第119話「これからどうしようか」
ひたすら草刈りをしているとあっという間に時間が過ぎていった。おかげ様で薬
草は結構な数を集めることができた。それでもまだまだ不十分な気がしているが、
久々の草刈りなのでこんなものだろうときりの良い所で終えることにした。
「姉御、病み上がりなのになんでそんなに元気なんや?」
「いや別に病気だったわけではないし。あとずっと草刈りがしたかったからね!」
崖から落ちてからずっとできなくなり、いつまたできるようになるのかと待ちわ
びていたからね。今はそれができたのでとてもすっきりしている。
「草刈りって結構楽しいですね。薬草が見る見るうちに集めっていくのがなんか嬉
しくなってくるというか。どんどん収穫したくなりますね。」
「ファッ!? なんやて!?」
おお、エリーちゃんも分かってくれたようだ。私達はもう草刈り仲間だな。こう
して薬草を集めるのって楽しくなってくるよね。少しずつ薬草が溜まっていくのが
嬉しくなる気持ちはよく分かる。やはり薬草集めは最高だ。
ん? なんだろう。だいこんの様子がおかしい気がする。
「もしや実はワイのほうがおかしかったとかあるんか? いや、しかし。」
「何をブツブツ言ってるんだー? とりあえずブッチ達の所に行くよー。」
「お、あ? おお。分かったやで。」
何か気になる事でもあったんだろうか。まあいいや。ブッチ達とも話して今後私
達はどうしていこうとしているのか方針を決めよう。別に急いで何かをやらなくち
ゃいけないとかはないはずだけれど、目的が不明確なまま動くのもあんまりよくな
い気がするのでとにかく決めておきたい。
ええっと、ブッチ達は森の近く辺りにでもいるのかな。とりあえず向かってみる
とするか。
近くなのでだいこんから降りて歩いていくことにした。だいこんの移動は便利だ
と思うけれど、ずっとそればかりっていうのもなんだし。楽を覚えすぎるとそれが
なくなったときが大変なのはこの間の冒険で実感したなあ。今日の薬草集めてもだ
いこんのおかげで大分効率が良かったし、沢山褒めてやらないとな。
・・・それから、数分程度だらだら歩いて森の入り口まで移動してきた。近くに
沢山の木が積み上げられているが、これはブッチがやったんだろうか。いやそうと
しか考えられない。木の枝とかはそのままになっているけれど、それにしたってこ
んなに集めるとは流石だな。
さて、どのあたりにいるのかなと思っていたら割とすぐ近くにいたので声をかけ
てみることにした。
「あれ、ねっこちゃん!? 薬草集めはもう終わったの!? 早くない!?」
「なんでそんなに驚いているのはよく分からないけど、今日は早めに切り上げただ
けだよ。今後のことについて話し合っておきたいなあと思って。」
「俺たちの将来の話なんて、照れるなあ。」
「うるせーアホ!」
木を担ぎながらへらへら笑っているブッチだった。いつも思うけれど、よくそんな
力があるよなあ。羨ましい。その力が私も欲しいぞ。
「ねこますサマ。ブタヲカリマショウヨ!」
「あーごめんねたけのこ。ちょっとみんなで話し合ってからするからさ。」
相変わらずのたけのこで安心した。というか私も久々に豚が食いたいな。なんかた
けのこを見ていたらお腹が空いてきてしまった。うーん。いつもここで一緒に食べ
ていたからしょうがないよね。
「まぁそういうわけだから、そこらに座って話し合いたいんだけどいい?」
「いいよー。そんじゃまあ、作戦会議? と行こうか。」
あっ。その響きは好きだなあ。なんかわくわくするよね作戦会議って。これから
こういうことをやるんだって目標に向かって突き進もうとするのが隙だ。
それで、一応全員揃っている。えーっと私含めて全員の自己紹介と言うかメンバー
達を確認していくか。
私こと般若レディのねこます。
一本角を持つ狼のたけのこ。
サイコロの顔を持つ身長2メートルの巨人マブダチ
白い蛇のだいこん。
黒い猿のくろごま。
人面樹二匹。そういえば名前つけてないな。
サキュバスのエリー(ちゃん)
鼠のねずお。
リザードマン二匹。イッピキメとニヒキメ。
結構増えたなあ。プレイヤーは3人だけだけれど、ゲーム内のキャラクターたちとも現実
世界にいる実際の人間と同じように会話できるのがすごいよなあ。そんで全員合わせて
合計で11人か。
「そんじゃまずリーダーを決めようか。」
「ねっこちゃんしかいないので決定。はい次。」
「決定ですね。」
まぁそう来ると思っていた。みんな頷いている。と言うか私もリーダーになるつもりで
いたのでこれはいい。こういう時に、ごねたり自分はリーダーに向いていないなんて言う
つもりはない。絶対こうなると思っていたのでそれでいい。
「よし、じゃあリーダー権限で、副リーダーはエリーちゃんで。」
「えっ!? 私ですか!?」
「そこは俺じゃないの!?」
ブッチが意外という感じでこっちを思いっきり見つめてきた。いやだってさあ。
「ブッチ。そういうの面倒くさそうって断りそうだし、なんか自由の旗を振りかざしてそ
うなタイプで何物にも縛られないぜって感じだからそうしたんだけど。」
「よく分かってるね! そうだね! 俺はそんな面倒な事やりたくない!」
「じゃあ何でびっくりしたんだチウ?」
「そこは一応副リーダーやってねって言われたら渋々頷こうとした結果、やっぱやーめた
とか言って茶化したかったというか。」
「ブッチニキ。それはかまってちゃんというんやで。」
全くだ。そんなアホなことはやめてくれ。
「マスター。エリー殿を副リーダーにした理由は?」
「ブッチより真面目そうだから。」
「そ、そんな理由ですか。私別に真面目でもないんですけど。ちゃらんぽらんですし。」
「ブッチよりは100倍マシ!」
「ひどっ!? 俺も結構真面目になるときあるよ!? 戦ってるときとか!」
その時くらいだろう、この戦闘狂が。後はいつもおふざけをしまくっているじゃないか。
あ、違うな、戦闘中も悪ふざけしてること多いし。ふざけすぎだろ!
「それで次は。」
「ワイは嫌やで。」
「まだ何も言ってないうちから遮るなバカタレ!」
ったくもう。なんなんだこいつらは。何か先に言わずにはいられないのか。
「それで、モンスターのみんなって言ったら変か。まぁ私達も見た目的にはモンスター
なわけだし。でとりあえずみんなの中からもリーダーを選びたいと思いまーす。」
「そんじゃ、だいこんちゃんとくろごまくんで戦えばいいんじゃないかな?」
ブッチの奴、何を言い出すのかと思えば。戦って勝った方が上ということにするのか。
うーんでもなあ。
「ブッチどの。なぜ戦う必要があるのですか?」
「エエ。ナカマドウシデタタカウノハイヤナンデスガ。」
だよね。よくある漫画じゃ、誰がリーダーにふさわしいのかみたいに戦ったりする
ことがあるけれど、それって一回きりで済むのっていうのもあるし、そもそも戦いだ
けでリーダー選ぶとか馬鹿じゃないのかって思ったりするし。
けど、モンスターだから戦いに勝った方がという感じになるんじゃないのかなあと
も思っていたけれどそういうこともなかったってことだね。
「えぇぇ。こういう時はほら、どっちが強いか決めてリーダーになるとか。」
「拙者は群れのリーダーに向いていませんし。ねこますさまがいればいいですし。」
「ワタシモデス」
「じゃあリーダーは第一ご主人がやればいいんだチウ。」
えぇー。なんだよそれ。ってみんなも頷いている。リーダーになりたいとか挙手して
くれるとか期待していたんだけどそういうのないのかなあ。町内会長とか、PTAの会長
とかそういうのになりたがる人みたいなノリでさあ。いない?
「リーダーってめんどくさそうやん。めんどくさそうなこと全部おしつけられそうや
ん。」
正論だけど、なんかこうモンスターの口からそういうことを聞きたくなかった気
がする。弱肉強食の世界だからこそ上限関係もしっかりしていると思いきやそうい
うこともないのだろうか。リーダーだ。俺様は強いぞわははーみたいなそういう体
育会系のノリだと思っていたんだけど。
「そこの人面樹達。リーダーやりたいとかないのか?」
流石にこいつらをリーダーにするつもりはないけれど血気盛んなので聞いてみること
にした。
「ムリッス。ブッチノアニキヨリヨエーオレラガヤッチャナンネエッス。」
ブッチは簡単に木を持ち運べるもんな。そんな奴に逆らおうなんて気がないからか成
り上がろうとかいう気持ちもなくなってるか。そんじゃリザードマン達はどうだろ。
「シンザンモノガリーダーニナルノハイケナイノデ。」
「ナルナラモットナレテカラデスナ。」
カーッ!? 何なん!? 私が知っているモンスターって謙虚という辞書がなく殺し
合いとかそういうので上下関係を作って相手を服従させる的な存在なんだけど、どう
してそんなに温厚なんだ。なんかもう血で血を洗おうぜってのを期待してるのにさあ。
「ねっこちゃん。滑ってるねえ。」
「あーもう。じゃあ私がリーダーってことで全部決めてやるからみんな黙ってついて
こいっ! 分かった!?」
その直後、みんなの威勢のいい返事が聞こえた。こうなったらやけくそでやるしかない。
「ヤハリ、リーダーハねこますサマシカイマセン。」
そうだね。私がリーダーしないとぐだぐだするねこの集まり。さて、それじゃあこの
組織の名前とか決めておくとするかなあ。何かいい案は無いだろうかとブッチに聞い
てみた。
「ぶん殴り隊とか逆らう者は血祭り隊とかどう?」
「うっわ。ブッチのネーミングセンスなさすぎ!」
口を両手で覆ってびっくした雰囲気を装った。
「ブッチさん。もうちょっとカッコイイ名前を出して下さいよ。私だと可愛い系しか
でてこないのでこの集まりだとちょっとって感じになりますし。」
「ほう。エリーちゃん。試しに言ってみようか。」
「もっふんもふもふーずとか、キャワワンズとか。」
「ブッ。姉御の顔を見ながらその名前聞くとギャグにしか聞こえんで。」
お前の発言は聞こえているぞだいこん。後で見てろよ。
「んー。これも私が決めるしかないのか。」
思いつかない、が考えるしかないな。うーん。何にしようかなあ。