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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第2章「般若レディと優雅な目標(仮題)」
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第109話「外に出よう!」

 魔者との会話を終えると時間凍結状態はすぐに解除された。停止じゃなくて凍結

ってあたり何か意味があるのかもしれないな。それはさておき、いきなり目を光ら

せていたものだから、みんなが何しているのと言う顔をしてきた。気まずい。

「いや、なんとなく明るくしたかったなあなんて思ったから使ってみたんだ。」

「ねっこちゃんってたまに突拍子もないことをするよねえ。」

「いつものことやで。」


 散々な言われようだな。これもあの魔者のせいだ。誰もさっきの状態には気が付

いていないことから、とんでもない力を持っているのは確かなようだ。ああいう奴

ってこっつの都合を考えずに一方的に色々言ってくるんだよなあ。その癖肝心な事

は全然言わないもんだから、断片的な情報ばかりになって、結局それがどういう事

なのか分かるのがすごい後になってからっていうのがある。


「世の中って面倒くさいことばかりだよねえ。」

「ソウデスネ。ワタシハ、ねこますサマト、ニクヲタベタリ、アソビタイダケナノ

デスガメンドウゴトガオオイデス。」

おーそうかそうか。よしよし。じゃあ帰ったら肉を食べて遊ぶか。やっぱりたけの

こも薬草集めをしたいよねえ。


「あのぉ。たけのこちゃん。こういう帰り道ではそういう台詞は不吉なので言わな

いほうがいいんですよ。」

 おずおずした態度でエリーちゃんがたけのこに話しかける。そういえば私達とブ

ッチ達は分断されていたから、会話に混ざりにくいっていったらそうだよな。

 全員知っているのは私になるから、私がいなくなったら瓦解するのだろうか。あ

れ? ちょっと待てよ。つまりこの集まりとしては私が中心に周っているってこと

にならないだろうか。


「ナゼ不吉ナノデスカ?」

「やっと願いが叶うと思った時ほど危険な事がつきものなんです。」

「ムムゥ。デハキヲツケマス。」

 いつかは、仲間割れイベントが発生するんだろうか。そういうぶつかりは早い方

がどんどん仲良くなれる気がするから済ませておきたいんだけどなあ。


「ところでマスター。マスターは草原に帰るとのことですが、それから先は何をす

るのか考えているのでしょうか?」

「え? 薬草狩り以外は特に何も考えてないよ。あ、毒狸の母は倒したいな。」

「うわぁねっこちゃん。やっぱり会えない間に面白そうな事に巻き込まれていたん

だね。」


 面白かっただろうか。ドキドキハラハラの冒険といえばそうだけれど、厄介事に

巻き込まれただけの気がする。荒れ地に来て、くろごまと人面樹に襲われて、仲間

にしてムフロンと戦って熱帯雨林に行ってドラゴンフルーツとって、やっとこさ帰

ろうって思ったら、戻れなくなった後に、つい塔に昇ってしまって。

 ああ、うん。自分から首を突っ込んでいると言えばそうかもしれないな。けど塔

に昇らなかったら、それはそれでずっと同じところから出られなかった気もするん

だよなあ。試してみたかったけどもう出来ないのが残念だ。


「なんか色々あったなぁと思い出してみたけど、苦労ばかりだったよ。」

「そうかいそうかい。じゃあ旅をして一回り成長したんだね。」

「ああ、こんな見た目になっちゃってるからね。」


 触角がついたり、狸の尻尾がついたりと、宴会芸でもやるのかって感じの姿にな

ってしまったな。色々能力が上がっているのはいいことだけれど、見た目的には何

だかすごい歪だなあと我ながら実感する。


「あたしも最初はねこますさんが怖く見えたんですが、今じゃお笑い芸人でもやっ

てそうな感じがするので、親しみやすくなりましたよ。」

 そうですかい。人を楽しませているのなら悪い気はしないけれど、見た目だけで

食っていけるほど甘い業界じゃないと思う。


「あぁー。それにしてもなんかこのエレベーター遅くないか? 実は止まっている

なんてことはないよな?」

 と、リザードマン達の顔を見やる。そういえば、魔者の奴がこの二匹が死んだら

レッドドラゴンが解放されるなんて不吉な事を言ってたっけ。こいつらが生贄にな

ってそういう状態になると思えばよさそうだな。

 

 え。つまりこいつらが死ぬと私の平和が乱されるという事になるんじゃないのだ

ろうか。レッドドラゴンとか名前的になんか殺戮を好みそうな感じがするし、解放

されたらこの大陸全土を支配しようと躍起になりそうな気がする。

 うわ面倒くさい。つまりこいつらが死なないように見守る必要があるってことじ

ゃないか。こいつらが突然死んだ時点でどこからともなくレッドドラゴンがやって

きて、大陸を火の海になんてことも考えられるじゃないか。


「タ、タブンオソイダケダロウ。51階ノモノトハチガウノデアロウ。」

「コノ塔モ、ズイブンフルイカラナ。」


何か気になる話がでてきたな。どのくらい前からあるっていうんだ。

「何年前からあるの?」

「99年クライマエダ。」


何だよその中途半端な数は。うわぁツッコミ入れたくなるけど、こういうわざとら

しいのにはいれたくない。


「なんやねんその中途半端なのは。もっと100年とか200年とかにしろやで。」

だいこんナイス。そういうありきたりなツッコミはもうお前に任せた。今後は私の

代わりにガンガンツッコミを入れてくれ。


「で、あんたらは99年もここにいるの?」

「ワカラナイ。キガツイタラズットココニイタキガスル。」

「ソウダ。ナニカダイジナコトヲシテイタキガスルノダガ。」


記憶喪失ってことか。何かイベントをクリアしてこのリザードマンの記憶を取り戻

さないといけないのかな。殴ったら記憶が蘇るとかないんだろうなあ。うーん。現

状こいつらはおとなしくしているし、死なれても困るから。


「そうか、じゃあお前ら、ブッチの部下になれ。」

「は!?」


私には、たけのことだいこんとくろごまがいる。エリーちゃんにはねずおがいる。

つまり、ここでモンスターの仲間がいないのはブッチだけだ。だからブッチにはこ

いつらの面倒を見る権利を進呈してやるのだ。


「ナニヲイキナリ。」

「ソウダ。ワレラノイシハドウナル。」

「俺の意志もどうなるのねっこちゃん!?」

「いいんじゃないですか? ブッチさんも部下がいればおとなしくなりそうですし。」

「なー!?」


手をわなわなと震わせるブッチだった。おおなんだ。部下を持つとかそういうのが

苦手だったりするのかな。一人だったら自分だけ突っ込めばいいけれど部下を持つと

守らないといけなくなるから、それが足かせになるなんて考えがありそうだ。


「俺に部下とか向いてないよ。というか面倒じゃん! なんかこう毎日部下の為に

こうあるべきみたいな責任感が付きまとってきそうでさ! 俺、無責任って言葉が

大好きだし、責任を与えられても困るよ!」

「責任とって!」

「ちょ。それはこういうところで使うべき言葉じゃないよね!?」

やばい。しどろもどろするブッチが面白い。いつも散々からかわれているだけに、

こうやって反撃するのは気分がいい。この流れ的にはもう、ブッチにリザードマン

たちの管理をお任せしたくなってきている。


「ブッチさん。リーダーシップ見せてくださいよ。男らしさが売りなんでしょう?」

「むぐ。確かに俺は、男の中の男を目指す男ブッチ。リザードマンの一匹や二匹の

面倒が見れなくてどうする。よし、やるか! 分かったよ!」


ブッチって、おだてられたり、安い挑発に乗りやすいんだなあ。意外と単純馬鹿な

ところがあって面白いなあ。


「じゃあえーっと。イッピキメとニヒキメって言うんだっけ? よろしく。俺の事は

親方って呼んでくれ!」


「オヤカタァ!」

「オヤカタァ!」

「オ、オヤカタァ!」

「オヤカタァ!」

「オ、ォャカタァ」

「オヤカタァ!」

「オヤカタァ!」

「オヤカチャア!」

「なんでみんな一斉にいうんだい!?」


このビッグウェーブに乗るしかないと思っただけだよ。親方かぁ。でもまだ引退した

わけでもなんでもないんだから名乗っちゃいけないんじゃないのか。その辺は流れで

やっちゃっただけなのか。


「俺はこの<アノニマスターオンライン>で横綱になる男、マブダチだ! 誰にも負

けない強さを身に着けてやるんだ!」


いきなりかっこつけやがって。まぁいいさ。とりあえずこれで、リザードマン達をブ

ッチに押し付けることに成功したんだから。なんて思っていたら。


「ねっこちゃん。後で理由聞かせてもらうからね。」

「ぉう。分かった。」

 なんて小声で呟かれたよ。あー、ブッチはやっぱり察しがいいなあ。エリーちゃん

も何か疑問に感じていそうなところがあるから気づいているかもしれないな。そうい

う説明は後にするけど。


「で、このタイミングでようやく1階まで着いたのかな?」

「そのようですな。マスター。扉が開くときは何かが出てくるかもしれません。ご注

意下さい。」

「ねずおちゃんもね。」

「分かってるチウ!」

「俺が最初に突撃するから大丈夫。何かでても蹴散らすよ。」


なんて頼もしい奴なんだ。肉壁があるって安心感が増していいなあ。よし。私も何か

でてくるかもしれないから対策しよう。


「行くよ!」

エレベーターの扉が開く、ブッチが一番最初に扉の外に出た。そこは。そこはただの

荒れ地が広がっていただけだった。なんだ。外にすぐつながっていたということか。

それにしても、外は久しぶりだ。長いこと塔にいたような気がするから、安心感があ

るなあ。

 そして、ようやく塔の外にでた私達を出迎えてきたのは、人面樹達だった。あれ。

こいつらもしかして。


「おおおおお!」

ブッチが人面樹を敵とみなして突撃する。ちょっと待て。

「ブッチストオオオオオオオオオオオオップ!」

「お。お?」


「アルジドノオオオ!」

あ、やっぱり私が召喚しちゃった人面樹だ。

「やあやあ。」

「オレタチノスミカヲサガシテクレルンスネ!?」


あー。そういえばそんな話をしていたっけなあ。これ断れる流れじゃないよね。んん。

どうする。草原の横にある森に連れていくか。あそこくらいしか良さそうなところない

し。あれ、こいつら何匹いるんだ。こんなにいたっけ。


「アルジドノノタメニナカマヲアツメマシタゼ!」

よ、余計な事を! そしてみんな私を凝視するんじゃない。何やってんだこいつみたい

な顔をするな。私だって仲間にしたくて召喚したわけじゃなく、こいつらが勝手に召喚

されちゃっただけなんだから。


「この木はなんだチウ?」

「あ、あぁぁここがお外なんですね。あぁぁやっと外に出られました。やっとやった。

あぁぁ感動です。」

「また変な奴らがぎょうさんきおったな。わんころ。お前もそのうち影が薄くなってい

くんやで。」

「オマエナドモウシロクナッテイルデハナイカ。」

「なんやと!」

「本当、ねっこちゃんといると退屈しないなあ。」


なんか色々言いたいことがある。まず叫ぶか。あのなお前ら。

「うるさーい! まずは全員私の前にせいれーつ!」


混乱が続いたので、統率することにした。ここで威圧も使ってみんなを黙らせることに

成功した。やれやれ。

やっとこさ外に戻ってきました。

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