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エピローグ

 友梨奈から彼と出会った記憶がどんどん薄れていく――。


 彼女は彼が話していたことはこのことなのかと納得していた。


 よって友梨奈は()()ではなく、()()に戻されているのだ。



 *



 彼女は学校の屋上におり、手すりに向かって足を震わせながらゆっくりと歩いていた。


「友梨奈!」

「木野さん!」

「木野!」


 たくさんの人が友梨奈のことを呼び、慌ただしくどこかへ向かって近づいている。

 しかし、彼女はそれを無視して不安定な足取りで少しずつ手すりに近づいていく――。


 そして、手すりに跨ごうとしている時、誰かにがしっと右足首を掴まれた感覚があった。


「友梨奈、止めようよ……」

「……聡……」


 友梨奈は視線を上げると聡が立っている。

 彼はいつもの優しい笑顔からとても悲しそうな表情をしていた。


「友梨奈……死なないで……」

「お父さんとお母さん、友梨香ちゃんが悲しむよ?」


 凪と早紀も少し離れたところから彼女に声をかけている。

 彼女らの後ろには担任の早川と友梨奈のクラスメイト全員も姿を現していた。


「木野さん、ウチのせいでごめんなさい。ウチ、ちょっとやきもちを妬いてたから……」

「俺も木野のことを「カンニング女」とか言って悪かった」

「僕も一緒に楽しんでた。ごめんなさい」


 エリカ達が彼女に謝ってくる。

 彼女らは謝ることはいいが、周囲に同級生がいる前で土下座は恥ずかしい。

 他のクラスメイトも深々と頭を下げていた。


「友梨奈、わたしも死んでほしくないよ」

「あたしも」

「僕も」

「木野さん、私は頼りない先生だけど、何かあったらちゃんと教えてほしいな」


 柚葉、まひろ、勇人、早川もそのように声をかけている。

 友梨奈は「もっと……生きたい……」と言いながら、頬に涙が伝っている。


「生きて……いいんだよ」

「えっ!?」

「みんな、謝ってるじゃん」


 彼女は頭を下げているみんなを許したいと思っていた。


「こっちだ!」

「ここにマットを準備しろ!」


 男性の教員が慌ただしくふかふかしたクッションのようなマットを持って、屋上に駆けつけてきた。

 そして、下にも同じようにマットが準備されている。

 そちらは高等部の生徒が準備をしているようだった。


「木野、ここと下にマットを敷いたから痛くないぞ」

「……ありがとうございます……みんな、顔を上げて!」


 友梨奈はそう言って屋上に敷いてあるマットに転がる。

 頭を上げたクラスメイトや友人は彼女を見守っていた。


「みなさん、ご心配をかけてすみませんでした……そして、ごめんなさい……」


 友梨奈はそれに腰をかけ、彼らと同じように頭を下げる。


「もう、友梨奈は頭を上げなよ!」

「そうだよ!」

「友梨奈が辛いなら辛いって言っていいんだよ?」

「ボク達は友梨奈ちゃんの味方だしね。ねー、まひろちゃん」

「うん!」


 彼女が頭を上げると、柚葉、聡、凪、早紀、まひろが笑顔を見せていた。


「まぁ、俺らは木野の立場を考えられなかったけど、荒川達が「もう止めよう」って言ってくれた。それで、みんなで木野の立場になって話し合ったんだ」

「木野さんの辛さは私達も分かってるからね」

「これからはあたし達を頼ってもいいんだからね」


 友梨奈のクラスメイトが口々に言うと、「木野さん、生きてくれてありがとう!」と照れくさそうに声を揃えて言ってきた。


「ありがとう!」



 *



 今までのことはきれいに忘れ去られてしまったが、少女はこうして現代に生きている。


 もし、彼女を止めてくれていなかったら、普通に自殺してさよならをしていたのかもしれない――。


 これから楽しいことばかりではなく、また今回みたいなことが起きる可能性があるかもしれない――。


 今までの少女は「辛い時は辛い」と言えなかった。


 しかし、今の彼女ならその言葉が言える気がする。


 生きている時は楽しいことも辛いこともあるから、何が起こるか分からない。


 でも、これからはみんなで支え合いながら楽しく生きていこうと少女は胸に誓った。

「【原作版】」の「エピローグ」をベースに改稿。


2018/12/01 本投稿

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