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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
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第142話「考えろ般若レディ」

 意図せず泥耐性を獲得したけれど、これを使えるのは私だけなのが問題だ。仮に

ここでドロヌマオロチが出現したら、浮遊や飛行を組み合わせて戦うことになるが、

それらの効果が切れた瞬間にやられてしまうことだってあるかもしれない。

 ここで私以外に泥耐性を覚えてもらえればいいのだがあればいいのだが、そんな

都合のいい展開は無いに決まっているので、どうやったら勝てるのかを考えないと

いけない。

 藪から棒に、いやまるで狙っていたかのように泥耐性なんてスキルを得てしまっ

たのだから、これは有効活用できると良いなあ。


 私がここでやらなきゃいけないことは、この泥耐性の効果検証、次に威圧の操

作、そしてドロヌマオロチがどんな感じなのかを予想することだ。事前に対応で

きることは何でもやっていかないと勝算は無いだろう。

 トラゴンの時みたいな不意打ちはいかないだろう。というか泥なんて名前がつ

いているわけだし泥に混ざって逆に不意打ちされてしまうかもしれない。攻撃の

一瞬だけ姿を現すなんてモンスターはいるが、ボス級でそんなことをされるとこ

ちらは消耗必至だ。


 とはいえ、私は、私だけがなんとかしようなんて考えはない。ブッチやエリーち

ゃん。たけのこたちがいるのだから、ももりーずVのみんなで戦えばいい。しかし

他力本願ではいけないんだ。仲間がいるからなんて思ってばかりいるとそれが自分

の力だと過信したり誤解したりしてしまうことだってある。そういう心に隙がある

と、何かに失敗してすると、八つ当たりするなど、どんどん腐っていきそうなので

もっと自立しないとなんて思いが強くなってくる。


 昔のオンラインゲームの話なんかを調べたことがあるが、仲間と組んでプレイす

ることが当然のボスなどは、連携が上手くできないと、全く勝つことができなかっ

たというものが多かった。つまり、一人では絶対に攻略できない、あるいは一人で

倒すためには膨大な時間がかかるといった仕組みになっているという事だ。

 私も<アノニマスターオンライン>以外のゲームをプレイした時にそういう協力

が前提のゲームをしたことがあるが、レアアイテム欲しさから、ボス戦での少しの

失敗で仲間を責め立てるようになる人や、責められたことで嫌気を指して辞めてい

ったプレイヤーなんかをたくさん見てきた。

 

 つまり協力プレイなんてずっと昔からそういう問題点があるということだ。自分

一人でプレイするわけじゃなければそういうものなんだろうなあとは思っている。

 ただし、<アノニマスターオンライン>の場合は逆というか、ブッチとエリーち

ゃんはまるで過去の私と同じような経験をしてきたかのような感じがする。なんだ

か面倒事になりそうな時は、すぐに解決しようとするので、私が何もしなくても、

ボス戦なんかは簡単に倒してしまいそうな勢いがある。だけどそうなってくると問

題が発生する。

 

 私のリーダーとしての威厳がなくなるじゃないか!


 私はこういうことを真面目に考えるタイプだ。嫌だ嫌だ。一応リーダーなんて言

われているからには、こう頼れる感じを出していきたいじゃないか、なんだかこう

会社紹介とかの漫画で出てきそうな頼れる先輩と言うか、何でもできそうな優しい

先輩みたいなそういう威厳をだしておきたいという欲が私にもある。というかまず

リーダーだし。就任したからには学級委員みたいな感じで真剣にやらないと私の気

が済まない。


 あ、そういえば忍術なんてのも覚えていたじゃないか。これもいまだに検証して

いなかった。やっぱりこうなると特訓しないとだめじゃないか。うーん。みんなに

内緒でこういうのを特訓しておいて、いざボス戦になって使って、なんだ今のは!

みたいに驚かれたいなあ。そういう風になれたら面白いよなあ。

「姉御、何さっきから一人でにやついたり真面目な顔をしとるんや。」

「は!? え? ああ、だいこん。」


 突然話しかけられて驚いてしまった。いけないいけない。たまにこうやって考え

すぎると周りの物が見えなくなってしまう時があるんだ。って、今考えている最中

に攻撃されていたらまずかったじゃないか。ああもう、なんかじっくり考えても周

りの声が聞こえてきたり、自動で攻撃を回避するなんてスキルが欲しいなあ。


「何、みんな合流したいって?」

「いや、ワイは伝言しにきただけやで。ブッチニキが、姉御は考えすぎるとぼーっ

とすることがあるから近くにいってみてきてってことやで。」

 ブッチめ、俺は気が利く奴アピールって奴をしてきたな。なんて生意気な。これ

じゃあリーダーらしさが発揮できないじゃないか。


「だいこん。特別に教えてやろう。私は今から秘密の特訓をするんだ。」

「あ、エリーネキからねこますさんは多分秘密の特訓とかするはずって言われてき

たからそれも知っとるで。」


 なんで二人とも私の考えを簡単に読むのおおお!? おかしいじゃん! 一体全

体どうして私の事が分かるんだ。超能力じゃないのか。現実でも実はそういう怪し

い力を使える超人類みたいな人だったりするんじゃないんだろうか。

 まずさあ、般若レディの表情を読み取れるって言うのがよく分からないよ。私の

顔ってそんな色々表情が変わるわけじゃないから分かるわけないと思うんだけど。

 一応、川で自分の顔を見たことがあるし、ログインする時なんかにも、自分のキ

ャラがどんな見た目なのかが分かるけれど、どう見たって表情だけでどんなことを

考えているか分からないと思う。それとも私がそういう分かりやすい仕草をしてい

るということなんだろうか。


「なんか二人から手の平で踊らされているような感じだなあ。」

「え、ワイは姉御はいつもそんな感じとしか思っていなかったんやが。」

「失礼だなあ。そんなことはしないって。私はもっとこう華麗で可憐で狡猾な感じ

というか、優雅な感じを演出していたいと思っているし、みんなにそんな風に思っ

てもらいたいなーと。」

「姉御は一体どういう感じになろうとしとるんや。」

「周りのみんなが私の素晴らしさに感動して、踊りだすくらいかなあ。」

「もう踊りはええと思うやで。」


 それもそうだなあ。まぁ私としても楽しくできればいいとは考えているが、もう

ちょっとこうかっこいいとかすごいみたいな物語の主人公にでもなったかのように

感動されたいって言うのがあるからなあ。

「一応ギャグキャラのだいこんに相談なんだけどさ。」

「ファッ!? なんでギャグやねん!?」

惚れ惚れするくらい綺麗な白く美しい体の蛇のくせに、そんな言葉遣いなんだから

ギャグキャラに決まっているじゃないか全く。だいこんってなんか死ななそうな感

じがあるんだよなあ。死んでも死なないみたいな。死んでも生き返るみたいな。


「私はももりーずVで一番雑魚でさあ。それが悩みでもあるんだよねえ。」

「姉御。それはないやで。」

「なんでわかるんだ。」

「姉御、気が付いてないから一応言っとくんやが、姉御が本気出したら多分最強や

とみんな思っとるで。」


時間凍結が強いけど1秒しか使えない上に、丸一日動けなくなるし、浮遊も飛行も

自分が飛べないし、雷獣破は強いけれど時間差があるのに接近技だしとかどうも

こうも癖が強い感じばかりなんだよなあ私。トリッキーと言うか。正攻法じゃあ

絶対勝てないから、常に考えながら戦わないと負けるからなあ。ってこれはもう前

から何度も思ってきたことだけど。


「ブッチがさー。接近戦すごい自信持ってるけど本当にすごくてさー、エリーちゃ

んは意外と色々と考えながら攻撃してて便利屋な感じがしてすごくてさー。」

隣の芝生は青く見えるな理論なだけかもしれないけれど。私は私として考えるなん

てのは難しい。だってそもそも。

「私、錬金術士なのにさぁ!? 火薬草くらいしか作れないし、もっと錬金術士っ

ぽいことをしたいんだよ!!!」

 

 でも、色んなアイテムを手に入れて調合だのなんだのってきっとこの魔者の大

陸にいるだけじゃ難しいと思うんだよなあ。自分のアイテム作業場とかそういう

のがないと。他にも定期的にアイテムが集められるような場所とかがないと、す

ぐにアイテムが底を尽きてしまうし。

 私は、というか錬金術士は、多くのプレイヤーとも交流を深めたりしないと、

目的のアイテムなんかが全く作れずにずっと弱いままなんだと思っている。それ

が出来れば別に無理して魔者の大陸を出ていく必要はないと思うんだけれど、そ

う上手くいかないのが現実ってもんなんだよなあ。VRなのに。


「姉御は色々アイテムを作りたいんか。」

「そうそう、そのためのアイテムの知識も何もかもが無いからねえ。まず根本的

なことを知らないから出来ないことが多すぎなんだ。」

魔者の塔にもう一回行けばいいというのもあるんだろうけれど、あまり行きたく

ない。あそこにあった本を読めば一発で解決するかもしれないというのがなんだ

か魔者の知恵に頼っただけみたいなのがむかついてくるからだ。


「姉御、それやったら、ワイらも色々アイテム集めてみるからそれを薬草を食べ

るようなノリで食ってみるのがいいやで! とにかく挑戦あるのみやで!」

「・・・・期待しているよ!」

基本となるアイテムさえ集まっていけばやれることは増えるはずだ。現状は薬草

から火薬草だけだが、これをどんどん増やしていきたい。そうか、そうだよ。私

は錬金術士なんだからその方向性をもっと鍛えていかないといけないじゃないか。

ああ、なんか胸のつっかえが取れた気がするぞ。なんでこんな単純な事が分かっ

ていなかったんだ。ああもう。


「姉御、なんだかすっきりした顔しとるで。」

「なんか気分爽快。また賢い私は悩みを解決してしまったようだよ。」

「それならドロヌマオロチも簡単に倒せそうやな。」

「それは無理だね。ドロヌマオロチは倒しちゃいけないかもしれないし。」

「ファッ? なんでや?」

「私達が今歩いているこの湿地帯全部がドロヌマオロチかもしれないじゃん?」

「な、んやと。」


こういう予想も考えられないようにならないといけなかったんだよなあ。そうじ

ゃないかもしれないけれど、可能性は捨てない。さて、このあたりはもうちょっ

とうろうろしてから相談タイムに入ろうかなあ。


謎解きのゲームをやっていて、突飛な考えというのは沢山してきました。

外れることも多かったのですが、そうやって考えるのが大好きでした。


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