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#57

 彼女らが霊安室に着いた時には友梨奈の父親や親戚がおり、何かを話していた。


「「ゆいちゃん!」」

「おじさま、みなさま!」

「どうしたんだ?」

「ゆいちゃんが友梨奈に会いたいって言っていたから、看護師さんに頼んで連れ出してきちゃった」

「おばさま、わがままを言ってしまい、すみません」

「いや、いいのよ」

「ゆいちゃん、心の準備はできたか?」

「……ええ……」


 彼女の父親は友梨奈の顔に敷かれている布を外す。

 そこには綺麗に化粧をされた自分の亡骸――。

 彼女は自分の身体に触れてみるが、温かさの欠片はなく、とても冷たかったため、これがヒトの最期(さいご)なのかと実感した。


「なあ、ゆいちゃん?」

「はい」

「ゆいちゃんはなぜ友梨奈が命を落としたのか分かるか?」

「………………」


 彼はゆいに問いかける。

 彼女はその答えが()()()()()()が、今の自分の立場からしては()()()()()()()をしていた方がいいのではないかと思い、沈黙を貫いていた。


「分からなくて当然だよな……友梨奈は()()()()()()()()()()()()()ではない。彼女は()()()()()()()んだ」


 ゆいは元の自分の亡骸と彼女の父親を交互に見る。


「……自殺……」

「そうだ。友梨奈は通っていた学校でいじめられていたらしいからな……それで……辛くなって……」

「……おじさま……」

「ゆいちゃん、たとえ精神的に辛くても、友梨奈みたいに自ら命を絶たないでほしい……毎日、笑顔で楽しく学校生活を送って……」


 友梨奈の父親が大粒の涙を(こぼ)した。

 彼女からして、彼が涙を零したところを見たことがなく、今回がおそらくはじめてだったに違いない。


 ゆいの身体となった今、友梨奈の父親からそう言われるとなるとプレッシャーをかけられているように感じる。

 彼女は両親に「パパ、ママ、ごめんね。実は私、第二の人生を送っているところなんだ」と直接言うことができなかった。

 なぜならば、もう「木野 友梨奈」という人物はすでにいないのだから――。


「友梨奈さんはさぞかし辛かったと思いますわ。本当はおばあさまになられるまで生きたかったと…………うわぁ!」


 ゆいが自分の亡骸を見ながら話している途中、両親が左右から彼女に抱きついてきた。


「……ゆいちゃん、そうだよな! 友梨奈はもっと生きたかったと思うよな?」

「え、ええ……」

「不思議だなぁ……ゆいちゃんと話しているとなんか落ち着くんだ」

「おばさまも先ほど仰っていました。はじめて会った気にならない、と」

「ママも、か……なんか友梨奈と話しているみたいだ」


 友梨奈の父親がゆいにこう告げると、隣にいる彼女の母親も頷いている。

 その時、友梨奈は自分の容姿が変わったとしても、両親は彼女だと認識しているのかどうか気になってしまった。


「わたくしは友梨奈さんの代わりにはなれませんが、えっと、その、なんというか……少しでもみなさまの心の傷を癒していただければ幸いです」


 友梨奈はゆいの容姿にもかかわらず、そのようなことな話していたが、実は()()()()()()()()()()()()()()()()()()模様。


「「ありがとう」」

「いえいえ。とんでもございませんわ。おじさま、おばさま、友梨奈さんに会わせていただきありがとうございました」

「いや、いいんだよ……」


 ゆいは両親に礼をいい、再び溢れ出しかけた涙を霊安室に置いてあるボックスティッシュで拭き取った。

 彼女はあの日に見た自分の父親の顔はずっと忘れないだろうと思いながら、霊安室(そこ)から出て行った。

「【原作版】」の「#21」の後半部と「#22」の前半部をベースに改稿。


2018/11/13 本投稿


※ Next 2018/11/14 0時頃更新予定。

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