているんだけれど、ブッチ

とかエリーちゃんが戻ってきてからにしようか。」

 私達だけで勝手に進んで置いてけぼりにするわけにもいかないしな。ここから先

に何があるかもわからないし、みんな揃ってから出発したほうがいいだろう。


「ちょいと、そこらへんから木の枝でも取ってくるかな。」

私は寒さという感覚がこのVRでほとんど感じていないが、たけのこ達は寒そうな感

じがしたので、たき火でもしようと思った。

「それなら拙者がいってきますよ。」

え、私も木の枝くらい刈りに行きたいんだけどなんて思ったら、くろごまがあっと

いう間に闇の中に消えていった。あれ、大丈夫かな、割と近場に移動していったけ

れど、夜だし何かあったら嫌なんだけどなあ。なんて思ったけれどまあいいか。も

しかしたらいつもが過保護過ぎているのかもしれないし。


「お? 姉御、過保護はやめたんか?」

「過保護て。いやまぁそうだっただろうけど。あまり自由を奪い取ってもなって思

っただけだよ。」

 まさか、だいこんに言い当てられると思わなかったので、ちょっと意外に感じた。

確かに何でもかんでも私が監視してばかりというか、目を離さないように必死にな

るっていうのは、あんまりよくないと思った。

 NPCは死んだら生き返れないかもしれないというのが常に不安を煽るような感じ

になっていたが、これがむしろ良くなかったと感じる。私自身は、このゲームをプ

レイしていてやりたいと思っていることは、一回も死なないようにすることだ。

 というか、みんな普通に死にたくないと考えて当然だろう。だったらみんな死な

ないように頑張るだろうし私だって同じなんだ。

 

 たけのこ達を常に安全な位置にいる状態にしておきたいと考えていた事が間違い

だった。私はもっと厳しくならなくちゃいけなかったんだ。絶対に死なないように

生き残るために足掻くのが普通だろう。ゲームの世界だろうがなんだろうが、この

世界に生きているというNPCであるのならそれが正解だろう。

 

「これからは、絶対死なないために全員で強くならないといけないな。」

「ただいまー、こんばんはー、おいっすー。ねっこちゃんが恥ずかしい事言って

るー。」

「折角のいい雰囲気を台無しにするなこんばんは!」

ブッチが戻ってきた。何をしていたなんて聞くのは野暮なので聞かない。それはそ

うと、私はこの満天の星の元でかっこつけたくなっただけだ。すごく綺麗な星空な

なんだからロマンチックなことを言ってみたくもなるんだっての。

「俺もかっこいいこと言っておくか。よし、俺は<アノニマスターオンライン>で

最強の男になるぞおおおおおおおお!」

うるせーー。空に向かって叫ぶんじゃない。まったくもう。こんな深夜に叫んだら

それこそ、ドロヌマオロチが目を覚ますなんて事があるんじゃないのか。


「ただいま戻りました。お、ブッチ殿おかえりなさい。」

「ただいーまー。お、木の枝集めかあ。俺も行ってこようかな。」

「これを最後に、ブッチの姿を見る者はいなくなってしまったのです。ジエンド。」

「しかし、消えたと思ったブッチは、生きていたのです!」

何ピースしているんだこいつぅ。こういう時はノリとして、うっうっ言いながらわ

ざとらしく泣くんだぞ。

「狐火!」

というわけで、木の枝に狐火を使い、たき火にした。おっ!? なんだこれ、すご

い冒険している気分になってきたぞ。うわぁなんだこれ。憧れの焚火じゃないか。

まさか今更こんなことで感動することになるとは思わなかったけど、この星空の下

で焚火なんて、なんかテンションが上がってくる!


「焚火いいね。これはすごい。冒険らしさ抜群だよ。よし!この火を絶やさないよ

うに俺が木の枝を集めてくるから待っててね! オラァアアアア!」

なんて叫びながら木がありそうなところまで走り去っていった。忙しい奴だなあ本

当に。まぁ私は今持っているアイテムの整理とか、あれこれ考えていこうかな。


「あれは、木を丸ごと一本引き抜いてくるんじゃないでしょうか。」

その引っこ抜いた木をぶん回すとか重機並みの力だよなあ。ってあれ。木、木。そ

こに木があるとしてここはドロヌマオロチの背中。木はその背中に根を張っている。

それを引っこ抜いたら・・・。ど、どうなるんだ。そういえば木って結構根深いん

だよね。ま、待てよ。

「ゴォォォォォォ」

突如、私達の体に猛烈な風が吹きつけた。なんだ今の。もしかしてブッチが木を頑

張って引き抜こうとしているからってわけじゃないよな。たかが一本を抜くだけな

ら特に問題なないんじゃないかと思うんだがどうなんだ。これだけ広い土地なんだ

から、一本でどうにかなるとは。


だけど、例えば核となる木があったとして、それを引っこ抜いてしまえばドロヌマ

オロチが出現するかもしれない可能性は無きにしも非ずだ。おいおい、ブッチ、さ

っさとこちらに戻ってきてくれないか。戦闘狂は分かるんだが、話し合いをしない

と前に進めないこともあるんだぞ。


「ただいまー。」

あまり大きくない気を背負ってブッチが返ってきた。早いなオイ。怖くなってすぐ

に帰ってきたってことじゃないのかこれ、そうとしか考えられない。

「おかえり、木を引っこ抜くのはやばかったようなんだけど。」

「うん。なんか引っこ抜いたら怨念みたいなものがまとわりついてきた感じがする

よ。呪われてはいないと思うんだけど。」


こう考えるとやはりここがドロヌマオロチ本体の場所だろうな。木を引っこ抜いた

という事を考えると、地面には神経だとかなんだとかが沢山あると推測する。つま

り、ここで木を引っこ抜くという事は、髪の毛を抜くようなものだったんじゃない

だろうか。ここに生えている木はそんなに多くないし、髪の毛で見立てるとそれが

一本ぶちぬかれただけでも痛みはあるだろうなあ。


「髪の毛を抜いたと考えてみるんだブッチ。」

「うわぁ痛そうだね。」

「犯人はお前だ!!!」

「あー。やっぱり。そうだよね。なんか雰囲気が変わってやばそうな感じがあった

んだけど、木を引っこ抜いたらそりゃそうだよね。ということは片っ端から木を抜

いていくことで、ドロヌマオロチが出てきたりするのかな。」

「やめろ!」


想像して欲しい。自分の髪の毛が一本一本ぶちぬかれていくことを。そんなことを

されたら私なら絶対に反撃するだろう。ドロヌマオロチだってそうだろう。だから

これ以上引っこ抜くことは無いように、ブッチにくぎを刺しておいた。


「一応言っておくけど、まだ戦うつもりはないよ私は。」

「まだってことはいずれはってことだね。」

「そう、準備ができれば戦うけどまだその時じゃない。」

「いつになりそうなのかな。」

「最低でも今の倍くらいは強くなってからだなあ。」


 気が長い話でもあるのだが、この大陸そのものと言えるドロヌマオロチと現段階

で戦って勝てる気はしない。今戦っても勝率は0だ。そんなところに戦いを挑むの

は無謀でしかない。攻撃するときの火力も何もかもが足りない。それらがかなり強

くなって初めて勝てる気がする。

 ずるい倒し方もあるかもしれないけれど、その方法は思いつかないので今のとこ

ろ正攻法で戦えるようにしておきたいなあ。


「ただいまですー。ってみなさんお揃いですね。」

エリーちゃんも戻ってきたことだし、先に進んでみるとするかなあ。

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