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#69

「あっ、そうだ」


 結衣の隣の席に座っていた聡が何か思い出したかのように呟いた。


「野澤、いつでも僕のところにおいで。みんなと一緒に――」


 彼が彼女に言いかけた時に、「まひろ!」と一人の女子生徒がまひろを見つけ、元気よく呼んでいる。

 結衣は聡の方を一瞬だけ見ると、少し苛々していたような表情を浮かべていた。

 彼は「今は凄くいいところだったのに」と言いたかったようだが、彼女には何が言いたかったのかはすでに分かっていた。


 それはまるで「野澤、いつでも僕のところにおいで。みんなと一緒に休み時間に話したりしよう」と言ってくれているかのように――。



 *



 同じ頃、タブレット端末から映し出されている映像を見ていたジャスパーは「……この少女は誰だ……?」と呟いた。

 他の場面では姿を現していたのかもしれないが、彼にとってはあまり見慣れない少女が一人いる。

 その少女こそ、エリカだ。


「僕は彼女のことを見逃していたのかもしれないな……あとで()()()()()()()()今までの映像を確認してみないとな……」


 ジャスパーはこれから彼女が友梨奈達に何か嫌なことが起きそうだと察していた――。



 *



 結衣達のところにエリカを含むまひろの友人らしき人物が弁当袋を持って近づいてくる。

 彼女らは昼食を終え、一旦教室に戻るところらしい。


「……エリカ!?」

「まひろ、五時間目の体育、一緒に行こっ?」


 まひろは温くなりかけていたサラダうどんを(すす)っていた時に彼女に呼ばれたため、誤嚥(ごえん)を引き起こした。

 結衣達はもちろんのこと、周囲はエリカの声の大きさに驚いている。


「エリカ達、ごめんね? 今週の移動教室は他の人と一緒に移動するから……」

「もしかして、今日転校してきた野澤さん?」

「うん。本人の指名で学校案内とか頼まれたし……」


 彼女の声の大きさとは対照的にまひろは小声で謝った。

 エリカは眉をひそめて彼女に問いかけるが、遠慮がちに答えている。


「確かに言われてたね……でも……」


 彼女はもう一度「……でも……」と繰り返した。

 その場面をともに見てきた者にとってここから先が気になる。

 ついに、友梨奈達が思っていなかった()()()の場面に入ろうとしていることに――。


「まひろはどんな時でも優しすぎるよ! 木野さんが生きてた時も荒川さんとかと一緒にいたじゃん!」

「エリカ……」


 エリカは声を荒げ、バンと両手を机に叩きつけた。

 彼女の正面に座っているまひろや周囲の生徒達は彼女らの方を見ている。


「じゃあ、訊くけどさ?」

「何?」

「まひろはそんなに木野さんや野澤さんが大切なの!? ウチらと一緒にいてつまらなかったの!? ねぇ!?」


 エリカはまひろの胸ぐらを掴んだ。

 彼女は「きゃっ!」と、勇人は「止めろよ!」と言い、止めに入ろうとした時、数秒間ほどの沈黙が流れる――――。


「…………エリカも大切な友達だよ?」

「えっ!?」

「でも、これだけは言わせて。あたしは野澤さんが転校してきたばかりだからって言うのは当たり前だけど、木野さんとも仲よくすべきだったと思う。そうだと思わない?」


 まひろは自らエリカの左手を引き離し、突き放すように彼女は自分の意見を口にした。


「……まひろ……?」

「あたしから訊くのも変だと思うけど、エリカは……木野さんをいじめて(たの)しかったの?」

「…………」

「……答えて……」

「…………」

「答えてよ!」


 まひろはエリカに問いかけるが、彼女は沈黙を貫いており、何も答えない――。


 その時、友梨奈はもしかしたら、エリカが張本人ではないかと思っていた。

 しかし、それ以外にも()()()()()()が手に入るはずと思っているが、それは本当にあるか否かは定かではない――。



 *



「これは()()()()()かもしれない」


 この段階でジャスパーはあることに気がついた。

 彼は机から白紙のカルテを一枚切り取り、自分が思ったことを書き(つづ)る。


 一つ目はおそらくエリカとまひろは友人なのではないかと思われる。

 しかし、まひろは友梨奈達と一緒にいる時間が長くなったからエリカは妬いているのではないか?


 二つ目はエリカが中心となって友梨奈さんをいじめようと考えた。

 これに関してはエリカとまひろの仲がよくなかったらここまで大きくはならないはずではあるが、彼女を通じて()()()調()()()()()()()()()()()()も一緒になって友梨奈をいじめるという考えも例外ではないかもしれない。


 三つ目はエリカ達ではない()()()()

 彼女ら以外とかも疑ってもいいと思われる。


「書けば書くほどキリがないな……」


 このことに関して推測できることはまだたくさんあるため、白紙だったカルテはすぐに埋まってしまった。


「本当ならば、この修羅場の中で行きたくないところではあるが、友梨奈さんのところへ行ってみることにか……」


 ジャスパーは彼女から「ジャスパー先生、しつこいです!」と言われる覚悟で「瞬間移動(テレポート)」を発動させた。

「【原作版】」の「#32」と「スピンオフ」の「#38」をベースに改稿。


2018/11/20 本投稿

2018/11/24 誤字修正


※ Next 2018/11/22 0時頃更新予定。

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