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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第3章「魔者の大陸」
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第118話「久々の草刈り」

 <アノニマスターオンライン>へログインした直後に動けなくなっていた身体が

どうなったのか確認してみた。すると、普段通りに動いた。良かった。あれは一時

的な状態だったようだ。そして声も出してみる。

「あーあーあー。」

 これも大丈夫だった。死んだということはなかったようで一安心だ。それとも実

は一回死んでいたけれども、ログインし直したことでそれが解除されたとかいうの

だろうか。

 とにかくこれで元通りだ。これでやっと草原で薬草集めができるということだ。

 

さて、みんなはどうしているのかな、なんて思っていたらみんな揃っていた。私が

一番乗りじゃないのかと思っていたのにみんないるなんて。ただ、自主的に薬草集

めをやってたりなんてことはなさそうだ。


「やあやあ、みんなこんちわ。」

「おっ。ねっこちゃん、こんちわ。元に戻ったんだね。良かったね。」

「こんにちはー。それで、色々聞きたいことなんかが山積みなんですけど!」

私も話したいことで一杯だよ。だけどそれをやる前に。


「話したいことは沢山あるけど、話は薬草集めが終わってからにしよう!」

 先日の冒険で沢山使ってしまったので不安だ。それに昨日はお預けとなってしま

ったので、今日はすぐにでも草刈りをしたかった。自然と私の右手に鎌が握られて

しまうくらいには勢いがある。


「ねこますさんは、草刈りが好きって言ってましたね・・・。」

「正確にはねっこちゃんは、草刈りが大好き過ぎるね。」

過ぎるってなんだよ。ただ、沢山集めたいだけなんだよ私は。回復アイテムが沢山

あれば、耐久性が上がるし最高なんだよ。


「よし、だいこん。それではいつも通り頼むぞ。」

「やっぱりやるんかい。姉御、別にそこまで集めなくてもええんとちゃうんか?」

「もしここに、ゴブリンが100万匹攻めてきたらどうする!? そんなときの為に薬

草は1億個は欲しいって思わないか!?」

「いや・・・それはないんやないか?」

「うんうん。薬草が100億個はないと安心できないよな。だいこんはよく分かってい

るなあ。その通りだ。ではやるぞ。」

「なんでそうなるんや!?」

 そうなるからそうなんだ。今日もだいこんの背中に乗りながら鎌で薬草狩りだ。たま

に真空波を使ったりしてがっぽがっぽ集めていくとしよう。とにかく、ひたすら薬

草を集め続けよう。それが私の趣味なんだ。


「あ、エリーちゃんも薬草狩りしてみる?」

「え? あっ。それじゃあちょっとやってみたいと思うんですが、草を刈るような

道具を持っていないんですが」

「私が鋸を持ってるよ。それを貸すからやってみようよ。はいどうぞ!」


 私はエリーちゃんに鋸を手渡した。よし、これで薬草集めの速度が向上する。今

日はいつも以上に集まるかもしれないな。


「鋸ってちょっと怖い気がするんですが。」

「大丈夫! じきに慣れるって! これからは、沢山草刈りをしまくるから!」

そうだ。これから毎日草刈りをするんだ。毎日、草を刈って薬草を手に入れて、安

心できるようになるんだ。


「へ、へへ。エリーネキ。これも姉御に関わった縁やで。これからは末永くよろし

くやで。共に分かち合おうやで!」

「えっ? はい。その。よく分かりませんがよろしくお願いします!」


 いい返事だ。これから私達はひたすら草刈りをするんだ。今まで散々色んなボス

に襲われたり罠を探したり不安ばかりの冒険をしてきたけれど、今日は違う。絶対

に危険がない中で落ち着いたゲームができるんだ。俗にいうまったりというやつだ。


「ではいくぞ。たけのこー!」

「やったるで! 今日もワイはやったるで!」

「が、がんばりますー!」


だいこんに巨大化してもらいその背に乗る。こうして私達二人と一匹は草刈りを始

めたのだった。ああ。あああ。あああああ。ようやく、鎌で草を刈れる。まずは鎌

で軽く草を刈ってみた。すると。


メッセージ:薬草を手に入れました。薬草を手に入れました。薬草を・・・。


これだ。これを求めていたんだ私は。最近まで出来なかったせいで薬草を集められ

るというただそれだけが嬉しく感じた。一個、また一個と集まっていくのが本当に

楽しくてたまらない。


「すごいですね。私も鋸を振り回しているだけで薬草が手に入っていきます。こん

な簡単に手に入るのに草もすぐ復活するなんて驚きます。」


エリーちゃんの指摘の通り、草刈りをどれだけやっても、すぐに復活してしまうの

で、取り放題というのがいい所なんだ。これだけやったら枯渇するとか、二度と出

なくなるなんてことがあるかもしれないと思ったこともあったが、出現数が減少し

たことが今まで1回もなかったのでただひたすら刈るようになった。


「無限に手に入るかもしれないって言うのは、すごいですけど、そのうち取れなく

なるとかあるような気がします。」


 いつかは分からないけれど、そういう事があってもおかしくない気がする。運営

側が、こんなに取れることを問題視したらアップデートで手に入りにくくなること

も考えられる。そう、だからこそ今のうちに集めておく必要もあるんだ。


 この魔者の大陸にどれだけのプレイヤーがいるのかは分からないが、現在私達3人

だけなら問題なしと判断されているだけに過ぎないかもしれない。他のプレイヤー

がわんさかこの大陸に来たらどうなることやら。

 ・・・。そう考えたら不安になってきたな。沢山集めておかないと私の大事な草

原が奪われてしまうかもしれない。くそう。そんなことは絶対にさせないぞ。


「エリーちゃんの言う通りだね。私は今まで甘かった気がする。」

「ファッ!? いやいや。姉御の薬草集めはすごいと思うんやで!?」

「だいこん。現状に満足していたらいつまで経っても成長できないよ。私達はもっ

と成長するためには貪欲になって草刈りをし続けないといけない。」

 

 そうだ。これまでが甘かったんだ。私がこのゲームをプレイしていたのが来年だ

ったとしたらその頃にはこういう場所が占拠されてしまっていたかもしれない。そ

して私は、薬草が手に入らないことから、かなり苦しんでいたかもしれない。

 だとすると今できることは、徹底的に薬草を集めることだ。私は薬草集めをもっ

と真剣にやるぞ。


「ね、ねこますさん。薬草集めも大事だとは思いますけど、あまり根を詰め過ぎて

もいけないと思います。」

「大丈夫だよ。今日は久々だしちょっと気合いが入っちゃってるだけだし。」

「そ、そうなんか。まぁ久々やもんな。それならしゃあないな。でもまぁ軽くやる

程度でもええやんか。」

「こういう日常生活をのんびり送っている時に限って、ろくでもない奴が現れたり

凶悪なモンスターが突然出てきたりするんだ。」


 私のゲーム経験上そういう展開は結構ある。敵が自分の実力を見せつけて去って

いくというものなんだけれど、その襲撃にあった結果、今まで行くことができた場

所に行けなくなり、そのせいでアイテムが集められなくなる。

 仮にそんなことになったと想定すると、ああ想定するのも嫌だな。草原が無くな

るなんてことは考えたくない。


「昔のゲームでそういうのがあって、それを知らないまま、セーブデータを上書き

してしまって、嫌な思いをしました。」


 ああ、エリーちゃんも経験済みか。嫌だよねあの展開。そんなことになるんだっ

たら最初からアイテムを買っておけばよかったとか思うし。リセットしてやり直し

たりもできると言ったらそうだけれど。


 <アノニマスターオンライン>にはそういうのがないので、やり直しが出来ない。

つまり、今できることをやらなきゃいけないってことだ。将来的に薬草集めができ

なくなるのだとしたら、前もってやっていくのがいいに決まっている。

 そもそも、私達は回復アイテムを買う事なんかが出来る場所にはいないのでこう

やって自力で集めるしかない。この草原を失うことになったら、簡単に回復ができ

なくなってしまうので、どこか出かけるのも不安だ。


「そういえば一般的なプレイヤーって買い物ができるんだよね。色々と必要な物を

買いそろえたりができて楽しいそうだねえ。」

「私もいいなーって思っています。友達は街とかで装備を買ったとかいう話を聞い

てしまって・・・。うう。」


 エリーちゃんは塔の中で引き篭るしかなかったからしょうがない。私は、アイテ

ムが買えるようになりたいっていうのはあるなあ。でもそうしようとしたらこの魔

者の大陸から出て行かなくちゃいけないのが困るな。その方法については今後探し

て行く予定だけれど、道のりは長そうだ。


「これからできることを増やしていけばそういうのもなんとかなるかも。だけど

今はとにかく薬草集めに集中しないとね!」


 薬草がどれだけ価値のあるものなのかは分からないけれど、沢山持っていれば、

魔者の大陸以外に移動したときに売れると思う。そこでお金にして装備だの何だの

を買えるようになりたい。

 今は、この薬草こそがお金の代わりってことになる。だったら大量に稼いでおけ

 ば後で買い物も沢山出来るようになるじゃないか。ということをエリーちゃんに

伝える。


「それはいいですねー。将来お金に変えられるものがあれば助かります。」

「あっ。一応言っておくけど、エリーちゃんの集めた分はエリーちゃんが持ってい

ていいんだからね? とても普通の事だけれど念のために行っておくよ!」


エリーちゃんだって、鋸で草刈りをしているんだから、それは自分自身の取り分だ

ろう。そこから横取りするつもりは一切ない。

「え、それは悪い気が。」

「将来的にお店で買い物をしたいでしょ? そのために使うことがあるんだから私

のことは構わなくていいよー。」


「あ、ありがとうございます。」

 私一人が独占するのは良くない。それぞれがやっている作業なのに、そこから徴

収するような真似は嫌だ。

 確かに私は、薬草が大好きだけれど、人の物を奪う気にはなれない。あっでもエ

リーちゃんは盗賊だったか。逆に私からぶんどるくらいが丁度いいんじゃないか。


「なんかお金になるって思ったらすごいやる気が出てきました。ねこますさん。私

は一生懸命やりますよ!」

「おっ! エリーちゃんいいねえ! 薬草集めに意欲的なのは素晴らしい! 私も

沢山集めようと思っているから頑張ろうね!」

なんだか熱い友情で結ばれたような気がする。やっぱり仲間っていいね。


「な、なんでそんなやる気がでとるんや? ワイがおかしいだけなんか?」

なんかだいこんがブツブツ言ってる気がしたがよく聞こえなかったのでまあいいか。

新しい章になるはずですがタイトル考え中です。

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