第137話「飛んだ!」
メッセージ:ブリザードイーグルの討伐を完了しました。
「みんな、メッセージ出てきた?」
「うん。こいつの名前ブリザードイーグルって言うのか。そのまんまだな。」
「こういう敵の名前にひねりが無いのは何か意味があるんでしょうか。」
特に何も考えていないだけだろうなあと思う。ひとまずこれで終了してよかった
が仲間になるなんて事は無かったようだ。どういう条件で仲間になるのかかは未だ
に分からないままだ。十二支系が仲間になりそうという予想は立てているが、そう
でもないんだろうか。
「それで、誰かアイテム手に入った?」
みんなに聞いてみたが何もないと言っていた。これは、リザードマン達がとどめ
を刺したからというんじゃないだろうなあ。
「ねこますサマ。ヤイテタベマショウヨ!」
「あ、うん。そうだね。食べるか。」
またいつもの骨折り損のくたびれ儲けなんだろうか。それとも肉として食べた後
にアイテムが手に入るなんて事は無いんだろうか。あるいは、まだそのへんにこい
つの本体的な何かがいたりしないだろうか。そんなことを考えつつも、ひとまず狐
火でこいつの体を焼いていく。焼き鳥にして食べるか。
「焼いただけなのに美味しそうな匂いがするのって反則だと思うんですが。」
「ねっこちゃんの狐火ってもしかしてそういう効果があるんじゃないのかな。」
調理用の効果があったら確かに嬉しいが、実際にそんな効果があるとは思えない
なあ。純粋にモンスターを焼けば旨くなるってだけの気がするし。とはいえ、狐火
以外で食べたことがないので、今後は火薬草とか使ってみて試してみるか。まずく
なったら嫌だけど検証はしておきたいし。
なんて思っていたら、たけのことだいこん、それにくろごまとねずおまで早速が
つがつ食べ始めていた。おいちょっと早いよ何やってんの。
「オイシイデス!」
「これは、匂いもいいですし、このまま食べるだけなのに美味しいですな!」
「なんやコイツ!? めっちゃうまいで!」
「ウマイ! ウマスギル!」
「コンナノ、タベタコトガナイ!」
「おいしいチウ~!」
「こら~! 私にも食べさせろ~!」
モンスター6匹が食べる中でブリザードイーグルに近づきそのままがぶりとかじり
ついた。そして、そのまま肉を食べていく。
「おっ美味しい!」
確かに滅茶苦茶美味しいなこの肉。高級な肉って感じがする。ただ焼いただけの癖
にどうしてこんなに美味いんだろうか。ありえない旨さだ。けど、これだけ人数が
多いとすぐなくなってしまうだろう。ええい、このまま私が食べきってしまうとす
るか。
「あっ! ねっこちゃんが食いつくす勢いだ! ずるい! 俺も食べる!」
「え。あ、じゃあ私も!」
なんてブッチもエリーちゃんも参加してきた。くそっ。みんなこんな風にモンスタ
ーを食べるなんて今まで乗り気じゃなかったってのに。すっかり野生化したような
生活が身に着いたのか、平然と食べるようになっていた。私も最初のうちは結構抵
抗があったが、人間慣れてしまえばこんなもんなんだなあと思った。
こうして、あっという間にみんなでブリザードイーグルを食べつくしてしまった。
残ったのは、骨だけだったが、これはいつもの獣の骨だった。誰もいらないという
ので私が貰った。
メッセージ:ブリザードイーグルの盾を手に入れました。
は。盾だと。なんだこれ、私だけか手に入ったの?
「あの、私にアイテム手に入ったみたいなんだけどみんなはどう?」
「えーっ!? ねっこちゃんまた!? すごいラッキーだね。んで何手に入った?」
「これ、ブリザードイーグルの盾。」
鋼鉄に鷹の紋様が刻まれた盾だった。腕に取り付けるタイプのようで小さな盾とい
った感じだ。
メッセージ:ブリザードイーグルの盾を装備したことでスキル「飛行」を使えるよ
うになりました。
「えっ!? うっそ!? マジで!? え!?」
「おぉ? どうしたのねっこちゃん。」
「この盾のおかげで、スキルで「飛行」が使えるようになったんだって!」
「なんだって!? よかったじゃないか!」
「やった! よし! ちょっと試しにやってみる! 飛行!」
やった、これでついに私も空を飛べるようにな・・・。飛ばない。飛べない? お
おい、ちょっと待てよ。なんで目の前のブッチが浮いているんだ。おい。もしかし
なくてもこれ、
「おおー!? すげーこれ! 自由に空を飛べるみたいだよ! すごいこれ!」
あああああ、やっぱりこういうオチだったのか! ブッチの奴。多分こうなるんじ
ゃないかと思って、わざとらしくわくわくする態度をしていたな。ってかなんでま
た自分が飛ぶスキルじゃないんだこれ、おかしいだろ!
「誰かに飛行能力を付与するスキルなんですね。すごいです。」
「なんで自分が飛べないのか不思議だよ。って既に飛べるエリーちゃんにやるとど
うなるのかな?」
「やってみてください。」
メッセージ:飛行は既に発動中です。残り2分10秒です。
「3分間限定で飛行能力を付与するみたい。それで持続時間は3分間みたい。その間
は他の人には付与できないね。」
3分間自在に空が飛べるようになるのか。ってそうだ。これはブッチかエリーちゃ
んに持たせれば、私も飛べるようになるんじゃないのか。よし! どちたかにプレ
全とすることにしよう。
メッセージ:ブリザードイーグルの盾は他のプレイヤーに譲渡できません。
外そうとしたらこんなメッセージが表示された。ふざけるなああ。なんだよその
オチ。よりによってなんで私に手に入るんだよ。浮遊も飛行もどちらも私は対象外
とかひどすぎる、あんまりだ!
「呪いの装備的なオチですね。」
「ため息ばかりがでるよ。」
「うははははー! こいつは楽しい~ひょー! 自由自在に空飛べる~!」
「おーいブッチ。それ効果3分だからなー。」
「えー?何~? っておわわわ!?」
そのまま地面に落下するブッチだった。いい様だ。私を無視して一人で楽しんで
いるからそんなことになるんだ全く。
「たた。そっかー効果時間があるのか。よし、じゃあ次は俺がねっこちゃんを飛ば
してあげるからそれ貸して。」
「譲渡できないんだって。だから貸し出し出来ない。」
「そうかって。まじかよ。なんでピンポイントでって。あー。スキル使って渡して
を繰り返せばみんな飛べるようになるからかな。」
「だろうねえ。はぁ。よりによって何で私に手に入ったんだよ。」
運が悪すぎるよなあ。元々浮遊で味方を浮かせたりすることができていたんだから
そこで飛行があったとしてもなあ。まぁ今後はブッチに使って3分間空中戦を頑張
っ貰うってことができるようになったのはいいことだけど。
「どのくらい高く飛べそうだった?」
「際限なさそうだったかも。3分間ずっと上昇していれば結構高い所まで行けるだ
ろうけど、時間きたらそのまま落下するから、リスクは当然あるね。」
それでも3分飛べるのは大きいなあ。あれ?でもこれって。
「あ、そっか。俺が飛んでねっこちゃんが俺に乗っかればいいってことじゃんか。」
「や、やってみるか。やってみようよブッチ!」
その手があったかと私は目を輝かせている。ついに私も空を自由自在とは言わな
いまでも空が飛べるんだ。
「飛行! ブッチ頼む!」
「あいよ!そんじゃあ俺の背中に捕まって!」
私はブッチの背中にがっしりと捕まる。これちょっと恥ずかしい気がするけど空が
飛べるならこれくらいやってもいいや。よし! 念願の空を飛ぶぞ!
メッセージ:他のプレイヤーを乗せて飛行を使用することはできません。
「あんなに苦労してブリザードイーグルを倒したってのにこの仕打ちはあんまりじゃ
ないのか!」
私はブッチの背中から離れる。なんで飛べないんだよ。ずるいじゃないか。そんなに
私に空を飛ばせたくないってのか。いいよいいよもう。なんとか自力で空を飛べるよ
うになる方法くらい見つけてやるよ! ああもう腹立つなあ。
「それで、これからどうする?」
「進もうか。このまま戻ってまた来るのも面倒くさいというかいい加減先に進みたい
し。あ、その前にこれ、薬草とドラゴンフルーツを食べてからね。」
切り替えないといけないのは分かっていたのですぐに次に進むための準備をする。
飛行能力の付与自体はかなり強力だから、今後はどんどん使っていける。特に今まで
飛行手段を持たなかったブッチに付与できるのがいい。あれ、そういえば。
「ブッチ、モーニングスターって。」
「あ~。向こうかな。ちょっと探しに行きたいんだけど。」
「食べ終わったら行こうか。」
「うん。あー。なくなってなきゃいいなあ。なくしたら最悪だよ。」
「思い出の品になっているもんね。」
私もリュックを失った時は悲しかったからなあ。ああ、またリュックが欲しいな
あ。背中にあの薬草とかの重みがあったころが懐かしい。どこかで手に入ればいい
んだけれどそう上手くはいかないだろうし。あぁ。
「それにしても、ブリザードイーグルは強かったですな。まさかあのような攻撃を
しかけてくるとは。」
「そうだね。あの高威力のスキルを私も欲しかったよ。」
飛行よりも欲しかったな。まぁ長時間の溜めが入るんだろうけれど、それでも高威
力の攻撃は、それだけで切り札にもなるから習得したいとは思っている。
「あたしも、山一つ壊せるくらいの魔法が使えるようになりたいです。」
エリーちゃんも結構物騒なこと言うなあ。
「ワイは、ワイに攻撃してくるものの攻撃を全て防ぐ能力が欲しいやで。」
「サボリタイダケダロウ。コノビビリメ。」
「なんやワンコロ。それが平和っちゅーことなんやで。争いばかりがいいことや
ないで。」
おっと、なんかいい事言ってるたけのこだったが、争いの結果でブリザードイー
グルを食べることができたんだからな。忘れるんじゃないぞと念押ししておいた。
あぁ、本当に倒すことが出来てよかったなあ。また今回もギリギリの戦いになって
緊張感が凄かったな。
「ももりーずVの大勝利ですな。」
「あはは。そうだね。やっぱり仲間がいるっていいね。」
私達プレイヤーとこの世界のキャラクターたちが協力して強敵を倒すって言うの
は気分がいいな。
さて、今回も無事に勝ててよかったし先を目指していくぞー。