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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第2章「般若レディと優雅な目標(仮題)」
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第112話「本当に長い坂道」

 長い。なんなんだこの坂道。全然頂上までたどり着かない。ここもまた無限に繰

りかえされる道になっているのではないかと思い、いつも通りコマンド的な動きを

してみたのだが、何も起こらなかった。なのでひたすら登っているのだが、一向に

頂上にはたどり着けない。

 明らかにおかしいというか特殊な攻撃でも受けているのではないだろうか。ここ

までで試してみたことは、道が繰り返しになっていないかという事だったので、何

人かに残ってもらい、私とたけのこだけ上に昇ってみたりしたのだが、そういう事

はなかった。

 何か謎を解き明かさなければいけないのかもしれないが、ノーヒントなのであて

がない。ブッチが前に昇ったときはこういうことはなかったようなので、人数的な

問題でイベントが発生しているのではないかと推測される。


 草原まであと少しの所で足止めを食らっているので私も結構頭にきているがこう

いう時に冷静さを欠くと遠回りになってしまうのはこれまでの経験では沢山あった

ので、とにかく謎を解きあかすために考えられることを考えていく。


「一度に登ることができる人数制限、誰かがイベントの鍵になっている、それとも

ここに来る前から何かのイベントが発生していて継続中。」

「どこかに別の入り口のスイッチがあるとか、そういうのもありそうですね。」

「うーん。俺が登ったときは何も特別なはしなかったんだけどなあ。」


 三人集まれば文殊の知恵なんていうが、色々試してみても解決しない。坂道自体

に何か違和感はないし、不自然な床なんてものもない。ううん。このままだとずっ

と帰れないことになるのだが問題だな。いや、いったん引くというのも考えないと

いけないな。こうやって苛々させるのが目的なのかもしれないし。

 

 それにしても、ワンパターン過ぎじゃないかこれ。ブッチの時といい、荒れ地の

時といいこれで3回目じゃないか。謎を解かないとずっと同じ場所をループさせる

なんて、レトロゲームじゃよくあったけど、多すぎだろう。

 それとも何か、そういうのが好きな奴が作っているのかこのゲームはなんて思っ

たがそれが正解じゃないのかな。魔者の大陸とか絶対に何らかのゲームが好きな人

が自分の趣味で作っているとしか思えない。

 

「もしかしてさあ。」

「ん?」

「ねっこちゃんが早く草原に行きたいって思っているから戻れないんじゃないか

な。昔のドラマか何かで誰か一人の感情によって出口が出てきたりなんて事があ

ったからそうじゃないのかなあなんて。」

「むぐ・・!?」


 あ、在り得る。言われてみれば、草原に戻りたいと一番思っているのは私だ。

も、もしかしてそういう欲望を感知して、戻れなくさせているとかいう設定なの

だろうか。だとしたらすごいな。感情を感知しているVRゲームなんてそこまであ

あるとしたら、なんて考えたら思わず身震いをしてしまった。

 でもそれじゃあ私が草原に帰りたい気持ちを捨て去れってことじゃないか。難

し過ぎるぞ。


「ねこますさん。そんなに薬草が好きなんですか?」

「そりゃあ勿論! 大量に持てるし何度でも回復し続けてられるから安全に戦え

るようになるからね! 草原に行けばいくらでも手に入るから、時間の許す限り

は徹底的に集めたい!」


ああ、だめだこりゃあ。煩悩まみれだな私。滝行でもすればこの煩悩が消えるの

かもしれないが。ん? そういえば崖から落下した時に一応滝はあったってこと

になるんだよな。あそこに行けば、いや待て待て。何を考えているんだ私は。


「見えない道があるって案はどうかな?」

「それだと最初に俺が簡単に戻れた理由が不明にならない?」

「実はブッチが自然と何かやっていたとか?」

「それが思い当たる節がないんだよねえ。」


なんでブッチは戻れたのかを知りたいなあ。よし、こうなったら、ブッチ一人で

この坂道を登らせてみるか。私達は一旦降りて、そこで様子見してみたほうが良

さそうだ。そう思って提案してみたんだけれど。


「むしろねっこちゃん一人が下りてみたほうが早くない?」


 みんな私一人残して行こうと言うのか。悲しい。なんて気持ちは微塵もない。

そちらのほうが効率的にいいだろう。こういう時になかなか言い出しにくいこと

をさっさと言うブッチはなかなか男らしいじゃないか。

「ブッチさん。それ冷たくないですか?」


おっとぉ。仲間思いが強そうなエリーちゃんの反論がきた。ちょっと感動しちゃ

うけど、この場合、その情があることで進めなくなるかもしれないから、割り切

らないといけないんだけどね。


「大丈夫だって! 私が原因の可能性が高いんだから、それならいっそみんなで

先に言ってもらったほうが答えも分かるし、私も満足だよ。」

「しかしマスターだけ置いていくというのは・・・。」


くろごまも引け目を感じているのか。うーん。


「私は、やっぱり最短で答えが知りたいのでブッチの意見に賛成だよ。私一人残

すってことにみんな引け目を感じているのかもしれないけど、私の意見は、みん

なに先に行って貰いたいってことだから、頼むね。」


 試せることはどんどんやっていけばいい。みんなが先に行ってもやっぱり同じ

事が起きるかもしれないだろうし、私が原因ってことが分かれば、条件が特定

されてくるので、無駄になることは1つもない。

 私が一回戻らなきゃいけないということと、一人だけになるのでその間危険が

増すかもしれないってことはあるけれど大した問題じゃない。


「ねこますサマト、マタハナレルノデスカ。」

潤んだ目で見つめないでくれたけのこ。この坂道を攻略さえすれば後は草原で沢

山遊べるようになるんだから。


「とにかく! ここは私に任せてみんなは先に行くんだ!」

「おお! 一度は言ってみたい台詞を言われてしまった! くやしいぜ!」

「分かりました! あたし達は先に進みます! ねこますさんも必ず追い付いて

きてください!」


あっれ~!? なんなんこの二人。ノリが良すぎじゃないか。一度は言われてみ

たい台詞だったのかな。なんか目が輝いているし。

「ねこますサマガソコマデイウナラワカリマシタ。」

「姉御。かっこいいやで!」


なんかみんな急にやる気をだしているぞ。な、なんなんだ一体。くそっ。もうや

けくそだ。


「じゃあなみんな。私は坂道を下るけど、そっちは気を付けて登るんだぞ!アバヨ!」

 

 なんかもう馬鹿みたいに駆けだしちゃったよ。クールに去るつもりがなんか熱い

ドラマみたいな展開になっちゃって恥ずかしい。般若レディを赤面させるなんてあ

いつら後で見てろよ。

 

 というわけで私は、一人で坂道を下っている。なんでこんなことになってしまった

のだろうか。これも錬金術士の杖に宿っていると思われる魔者のせいじゃないのか。

ちょっと語り掛けてみるか?


「おい魔者。いるのか?」


返事は無い。ただの杖だ。ということはこいつは無関係という事か。それとも私の魔

力みたいなものがすっからかんで何も起きないのか。どっちにしろ何も分からないの

だから、杖はしまったままでいいか。


「私とみんなを分断させたかったなんてことはあるのかなあ。」

 ここで私一人だけをおびき寄せたいと思っている奴がいるのかは知らないし、まさ

かそんなことはないだろうなあと思った。

 私なんかを一人にして何か仕掛けてくる必要なんかあるのかも微妙だし。大して強

くもないし。


 坂道を下りながら考える。そういえば、塔をでてから敵らしい敵には遭遇していな

いなあと。ゲームの展開的には、そういう場合はかなり強い敵が出現して、そいつの

力があるせいで、他のモンスターが消えているなんてことがあったっけ。

 まさかそれと近い状態ってことじゃないよな。それならそれで、その強敵とやらは

わざわざ分断なんてするはずもないと思うし。私にびびっているなんて言ったらそれ

は面白いけど。

 

 一応何かに襲われても戦えるように武器を出しておく。念のため気配感知も使って

みるが、特に何かが迫ってきているような様子はない。だがこのスキルにだけ頼るな

んてことはしない。こういうスキルを妨害するようなスキルを相手が持っているかも

しれないからな。


 敵から隠れながら攻略するゲームもあるくらいだし、それくらいは当然あるだろう。

ふっふっふ。だから実はどこかに隠れていたり、突然現れてきて襲ってくるはずだ。


「いるのは分かっているぞ。何かでるならさっさと出てこい!」

カマをかけてみるが、やっぱり何も出やしなかった。こういうこと言ってでてきてく

れるとかっこがつくんだけどなあ。何もでてこなかったらただの独り言だから寂しい

なあ。

 そんな風に思っていると、坂道の下まで降りてきてしまった。うわ、これかなり早

かったな。ということは、やっぱりあ坂道には何か細工がされているってことか。妖

狐の尻尾に毒狸の尻尾を持つ私を化かしているつもりなのか。

 

 ん。待てよ。化かすと考えると案外狐でもいるのかもしれないなあ。私がこんな尻

尾を持っているもんだから、仲間と勘違いして悪戯しているなんて。

 だめだ、流石にそんなアホなことはないだろ。深読みし過ぎだ私。このゲームがそ

ういう予想外の事をするものだっていうのは理解しているけれど、そこまで私の妄想

が現実になったら怖いものがあるしな。って言ってもここはVRだけれど。


「んー。普通の坂道にしか見えないよなあ。」

 やっぱり何の変哲もない、ただの坂道だ。ブッチが登ることができたんだからそう

なんだろうけれど、怪しい所は何1つない。とりあえずここらで座ってぼーっと空で

も見上げてみるか。


 意外と何もするなっていうのが答えだったりするから侮れないんだよね。ゲーム開

始からしばらく動かないでいるとアイテムが出てくるなんて言うのもよく聞く話だ。

とにかくだらーっと、地べたに座って考えてみるか。一応気配感知も使いつつ、何か

が出てこないかも確認しておかないとな。

 

「蜂蜜でも舐めるか。」

 何かやれそうなことがないので、溜まってきていた蜂蜜を舐める。甘くて美味しい

なあ。ちょっと勿体ない気もするけれど、こういう時くらいいいよね。手詰まりにな

った時こそちょっと一息いれるべきだし。

 なんて考えたら思い出した。こういう場面では焦っているゲームの主人公に、焦り

は禁物みたいに言うジジイキャラなんかがいた。主人公がいつも焦ってばかりいるの

で冷静にさせるために偉そうなことを言ってのけるタイプのジジイだ。


 私はああいうのが嫌いなんだよなあ。はっきりお前は焦っているか落ち着けって言

われたほうが楽なのに、自分から気づかなければ意味がないとかなんとか言って、最

終的に主人公が感謝するんだけれど、それマッチポンプじゃないのかなんてツッコミ

をいれてたっけ。


 私だって薬草ばかり言ってるけどさあ、何もそこまで焦っているわけじゃないんだ

よねえ。だって崖から落ちてから戻れてないわけだし。少しくらい執着してみたって

別にいいじゃん。

 ああ。でもこうして色々考えるのは楽しいかなあ。最近はみんなといるから、一人

であれこれ考えるのもなくなっていたし。これもこれで私らしいって言ったらそうな

んだろうな。


 で、そんな感じだけど、ブッチ達は頂上までついたんだろうか。ってあれ。どのタ

イミングでここに来てくれるのかな。そのあたり話していなかったけど。うわ、失敗

したなあ。うーん。まぁもうちょっとここで待ってみるとするか。

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