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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第2章「般若レディと優雅な目標(仮題)」
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第110話「草原へ帰ろう」

「いいか皆。私達は、今から草原へ移動する。だがそこの人面樹達。お前らは今回

も置いていく。なぜなら移動が遅いからだ。」

 私達は、だいこんの背中に乗って移動するが、人面樹達はそこまで移動速度は早

くないので、一緒に移動すると遅くなってしまう。今はさっさと草原に帰りたいと

いうのがあるので、だらだらと移動するわけにはいかない。

「マ、マジッスカ。」


 がっくりする人面樹達だったが、今回も引くわけにはいかない。こいつらの事が

嫌いとかそういうわけではないのだが、帰るのが最優先だ。そして草原に戻ったら

今度こそこいつらを迎えにくればいいだけだ。ここで情に流されるようなことをす

るとこれからも同じようなことをするはめになるので不退転の決意をする。


「私にも事情があるから。そこは、しっかりと理解してもらわないとね。」

「上下関係の厳しさを教え込むってことか! 流石ねっこちゃん。」


 私が召喚したんだし私が主だからこそやれるだけだ。ここで私に苦情があったと

してもきちんと指示には従って貰わないと困る。だって私もさっさと草原に帰りた

いんだから。薬草集めをしてくてうずうずしているんだ。


「私はもう外に出られたのでどこにいつ行ってもいいです。もう解放感で満ち溢れ

ています。」

「もともと露出狂な服装で解放感ありそうな気がするけどね。」

「ブッチさんは失礼すぎます! セクハラです!」

「いやいやあ。ねっこちゃんを見習いなよあの恰好。あれこそ正に鉄壁だよ。」

「動きやすくて最高だよジャージは。」


 エリーちゃんも仲間になってくれたことだし、ここには3人のプレイヤーが集まっ

ているわけだが、もう少し交流が欲しいなあ。世界的にプレイされているゲームな

のに、たった3人って閉鎖的過ぎる。もっと色んな人たちと話してみたい。


「そんじゃ、みんなワイに乗ってやで。草原方面まで移動するやで。」

だいこんが、巨大化する。前より人数増えているけど、大丈夫なんだろうか。

「ワイもパワーアップしとるから、心配ないで。とにかくみんな乗るんやで。」

「よし、じゃあみんな、草原目指していくとするか。」

 私達は、だいこんの背中に一斉に乗り込んだ。しかしその直後にだいこんが悲鳴

を上げた。


「グエー! 重いンゴ!? なんやこの重さは!?」

 私は先頭の方に乗っかっていたのだが最後方を見ると、おい、人面樹。何ちゃっ

かり乗り込もうとしやがっているんだ。お前ら私のいう事も聞けないのか。いや、

こいつらには乗るなとは言わなかったが。乗っかっているのは2匹だけだったが、大

きいので目立った。


「何でお前らが乗ってるんや!? 降りろや! なんやねん!? お前らちょっと

ふざけとるんか!? 重いっちゅーねん!」

「・・・・?」

「お、ま、え、ら、やで! 人面樹! お前らや! 何いけしゃあしゃあとワイの

背中に乗り込んでくれとるねん!? 」


 だいこんもあまりの重さに耐えきれずに苦しんでいるようだ。いや、なんかこの

態度だとお笑いでもやっているようにしか見えず、面白い。


「あっあのっだいこんちゃん面白すぎます。ふ、フフフ。」

 エリーちゃんが、口を両手で抑えて笑いを堪えていた。可愛いな。なんだこの子

天使みたいに笑いやがって。いやサキュバスだから悪魔か。可愛いなオイ。

「わ、笑いごとやないんやで!? 重い、重いんや!」

「アア、ワレワレノコトナラオキニナサラズ。」

「いやお前らが重くて動けないって言っとるねん!? 図々しいやっちゃな。」

「オヤ? だいこんセンパイハ、コノテイドデ、ネヲアゲルト?」

「なんやとコラァ!!? やってやろうやないか! オラみんないくで! だいこ

んサマの力をみせてやるやで! っしゃあああああ!」


 だいこんが、根性を見せて移動を始めた。速度の低下などは無いようだ。あれ。

これって結局人面樹達がついてくることになっちゃったのかよ。全員じゃないだけ

いいとは思うが、邪魔になるじゃないか。体は大きいし、戻るのに時間がかかるん

じゃないかこれ。あーもう。こいつら結局私の言う事聞こうとしなかったし、これ

は今後教育が必要だな。


「お前ら、命令に背いた罰として後で私が直々に教育してやるからな!」

「アルジドノニ、キタエテイタダキカンシャデス! ッシャアアア!」

何なんだこの体育会系の人面樹は。やめてくれよ。暑苦しいな。なんでそんなに燃

えているんだよ。樹が燃えるとか自傷行為みたいなもんだろ。やめろよ。


「で、ねっこちゃん。帰り道なんだけどさ。」

「うん。」

「この荒れ地に来た時、すげー強そうなモンスターとすれ違ったんだよ俺たち。」

「え、それって。」

確か、くろごまが言ってた正体不明の敵じゃないのか。そういえばここに現れるっ

て言ってたっけ。うわぁ嫌だなあ。帰り道に出くわしたくない。あれ。でも今ブッ

チ達はすれ違ったって言ったか。


「ブッチどの。それはこの地で暴れる正体不明の存在だと思います。」

「そんな奴がいるのか。オレタチハ一瞬だけしか見えなかったんだけど、ドラゴン

っぽい気がしたよ。俺たちの事は無視して、すぐに遠くに行ってしまったけど、何

か目的があったのかもね。」

「イマノワタシデハカテソウニアリマセンデシタ。ケハイダケデオソロカッタデ

ス。」


 そんな強敵がここにいたのか。そのうちぶっ倒さないとなあ。私の障害になる奴

はみんな倒す。まぁ戦闘狂のブッチも頑張ってくれそうだし。

「それにしてもドラゴンかぁ。嫌だなあ。」

「お、何ねっこちゃん。ドラゴンにびびってんの?」

「マスターは憶することはないと思っていましたが、何か事情があるのですか?」

「戦闘で誰かが犠牲になるかもしれないってのが嫌なんだよね。全員が生き残って

勝つには色々面倒くさいなあって思って。」


 仲間が増えれば増えるほど守るのが難しくなってくるのが辛い所だ。正直な話、

私にとっては、たけのこ達が足手まといになっている。これは、死んでしまった場

合そのまま消えてしまう可能性があるからだ。仲間として頼りにしていると言えば

その通りではあるのだが、何度でも死ねる私達プレイヤーと違って、そうじゃない

というのは、ここぞという場面で頼るのは怖い。

 酷い話と言えばそうだが、二度と元に戻らないかもしれないという事を意識する

と、どうしたってリスクは回避したくなる。その結果、死なないように守ろうとし

てしまうだろう。これでは最大限の力を発揮することも難しい。


 これについては、いつかたけのこやくろごまに、はっきりと言わなきゃいけない

と思っているのだが、なかなか言い出せない。この二匹にしてみれば、頼りにして

欲しいのに、肝心なところではされないと分かったら、落ち込むだろう。

 このような事態を避けるためには、私がこのゲーム内で強くならなきゃいけない

のと、たけのこ達にも強くなってもらうのと、あるいは、強敵とは戦わせないとい

うことしかできない。


「ねこますサマ。ワタシハニゲマセンカラネ?」

「む。マスター。私もです。」

 なんか最近私が何を考えているのか読まれている気がするんだけど気のせいじゃ

ないよね。般若レディの顔ってそんな単純に読まれてしまうのだろうか。うう。自

分じゃポーカーフェイス的な感じだと思うんだけど。


「全員修行だよ。最低でも一人一人が世界を滅ぼすくらいの力を身につけないとこ

の世界生きていけないよ!」

「ワ、ワイには無理やでええええ。重いんやでえええええ!」

 だいこんが今も必死に移動をしている。これ、やっぱり人面樹は置いてきた方が

早かったよな絶対。

「無理というのは嘘吐きの言葉って昔誰かが言ってました。」

エリーちゃんきっつ。この状況でそれ言うのはきつい。だいこんの精神がずたずた

に裂けていくよ。


「ぼくももっと強くなって、みんなの役に立ちたいチウ。」

「ワレワレモ、親方ノヨウニ強クナラントナ。」

「ソウダナ。」


 みんなそんなに強くなりたいのか。私は強さよりも、もっとだらだらと安心した

ゲームライフを送れるようになりたいだけなんだけど。そんな戦いばっかりやって

いてもねえ。もっとアイテム集めたり、商売始めたり、そういう錬金術士的な感じ

で遊びたいって言うのもある。

 

「私はもっと美味しい物食べたり、商売やったり、アイテム作ったりがしたいん

だけど。」


「マスターは意外と温厚ですね。」

「ねこますサマとオニクタベタイデス!」


 戦いばかりやっていたいってわけじゃないからなあ。色々な場所を見て回りた

いとか、面白いところがないかとか調べたり、この世界そのものを楽しみたいな

んて思う。

「一応言っておくけど、私も戦う時は戦うからね? 大体はなんか因縁つけられ

たり、いきなり襲い掛かってくる奴らがいるから戦っているだけだよ。」


「ねっこちゃんはモテモテだねえ。後はそのお面も外せるようになったみたいだ

し、それを外せばもっともてるんじゃないのかなあ。」

「ああ。これ? 外したくないよ。」


トラゴンを倒した時に外せるようになったみたいだけれど、今さら外すのはちょ

っと恥ずかしいというのがある。というか外した後の顔ってどんな顔なのか想像

が付かないのが怖い。実はとんでもない顔だったりしたらどうしようなんて事を

想像してしまっているので、それまって外したくない。


「それ! それです! 私も見てみたいです!」

「ねこますサマノカオ。ミテミタイデス。」

「マスターの素顔。恐れ多いです。」

「姉御の顔が見たいんゴオオオオ!」


やっぱりこうなるかあ。まぁそのうち見せるよとだけ言っておいた。

「後で自分でこっそり見るつもりなのはばれてるよ! こういうのはさっさと見

せたほうがいいんだからさぁ。ねえ!?」

「そのうちでいいだろそのうちで!」


しつこい奴だなあ。今までこの顔だったんだから、これでいいじゃないか。何で

そんなに般若レディの顔を見たいというんだ。般若レディなんだからこの顔が本

当の顔だろう。私も気に入ってるし。


「だめだめそんなの! そんな風に言ってるってことは見せる気がないってこと

だよね!? 俺はマンション経営のセールス電話みたいにしつこいから覚悟して

おくといいよ!」

「くっそうざい!!!」


あれまじでうっとおしいからやめてくれよ。何度もかかってきて、着信拒否して

もまた電話番号変えてかかってくるから手に負えないんだよな。というか執着し

すぎだろブッチ。そこまで見たいか。


「じゃあ草原に帰ったら見せてくださいよ!」

「えー。じゃあ気分が乗ったらね。」

「やったぜ!」


あーもう。恥ずかしいなあ。


般若レディの素顔。果たしてどんなものなのでしょう。

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