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アノニマスターオンライン  作者: 超電撃豚豚丸
第2章「般若レディと優雅な目標(仮題)」
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第104話「薄暗い部屋」

「照眼。」

 部屋が薄暗いので目から光を放つ。このスキルを使っても私が眩しくならないの

は不思議だ。それどころかよく見えるようになる。

 室内を見渡すと、本棚らしきものが多数設置されていた。本棚らしきというのは

肝心の本が一冊も入っていなかったからだ。他には、歯車が沢山回っていたり、振

り子がずっと動いていたりと、何がしたいのか分からない物ばかりだった。


「おい、エレベーターがあるってのは嘘だったんだな?」

「ソ、ソンナコトハナイゾ。」

 リザードマン達に脅しをかけておく。まだ部屋の奥まで行ったわけじゃないけれ

ど、この部屋はなんとなく怪しい。何か秘密が隠されているのではないかと疑うの

が当然だろう。それに今の態度怪しい。


 実は、この部屋に重要なお宝が隠されていてこいつらはそれを狙っているなんて

ことが考えられるかもしれないんじゃないか。それをむざむざこいつらなんかに渡

してたまるか。私の宝は絶対に渡さんぞ。


「だいこん。」

「なんや?」

「この二匹の顔をなめろ。」

「なんでや!?」

「嘘をついているか分かる気がする。」


 多分、そんなんじゃ分からないだろうけど。なんとなく勢いで言ってしまった。

意外なことをされると嘘かどうか分かりやすいっていうからどうかななんて思った

んだけど。ああ、だいこんの奴め冗談だと思っているな。本気だぞ。


「お前ら、この部屋にあるお宝を狙っているんだな。私にはわかっているぞ!」

「イヤ、ソンナモノアルノカ?」

しどろもどろになりながらリザードマンが言う。

「とぼけやがって。」


「またねっこちゃんの疑心暗鬼が始まったよ。ああなると長いんだよねえ。」

「そうですね。ねこますさんって、用心深いですよね」


 何が起こるのか分からないからね。この部屋は特殊な場所だっていうのがなんと

なく分かるし。偶然この部屋に入ってしまったとでも言うのか?


「ブッチ達はここに来たことがないってことでいいのかな?」

「うん。俺たちがここに来たときは階段の先にすぐ扉があっただけだし。こんな部

屋に入っていたら普通気が付くよ。」


 つまり、これはトラゴンを倒したことで何らかの影響がでたと判断していいんだ

ろうなあ。


「トラゴンを倒したからというのが考えられませんか?」

「それや! くろやん賢いやんけ!」

 誰でも思いつきそうなものだが、まぁ敢えて何も言わないことにしよう。だいこ

んがもっと賢くなってくれることにも期待しよう。


「私は、この部屋で何かをしないと、この塔を攻略したことにならないというのが

妥当だと思っています。何かアイテムを発見しないと駄目とか。」

「私もそう思うよ。で、そこのバカリザードマン二匹がそれを隠蔽しているんじゃ

ないかと睨んでいるんだけど、いや思いっきり睨んでいるけど心当たりあるんだろ

はけ! さっさとはけ!」


 電撃の鞭を地面に叩きつけて脅すのだった。私は脅迫や拷問が大得意なんだぞ。

素直にはかないとどうなるのか思い知らせる羽目になるんだぞ。それはそれで楽し

みなんだぞ。


「ナ、ナニモシラナイ! ココニエレベーターガアルトシカ。」

「ソウダ、ワレワレハ、コノトウデハナニモデキナイノダ。」


「おっ、狼狽えちゃって。益々怪しいなあ。」

「まあまあ、ねこますさん。ここで何か言っても始まらないと思いますし、この部

屋の中手分けして探しません?」

「却下。」

「えっ!?」


手分けして探している時に行方不明になるなんてことがゲームではよくあるんだ。

別行動をとったがために、攫われてしまうとか、死んでしまうとかそういう展開に

何度泣かされてきたことか分からない。手分けして、これほど嫌な言葉は無い。全

員同じ場所にいて誰も動かなければ安全だったんだ。そんなごく当たり前のことが

できないというのがダメなんだ。

 

 ホラーゲームとかミステリー系の物語だと、まず間違いなく手分けするというと

揉め事が起きる。それを起こしてたまるものか。そういうのはな、ここから帰って

からやることなんだよ。まずは、とにかくここから脱出して薬草集めに行くことが

重要なんだ。今の私はそれしか考えられない。


「手分けして探したらはぐれて暗殺されたりするんだよ!」

「な、なんだそれチウ。怖いチウ。」

「ワ、ワタシハねこますサマニツイテイキマス。」

二匹がちょっとびっくりしまったのか私にしがみついた。おい、ねずおはエリーち

ゃんにしがみつけよな。


「俺も手分けしては嫌かなー。折角ねっこちゃんに再開したのにここでまた分断さ

れたりしたらちょっとムカツク。」

「姉御~。ワイはずっと寂しかったんやで~。」

「ウソヲイウナ。オマエハ、ヤクソ・・」

「あーなんでもないんやで! おいわんころ! 何を言うつもりやねん!」


 何が言いたいのかはさっぱり分からなかったが、この薄暗い部屋を探索するなら

私の照眼が役に立つし、皆も一緒についてくればいいだろう。

 トラゴンを倒したことで塔に変化が生じてしまったのならそれは仕方がない。も

しかしたらエレベーターも見つからなくなってしまうかもしれないが、どうしよう

もないだろうなあ。エリーちゃんは嫌だろうけど、頑張って少しずつ脱出するしか

ない。


 こうして私達は、室内を探索し始めた。何かを見つけて触れる場合は、みんなで

一斉に触れるというルールを決めた。誰か一人だけが触れてしまった結果問題が起

こるということを避けるためだ。

 

 当然ぴったり同時というわけにはいかないだろう。それでも一人だけで何かする

よりはみんなで一斉にやった方が問題も対処しやすい。最低限出来そうな事をやろ

うってだけだ。問題発生を未然に防ぐなんてことは、難しいし。


「なんか思ったよりも広いねえここ。」

「薄暗いせいで奥がどこまであるのか分からないですね。」

だけど、塔の各階層の広さで考えても広すぎじゃないのかなんて思えてきた。別な

空間にでも移動してきたんじゃないのだろうか。ここって本当に塔の内部なんだろ

うか。いつの間にか全然違う場所に飛ばされていましたなんてオチだけは勘弁して

欲しい。


「うう。早くお外に出たいのに。なんでこうなっちゃうんだろう。」

「第二ご主人頑張ろうチウ。」

「うん。ありがとうねずお。」

 私もいい加減にしてくれと思っている状態だ。あんなに頑張ってトラゴンを倒し

たのに、ここで更に探索までしろとかなんという意地悪な展開だよ。ここはさっさ

と外に脱出してのんびりする流れだっただろうに。

 

 ブッチ達だって50階まで来て・・・ってあ。説明忘れてた。

「ちょっと言い忘れてたんだけど、ブッチ達って50階以上って何があるか知らない

んだよね?」

「ん? 50階以上? そういえば上の階なんてあったの?」

「あったあった。100階くらいまで。」

「え? この塔そんなに高かった? そこそこ高そうに見たけどそんな点に届きそ

うなくらい高いとかは無かった気が。」


 うお。つまり外から見た場合は大して高いと思わないように偽装させておき、終

わりが見えないことで消耗させようって魂胆じゃないのかそれ。結構えげつない気

がするぞ。

 

 私がプレイしたゲームだと、序盤から町にでるとかなり凶悪なモンスターが出て

くるけど、実は町の外からワープして別なところから開始するのが正規ルートって

いうのがあったけれど、それに近い気がする。

 そういう騙し討ち的な事をされるのは怖すぎるな。これからこういう場所に入る

時はもっと気を付けないといけない。


「私とくろごまが、荒れ地を歩いていたら、ずっと同じ場所の移動を繰り返すよう

になって、そんでもってブッチがいた洞窟のあたりで、やった移動方法をやってみ

たら、出現したってオチなんだよ。」


「ん? つまりエリーちゃんは、ここに閉じ込められていたってこと?」

「そ、そうですよ。ずっとこの場所に閉じ込められてどこにも行けずにこの塔とい

うか元々は洞窟だと思っていたんですけど、ずっと篭っていました。」

「俺と一緒じゃないか。これは何か関係あるのかもしれないなあ。」


ちゃっかりまたちゃん付けで呼んでいることのほうが気がかりだったがまあいいか。

塔と洞窟なあ、どっちも私が出現させたわけだけど、これ今後も続くってことなの

かなあ。これって結構酷い仕組みな気がするんだけど、運営に苦情とか言ってない

もんなのかね。それとも数が少ないからしょうがないっていう姿勢なのか分からな

いけど。誰かが来るまでずっと何もできないって嫌になってくるよね。


「俺たちって少数派ってことになるんだろうね。レアキャラ万歳だな。」

「そういうポジティブに考えられるところは羨ましいですね。」

「ねこますサマハ、イツモポジティブデス!」

「おっ。ねっこちゃん褒められてるよ。いやあ、ねっこちゃんは明るくていいねえ。

おっと、目まで明るいなんてすごいなあ。」


 本棚ばかりで特に目立つものがないが、見落としはしないようにみんなで注意す

る。ちなみにここにはあのリザードマン達もついてきているが、特に何か仕掛けて

くる様子はない。

 けどこういう奴らってイベントが始まると急にうきうきして、あれやこれやと喋

りまくってくるのが常なんだよね。

 

「そや姉御、こいつらに色々と触らせればええんとちゃうんか?」

「それでお宝を奪われるかもしれないじゃないか! 頭を使え頭を!」

「ワイは考えるのを放棄するやで、こういうのは姉御に任せるで。ほな。」


まったくもう。確かにこいつらが罠に引っかかったりしてくれたらいいんだけどそ

んなに運よく引っかかってくれるわけがないしな。

 

「フン。ワレラヲウタガウトハ、ショウシセンバン。」


なんでそこで難しい単語使うんだ。とにかく疑わないと気が済まないから疑ってい

るだけなんだよ。あぁ、それにしても面倒くさいなあ、いけどもいけども触っても

何しても何も起こらない。

 忍耐力を鍛える特訓じゃないんだし、そろそろ何かあってもいいだろうに。


「なんか向こうに光が見えますけど。」

「あれ、もしかして外?」


なんか日差しが入ってきている気がする。けどちょっと待った、あそこに行くのは

まずいんじゃないかい。ここがまだ50階だとしたら、向こうに出てしまったらそこ

から落下してしまうだろう。


「怪しいけどあれ、下に落ちるかもよ。」

「ううっ。早く出たいんですけどぉ。」

そう言われましてもねえ。一応少しは近づくけど、怖いなああれ。あそこまで行こ

うとしたら落とし穴でもあったりしそう。二重の罠になっているとかそういう事を

考えてしまうな。ああ嫌だ嫌だ。


「一応少しずつあの光に近づいてみよう。罠かもしれないけれど今のところ何かあ

りそうなのはあれだけだし。みんな床に気を付けてね。他にも暗いんだからぶつか

らないように。あとそこのリザードマンの闇討ちにもね。」


「ハァ。イマサラソンナコトヲスルトデモ。」

「あるある。」

「ネーヨ。」

「ブッチ、お前が言うな。」


 一瞬光の先まで言ったら後ろからどついてやろうかなんて思ってしまった。ブッ

チといるとこれだからなあ。まぁここ最近ずっとくろごまの真面目な感じだったの

でなんかノってこられると変な感じがするってだけかな。


「ブッチさん! こういう時は真面目に行きましょう! 外に出られるんですよ!」

「脱獄犯みたいなノリだね! 頑張ろう! 脱獄犯みたいに!」

「脱獄犯じゃありませんし!」

「うるさい! いいから行くよもう!」


疲れているんだ。さっさと行こうよもう。

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