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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第2章「般若レディと優雅な目標(仮題)」
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第106話「魔者の部屋荒らし」

「魔者ってなんだよ。聖者や賢者や勇者なら分かるけど、魔者って。というかこれ

って読み方まじゃでいいのか。実はまものと言いたいだけじゃないよねえ。」

 いきなり称号を得たなんて言われても嬉しくはない。ただ石碑をぶっ壊しただけ

でこれとかありえないだろう。そもそも、こんな称号は欲しくない。

 

 ここが魔者の大陸ってことは、私の支配する大陸ですって言ってるようなものじ

ゃないか。自分の領地があるといってもそれを奪おうとする輩だってきっと沢山い

るだろう。危険が多くなるというのがとても嫌だ。そりゃあ今更文句を言っても仕

方がないけど、どうしても苛立ってしまう。


「聖者の反対っぽいからまじゃでいいんじゃない? というかねっこちゃんに魔者

ってぴったりだと思うよ!」


どこがぴったりだと言うんだ。私は魔法の1つも使えないというのに魔者なんて称

号詐欺だろう。いかにもすごい魔法を操りそうなのに実は何にも使えませんでした

ってそりゃあね。


「エリーちゃんに称号を譲りたいよ。魔法が使えない私が持っていてもさあ。称号

いらない? 譲渡の方法とか分からないけど、欲しいとか思わない?」

「全く思わないです。名前がちょっといかついというか。」


 ですよねえ。可愛い系が好きそうなエリーちゃんだし、こんな称号欲しくないっ

ていったらそうだよね。はぁ。

「ねこますサマ。カッコイイデス。」

「ええ、マスターにぴったりです。」

そうか、かっこいいか。自慢にもならないと思うんだけど。


「俺も称号欲しかったなあ。殺戮の帝王とか極悪非道とか。」

「ブッチさんって意外に子供っぽいところがあるんですね。」

 エリーちゃんがブッチに向かってくすくすと笑いかける。確かにブッチはなんか

変なところで子供っぽさがあるんだよなあ。


「浪漫を求めてるからねえ俺は。それはさておき魔者殿、この部屋の粗探しでもする

んすか?」

「魔者はやめろ。まぁとにかく貰えるもんは全部貰ってからこっから出るよ。おっと

そこのリザードマン二匹。妙な動きはするなよ。この部屋にある何かを狙っているの

は分かっているんだからな。」


「イヤ、ダカラワレワレハソンナコトヲセヌト・・・。クドイヤツメ。」

 魔者ですから~。と開き直ってみる。魔者って名前的にはなんか悪っぽい感じがす

るけどどうなんだろうな。


「所詮ただの称号だろうし魔者になったからといって特別何か変わったことはないか

ら今まで通りやっていけそうかな。」

「果たしてそうかな? これから新たな力が覚醒して、邪悪の限りをつくし、この世

の支配を目論む魔者となっていくんじゃないのかな?」


 ブッチの発言に全く興味が惹かれなかった私がいる。支配も何もないっての。支配

よりも何物にも縛られない自由が好きだし。支配するのに色々計画立てこうするのだ

ああするのだって、特定のゲーム上なら面白いだろうけど、このゲームでやっても大

して面白さを感じない気がする。

 

「とりあえず、先に色々探しませんか? 魔者のお宝なんてものがあると聞いてあた

しはわくわくが止まらないです。」

「エリーちゃんは盗賊だもんねえ。そりゃ楽しみだよね。」

「つまり墓荒らしかっ! 流石悪魔!」

「そういうこと言わないでください!」


 なんて二人のやり取りを聞きつつ、私は、この室内の粗探しを始める。なんだか本

当に民家を荒らしているような感じがしてしまったが、魔者なんていうろくでなしが

遺した物をありがたく使ってやるんだから感謝しろとしか言い表れせないな。


「おー! 箱というかこれは葛籠かな? を見つけたよ!」

「えへへ! あたしは金ぴかの箱を見つけました!」

「私は、なんか黒い箱だった。」


みんな一斉に見つけたか。みんなバラバラだし中に何が入っているのか楽しみだ。中

身を確認する前に、リザードマン達には少し距離をとってもらい何を手にいれたかは

見せないようにする。


「よし、じゃあ一斉に箱を開けて、中身を手に入れるとしよう。」

「あっちょっと待ってください。えーっと。うん。大丈夫です。中身はちゃんとアイ

テムが入ってるみたいです。」

「盗賊っていいなあ。」

「ふっふっふ。いいでしょう?」

「でも、力士はもっと」

「もういいです!あけますよ! せーのっ!」


エリーちゃんの合図でみんなで一斉に箱を開けた。


メッセージ:魔者の鉢金を手に入れました。


これは、忍者とかが良く使う額当てか。鉢金って言うのか。魔者のって名称が少し気

に入らないが、悪くない気がした。


「俺、かなりいい物手に入れたよ! 魔者の大工セット!」

「あたしもです! 魔者の七つ道具って奴です。」

「わ、私は。」

 何なのこの二人。私だけなんか大したことがない道具じゃないか。何だよそれえ。

その大工セットとか七つ道具とか何が入っているんだよ! 羨ましいじゃないかく

そう。


「これ。」

どうせ馬鹿にされると思ったがこの流れだったので見せることにした。


「これは忍者の額当てじゃないか! くっそかっけえええええええええ!」

「うわぁこれは、盗賊でも欲しくなりますよ。かっこいいですね!!」


え!? 何それ? 鉢金って今流行ってるの? そんなにこれかっこいいの? そ

んなの全く知らないんだけれど。


「装備してみてよねっこちゃん!」

眼前にブッチが迫ってきたので、とりあえずつけてみることにした。


メッセージ:魔者の鉢金を装備したことでスキル「忍術」を使えるようになりました。


「どうだ?」

「かっけえ。なんかこう正に般若レディって感じがするよ!」

「確かに、かっこいい感じがします。」

「第一ご主人かっこいいチウ!」


「そ、そうか、ところでこれを装備したら忍術が使えるようになったみたい。何の忍

術が使えるかは分かんないけど。」


「う、羨ましい! 忍術とか憧れるよ! 俺は力士が大好きだけど忍者も好きだか

ら正直羨ましすぎる!」

「あたしも忍者みたいなかっこいいのが好きです。ねこますだとくのいちってこと

になるのだと思いますが。」


 忍者ってそんなに人気だったんだな。ゲームではたまにやたらと強いキャラクタ

ーに設定されていることがあったけれど、贔屓してしまうくらい好かれているとい

うことなんだろうか。


「まあ二人とも落ち着いて。他にも沢山アイテムがあると思うからとにかく片っ端か

ら探していこうよ。それが終わってからアイテムは見せ合おうか。」


いちいちアイテムを見せ合っていては効率が悪すぎる。なので各自で探してから最後

に確認ということにした。


この部屋のいたるところを探して行く。家宅捜索している警察にでもなった気分だな。

私は届かないけれど、ブッチは天井に届くので隠しスイッチのようなものがあるかも

しれないので探しておくように指示した。

 エリーちゃんは、部屋の床や壁を叩いて隠されたものがないか探しているようだっ

た。

 そういえば、壁に埋め込んでお金を隠して脱税している話なんていうのも聞いたこ

とがあった。それを取り締まるような感じ、ではないだろうなあ。エリーちゃんは盗

賊だし、どちらかというと捕まる側だろう。


「私がプレイしたゲームだと、壁に人の骨が埋められたなんてあってさあ。」

「なんでここでそういう話をするんですか! 怖くなっちゃうじゃないですか!」

「ふんふんそれで?」

「骨が発見されたと同時に呪いが発動するとかあって。」

「呪いだって!? まじこわいなー。」


 エリーちゃんが震えている。トラゴンと戦う時はそこまで怯えているような気が

しなかったけど、やっぱり得体のしれない物のほうが怖いってことなのかな。私に

しても、先が読めなくて何が起こるか分からないことが怖いって気持ちがあるから

石橋を叩いて渡るように薬草を集めまくったくらいだしなあ。


「ワイなんて怖いもんばっかりやで。もっと安心できる環境が欲しいっていつも思

ってるやで。」


 だいこんよ何を言っているか。私の方が怖いものが多いぞ。世の中なんて意味不

明な事ばかり起きるものだし、そこで生きていくためには絶対的な安心を得るため

ににコツコツ地道に生きるしかないんだ。


「姉御は、どっちかっていうと恐怖を与える系やとワイは思うやで。」

「失礼な奴だなー。どこが恐怖なんだ。」

思わず、だいこんを睨みつけた。

「ヒェッ!」


やれやれ。恐怖を与えるなんて言われてもなあ。今じゃ魔者なんて称号を持ってし

まっているから誤解を招いてしまいそうだな。あれ? そういえば称号を取得した

時のメッセージは全体になっていたけれど、取得した時以外で他人の称号を見るこ

とができるスキルなんていうのもあるのかな。


 他人が私の称号を好き勝手に見ることができるっていうのは嫌だなあ。魔者とい

う称号を持っているとばれたら問答無用で襲われそうな気がする。なんだこいつ魔

者じゃないかって断定されたら最後、ボコボコにされてしまうだろう。


「ん? この部屋の元の持ち主は魔者だったわけだよな。そんで今はねっこちゃん

が魔者だから、自分の家にあるものを自分で粗探ししているってなんかマヌケっぽ

いことをしているってことになるよね。」

「うるせー! とっととアイテム回収しろ!」


話をしていると先に進めないのがネックだ。こういう日常会話的なものがとても貴

重な気もしているが、ゲーム自体をもっと楽しみたいなあと思っている。なかなか

上手くいかないけどね。


 この塔からは早く脱出したい。私は飽き性でもあるので、同じところにずっとい

るというのはできないのだ。え? 薬草? 薬草集めは別腹だっての! 徐々にア

イテムインベントリに溜まっていくのは最高に楽しいし。薬草集めは特別な存在な

んだ。


「もっと戦いも慣れていかないとなあ。」

「え!? ねっこちゃん戦い慣れているよ! 充分強い!」

「ないって、たまたま運よく強敵を倒せているだけだし。」


何か特別なことをやっているというわけではない。日進月歩の生活を送っていると

いうだけなんだから。

「よし、みんなこの部屋全部を探索するぞ。後で少し休憩を挟んだら、壁とか床

とかも徹底的に調べて隠された真実を探してみようじゃないか。」


脱出ゲームのクリックしまくるタイプの私は金銀財宝を絶対に見逃さないのだ。

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