表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第2章「般若レディと優雅な目標(仮題)」
108/473

第108話「錬金術師の杖」

 私を先頭に、魔者の部屋から出ることになった。ここで分断されるようなイベン

トが発生しないように、私はエリーちゃんと手をつないだ。ブッチ達と分断された

時の事を思い出したが、あれは腹が立ったなあ。

 

「ねっこちゃんの浮遊って自分だけ浮かなかったのは本当に笑っちゃったよ。」

 私の表情を読み取ったのかブッチがツッコミを入れてくる。この野郎。あんな事

になるなんて私だって想定外だったっての。今じゃ攻撃用スキルとして役立ってい

るけど、あれのせいでありきたりな展開になっちゃったわけだし。


「ブッチどの。マスターの浮遊は侮れませんよ。あれは攻撃のテンポをかき乱すの

で、どんな相手にも効きますし。」

「確かに笑いのツボにもくるね。」

「うるせーー。いいからとっとと帰るよ!」


 くだらない話はいいからさっさと草原に帰るのだ。いつもの調子でツッコミをい

れてしまうが、とにかくまずは草原だ。今の私の頭にはそれしかないんだ。


「ってわわっ!?」

「あっ。ねこますさん?」


 足元に何かがあったみたいで躓いてしまった。注意して進んでいたはずなのに、

何を踏んだんだろう。足元にあった物を掴んでみる。


メッセージ:錬金術士の杖を手に入れました。


何これ。錬金術士って。え。今更なんでこんなものが手に入るんだ。というか何

足元にいきなり現れているんだこれ。魔者の奴が何か仕掛けておいたってことな

んじゃないのか。


「ねこますサマ。ダイジョウブデスカ?」

「うん。大丈夫。これ、錬金術士の杖ってのが足元に突然現れたみたいで、これ

のせいで転んだみたい。」


 木製の杖の先端に、赤い宝石が付いている。どちらかというとこれって魔法使

いの杖って感じがするなあ。これじゃあ錬金術士としては見られないような気が

する。まあそもそも、錬金術士なんて感じの見た目ではないので大して問題では

ないんだけど。

 

「なんでこれがいきなり手に入ったのか分からないけど、とりあえずこれで漸く

まともな錬金術士としてスタートできたような気がする。」


 もしかしたら、これで口の中に薬草を入れて火薬草に調合というのがなくなる

のだろうか。この杖を釜の中にでも入れてかき混ぜて調合なんてことができるよ

うになれば、それっぽくなるんじゃないか。ん? でも釜なんて持ってないじゃ

ないか。うわ、じゃあ次の目標は釜探しとか錬金術士らしさを求めるってことか。


「ねっこちゃんはもうまともな錬金術士だよ! 口の中に薬草を入れるとはい不

思議! 火薬草になりましたーってすごいと思うよ! 前人未到の領域にたどり

着いているよ!」

「方向転換して普通になるんだよ!」


 どう考えてもまともじゃない。最近はそれに慣れてしまった自分がいるけれど

よくよく考えるとそうじゃないんだよ。もっとこうフラスコとか持ったりするの

が私の頭の中でイメージしている錬金術士だって。


「ねこますさんが錬金術士っていうのはなかなかそうだって思えないですね。ど

ちらかというと、暗殺者みたいな・・・。」

「プップップップ。あ、あんさつしゃだって。ね、ねっこちゃん。あ、あんさつ

しゃとか。鎌を持って血を吸わせろ~とか言ってみてよ。」

 口を抑えて笑いを堪えようとするブッチ。お前はいつも笑いすぎだっての。あ

あもう、こいつを叩きのめすモンスターとかでてこないもんか。


「もう、いい加減真面目に行こうっての。ん?」

「え?」

「あ?」


真っ暗だった室内が徐々に明るくなっていく。この錬金術士の杖を取得したから

なのかは分からないが、何かのイベントが進行したようだ。辺りを見渡すと、歯

車が沢山回っているのと、色々な機械が動いているようだった。ここはもしかし

て、1階まで行けるエレベーターの部屋か?


「オ、オオ。ココダ。ココニアンナイショウトオモッテイタノダ。」

「ソウダ。ここから一階ヘイケルゾ。」


やたらと説明的なのが気に入らなかったが、あっていたようだ。この塔からやっ

とこさ出られる。いやまだか? あと少しって思っていると邪魔が入るなんてい

うのがあるからなあ。ああもうさっさと脱出したい。面倒くさいことをしないで

さっさとこの塔からでたい。だけど焦るとまた余計な事しないといけなくなるか

ら落ち着かないと。


「塔から出るの初めてで緊張してきたチウ。」

「ねずおちゃん。私もだよ。やっとこの薄汚い塔から出られて嬉しい。」


 元々は地下に沈んでいたって言うのがこの塔の不思議なところでもあるんだよ

なあ。ブッチのいた洞窟もそうだけど。魔者とのつながりでもあるってことなの

かもしれないなー。

 ああ、あと、それで思ったことだけど。


「こういう場所の名前がついてないのって不便だから名前でもつけておくか。」

「おお。いいね。どんな名前にするんだい!?」

「それは後で考える。まずはここから出るんだよ。」


リザードマン達に、速攻でエレベーターまで案内してもらうことにした。そこか

らはさくさくとエレベーターの中に入り、地上1階までゆっくりと目指すことにし

たのだった。


「ダンジョンって帰り道が1番怖いんだよねえ。俺がやったゲームだと帰り道はア

イテムが全然でなくなるのがあって。」

「それってローグライクゲームのことじゃないですか?」

「おっ!? なんだいエリーちゃん。意外とゲームやってんじゃん。 若者っぽ

さが溢れているから何も知らなそうかと思ったらすごい! 0点!」

「なんで褒めておいて0点何ですか!」


 なんてやり取りを聞きつつ、私は一思いにふけっていた。というか、嫌な予感

しかしない。ブッチの言う通り、こういう帰り道にエレベーターなんてさくさく

進むものを使うと、トラブルが発生する確率がすごい高い。

 このエレベーターが緊急停止したり、実は生きていた何かが襲い掛かってきて

お前たちは生かして帰さんぞなんて言う台詞をはいてきて、道連れにしようとし

てくるに違いない。


「姉御の悪い癖がまたでとるで。」

「あれはマスターの良い癖でもあるとは思うのですが。しかし。」

「ねこますサマハ、アアナルトナニモキコエナクナル。」


「おーい、ねっこちゃん。どうしたの? お腹空いたの?」

「いや、私は別に。ってそうだよ! たけのこ! お腹空いてない!?」

「チョットスイテキマシタ。」

「これこれ、ドラゴンフルーツがあるから食べてていいよ!」


ひょいっと、たけのこにフルーツを渡す。あれ、狼ってフルーツ食べられるんだ

っけ。それともモンスターだから関係ないのかな。元々たけのこはすぐお腹がす

くような感じだから、ここまで頑張って登ってきてお腹が空いていてもおかしく

はない。ああ、そのあたりも忘れてしまうなんてダメな奴だな私は。


「アリガトウゴザイマス! コ、コレハ!オイシイデス!」

「おお、良かった。」


大丈夫だったようだ。けど犬とか狼に与えてもいい食べ物は後で調べておこう。

これからはそういうので何かあるかもしれないし。


「それでー。ねっこちゃん。何か考えこんでいたけど、どうしたの?」

「ん? あー。帰り道に道連れだなんて言うボスがでてくるかもしれないって予

想してた。他にもこういうエレベーターの明かりがいきなり消えたり。」



いきなり消えた。狼狽えずに、すぐに照眼を使う。


 何かが起こったのは分かる。リザードマンが何かしたのかと思ったが、動きは

何もない。だとすると他の何かか。いや、なんだ。私以外のみんなの動きが止ま

っているような感じだ。

 

 なんだこれ。すごい不気味な感覚だ。私以外の誰もが完全に停止している。待

てよ、くそ。冷静になれ。これは、時間停止系の攻撃か、それとも私だけ時間が

ゆっくり流れているとか感覚だけ別な空間にあるみたいなそういう状態なのか。


動ける。私は動ける。でも私だけ光速で動いているみたいなことはないと思う。

おいおい。何かのイベントが発生しているならさっさとしてくれ。何があるとい

うんだ。これは私だけ体験しているのか?


「察しが良く見えて悪い奴だな。」


声が聞こえてくる。ああ、つまり、この杖か。錬金術士の杖。あんなところにあ

ったから何もないとは思わなかったが、つまりそういうことか。


「お前がやっているのか「魔者」?」

「ああ。時間凍結だ。」

「で、レッドドラゴンでもぶっ殺してこいか? それとも大陸の話?」

「両方だ。レッドドラゴンは、そこのリザードマン二匹が死ぬと解放される。そ

んでもって、この大陸には危機が迫っているぞ。」


いきなり大事ぶちかましてきやがってこの先代様よー。それで私を動揺させて体

でも乗っ取ろうとしているんじゃないのか?


「そんなん言われてもな。薬草集めを邪魔する奴がいるならただ倒すだけだ。」

「そうか。なら何も心配ないな。みんなお前の邪魔をしようとする奴ばかりだ

からな。」


何!? 私の薬草集めを邪魔する奴がいるだと。そいつは生かしておけないな。


「で、言いたいことはそれだけか魔者。」

「いいや、他にもまだまだあるが、それはおいおいだな。まずは挨拶って奴だ。」

「時間凍結の能力よこせ。」

「もう使えるようになっているぞ。今度使ってみろ。せいぜい1秒が限界だろう

がな。」

「それだけ使えれば十分だ。それじゃあな。」

「後1つ。お前、向こうの世界の人間だろう。」

「!?」


VR世界だというのに、この発言には驚いた。AIがそういう事を言うとは。いやそれ

ともそういう設定になっているだけなのか。それとも実は、<アノニマスターオン

ライン>って別世界に飛ばされているなんてことは、いやそれはなんか妄想のし過

ぎか。


「その反応はそういうことだな。ならばやはり俺は造られたものだったのか。はあ

ため息しかでねえなこれは。」

「そんなことは知らんけど、お前との会話はいつでもできるのか?」

「念じればいつでもできる。それもおいおいとやっていこうぜ。」


 杖になった魔者と色々話すってのはなんだかなあと思うが知りたい情報があるの

でそのあたりは改めて話してもらうとするか。


「今度からこういうことは突然するなよ。」

「それはフリか?」

「違うっての! ああもうお前も面倒な奴だな。」

「仲良くしようぜ。魔者同士。」


ブッチ並みにうざい奴だなこいつ。私の事を察して動こうとするのもむかつくな。


「そうだ、とりあえず今回は、最後に面白いことを伝えてやろう。」

「なんだよ。」

「俺の名前は、バッカアッホマヌケーって言うんだ。」

「まじかよ。」

「嘘ぴょーん。じゃあなバイバイ。」

「永久に消えろ。」


魔者UZEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ