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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
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第125話「あっさりと」

 巨大黒豚は沈黙した。なんだかあっさりと倒した気がしないでもない。それより

もたけのこがいつの間にか強くなっていたことに驚いた。青白く光ったあれは一体

なんだったのだろうか。

 私が、たけのこの傍に近寄ると、あの青白い光は消えていた。

「たけのこ、よくやったね! さっきのはなんだったの?」

「キュウニ、チカラガワイテキマシタ!」


 となると、何かのスキルだったのかな。魔者の塔でも戦っていたのと、トラゴン

とも一緒に戦って倒したから、その後に習得したのかなあ。プレイヤーだったらス

キルを習得したらメッセージが出てくるから分かるんだろうけれど、ゲーム内のキ

ャラであるたけのこには表示されなかったってことなのかな。

「おーよしよし。そんなすごい力を持っていたのはすごいねえ。」

「ハイ! ガンバリマシタ!」

こういう時はとことん褒めてやらなければならない。それに私もたけのこの成長は

素直に嬉しかったし、ここまでやってくれたことには感謝しかない。


「ねこますサマ。コノブタヲタベマショウ!」

「あ、うん。そうだね。」

結果的に黒豚を食べることができるようになったわけだけれど、エリーちゃんは、

一体どこに行ったんだろうか。先に探すのが先なんじゃないのかなと思ったいたけ

れど、折角とれた獲物を放置するのはよくないし、たけのこが仕留めたのだからこ

こは一緒に食べるべきだろう。


 たけのこの角で突かれた部分から血がどろどろ出ているんだけれど、それは無視

するとして、このまま焼けばいいのかなぁ。相変わらず血抜きとかの知識に乏しい

ままな私がいるんだけれど、これ一応ゲームだし、そこまで細かい設定は無いと思

うんだよね。・・・私がちゃんと調べていない言い訳なだけだけれど。


 内臓を取り出したらすぐ冷やすとか寄生虫がいるから注意とか本当に色々あるら

しいんだけれどそれは獲物によってまちまちらしい。ふぅ。これはもうジビエの本

でも読んでみるべきかなぁ。こういう風に解体しますよって知識が欲しい。ゲーム

のために勉強するというものおかしな話だけれど、現実でも将来サバイバルをする

ことになったら役に立つかもしれないし。


「このあたりちょっと、広くするか。」

真空波で、小さな木や一部の草を刈り取る。こんな場所でご飯を食べるというのも

危険かもしれないけれど、気配感知では今のところ何も出てきていない。襲い掛か

ってくるにしても、気配感知の範囲外から即座に来る奴くらいだろう。まさかそん

な奴がこんなところに出てくるわけはないだろう。


 一応、巨大黒豚の内臓を少し取り出してみる。これについては燃やしてしまおう。

モツはきちんと処理すれば美味しいだろうが、ここでそれができないし、腐らせて

しまうだろうから。

 それにしてもこれ、倒しただけで肉くらい自動で入手させてくれてもいいと思う

んだけどなあ。解体だとか色々しないと手に入らないのだろうけれどかなり面倒に

感じる。こういう所に現実感を出すことで人気がでるというのもあるんだろうけれ

ど、そこまでやる人は・・・。いるか。

 世界中のプレイヤーがいるくらいだし、こういうのが楽しみで<アノニマスター

オンライン>をやっているというのもあるんだろうなあ。

 

「狐火!」

 相変わらず、ただ焼くことしかできない。ただ焼くだけというのが残念感溢れる

言葉でもあるけれど、ついこの間まで生で召し上がっていたのだからマシになった

はずだ。そしてもう生肉は食べたくない。なんか絵面的にもよくない感じだし。


 焼き加減も特に調整できるわけではないんだけれど、狐火をなんとなく使うだけ

で丁度よく焼きあがる。そういう機能でもあるんじゃないかと疑いたくなるほどだ。

美味しそうな匂いがしてきた。豚肉を食べるのは久々だなあ。こういう見慣れた光

景というのは落ち着く。

 基本的に草刈りと豚狩りだけで満足しているので、色々やるのはおまけという考

えでもある。世界中を冒険したいというのもあるけれど、日常の楽しみというのも

無いと疲れて斬ってしまうだろうし。

 

 魔者の大陸から出てしまえばこういうことも出来なくなると考えるとここから出

たくなくなってくる。けどそこまで閉鎖的になるのも嫌なので、ここで送っている

生活に飽きてきたら出かけようかな。

 

 そういえば昔プレイしたオンラインゲームでは、大型アップデートで、お気に入

りのマップの地形とかががらりと変わってしまって全く別の場所になってしまった

というのがあった。他にも仲間がたくさん集まるお気に入りの場所だったけれど、

もっといい場所が出来上がったらそこは寂れてしまったというのもあったなあ。


 そう考えると思い入れが強くなるというのも考え物だな。なんだかその場所に依

存し過ぎて新しいことができなくなり、停滞してしまうような感じがする。私も、

一時期そんな時があった。ゲーム離れとでもいえばいいんだろうか。


 つまらなかったわけでもない、面白くなくなったというわけでもないんだけれど

突然、なんだかゲームをやる気がなくなってしまったというのがある。これはもし

かしたら同じことをずっとしているというのがなんとなくいけないことなんじゃな

いのかなって思っていたからかもしれない。先に進まないままずっと同じことを繰

り返していたらそうなってしまうのかもなあ。


 まあ現状このゲームではそいうことは起きていないので、草刈りはまだまだずっ

と続けていくつもりだし、この森で豚狩りもしまくろうと思っている。過去は過去

だし、今面白いと思っていることをやればいいだけだし。


「ねこますサマ? タベマセンカ?」

「おっとっと、そうだね。焼きたてだし食べないと!」

 たけのこは、そのままがぶりとかじりつくが、私は鎌で肉を斬りとって食べる。

本来の鎌の使い方じゃないんだろうけれど、ずっと使っているのでだいぶ慣れてき

てしまった。前までは包丁が欲しくてたまらなかったのに、ここまで慣れてしまう

とは思わなかった。万能の道具なんじゃないのかとすら思えてきた。


「美味しそうな匂いがするから来てみたらねこますさんじゃないですか!」

「あらぁーお逃げになったエリーちゃんじゃない! おひさー!」


美味しく焼けた匂いにつられてエリーちゃんが登場した。なんだいなんだい。今更

のこのこやってきて。食べたかったらそこに正座しなさい!


「正座しました。ごめんなさい。食べさせてください。」

「許す。」

 私はこういう所は、あっさりと水に流すのだ。多分これで仲間割れイベントは解

決したと思うし。そして今、はっきりと分かった。エリーちゃんの目的は、私をひ

たすら移動させることで、黒豚を徹底的に探させようとしたということだったんだ。


 気配感知があるからとか、そういうスキルに頼り切ってしまったせいで、頑張っ

て探すという行為をしなくなり、遠慮しがちになってしまった。黒豚だって私の威

圧だけが原因ででなかったわけでもないかもしれないし、威圧の影響でどこかに逃げ

てしまったというのであれば、それを探し回ればいいだけの話だった。

 

 こういうところが私のだめなところだよなあ。なんだか色々分かっているはずなの

にやってしまったという感じがした。


「で、分かっててやったの?」

「それはもう勿論ですよ! ねこますさんって駄目になるときは徹底的に駄目になる

ようなタイプなんだろうなって思いましたし。」

「いいすぎぃ!」

「考え込むとずっと考え込むじゃないですか!」


 だって失敗したくないしぃ。嫌な結果になりたくないしぃ。面倒なことになるのが

嫌だしぃ。今まで散々ゲームであれこれあったしぃい!


「マスターが考えすぎなのはある意味いいことな気がします。」

「ねこますサマ。マジメデス。」

 それが空回りしていたってことだから手に負えないんだよなあ。とはいえこれは性

格的な問題があるからどうしたって同じこと繰り返すんだよね。その時はまたこんな

感じで助けてもらえばいいって言うのはあるけど。

 

 それにしても、私も色々手に入れたもんだから、なんだかそのせいで出来ることを

決めつけてしまうようになっちゃったなあ。「スキル」って便利だなあと思うけれど

これがなくなったらどうするのって感じはするし。

 これが無かったら、私ができることなんて全然ないよなあ。んんー。こんな風に思

うのがいけないのか。

 ブッチのような肉体型を超えればいいともっと前向きになればいいし、エリーちゃ

んみたいに魔法が使えるようになればいいんじゃないのか。

 

 そんなことができるようになるかは分からないけれど、何でもできるようなくらい

になりたいというのは確かだ。そのくらい貪欲に、強欲になっていかないと、私がや

りたいと思う事なんかできそうにないし。

 

「鍛えなおすか。」

「えー。ねこますさん充分強いじゃないですか。」

「まだまだだよ。目指すは<アノニマスターオンライン>で最強! なんて言われる

ようになるくらいじゃないと」

「それはどちらかと言うとブッチさんがやりそうですが。」

そうかなぁ。ブッチとか興味ないねとかそんな風に誤魔化しながら実は最強狙ってい

るって感じがするんだけれど。


「マスターが最強になるのは嬉しいです。目指すのであれば我々も応援します!」

「ねこますサマガサイキョウニナッタラゴハンタベホウダイ!」


 実際、今、最強のプレイヤーって誰なんだろうか。ものすごい広範囲の魔法が使え

てかつブッチ以上のパワーがあって、山を1つぶっ壊せるくらいだとかそういうプレ

イヤーがいるんだろうか。

 そういう最強プレイヤーの名前だけでも知っておきたいなあ。


「ねこますさんが、ここから出たら、目立つプレイヤーになると思いますよ。」

「悪目立ちじゃなくて、普通にいい感じで目立つなら歓迎だなあ。そうじゃなくて色

んな人から恨まれたりしたら嫌だな。」


なんて話しながらも鎌でさくさくっと、肉を切り分けたのでエリーちゃんに渡す。自

分用もとって食べてみたのだが、これは、ジュウシイイイ。うううまあああああい!

何より食感が凄まじくいい。噛み切りやすかったし、舌に広がる旨さが半端ない。い

ツも食べていた黒豚よりも更に美味い。これは狩れてよかった。たけのこに感謝だ。

あ、勿論くろごまや、エリーちゃんにもね。


「エリー殿はマスターの扱いが上手ですな。」

「ねこますさんって学級委員的な感じというか、総務とかで働いていそうなイメージ

なんですよねー。」


うわぁ。何その、ザ・真面目とでも言えそうな感じ。私はそんなにお堅いイメージじ

ゃないよ。もっとこうだらけきっているというか、のんびりだらだらするのが好きな

不真面目なタイプ。素行がよくないタイプ。


「あっ。今面倒くさいなあって顔してますよ。ほらほら。」

「そんなことはないって。私は不真面目なタイプだから、エリーちゃん、誤解をして

貰っちゃ困るって思っただけだよ。」


「ねこますサマハ、イツモマエムキデス。ハグハグ。」

たけのこがちゃんと食べきってから会話に混じるのが好きだ。真面目と言えばたけの

ことかくろごまのことを言うんだよなあ。いい加減と言えば、ブッチとだいこんだな。

あいつらはしょっちゅうふざけるから困る。


「あーだからブッチさんと相性がいいんですね。ねこますさんはいざっていうとき真

面目で、ブッチさんはいい加減になりますし。」

それも誤解だ。ブッチと相性よくはない。四六時中つっこみばかりさせるのでこの野

郎もっと真面目にやれと言ってるだけなんだ。



「ブッチに振り回されているだけだよ! あのいい加減さはダメ過ぎる! これまで

の迷惑料として死を持って償うとかそれくらい求めているよ!」

「あっ。みなさん。これがいつものねこますさんです。」


そりゃないよ・・・。

実はサブタイトルが結構悩むんです。


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