#64
「友梨奈さん? これから一限目が始まろうとしているのに、そのようなことを考えていていいのですか!?」
その場面を見ていたジャスパーは診察室の机にバンっと叩きつける。
そのことによって手か赤くなってしまった。
「ま、まずは手を冷やさなければ……」
彼はこれから診療時間に入ろうとしているにも関わらず、患者から「なぜ、手が赤くなっているのか?」と問われたら凄く恥ずかしい。
「これから診療時間に入ってしまうから、あとは録画で拝見させていただこう」
ジャスパーはタブレット端末を録画モードに切り替え、ナースステーションで氷枕か保冷剤を取りに行った。
その間、映像は徐々に進んでいく――。
*
「の、野澤さん? さ、さすがに今からだと一時間目が始まっちゃうから昼休みにしよう?」
友梨奈がそう思っていたやさき、柚葉が少し慌てたような口調で言ってきた。
彼女は時計を見るとあと数分後には一限目が始まってしまう。
「そうだよ。昼休みにしようよ」
「授業はさぼっちゃ駄目だしねー」
「白鳥さんはいつもさぼっているだろう?」
「バレた? さすが、学級委員長!」
まひろと勇人は楽しそうに話している。
彼女は相変わらず授業をまともに受けていないらしく、彼や柚葉はもちろんのこと、あとから録画を見たジャスパーも「友梨奈さんを見習って真面目に授業を受けてほしいところだが……」と呆れていた。
結衣は「そうですね」と返事をした頃にはすでに彼女の周りに人だかりができている。
友梨奈はこの時期に転校生は珍しく、結衣は彼女の親戚及び従姉妹であるため、話したいことはたくさんあるだろうと推測した。
彼女は最初が肝心だと思い、短い休み時間はできる限り、クラスメイトの質問に答えていき、彼らとコミュニケーションを取ろうとしていた。
「やはり、休み時間は質疑応答の時間だったのか……さて、授業は早送りで見ていくとしよう……」
ジャスパーは午前中の診察が落ち着き、温くなった保冷剤を戻しに行き、授業の様子などを早送りで見ていた。
結衣は友梨奈と同様にこれまで通りに授業を真面目に受けている。
「彼女も頑張っているではないか」
彼はまひろを見て、たまにシャープペンシルを持ったまま眠りについていたこともあったが、彼女も授業を受けていた。
これまでの録画を見終え、学生はそろそろ昼休みに入る頃だと思われる。
この時間帯に入ると予約患者がいないため、ジャスパーは「瞬間移動」と「時間操作」を駆使し、友梨奈のところに行くことにした。
「録画モードにしたままで出てきてしまった!」
彼はやらかしてしまったと思っていた頃には目的地に着こうとしており、先延ばしになってしまうが、あとで見ることにした。
*
同じ頃、校内に四限目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、教室から人が出て行く。
友梨奈が結衣として学校に通い始めてまだ半日しか経っていないにも関わらず、クラスメイトからたくさん話しかけられたのは久しぶりだったため、とても嬉しそうだ。
「野澤さん、一緒にご飯を食べに行こう? 僕は学食だからさ」
「いいですわよ。わたくしも学食ですので」
勇人に昼食の誘いに快く応じるて同時に結衣とまひろが近づいてくる。
「松井くんは野澤さんが隣の席だからってほぼ独り占めだね。わたしと白鳥 まひろも学食だから、みんなで行こうよ! 食堂まで案内しながら行けるしね」
「そうだね。食堂はお弁当の持ち込みも大丈夫だからね」
「どちらでもいいのですね。ありがとうございます」
「さあ、学校案内ツアーの始まりだ!」
柚葉のかけ声で四人は教室から出ようとしたやさき、「友梨奈さん?」と呼ばれた。
友梨奈は違和感を覚えたとともに、「は、はい!」と素っ頓狂な返事をする。
「……って……ジャスパー先生じゃないですかぁ……」
「お久しぶりですね」
「そう言われてみれば……久しぶりかもしれないですね」
彼女の視界にはジャスパーの姿があった。
彼は軽く頷き、「さて……」と呟く。
その時の友梨奈は少し怯えているような瞳でジャスパーを見ていた。
「現段階で何か分かったことはありませんか?」
「え、今のところはないですね……」
「そうでしたか……これから何か分かるといいですね?」
「……はい……」
「では、僕はこれで失礼いたします」
彼女はわずか半日で重要な情報を得られていなかった模様。
彼は短時間でそれを得ることは難しいのだろうか? と思いながら「瞬間移動」で診察室に戻った。
たとえ、友梨奈が重要な情報を得られたとするならば、ジャスパーはヒントを与えるだけしかできない。
なぜならば、その答えを導き出すのは彼女なのだから――。
「【原作版】」の「#28」と「スピンオフ」の「#34」、「#35」、「#36」の前半部をベースに改稿。
2018/11/18 本投稿
※ Next 2018/11/18 19時頃更新予定。




