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#76

 ジャスパーが友梨奈に「最終日(タイムリミット)はあと二日」と言われたあとのこと――。


 エリカが教室から出て行ったあと、結衣達はその日に予定していた学校案内ツアーの続き及び、部活動の見学を見送った。

 なぜならば、彼女らは早紀が話し始めたことがきっかけでエリカがなぜ友梨奈をいじめてきたことを知り、ショックを受けてしまったからである。


 聡や柚葉達は部活動のため、体育館や音楽室に移動し、まひろは結衣が過ごしている木野家とは反対方面に家があり、自転車通学のため、昇降口で別れた。

 彼女は彼らが部活動で上手くいかなかったということがないと思いながら校門から出る。


「あっ、ロングトーンが始まっていますわね……」


 結衣が木野家に向かって歩き始めようとした時に音楽室から吹奏楽部のロングトーンが始まっていた。

 彼女は無意識のうちにクラリネットを手に持ったふりをし、指を動かしている。

 クラリネットやフルートを吹いていた友梨奈や友梨香は定期テスト前や隙間時間はエアーで指を動かし、練習していた。

 彼女らは他のパートが落ち着いている時には指を高速で動かしていることが多く、少しでも腕を落としたくなく、必死だったことを思い出す。


「……どうしましょう……」


 結衣はこのまま吹奏楽を続けようか悩みつつ、家路についた。



 *



 彼女は家に着き、速やかに宿題を終わらせ、友梨奈の父親から受け取ったクラリネットを眺めている。


「やはり、もう一度クラリネットを吹きたいですわね……」


 結衣は数日間くらいしかそれを吹いていなかったにも関わらず、なぜか吹きたいと思い始めていた。


「結衣は今までクラリネットをやってきたんだから、他の部活に入るのはもったいないよ」

「結衣に是非、入ってもらいたいなぁ」

「結衣ちゃん、もう一度やってみようよ」

「あたしも! 一緒に演奏しようよ!」


 彼女がその気持ちを芽生え始めたのは現役で吹奏楽をやっている柚葉達と吹奏楽未経験のまひろの後押しがあったからである。


「せっかく楽器はあるのにもったいないですわよね……もう一度やってみようかしら」


 彼女は苦笑しながらクラリネットが入った楽器ケースを通学鞄に入れる。

 そして、本棚に置いてあるルーズリーフバインダーを手に取り、残された二日間でやりたいことを書き(つづ)っていた。


 結衣は夕ご飯と入浴、翌日の準備を済ませ眠りにつく――。


 これから彼女の残り少ない旅路が少しずつ始まろうとしていた。

「【原作版】」の「#42」と「スピンオフ」の「#44」の最初の場面をベースに改稿。


2018/11/25 本投稿


※ Next 2018/11/26 0時頃更新予定。

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