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#58

 霊安室から出た彼女らは御手洗い(トイレ)へ向かう。


「ゆいさん、終わりましたらここを押してくださいね!」

「はい」


 ゆいは看護師に尿道カテーテルを抜いてもらい、友梨奈の母親とともにそこから出て行く――。

 彼女は用を済ませ、ナースコールを押し、看護師を呼び出した。 ゆいが彼女の指示に従って車椅子に座り、洗面台まで誘導された時にその姿が鏡に映し出される。


 胸のところまで伸びたストレートの黒髪でクリクリした瞳に二重瞼(ふたえまぶた)

 そして、整った輪郭で小顔の少女がいた。

 友梨奈ははじめて目にした「のざわ ゆい」という人物の容姿。

 彼女はお手洗いに行くまでは少し息苦しいかったが、髪が長くなったからと()()()思い、納得していた。

 まるでモデル並の身体で清楚な少女という完璧に等しい外見ではないかと――。

 しかし、肝心の()()である性格は自分で設定するようにということなのかが分からず悶絶していた。



 *



 同じ頃、診察室でタブレット端末から通じて見ていたジャスパーは友梨奈と会話するタイミングを(うかが)っている。

 彼女は洗面台の鏡に映し出されている「のざわ ゆい」という人物の身体をじっくりと見ていた。


「さて、そろそろ友梨奈さんのところに参りましょうか……」


 彼は友梨奈にはもう少しだけその姿を見て待っていてほしいと願いながら、「瞬間移動(テレポート)」を発動させた。



 *



 彼女がゆいの容姿をじっくりと見ていたやさき、「友梨奈さん」と声をかけられる。

 友梨奈は現段階では自分の本名である「木野 友梨奈」と呼べる人物は消去法でジャスパーしかいない。


「先生! よくママや看護師さんに見つからないでここまでこられましたね!」

「実は他の方に見つからないように時間を止めているのです。看護師さん達をご覧になるとお分かりになると思いますが……」

「本当だ……時間が止まっているみたいです」


 彼女が周囲を見回すと、看護師や友梨奈の母親の動作が完全に止まっていた。

 彼女は現段階で彼が「瞬間移動」と懐中時計の操作だけでできる「時間操作能力」が備わっていることを知らない。

 当の本人は後者ははじめて使用ため、便利か否かは定かではなかった。

 相手が遠くにいて、重要なことを伝えなければならない時に前者と合わせて使用すると便利だとジャスパーは判明した。


「本当ですよ? そうしないと友梨奈さんに()()()()()をお伝えに伺えませんので」

「そうでしたか……()()()()()とはなんですか?」

「今のあなたの姿はいかがですか?」

「凄く可愛い! モデルさんかアイドルみたい!」

「お気に召していただき、嬉しく思います」

「あの……「のざわ ゆい」の漢字表記が分からないのですが……」

「すみません。自分の名前の漢字が分からないと大変ですよね? 友梨奈さんの転生後の名前の漢字表記はこちらです」


 友梨奈は今の自分の姿を見て喜んでいる中、自分の名前の漢字が分からないという複雑な思いを口にする。

 彼は「それを伝えにきたのだよ!」と彼女の身体を前後に揺すりたい気持ちを抑え、白衣のポケットから紙とペンを取り出し、『野澤 結衣(のざわ ゆい)』と書き、手渡した。


「難しい漢字だと読み書きが大変だと思いますので、シンプルな名前にさせていただきました。さて、肝心なあなたの性格はですね……」


 友梨奈は「性格は自分で決めてください」と言われるのかと思いつつ、()を輝かせながらジャスパーと視線を合わせようとしている。

 しかし、彼は人と視線を合わせようとするとすぐに照れてしまうところがあるため、彼女から軽く視線を逸らした。

 ジャスパーは一瞬ニヤリと笑い、「()()でいきましょう!」とどこか楽しそうに言う。

 友梨奈は彼の台詞に「!」がつくことはあまりないため、余程何かを企てているのではないかと推測した。


「な、なんですか?」

「先ほどからの口調で気がつきませんでしたか?」

「確かに違和感がありました」

「清楚なのは外見だけです。中身は()()()()で目的を果たしてくださいね? 最後にこれから退院すると思いますが、あなたは「野澤 結衣」としてどのような学校生活を送りますか?」

「はい?」


 彼女はポカンとしたような表情を浮かべている。

 ジャスパーはおそらく友梨奈がピンときていないのではないかと察したため、こう続けた。


「「自殺する前までの辛い記憶を再生(リピート)して客観的に見ていくか」それとも、「転校するところから始まって自殺する前までの伏線回収するために客観的に見ていくか」の二択です。よって、()()()()()()になるか()()()()()()()なるかはあなた次第ですので」


 その時の彼は冷笑を浮かべていた。

 ジャスパーは彼女に恐ろしいことを言ってしまったのかどうか心配になったが、それはもう取り返しがつかない。

 それらの選択肢はこれからの展開に左右されることになる。

 その答えを見つけるのは友梨奈次第ということになるから――。

「【原作版】」の「#22」の後半部と「スピンオフ」の「#29」の後半部と「#30」をベースに改稿。


2018/11/14 本投稿・誤字修正


※ Next 2018/11/14 6時頃更新予定。

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