第129話「3回目の挑戦」
たけのこ森の制覇というか踏破することについて、みんなに説明した。その後は
数日間をかけて草刈りに励んだ。薬草が予想以上に集まり、火薬草への調合も済ま
せた。現在私が所有している薬草と火薬草は3万はある。これなら恐らく尽きる事
は無いだろう。ここから更に、ドラゴンフルーツも集めようかと思ったのだが、ま
他厄介ごとに巻き込まれるのは嫌だと思ったのと、まだ鍛えていない状態で毒狸の
母と再会するのも気に入らなかったので辞めておいた。
草刈りをしている途中、最終的な目的を何度か忘れたりしたこともあったが、そ
のおかげで大量に集めることができたので満足だ。そしてこの間は、威圧の制御な
どにも励んでいた。完全に抑えるとまではいかなかったけれど、おかげさまで、多
少は制御できるようになった。気を抜くとすぐ効果を発揮してしまうのでまだ
まだだけどね。
ブッチは、一人で魔者の塔に修行に行ってたり、エリーちゃんはねずおと草原周
辺を探索するなどゲームプレイを満喫しているようだった。ちなみに、私とリザー
ドマン達は一緒に草原で草刈りを楽しんでいた。ただひたすら剣を振るうのが楽し
かったらしく、私達は共通の趣味を持つことになった。これまで散々怪しい奴らと
疑ってかかってきていたが、草刈りが好きな奴に悪い奴はいないと断定した。
くろごまは、イエロードローンを使いこなせるようになっており、空を自由に飛
べるようになった。正直かなり羨ましい。そして一度私も乗せてもらおうと思った
のだが、くろごま以外は乗れないということが発覚して残念だった。
だいこんは、戦闘力をもっと上げないといけないというたけのこの強い意志でた
まに森の中で特訓していた。草刈り集めの時に、頑張ってもらっているが、時間
ができたらやってもらっていた。たまに「ワイは働き過ぎやないか。」などと言っ
ていたが、もっと上を目指さないとだめだというたけのこの叱咤でやけくそになり
ながらも動き回った。
人面樹は、とりあえず放置しているが、たけのこ森に入るのだからそのうち再会
するだろうと予想している。多分敵として再会するだろう。いつもの予想だ。
こんな感じで着々と準備が進んでいった。他にあるとしたら、魔者との会話がで
きなかったということだ。
私は、錬金術士の杖を取り出して、語り掛けてみたが何も起きなかった。本当は
起きているんだろうなんて思ってそこらへんに放り投げてみたり、木に思いっきり
叩きつけたりしてみたのだが、何も起きなかった。何かのイベントが発生しないと
話せないか、あるいは私のレベルが低いためだろうと判断した。
こいつには、聞きたいことが沢山あるのになあ。そのうち会話ができるようにな
るのかもしれないけれど、そういうタイミングで聞ける話ってもう知っているよっ
て話になる気がしている。
例えば、何かのボスの弱点が発覚したとしても、そいつを倒した後で知っても今
更意味がないと思うのだろう。同種のボスがでてきたらその時は楽になるかもしれ
ないけれど、そんな都合のいい展開にはならないだろうなあ。何度もプレイするこ
とになるゲームなんかだと、その情報があてになるのだろうけれど、このゲームで
はそういうのがないだろうしなあ。はあ。
結局、現状では魔者は頼りにならないため、分からないことばかりだ。一番聞き
たいことは、この魔者の大陸から出る方法だったけれど、もう自力で探すしかない。
時間凍結についても聞きたいなあ。たった1秒止められるだけでもすごいとは思
うけれど、デメリットが1日動けなったので、その制御方法を教えて欲しかったん
だよなあ。とはいえ、どうにもならないんだからしょうがない。いざというときだ
け使うようにしないとだな。いつかはデメリットなしでかつもっと長く使えるよう
になりたいな。
そんなこんな考えてプレイしているうちに、あっという間に準備が整った。魔者
の森をひたすら進んで今度こそ、攻略するのだ。広大だろうから、一回で攻略する
のは難しいだろう。が、今回はひたすらアイテムを持ち込んでいるのに加えて明日
は休みだし、時間的には何とかなるはずだ。日程調整についてもばっちりなんとか
するようにした。やれるだけやったんだから、後は突き進むだけだ。
「よし、みんな揃ったな。まずは、たけのこ森についてざっくりと説明させてもら
うよ。予想だと、この森は何らかの感情によって変化するんじゃないかと私は考え
てみたよ。」
これまでも今までも感情による影響を受けているとしか思えなかった。運営がそ
ういう風に設定しているのかもしれない。実はこのマップに誰がいるのかを運営が
知っていてリアルタイムで何らかの設定を加えているのじゃないかとも思ったが、
さすがにそこまでやることはないんじゃないのかなあ。
「ねっこちゃんて気分がころころ変わるから、たけのこ森で何かが起こりやすいっ
てことだね! 分かったよ! モンスターが急にゾンビみたいになってしまったら
それはねっこちゃんの影響ってことで俺は納得する!」
「ブッチニキ、姉御のことや。それっぽっちで済まないと思うやで。
「何かが起きること前提で話すなっての。」
何かが起きる可能性は100%だろうなあ。そして何かがあるかもしれないし覚悟し
ないといけないな。
「大金持ちになりたーいとか念じたらお金が降ってくるとかあったらいいですね。」
そんな都合よく稼げる所なんてないって。でもまあ大金持ちか。現実では絶対に無
理だろうな。私も、そんなにお金があるわけじゃないからなあ。ああ、世の中はな
んて世知辛いんだ。くそう。
「現状お金を使う必要がないからなあ。あっても意味がない気がするよ。」
「いつか役に立つかもしれないのでここで集めておきたいですよ!」
それは確かにそうなんだけれど、そのいつかがどれだけいつかになるのかが分から
なくて焦るんだが。
「大金持ちの件は置いといて、この森でだけど、一回大規模に燃やしてみたことが
あるんだ。けどあっという間に再生してしまったから、何らかの影響を受けている
気がするね。」
草原の草みたいなもんだろうけれど、それにしたって、この森のは早く再生し過ぎ
な感じがするね。うーん。なんでなんだろうなあ。何かそういう精霊でも眠ってい
るんじゃないのかなあ。あーさっさと謎を解き明かしたいな。
「あと、この森にはたまに強力なモンスターが出るようなので、みんな気を付けて
ね。」
しまうまとまた出くわす可能性があるし、それ以外だってそうだよ。だから私は
警戒をするように伝えた。何かあっても、しまうま一匹くらいなら簡単に倒せるよ
なあというお話だ。
「あと何か質問ある?」
「ワイや~。全員で行く必要って本当にあるんか?」
「ある。一緒にいたほうがいい。みんな別々の場所にいたせいで狙われて死ぬとい
うのを何度も見たことがあるんだ。そうなったら最悪なのでね。」
別々の行先でパーティを分割するなんてよくあるけれど、生憎私はそれをしたく
ないと思っている。戦力を分散などさせてたまるものかと。
「他にはなさそうだし、それじゃあ出発するとしよう。」
隊列としては、前から順に、エリーちゃんとねずお、私とたけのことだいこん、ブ
ッチとくろごまと、リザードマンたち。
「こんな感じでいいかな?」
「オーケイ、後ろから狙ってくる敵は俺たちがばっさばっさと叩き潰してやるから
楽しみに待っててね~。」
「なんでアニメのCM風に言うんだよ。」
「私は、前から罠を警戒します。楽しみに待ってててね~。」
「いやだからなんでアニメのCM風に言うの。」
もういい無視しよう。そんで私は、真ん中で全体を見回す役割として進めばいいん
だろうな。気配感知で何かいないか? 何もいないなあ。
「ここって、遠くまで行かないとピクニックにきた気分になるんだよなあ。」
「サンドイッチが食べたくなってきますね。」
持ってないし、この世界で作ってみるしかないと思うが、ってそんな話はここのボ
スでも倒してからにしてくれ。のんきにやっててもどうにもならないし。
「ワイだけなのか分からんけれど、やっぱりこの森は不気味な感じがするやで。」
だいこんも、この森にある異変に気が付いたみたいだ。普段はアホ同然なのに、
ここでこんな奴が役に立つというのが嬉しかった。
「このまましばらく突き進むとしようか。威圧は解放している状態だから何か変な
ものがでてくるということはないだろうし。」
はっ。こうやって油断している時が危ないんだ。なんだか雰囲気にのまれかけた。
「気配感知にひっかからないなあ。この森がレベルの低いモンスターに何かしてい
ることだけは確かなのになあ。」
不思議な森だなあ本当に。
「ねこますさん。不思議な出来事は必ず発生しますよ。多分ですけど。」
「俺もそう思うよ! ねぇねっこちゃん!?」
「私に聞かないでくれっての。というかそんな話よりまず黙って進みまくるよ。こ
3度目の正直とでも言うんだから。たけのこ森を制覇したいんだから!」
あっ、正確には魔者の大陸をだった。まぁいいか。訂正が面倒くさいし。
「あ、全員に命令をしておこうかな。リーダー命令。ふっふっふ。」
「どんな命令かな?」
「全員死ぬな!必ず生き残れ!」
「はい!!!!」
威勢のいい返事が森の中でこだました。おいおい、敵がやってくるかもしれないん
だからそういうところは注意してくれよ!